私小説であり、試小説   作:陰月

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 マスターに依頼が成功した一行
 そんな三人に一つの影が近づく


六話 その影、微笑

 

 「あの、お話宜しいですか?」

 突然行く手を遮る形で現れた一人の男。

 スーツに目深な帽子を被り怪しさ満点なのだが、どこか物腰の柔らかさが伝わってくる。

 が、今は非常事態。組長の命が狙われており、情報提供者は謎の死を遂げている。

 ならば怪しい人物を兄貴分に近づけるわけにはいかない。

 「なんだお前」「やんのか?」

 先程のマスターとのやり取りでイライラが溜まっていた二人は、言うが早いか殴りかかる。

 「こら、お前たち」

 子分の気持ちが分からないわけでは無いが、無用な争いは避けたいサナイ。慌てて制止しようと手を伸ばすが虚しく空を切る。

 「「うらぁっ!」」

 

 「いえ、やりませんよ」

 半歩足を引き金髪の手を搦めとると、スキンヘッドに預ける形で動きを封じた。

 「痛ててて」「ぅおお!?」

 「聞こえませんでしたか?私は『お話宜しいですか』と伺ったのですよ?」

 あくまでも口調は優しいのだが、責めの姿勢を感じる口調でもあった。

 語りかけてくるその口元は笑みを絶やさない。

「離しやがれ!っぐ」

 スキンヘッドが金髪をどうにか助けようと手を伸ばしたのだが、それも搦めとられて共に捕まってしまう。

 「初対面の相手に有無を言わさず殴りかかるとは、いったいどういう了見なのでしょう」

 軽くため息をつくと二人をサナイに向けて押し出す形で解放する。

 解放されるや再び噛みつこうとする子分をサナイが抑え込む。

 「待て」

 「でも」「兄貴ぃ」

 自分を守ろうとしてくれていることは、分かっているサナイだったが、二人では敵わないということも分かってしまった。弟分を守るのも兄貴分の務めだと前へ出る。

 「下がってろ」

 「しかしですね」

 「下がってろ!」

 なおも食い下がる弟分を、滅多に見せない鋭い目つきで制する。

 「失礼ですが、あなたは誰ですか」

 男との距離を一定に保ちながら静かに問いかける。

 先程までの雰囲気とは真逆に、時がゆっくりと流れるように感じる。

 「これは話せる状況になったと捉えても宜しいのですか?」

 「ええ、構いませんよ」

 目の前の人物は油断ならない存在だと分かった以上、神経を尖らせているのが分かる。相手が自分たちの組を潰すための刺客であるなら、と目の前を警戒しつつも周囲に視線をやる。

 しかし、

 「ご心配なさらず、単なる対話ですよ」

 これを、含んだ笑みで受け流す男。

 

 「お名前、伺っても?」

 未だ警戒を緩めないサナイが対応に困っていると、

 「先にお前から名乗りやがれ」「当然だろ」

 名前が知りたければ自分から名乗れ、と

 子分二人が声だけでも加勢をする。

 「おや、それは失礼いたしました」

 しかし男はどこ吹く風。帽子を取り、軽く腰を折りながら答えた。

 

 「私の名は鍔屠。駿河 鍔屠(スルガ ガクト)と申します」

 帽子の下から現れたのは白銀の髪に淡い黄色の眼。

 微笑を湛え柔和な雰囲気が漂う。

 これはコチラを油断させるためなのか?余裕の表われ?

 しかしサナイも少なからず、死と近しい生活を送り、殺気を向けられたこともある。

 それを踏まえるとどうにも敵対の意思は感じられなかった。

 すると可能性が一つある。

 「もしかしてあなたは、、、」

 それに気付いたサナイが問い質そうとすると、

 「その前に『お名前』、伺っても?」

 「あ、はい。坂下佐内です」

 コチラが気を揉んでいるというのに、なんともマイペースな男。

 逆にガクトはというと、満足げに頷き今度はスキンヘッドと金髪に視線を遣る。

 「?」「、、、え?」

 不思議そうに首を傾げながらも、『オレ?』と自分たちを指さす子分達。

 

 「ええ、勿論。あなた方の言葉を借りるなら『当然だろ』ですよ」




 
 この話に出てくるキャラは、私が初めて作ったキャラになります
 
 捨てきれない思い入れがあります


 次回、子分の名前発覚!?
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