Fate/cross silent   作:ファルクラム

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第11話「暗殺者VS弓兵」 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロが・・・・・・逃げた?」

 

 キョトンとした顔で尋ねる響。

 

 その目の前には、深刻な顔をして俯いている、姉のイリヤ、親友の美遊、そして凛、ルヴィアの姿もあった。

 

 ここはエーデルフェルト邸の応接室。

 

 イリヤが自宅の裏庭で魔法の練習していた際に自前テロを起こし、給湯器が破壊された衛宮邸は、修理するまで風呂も湯沸かし器も使えなくなってしまった。

 

 そこで、家族ぐるみで付き合いのある、お向かいのエーデルフェルト邸に風呂を借りに来たわけである。

 

 そして、事件は起きた。

 

 男性陣と女性陣で分かれて風呂に入ったのだが、その際、クロが大浴場の壁を破壊して逃げ出してしまったと言う。

 

「何があったの?」

 

 話を聞いた響は、ややげんなりした顔で尋ねる。

 

 正直、あれだけ苦労して捕まえたクロにあっさりと逃げられた事に疲労感を覚えずにいられなかった。

 

「判んないよ。急に怒り出しちゃって・・・・・・・・・・・・」

 

 イリヤも疲れたように答える。

 

 実際、直前までは多少のぎくしゃくはあった物の、和気あいあいとしたものだった。

 

 だが、会話が進むうちに、突如として激昂したクロ。

 

 そのまま彼女は浴室の壁を破壊して逃げ出してしまったと言う。

 

「・・・・・・・・・・・・厄介」

「確かに。また捕まえなくちゃいけないとなるとね・・・・・・」

 

 凛が頭を抱えながら、響に頷きを返す。

 

 初めに捕まえたときでさえ全員で掛かり、罠に罠を重ねてようやく成功したのだ。

 

 あれをまたやらなくてはならないのかと思うと、気が滅入ってきてしまう。

 

 そんな中、

 

《ふ~む・・・・・・・・・・・・》

「どうしたのルビー?」

 

 悩むような声を上げたルビーに、イリヤは怪訝な面持ちで尋ねる。

 

 対して、ルビーはイリヤに向き直って言った。

 

《何となくですけど私、クロさんが怒った理由について心当たりがあるんですよね~》

「え?」

「どういう意味ですの?」

 

 一同が視線を向ける中、ルビーは語りだした。

 

《あの時、望みを尋ねた凛さんに対し、イリヤさんはこう答えました。「元の生活に戻りたい」と》

 

 確かに。

 

 あの時の事をイリヤは思い出す。

 

 凛としては、今回のカード収集の中心にいるのは、他ならぬイリヤであると感じていた。

 

 そもそも、凛にしろルヴィアにしろ、カードを持ち帰る事が目的であり、他の事は全て些事に過ぎない。

 

 ならば、方針自体はイリヤの意思に沿う形で進めようと思ったのだ。

 

 これについてはルヴィアも同意見であり、必然的に今後の命運はイリヤに託されることとなった。

 

 そこで、イリヤが答えたのが、先ほどのルビーが言ったとおりの言葉だったのである。

 

《拡大解釈かもしれませんが、聞きようによっては「カードにまつわる全ての事を否定したい」と言う風にも聞こえます》

「それはッ・・・・・・・・・・・・」

 

 それはつまり、クロを、

 

 否

 

 カード回収に関わるようになってから出会った全員、

 

 ルビー、美遊、サファイア、凛、ルヴィア。

 

 この場にいる響以外の全員の存在を、否定したに等しかった。

 

 それに対し、イリヤは黙り込む。

 

 正直、そう言った気持ちが全く無かった、とは言い切れない部分もある。

 

 まだ関わって日が浅いイリヤや響にはピンとこない面もあるが、魔術の世界は本来、血みどろである。

 

 己の目指すものの為に他の全てを排し、時に、積み上げられた屍の山を蹴散らして進まなければならない時もある。

 

 あるいはイリヤは、幼い心でそれを感じ取っているのかもしれない。

 

