俺がギルド職員をするのは間違っているだろうか 作:RINTO
楽しんでもらえれば嬉しいです
また今日も新しい一日が始まる。冒険者は装備一式を携えて迷宮の入り口に蓋をするように建てられているバベルへと向かって足を進める。
そんなことを言ってら俺はいつもと同じように社畜のごとく職場であるギルドへ向かうのだ。
そんな呑気なことを考えながら大通りを歩いていると後ろから人が突っ込んできた。
「あっ、すいません。前をしっかり見てなくて」
「気にしなくていいぞ。俺もフラフラしてたからお互い様だ」
ふと、振り返ってぶつかってきたのを確認すると俺からしたらまだまだ幼いヒューマンの男の子だった。
それにしても、白髪にルビーのような紅い目か。一度見たらまず見間違えることはなさそうな特徴のあるやつだ。まぁ、俺もヒューマンでは珍しい蒼色の目をしているので人のことを言えないが。
「僕、用事があるので失礼しますね」
「おう、ダンジョン攻略頑張れよ」
「はい‼︎」
装備はざっと見て本当に冒険者なりたてって感じだな。主な武器はナイフってとこか。いかにも毎日ダンジョンを攻略するのが楽しくて楽しくてたまらないって顔をしている。
ダンジョンの本当の怖さを知らないのだから当然だが。
バベルに向かって走って行く白髪の少年の後ろ姿を見ながらそんなことを思っていた。
ってか時間ヤバくないか。このままじゃ絶対遅刻してしまう。これまで無遅刻、無欠勤の記録を止めるわけにはいかない。それに、遅刻したらロイマンの野郎が絶対面倒だし遅れるわけにはいかない。
普通に走っても間に合いそうにないな。まぁ、本気を出して走れば余裕なのだが周りに被害がねって、こんな事を考えている場合じゃない。とりあえず少し飛ばせば間に合うだろう。疲れるから嫌なんだけどね……
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「おはよう、エイナ」
「あ、おはよう。今日はいつもより遅いね。それに出勤時間ギリギリだし何かあった?」
「ちょっとな」
「それにしてもレオン、昨日はありがとね。ご飯も奢ってもらった上に家まで送ってくれて」
「別にそんな当然のことだろ。一応俺のが人生の先輩だしなw」
あぁ、マズイ。こんな話をしてたら絶対あいつが茶化しにくるだろ。なんとか話を切り上げないと面倒なことになる。
「そんなことより早く仕事にい……」
「おやおやお二人さん。昨日はどうしたって? お姉さんに詳しく教えてみなさい」
遅かったかぁ……
彼女の名前はミイシャ・フロット。エイナの親友であり同僚である。こうゆう話が彼女の好物である。エイナとは対照的に仕事に手を抜きがちである。
俺は手抜きとか一切してないから。大事なことだからもう一度言うぞ。手抜きとかしてないからな。俺は嘘つかない。
「ミイシャ!? 言っとくけどそういうのじゃないから。ごはんご馳走になって帰りに家まで送ってもらっただけだから」
あ、この人昨日あったこと洗いざらい全部話しちゃったよ。もう誤魔化しようが無いじゃないですか。どうしてくれるエイナさん。
「ははーん、そうゆうことですか。レオン君も隅に置けないねぇ」
エイナの方を見ると自分がやってしまったと自覚したのだろう。顔を真っ赤にしている。意外と天然なのね。あんなに仕事が出来るから完璧な人間かと感心してた俺の感動を返して。
「それでエイナ、昨日どうだったのよ?ねぇ、ねぇってば」
「からかうのは自由だけどそのまま続けるようなら、次から仕事手伝ってあげないからね」
こ、怖…… 急に雰囲気変わりすぎでしょ。この人を怒らせないようにしよう。そう心に決めた。
ふと、横に目を向けるとミイシャさんがうな垂れていた。いや、手伝ってもらわなくて済むように仕事したらいいじゃないですか。それで全部解決しますよね……
「自分仕事詰まってるんで先に行きますね」
こうゆう時はさっさつと撤退するのが吉だ。俗に言う戦略的撤退というやつだ。はい、そこせこいとか言わない。
「あ、レオン君お昼にでも昨日の話を……」
「ミイシャ?」
「あ、はい。すいません、何もないです。ゴメンなさい」
エイナさん相変わらず怖すぎだって。その顔は笑ってるけど絶対怒ってるよね。だって、目が笑ってないもの。
そんな二人を置いといてそそくさと午前の仕事をするためにカウンターに向かった。
