俺がギルド職員をするのは間違っているだろうか 作:RINTO
「ヘルメス、お前ここに何しに来た」
ヘルメスに対してあまり良いようには思っていないのだろう、タケミカヅチ様がヘルメス様に本音を吐かせようと問いただす。その顔はとても真剣だったのだが、ヘルメス様は相変わらずニコニコしている。本当に笑っているのか作り笑顔なのか分からないのが怖いところだが。
「そんなの決まってるじゃないか。ギルドでのクエストを見てベル君の救出に手を貸そうと思ってここに来たんだよ」
「ヘルメス、お前何を企んでるんだ」
「いやだなタケミカヅチ。俺はただ
どうやら、タケミカヅチ様はヘルメス様のことをこれっぽっちも信用していないようだった。ここまで来るとヘルメス様が過去にタケミカヅチ様に対して何かやらかしたとしか思えないな。
「分かった、よろしく頼むよヘルメス」
「了解したよ」
ヘスティア様も渋々といった感じの表情に見えた。やはり、ヘルメス様は周りに信用されるにいたらないのだろうか。
「ヘスティア、本当にこいつを信用していいのか?」
「背に腹は変えられないよ。ベル君を助けられるなら手段は選んでられないからね」
「それでヘスティアが同行すると言うのなら僕も行かせてもらうよ」
「なっ⁉︎ ヘルメスがなんで来る必要があるんだよ。ギルドにバレたらまずいだろ?」
「バレなきゃいいってさっき自分で言ってたじゃないか」
これには何も言い返せなかったのかしょうがなくヘスティア様はヘルメス様の同行を認めた。てか、ギルドにバレなきゃってお二方言ってるけど俺一応今はギルド所属だからね。その辺、絶対忘れてるよね……
こうして、ベル救出部隊は今日の夜二十時に出発することに決まった。メンバーはタケミカヅチファミリアの三人と俺、アスフィ、ルメス様、ヘスティア様だ。
そう言えば俺まともな武器持ってたっけ?
「レオン、貴方の武器はカリスから預かってるから後から取りに来なさい」
「分かりました」
カリス様、ありがとうございます。今日、もう一度一歩踏み出してみようと思います。
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時刻は二十時を回った頃バベルの前に救出隊のメンバーが集まっていた。元々の予定では七人のはずだったのだが一人増えていることに気づいた。フードを深く被って顔を隠してはいるがあれはどう見ても豊饒の女主人で働いているリューさんだった。
「リューさん、どうしてここに?」
「クリフさんではないですか。私はそこのアンドロメダとヘルメス様に教えてもらって。クラネルさんにはここで死んで欲しくはありませんから。だからこそ、あなたも武器を再び取ったのでしょう?
「その名前で呼ぶのはやめて下さい。その名前嫌いなので。レオンと呼んでくれればいいので。あと、さん付けはやめませんか? 歳も変わらないでしょ、僕ら」
「そうですねそうしましょう」
これまで滅多に表情を変えることのなかったリューさん、いやリューが少しではあるが微笑んだのだ。エルフというだけあって普段から堅苦しい思いでもしているのだろう。少しでも楽に接してくれれば俺も関わりやすいというものだ。
「レオン、リオン。お話はその辺にしてもらえますか? もう出発しますよ」
少しではあるがリューと打ち解け、話をしていたところを
「予定通り私がパーティーの指揮を執ります。リオンは前衛をレオンは中衛を私は後衛につきます。基本的に戦闘は三人で事足りると思いますが討ち漏らしが出た時はタケミカヅチファミリアの三人に任せます」
「アスフィ、何で俺が一番大変な中衛なんだよ」
「私が近接戦闘にあまり向いていないからです。その辺は勘弁して下さい」
そう言われてしまえばなにも言い返すことは出来なかった。さっき知ったのだが、俺がまだ冒険者としてやっていた頃に同じくらいの実力者だった疾風がリューだったとは驚きだ。俺と近い時期に姿を消していたが彼女にも何か事情があるのだろう。
まぁ、疾風が前衛なら中衛の俺に大きな負担がかかることはおそらくないだろう。それだけ、彼女は強いのだ。
「レオン、ここから少し集中しましょう。そろそろ、中層です」
「分かった。俺もお前も久しぶりの戦闘なんだ無理は禁物な。アスフィもいることだし大丈夫だろうから」
「そうですね、少し気を張り詰め過ぎていたかもしれなかった。レオン、ありがとう」
「ちょ、ちょっと何勝手に楽をしようとしてるんですか」
