俺がギルド職員をするのは間違っているだろうか 作:RINTO
俺はいつものようにギルドの忙しい仕事をこなしひと段落していた。時刻は17時過ぎ。もうすぐ辺りも暗くなり始める時間に差し掛かっていた。そろそろ帰りの支度をして家にかえるとするかな。そんな時だった。
「レオン、ちょっと来て欲しいんだけど」
「もう、制服から着替えちゃったんだけど」
「話はベル君と三人だから私服でもいいよ。とにかくはやく来てね。一番手前の面談ボックスにいるから」
そう言ってエイナは一足先に戻って言ってしまった。逃げるための言い訳をする時間すら与えられなかった…… このまま帰る訳にはいかなくなってしまった。
まぁ、ベルに関してのことだししょうがないな。そう割り切っておこう。
「よっ久しぶりでもないな。昨日ぶりかベル」
「昨日はありがとうございました」
「もうまた二人にしか分からないこと話して。危ないことしてないでしょうねぇ」
「あ、当たり前だろ。なぁ、ベル?」
「も、もちろんです。本当ですよエイナさん」
ダメだな。俺やベルじゃエイナに対して絶対隠し事など出来る訳ない。だってベル思いっきり顔に出ちゃってるし。てことは俺もそんな感じなのか。全くどうしたものかな……
「まぁ、今はいいや。それでレオンを呼んだのはベル君が今日他のファミリアのサポーターと一緒にダンジョンに潜ったっていうから」
「他のファミリアのサポーターねぇ」
基本的にはサポーターなりパーティーは同じファミリアで組むことが一般的である。
それぞれのファミリアの派閥争いなどもあるため好まれるものではないのだ。それはサポーターもしかりである。まぁ、友好的な関係が組めることもあるにはあるが。
「ベル、それでそのサポーターはどこのファミリアに所属してるんだ?」
「えっと、確かソーマファミリアだったと思います」
「ソーマファミリアねぇ。エイナはどう思う?」
「正直、大きく賛成も反対もできないかな」
「俺も同じ考えだ」
ソーマファミリアからはあまりいい噂を聞かないのだ。むしろ黒い噂を聞く方が多いのだ。あくまで噂のためそれだけで否定することはできないのだが。
「エイナ、ソーマファミリアについて何か知ってるか?」
「うーん、直接担当受け持ってるわけじゃないからなんとも言えないけど何だか必死なのよ。お金を稼ぐことに対して」
お金にそれだけ執着する理由か。何か欲しくて欲しくて堪らないものでもあるのだろうか。確かに換金所で押し問答をしているソーマファミリアの団員を偶に見かけるのだ。エイナが言っているのはおそらくその事だろう。
これだけじゃそのサポーターが黒か白か分からないし、どっちにしろファミリアにも何らかの問題がありそうだ。少し調べてみるしかないか。面倒だけど。
「俺は別にサポーターをつけることは反対じゃない。むしろソロのベルには必要だとも思う。エイナもそうだろ?」
「うん」
「だからとりあえずはベルの判断に任せる。そのままパーティーを組むのも、組まないのも。こっちはこっちで少し調べてみるから。それでいいか?」
「はい。よろしくお願いします」
「エイナも手伝ってくれるよな?」
「もちろん手伝うよ」
その辺で話を切り上げて談話ボックスを出た。さて、調べると言ってはみたものの直接ホームに行く訳にいかないし。団員に聞いたところで教えてくれる訳ないしな。
「なんか意外だな。レオンが自分から誰かの為に動こうとしているなんて」
「そうか?」
「うん、ちょっと前なら考えられなかったかな。少しずつでも変わっていけてるよ」
「なら良かったよ。ありがとな」
「こっちだって感謝してるよ」
エイナとそんな話をしながらふとギルドを後にしようとするベルの後ろ姿を見て何か違和感を感じた。何か普段とはどこが違う。何かが足りないようなってヘスティア様から貰ったナイフがなくないか?
