私小説であり、試小説 作:陰月
マスターに依頼が成功した一行
そんな三人に一つの影が近づく
「あの、お話宜しいですか?」
突然行く手を遮る形で現れた一人の男。
スーツに目深な帽子を被り怪しさ満点なのだが、どこか物腰の柔らかさが伝わってくる。
が、今は非常事態。組長の命が狙われており、情報提供者は謎の死を遂げている。
ならば怪しい人物を兄貴分に近づけるわけにはいかない。
「なんだお前」「やんのか?」
先程のマスターとのやり取りでイライラが溜まっていた二人は、言うが早いか殴りかかる。
「こら、お前たち」
子分の気持ちが分からないわけでは無いが、無用な争いは避けたいサナイ。慌てて制止しようと手を伸ばすが虚しく空を切る。
「「うらぁっ!」」
「いえ、やりませんよ」
半歩足を引き金髪の手を搦めとると、スキンヘッドに預ける形で動きを封じた。
「痛ててて」「ぅおお!?」
「聞こえませんでしたか?私は『お話宜しいですか』と伺ったのですよ?」
あくまでも口調は優しいのだが、責めの姿勢を感じる口調でもあった。
語りかけてくるその口元は笑みを絶やさない。
「離しやがれ!っぐ」
スキンヘッドが金髪をどうにか助けようと手を伸ばしたのだが、それも搦めとられて共に捕まってしまう。
「初対面の相手に有無を言わさず殴りかかるとは、いったいどういう了見なのでしょう」
軽くため息をつくと二人をサナイに向けて押し出す形で解放する。
解放されるや再び噛みつこうとする子分をサナイが抑え込む。
「待て」
「でも」「兄貴ぃ」
自分を守ろうとしてくれていることは、分かっているサナイだったが、二人では敵わないということも分かってしまった。弟分を守るのも兄貴分の務めだと前へ出る。
「下がってろ」
「しかしですね」
「下がってろ!」
なおも食い下がる弟分を、滅多に見せない鋭い目つきで制する。
「失礼ですが、あなたは誰ですか」
男との距離を一定に保ちながら静かに問いかける。
先程までの雰囲気とは真逆に、時がゆっくりと流れるように感じる。
「これは話せる状況になったと捉えても宜しいのですか?」
「ええ、構いませんよ」
目の前の人物は油断ならない存在だと分かった以上、神経を尖らせているのが分かる。相手が自分たちの組を潰すための刺客であるなら、と目の前を警戒しつつも周囲に視線をやる。
しかし、
「ご心配なさらず、単なる対話ですよ」
これを、含んだ笑みで受け流す男。
「お名前、伺っても?」
未だ警戒を緩めないサナイが対応に困っていると、
「先にお前から名乗りやがれ」「当然だろ」
名前が知りたければ自分から名乗れ、と
子分二人が声だけでも加勢をする。
「おや、それは失礼いたしました」
しかし男はどこ吹く風。帽子を取り、軽く腰を折りながら答えた。
「私の名は鍔屠。駿河 鍔屠(スルガ ガクト)と申します」
帽子の下から現れたのは白銀の髪に淡い黄色の眼。
微笑を湛え柔和な雰囲気が漂う。
これはコチラを油断させるためなのか?余裕の表われ?
しかしサナイも少なからず、死と近しい生活を送り、殺気を向けられたこともある。
それを踏まえるとどうにも敵対の意思は感じられなかった。
すると可能性が一つある。
「もしかしてあなたは、、、」
それに気付いたサナイが問い質そうとすると、
「その前に『お名前』、伺っても?」
「あ、はい。坂下佐内です」
コチラが気を揉んでいるというのに、なんともマイペースな男。
逆にガクトはというと、満足げに頷き今度はスキンヘッドと金髪に視線を遣る。
「?」「、、、え?」
不思議そうに首を傾げながらも、『オレ?』と自分たちを指さす子分達。
「ええ、勿論。あなた方の言葉を借りるなら『当然だろ』ですよ」
この話に出てくるキャラは、私が初めて作ったキャラになります
捨てきれない思い入れがあります
次回、子分の名前発覚!?