トールさんの希望通りの最後を迎える為、円卓の間を出ることにした。部屋を出る際に彼は、『最後ぐらい使ってやれよ、それはあんたの物だ』と言ってギルドの象徴たるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを指さした。
確かに、最後ぐらい持っていってもバチは当たらないなと思いスタッフを手に取って部屋を出た。(最後と言う言葉に、胸が痛んだが・・・・・)
玉座の間に向かう中、途中に控えていたNPCであるセバス・チャンや戦闘メイドプレアデス、はたまた一般メイドまで引き連れて思ったより大所帯の移動となった。
玉座の間に着き、私はNPC達に待機を命じて玉座についた。トールさんは私の右後ろに立ち、如何にも悪の大幹部風のポジショニングだ。
ふと玉座の横に控えるNPC・・・・・純白の衣装に身を包んだ、悪魔風美女であるアルベドの設定が気になった。コンソールを開き、スクロールしていく。それを見ていたトールさんも興味が出たのか、コンソール内の文字を読める位置に移動し2人でそれを眺めた。
「なっがーーーーーーーーーーー‼」
それがこのアルベドの設定への第1の感想だった。長い文面を飛ばし、ようやくたどり着いた設定の最後に書かれていた文字で2人の時間が停止した。
《ちなみにビッチである》
「・・え・・・・えっ、何これ?」
この長大な設定を書いたのが設定魔であるタブラ・スマラグディナであることを二人は思いだし、『あの人ギャップ萌えだったっけか』とトールさんが呟いた。
「それにしても、ビッチはあんまりじゃないか?」
私は入力用コンソール出して《ちなみにビッチである》という文を消し、新たに《ギルメンを敬愛してる》と入力した。
『まぁ妥当な所だな、流石はモモンガさんだ。』
トールさんにもお褒めの言葉を貰ったが、もし一人だったら「最後くらい茶目っ気出してもいいじゃないですか!」とかなんとかいって《モモンガを愛している》なんて入力していたかもしれない。
【トールは知っていたが、このアルベドはタブラさんからモモンガさんへの愛の刺客であった。モモンガの好みを徹底的にリサーチして、彼の好みを完璧に実現。モモンガの妃として役割を担った人材である。彼が誘惑に耐えられたのは、トールが居た為に過ぎなかった。】
トールさんの視線があったから誘惑に耐えらたが、自分一人だったらと思うとあぶなかったと密かに思った。そんな事をしていると、時計の時刻が無情にも最後の瞬間を刻もうとしていた。
23:59:45
「最後にあのセリフで締めましょうよ・・トールさん」
彼も異存はないらしく『そうだなモモンガさん』と返して来た。
「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ‼」
『アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ‼』
そのセリフと同時に時計の時刻が00:00を表示し、秒表示も1・2・3・4と時を刻んでいた。
なぜだ・・・・・何が起こっている?
サーバーダウンの延期か・・・・?
そう漏らしたのは、どちらが先だったのだろうか。
そんな疑問ですら、吹き飛ぶ出来事が起きた。
「あのモモンガ様? トール様? 私は何か失礼な事でも致しましたでしょうか?」
私の眼前には、《心配そうに》こちらに自分を見上げるアルベドの姿がある。
なんで表情が浮かんでいるんだ?なんで目が潤んでいる?極めつけになんで口が動いている?
なんでNPCが心配している?ほわい?ホワイ?why?・・・・わけわんんねー
私が思わず叫び出しそうになった瞬間にすっと、気持ちが落ち着いていくのを感じた。
何事もなかった様にすぐに思考がクリアになっていく。
「なんでもないぞアルベドよ。少しばかり違和感を感じてな。トールさんはどうですか?」
『俺もモモンガさんと同意見だ。まずい空気を感じる。まさかあの時と同じか・・・・』
トールさんが、思考の海へと沈んで行く。
アルベドが申し訳なさそうに、私達に向かって語りかけてきた。
「・・・・誠に遺憾ながら、私には御二人の感じられた違和感というモノに気付く事が出来ません。至高の御方々のご期待にお応え出来ない私めをお許し下さい。払拭の機会を頂ければ、このアルベド、全身全霊を持って事に当たらせて頂きます。なんなりとご命令下さい」
床に頭を擦り付け、その様に発言するアルベドであった。
その後方で、玉座の下で控えていた他のNPC達も同様の姿勢で伏している。
あまりの光景に、私もトールさんも絶句するしかなかった。