 だからこそイリヤは、自分の中での魔術的世界の象徴とも言うべき、クロを本能的に遠ざけようとしたのかもしれない。

 

「ルビー、イリヤはそんなつもりで言ったんじゃないと思う」

《もちろんです。そして、それはこの場にいるみんなが判っている。しかし、クロさんの立場からすれば、そう捉えられてもおかしくは無い、と言う事ですよ》

 

 響の言葉を肯定しつつ、しかしルビーはクロの心情をそう分析した。

 

 確かに、自分自身の存在を否定するようなことを言われれば、激昂するのも頷ける。

 

 ルビーの考えは、あながち間違いとも言い切れなかった。

 

「ともかくクロの考えがどうあれ、彼女を野放しにできない事には変わりない訳ですから、早急に見つけて連れ戻す必要がありますわ」

 

 ルヴィアの言葉に、頷く一同。

 

 とは言え、クロは間抜けではない。先と同じような手が通じるとは思えない事を考えると、再捕縛には想像以上の手間がかかるであろうことは間違いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その翌日。

 

 響はイリヤよりも先に家を出ると、真っすぐに学校へ来ていた。

 

 まだ早い時間であるせいか、校内に人の気配は少なく、静寂の中に包まれていた。

 

 響は今日、日直である為、少し早めに登校したのだ。

 

 初夏とは言え、朝はまだ少し涼しい。

 

 ひんやりした空気の中、校門をくぐり、下足棚へと向かう。

 

 正直、クロの事は気になる。

 

 もう一度、あの少女と戦えと言うのであれば無論、躊躇する気は無いが、しかし勝てるか? と聞かれれば首をかしげざるを得ない。

 

 そもそもクロの存在は、響達がこれまで戦ってきた黒化英霊達とは明らかに異なる。

 

 意思があり、会話もする事ができる。

 

 それと共に、戦闘には柔軟性が感じられる。

 

 ただ本能の赴くままに襲い掛かって来た黒化英霊とは、明らかに一線を画する存在である。

 

 それに、

 

 つい先日、学校に姿を現したルリア達の事も気になる。

 

 ここ数日、表立っての襲撃は無いが、それが却って不気味な感もあった。

 

 とは言え、やはり目下の問題はクロの方だろう。

 

 いったい、どこに消えたと言うのか?

 

「・・・・・・ん?」

 

 下駄箱の蓋を開けたとき、中から出てきた紙切れに気付き、響は声を上げる。

 

 何となく覚えのあるシチュエーションだが、響は足元に落ちた紙を拾い、書かれた文章に目を通す。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 一読する。

 

 やがて、

 

 響は無言のまま下駄箱を閉じると、たった今、入って来たばかりの昇降口の方へと足を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 こんな時間に、小学生が1人で学区外を歩いていれば、それだけで怪しまれるものである。

 

 その為、響はなるべく裏路地を通り、人目を避けながら歩いた。

 

 国道を渡り、林に入るころには、かすかな潮の匂いが漂ってきていた。

 

 聞こえる海鳴り。

 

 やがて視界が開け、陽光に照らされて輝く海が目の前に出現した。

 

 打ち寄せる波を目の前にして、響は足を止める。

 

「・・・・・・・・・・・・来た」

 

 短く告げられる言葉。

 

 対して、

 

「ようこそ。ちゃんと1人できたみたいね。偉い偉い」

 

 気配が無いところから、突然聞こえる少女の声。

 

 顔を上げれば、姉と全く同じ顔をした褐色肌の少女が、海岸の岩の上に立ってこちらを見つめていた。

 

 既にアーチャーの英霊化を行い、戦闘準備万端のクロ。

 

 対して、響は無言のまま、手にした紙を放る。

 

 下駄箱の中に入っていた紙には、クロの手書きと思われる地図と、「1人で来て」と言うメッセージが添えられていた。

 

 そして実際に指定された場所がここ、と言う訳である。

 

「呼び出すのは美遊とどっちにしようか迷ったんだけど、あんたの方が面白そうだったから」

 