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昨日頑張ったおかげもあり今日の分の仕事は定時までに全て終わらせることが出来た。これでゆっくり夜を過ごすことができる。
あ、これフラグじゃないからね。そこらへんよろしく頼むよ。うん、割とマジで……
バベルの向こうに落ちながら綺麗なオレンジ色に輝く夕焼けがあった。これを見たら今日一日の仕事の疲れも吹き飛ぶってもんだ。
「エイナさあああああああんっっ‼︎」
なんか夕日を背に何か真っ赤なものが叫びながらこっちに向かって走ってくる人影があるなぁ。
「アイズ・ヴァレンシュタインさんのことを教えてくださああああいっっ‼︎」
「べ、ベル君? ってレオン危ない‼︎」
「へっ?」
その直後、ピストルの弾のごとく走りの勢いのまま俺に突っ込んできた。ここで、避けると少年がどこに突っ込むかもわからないので衝撃を受け止めながらその場に転ぶ。
「す、すいません」
「いや、大丈夫だよ。俺もボーっとしてたから」
ふと、ぶつかってきた子を見るとなんということだろうか今朝俺にぶつかってきた少年だった。
「あ、あなたは今朝の。一日に二回もぶつかってしまって本当にすいませんでした」
「まぁ、気にするなよ。それにしても、お前返り血まみれじゃないかよ。シャワー貸してやるかこっちについて来いよ」
「あ、ありがとうございます……」
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「それでベル君、どうして全身血まみれになってたの?」
「そ、それはですねぇ……」
今はシャワー浴び終えて、その少年、ベル・クラネルに事情を聞いているところだ。
彼が言ったことを簡潔にまとめると次のようだ。
・普段狩りをしている二階層から五階層まで下りてみたこと
・足を踏み入れたとたんにいるはずのないミノタウロスに追いかけ回されたこと
・追い詰められたところを【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに助けられたこと
話を聞いていて呆れてしまった。まず、いきなり五層に下りらなんてのは自殺行為だ。ミノタウロスに出くわさなくてもとてつもなく危険なのだ。駆け出しの頃の好奇心や慢心が数多くの冒険者の命を落とす原因となっている。
この少年も今回は運が良かったまで次は恐らくないだろう。ここはひとつ釘を刺しておかなければとそう思った時だった。
「ベル君いつも言ってるよね。『冒険者は冒険しちゃいけない』って。今回みたいなことは二度としちゃダメだからね。いい?」
「はい… すいません、エイナさん」
『冒険者は冒険しちゃいけない』エイナが言ったこの言葉は一見矛盾しているかのように思えるだろう。冒険者は冒険するのが仕事だろと。だが、この言葉の本当の意味は違う。冒険者だからこそ常に安全第一でいかなければ足元をすくわれるということだ。
安全を常に確保していかなければ簡単に命を落としかねない。ダンジョンとはそれほど恐ろしく無慈悲なものなのだ。
言いたかったことを全てエイナに言われてしまった俺はすることがなくなってしまったのでそそくさと帰ることにした。元々残業なしで帰る予定だったのだ。これ以上時間を浪費させるわけにはいかない。
「レオン、もう帰るの?」
「あぁ。仕事も全部片付けたからな。それじゃあ、お先な〜」
「うん、分かった。お疲れ様〜」
エイナに軽く挨拶をしてその場を後にした。
あの少年がこれからどうなっていくかはエイナのアドバイス次第、いや本人次第だ。
長く活躍出来るかあっさりダンジョンの餌食になるか。どうなるかは神でも分からないだろう。
まぁ、そんなことより早く帰って、ご飯食べてすぐ寝よう。今必要なのは睡眠だ。そう、早く帰って寝よう。
どうせ明日も厄介な冒険者がギルドにやってくるのだから今のうちに体を休ませておかないとそのうち持たなくなってしまう。
そうだ、今日は夕飯作るの面倒だし何か食べてから帰ろう。そう決めた俺はバベルへ向かうメイン通りへと足を向け最近行きつけになりかかっている「豊饒の女主人」へと向かった。今日も冒険を終えた冒険者で賑わっていることだろう。
ここから少し書き溜めに入るので少し投稿ペース落とします。
過去に毎日投稿やってたら一カ月ほどで燃え尽きたのでww
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