また、アスフィに突っ込まれてしまった。まぁ、手を抜くつもりは最初からないのだが、気の持ちようというやつだ。それにしても、アスフィのやついいツッコミするよな。普段から誰かに鍛えられてでもいるのだろうか……
「二人とも少しは戦闘に集中して下さい。もう、次が来てます!」
「「了解‼︎」」
前方を見るとヘルハウンドが3体、アルミラージが5体こちらに迫って来ていた。それを見て自分の得物であるエストックを構える。
「リュー、俺はヘルハウンドをやる。数は多いがアルミラージを任せられるか?」
「分かった‼︎」
リューの声を合図にステイタスによって補正されている力を発揮しヘルハウンドとの距離を一気に詰める。まともに三体を相手取るとそれなりに厄介なので一体ずつとも思ったがそれも時間がかかってしまうために面倒だ。そう思い俺はヘルハウンドの群れの真ん中に突っ込んだ。
これではヘルハウンドに囲まれているため炎によって燃やされのが普通である。並みの冒険者ならば。
「かかってこいよ‼︎」
ヘルハウンドたちを軽く挑発すると三体同時に炎を吐こうと口を開ける。その瞬間を俺は待っていた。三体が同時に炎を吐いた瞬間俺は上と跳躍をする。目標を失ったヘルハウンドたちは止めることも出来ず味方に向かって炎を吐き、三匹が散り散りに飛ぶ。そのチャンスを逃さない。
「はあぁぁぁぁっっ‼︎」
上空から落下する勢いそのままに一体のヘルハウンドの首に自分の得物であるファルカタを突き刺し灰へと変える。そこから、ヘルハウンドに隙を与えないように足を止めずに残り二体のヘルハウンドにファルカタを振り抜き、二体同時に灰へと変える。
ふと、向こうを見ると流石疾風と呼ばれたリューだ。アルミラージが捉えられない速さの動きであの数を一瞬で灰に変えていた。
「まぁ、久しぶりにしては上出来かな」
「ですね」
「おっ‼︎また、次が来たみたいだな」
前を見るとまた複数のモンスターの群れがこちらに向かって来ている。少しくらいは休ませて欲しいものだ。まぁ、このインターバルこそが今回ベル達を苦しめた要因なのだろう。
「リュー、今度はどっちが多く倒せるか勝負しないか?」
「いいですねレオン、望むところです」
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今もなお湧いてくるモンスターと戦うリューとレオンの動きを見ていたヘスティア達は声を上げられなかった。圧倒的な力を持って中層のモンスターを屠っていく姿は圧巻だった。タケミカヅチファミリアのメンバーに至ってはヘルメスとヘスティアを守るだけになっており、一度もモンスターとは戦闘を行なっていないレベルである。
「ヘルメス様、私を連れてくる必要はあったのでしょうか? レオンとリオンがいれば問題なかったのでは?」
「まぁ、そういうなよアスフィ。俺もレオンについては今日初めて知ったんだから。こんなに強い冒険者だとは思わなかったんだ。それにしても、あの二人の戦い方は鮮やかだ」
「えぇ」
それほどまでに二人の実力は圧倒的だった。今ではどちらが多くモンスターを倒すか競争しているくらいである。リューの木刀の動きは辛うじて目で捉えられていたアスフィだったが、レオンのファルカタの剣筋はもはや目で捉えられなかった。それほどまでにレオンの実力はこのパーティーの中で突出しているのだ。
それを見たアスフィやタケミカヅチファミリアの団員達が若干の劣等感に苛まれたのは言うまでもないだろう。
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「ふぅ、戦った戦った。久しぶりにしては楽しい戦闘だったよ」
「私もです。元々あまり競い合う相手がいなかったのでレオンは本当にいいライバルになりそうです」
あらかたこの周囲にいるモンスターを二人で片付け、談笑していると呆れた顔をしたアスフィが声をかけにきた。
「全く、戦闘好きは困ったものです。それで、これからどう探しましょうか」
「普通に考えてダンジョンに滞在出来るような備えをしていないベル達が取れる選択しは引き返すか十八階層まで進むかどちらかだ。ここまで、正規ルートで進んできて何もないってことは十八階層に向かった可能性が高いな」
「私もレオンの意見賛成です。一度、冒険を経験したクラネルさんなら進む選択をすると思います」
どうやら、リューも俺と同じ考えのようだ。ここはベルを信じて俺たちも進むしかないだろう。
「分かりました。念のためこのまま正規ルートをとおり十八階層を目指しましょう」
パーティーの方針が決まりまた前と歩み出す。ベル、絶対途中で諦めたりするんじゃないぞ‼︎