「おい、ベル」
帰ろうとしているベルを呼び止める。一応確認しておかないとな。
「どうしたんです、レオンさん」
「お前、ヘスティア様から貰ったあの黒いナイフはどうした?」
「それならここに」
そうやってベルは腰に手を回す。しかし、そこには鞘だけで大事なナイフの刀身の方が無かった。一瞬でベルの顔が青ざめていった。それを見てエイナも落胆の表情を浮かべていた。
「落としたあぁぁぁぁぁぁ⁈」
「ベル、まず落ち着けって。ギルドまで来た道を探してこい。俺たちも手分けして探してみるから」
「は、はい。よろしくお願いします……」
ベル滅茶滅茶凹んでるし…… まぁしょうがないか。それにしてもこりゃマズイことになったなぁ。あのナイフはこれからベルが冒険者として生き抜いて行くために必ず必要になるものだろう。それをあのベルが簡単に落とす訳がない。だとしたら考えられるのは一つだけだろうな。
「エイナはこのギルド周辺を頼む。ベルは来た道を探してこい。俺は他を探すから」
「分かった」
「分かりました」
さて、こうゆう時の相手の行動パターンは決まりきってる。ただ、そこをしらみ潰しに探せば手がかりくらい掴めるだろう。
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あぁは言ったはいいがなかなか見つからないなぁ。バベルからギルドまでの裏路地をしらみ潰しに探しながら悪態をついていた。
そろそろ探す場所変えようと思ったその時だった。
「【
この声はどこかで聞いたことがあったような。それに
とにかくその場に駆けつけなくては。
駆けつけた所には豊饒な女主人で働いてると思われる従業員二人と一人のパルゥムが相対していた。あぁ、聞いたことがあると思ったらこの間会計した時の確かリュー・リオンだったか。
って持ってるリンゴをパルゥムに投げつけたし。てか、どんな力で投げたら相手の手に当てたリンゴが砕け散るんだよ。まぁそのおかげでナイフを落としたんだけど、一体何者なんだよあの人はマジで。
あ、ビビってあのパルゥム、ナイフを諦めて逃げやがった。まぁ、今から追いかけても追いつかないだろうしとりあえずあの二人に話を聞くか。
「あのーすいません」
「どちら様ですか?」
もう一人のウエイトレスの女性がこちら不思議がって見ている。確かにこれだけ見たら俺ただの怪しいやつだよな。いや、俺ってそんなに怪しく見えるかなぁ……
「あなたはクリフさんではないですか。いつもうちの店を利用して貰ってありがとうござます」
「ああ、いえこちらこそ。それよりそのナイフ」
「はい、私の知り合いが持っていた物で間違いありません」
「良かった、ベルのナイフが見つかって」
「クリフさんはクラネルさんの知り合いだったんですか?」
自分とベルの関係性を簡単に説明するとリューさんも素直に納得してくれたようだ。
「このナイフは恐らく落としたのではなく」
「えぇ、リューさんの考えてる通りだと思います。自分に少し考えがあるので任せてもらえませんかね」
「わかりました。あなたに全て任せましょう。クラネルさんのことをお願いします」
「了解しました」
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「おーい、ベル。ナイフ見つけたぞー」
「あ、レオンさん、って本当だ。ありがとうござます。どこにあったんですか?」
「意外にもギルドの近くに落ちてたぞ。誰かに拾われなくてよかったよ。もう二度と落とすなよ」
「はい。気をつけます」
まぁ、お前が本当に気をつけなきゃいけないのは身の回りのやつだけどな。そんなことを考えているとエイナがこっちに向かって走って来ていた。
「お、エイナか。無事ナイフ見つかったぞ」
「そう、よかった。ベル君、もう二度と落としたりしちゃダメだからね」
「は、はい」
エイナにも釘をさされてなんだか少し可哀想ではあるな。まぁ、この事はエイナには話しておいた方が良さそうだな。
ベルを見送った後にエイナに声をかける。
「エイナ、この後時間あるか?大事な話がある」
「わかった。付き合うよ」
真剣な雰囲気を察してくれたのだろう。快く提案に乗ってくれた。
「まぁ、ここでも話すのはなんだし場所を変えよう」
「うん」
それから俺たちは念のためにギルドに戻り空いている面談ボックスに入って話を始めた。
「それで話ってのは何?」
「ベルは恐らくナイフを落としてなんかいない。誰かに盗まれたんだよ」
「それって本当? なら何でベル君に伝えなかったのよ」
まぁ、普通に考えてそうゆう反応をするわな。ベルのことを心配しているなら尚更だ。
「最後まで話を聞けって」
「ご、ごめん」
「俺はサポーターがナイフ盗んだと思ってる。ベルのナイフはヘファイストスファミリアのものだからな。売ればかなりの金になる。ソーマファミリアの団員たちの行動とも話が噛み合うしな」
「だったら尚更ベル君本当のこと言わなかったの?」
「このことにはソーマファミリアの現状も絡んでるはずなんだ。その事を調べたい。サポーターに関してはベルに全て任せてみたいんだ。信じるのか見限るのかを。これからのためにもな」
俺の話を聞いてエイナの顔は曇っていた。それもそうだろう。大事な担当冒険者が騙されてるのにそれを黙って見ておけと言われたのだから。それでも、エイナから返ってきた言葉は意外だった。
「分かった。私はそのレオンの考えを信じる。でもそのかわりソーマファミリアのことは絶対に調べるからね」
「あぁ、俺もそのつもりだったから。手伝ってくれよ」
「それはこっちの台詞だよ」
よくもまぁこんな俺を信じてくれるよな、エイナは。出会ったときがあんなんだったってのに
まぁ、何にせよソーマファミリアについて調べるために俺も人肌脱ぎますかね。ベル、お前は自分の目でサポーターを見極めろよ。こっちは手助けしかしてやれないんだからな。
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