私小説であり、試小説   作:陰月

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 なんとはなしに作ったキャラが物語の進行とともに、成長していく
 こうやって徐々に愛着が湧くのでしょうね


九話 その弟分、我慢

 

 「さて、そろそろ信じて頂けましたか?」

 全体の雰囲気が切り替わるのを促すように、パンッと両手を合わせて音をならす。

 サナイは考えた。

 ガクトは自分ですら知らなかった情報を提示して見せた。

 先程から敵対の意思は感じられないし、危害さえ加えなければ手は出さないと宣言もしてきた。

 それに助力を頼んだ相手も相手なのだから、これ以上詮索しても事態が変わらないと判断を下す。

 「分かりました、ご協力よろしくお願いいたします」

 兄貴分の頭が下げられた。

 ガクトにはやられっ放しでいけ好かないが、絶対の信頼を置いている人が頭を下げたのだ。

 キンヤ、マドカもそれに倣い頭を下げる。

 「ありがとうございます」

 一先ず信じられたことを確認し、ゆっくりと三人に歩み寄る。

 顔を上げるようにお願いし、出会ってから気になっていたことを確認することにした。

 「手始めに一つだけ宜しいですか?」

 「なんでしょう?」

 「いえね、簡単に実力を見せるついでと言いますか。マドカさんでしたね?」

 「あ、ああ」

 何故自分に声を掛ける必要があるのか、全く予期していなかった事態に少しどもってしまった。

 ガクトはゆっくりと手を、ポケットに突っこんでいる左手首へと伸ばしてくる。

 その手を、急に何だ、と体を左へ捩じり半身で遮った。

 「何だよ、お前の腕が立つのは分かったよ」

 てっきり武力証明でもするのかと思い告げたのだが、その考えは次のガクトの言葉で否定される。

 

 「ふふふ、違いますよ。あなた左手を怪我されてますよね?」

 この発言には、本人含めてヤクザ三人は驚愕の表情を浮かべた。

 「な!?」「えっ!」

 「!?、、、本当か、マドカ」

 サナイの視線が鋭くマドカを射抜く。

 バツが悪そうに黙るマドカだったが、次の『出せ』という言葉まで無反応ではいられず、渋々の体でポケットから手を出してくる。

 その手は全体が(まだら)に赤く色付いている。火傷である。

 「どうしたんだ、コレは」

 「いえ、今朝にちっと」

 さらに詰め寄るサナイを回避しようと、肩を竦めて見せるマドカだったが通じるわけがなかった。

 「嘘を吐くな。マスターの店に入るまで力いっぱい振り回してたろうが。馬鹿にしてんのか?」

 「まさか、あの時!?」「しっ、黙ってろ!」

 何か思い当ったキンヤだったが、マドカがそれをさせない。

 痛みに耐えるために左腕を握る右手に力がこもる。

 

 今、目の前にあるサナイの表情は、ガクトが出会って一番鬼気迫るものがあった。

 

 実を言うと、この坂下佐内という男。典型的な自己犠牲人間だった。

 辛いことや悲しいことでも、自分が傷つく分には平気の平左。だが逆に世話になった組長どころか弟分であっても、傷つくことを良しとはしない。

 弟分としては、兄貴分の盾になってこそという気概を全うさせてくれない。自分の命は二の次で子分の命を優先させてしまう。怪我をしたならすぐさま治療に走れ、という人なのだ。

 当然今回のような火傷も見つかれば、先に帰らされていた。

 命の危険なんかないと素人でも分かる傷でも、関係はなかった。

 しかしマドカにも譲れないことがあるのだ。

 今回のような非常事態、もしも襲撃にあい。自分ひとりを失うことと兄貴を失うこと、天秤にかければ重要なのは火を見るよりも明らかだ。

 

 これを制したのは二人目の弟分であるキンヤ、ではなく、

 「まあまあ、今は良いじゃないですか。それよりも『手当て』が先ですよ」

 出会ってから一度も微笑みを絶やさない、この男だった。





 弟思いの長男♪
 兄さん思いの三男♪
 自分が一番 次男♪

 
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