私小説であり、試小説 作:陰月
身体的特徴だけで動かすのは無理があります。
「ぬぅぅぅあぁぁ」
筋肉達磨が雄叫びと共に起き上がる。
プライドが許さなかった。
俺は筆組幹部だ。
この腕っぷしだけで上り詰めてきたのだから。
今、負けを認めることはこれまでの人生を貶されることに等しい。
クロウから距離をとりつつ構える、腕も捻られただけで動かないわけではない。
また、腕力で負けても逃げることは一切頭になかった、自分が負けるときは死ぬことと同じなのだから。
まだやんのか?
一方のクロウは、これで懲りただろうと思っていたところに肩透かしをくらってしまう。
なぜなら、相手がクロウを振りほどいたのではなく、クロウが『手を放した』だけだからだ。
大抵の今までの相手は、力量差がはっきりすると退散することが多かった。
クロウのいた世界では『失敗=死』が常識。
2度目が存在する時は、立ち向かわず相手にしない時。もしくは、相手の恩赦で逃げ延びた時だけ。
力量差が大きいと分かった後でも、挑もうとすることは愚かであるとしか言えない世界。
しかし、目の前の達磨はどこまで馬鹿なのかと思っていた矢先に、1つの事実を思い出して考えを改めた。
『愚か』だったのは自分である。
ここは、この地は
世界基準で見れば『平和』なのだから
日常的に銃弾が飛び交う環境と、喧嘩が起きない環境で育った人間が、同じ価値観で対話できるだろうか?
否
出来るわけがない。なぜなら、前提とされる普通が統一されていないから。
クロウは辟易とした表情を浮かべ
「困ったやつだ、平和ボケしてんじゃねぇよ」
つい自分の常識の基準で一言こぼしてしまう。
だが、この言葉が相手の火に油を注ぐこととなった。
「、、平和ボケだぁ?ふざけるな、オレは天下の墨流会の中でも恐れられる筆組幹部 大道寺 大吾(ダイドウジ ダイゴ)様だぞ。散々馬鹿にしやがって」
上半身の衣服を脱ぎ捨て、本格的に仕留めようと目を血走らせている。
衣服が取り去られて露見したのは、様々な無数の傷跡が残る体。
刺し傷や切り傷、銃創のようなものも見受けられる。
「なんで脱いだのか理解できんのだが。男の裸なんぞ見ても嬉しくもなんともないぜ」
「オレはこの体で全てねじ伏せてきたんだ、相手がドスや
「やる気になってるとこ悪いが、俺はお前に興味がない。さっさと帰ってクソして寝てな」
流れで拳を受けただけで、自分をヤクザの抗争に巻き込むな。
そう告げるとサナイに預けていたビニール袋をヒョイと持ち上げて、しょうがなさそうに曲がり道を進む。
事態に付いていけなかったサナイは、手元の袋が無くなったことで意識が現実世界に帰ってきた。
ですが、名前を考えるのも徐々に難しく