 そう言って肩を竦めるクロに対し、響は鋭い眼差しで言い募る。

 

「ルヴィアの家に帰って」

 

 いつも通り単刀直入。

 

 と言うより、最小限の言葉で用件だけを一方的に伝える響。

 

 対してクロは、そんな響に鼻白んだように肩を竦める。

 

「やれやれ、相変わらず愛想が無いわね。そんなんじゃモテないわよ」

「余計なお世話」

 

 クロの軽口に、素っ気なく返す響。

 

 だが次の瞬間、

 

「まあまあ、結論を急ぐ事は無いわけだし落ち着いて、座って話しましょう」

 

 突然、肩を引かれたかと思うと、そのまま背後に置かれた椅子に座らされた。

 

「なッ!?」

 

 驚く響。

 

 いつの間に、クロは背後に回ったのか?

 

 そしていつの間に、椅子なんて用意したのか?

 

 そう言えば今までも、一瞬にして場所を移動したり、何もないところから剣を作り出したりしていた。

 

「・・・・・・・・・・・・ワープ、と・・・・・・あとは何?」

「・・・・・・20点。赤点決定」

 

 響の回答に、手厳しい評価のクロ。

 

 それはそれとして、響は警戒するように身構えながら、問いかける。

 

「まだ、イリヤを狙うの?」

「ま、当然ね」

 

 いっそ清々しいと思えるくらいあっさりと答えるクロ。

 

「あの子が、わたし達の存在を否定しようと言うなら、仕方ないでしょ。わたしにはわたしの存在意義って物がある訳だし」

「やり合う前に話し合うべき」

 

 対して響は、そんなクロの言葉を否定する。

 

 そもそも響からすれば、クロの行動は前提からしておかしい。

 

 クロがイリヤに何らかの含みがある事は、これまでの行動からも明らかである。

 

 しかし、それならそれで、まずは話し合うべきだろう。

 

 クロのように、いきなり殺しにかかるのは、響からすれば異質以外に何物でもなかった。

 

「そうね、じゃあ、たとえ話で説明しましょうか」

 

 そんな響に、クロは諭すように言った。

 

「一つのシュークリームを、響とイリヤが取り合っています。シュークリームは分けられません。さあ響、あんたならどうする?」

 

 問いかけるクロ。

 

 対して、響は迷いなく答えた。

 

「真ん中から2つに割って、下を食べて、上をイリヤにあげる」

「・・・・・・分けられないって言ってるでしょ。あと何気に自分の方が大きいし」

 

 食い意地張った回答に、呆れ気味のクロ。

 

 そこで、響は改めて考える。

 

「ジャンケン?」

「・・・・・・ま、辛うじて正解って事にしてあげる」

 

 やれやれとばかりに肩を竦めるクロ。

 

「そう。つまり、分けられない物があるなら、あとは戦って奪い合うしかない。そして、わたしとイリヤが争っているのは、そういう『分けられない物』なのよ」

 

 戦いは避けられない。

 

 イリヤがイリヤである限り、

 

 そしてクロがクロであり続ける限り、

 

 2人が戦う事は宿命であると言って良い。

 

「・・・・・・・・・・・・どうしても?」

「くどいわよ」

 

 尚も言い募る響に対し、クロは切り捨てるように言うと、両手に黒白の双剣を生み出して構える。

 

 左手に持った黒剣が干将。

 

 右手に持った白剣が莫邪。

 

 その昔、中華が春秋戦国と呼ばれていた時代。

 

 名工として知られた干将の為、妻の莫邪が焔を灯して作り上げた名刀。

 

 其は二刀にして一対の、別ち難い夫婦剣。

 

 その刃が、真っすぐに響へと向けられた。

 

「イリヤがあくまでわたしの存在を否定する気なら、わたしはあの子を殺す事に、何のためらいも無いわ!!」

 

 言い放つと同時に、地を蹴って斬りかかるクロ。

 

 黒白の切っ先が、真っすぐに響へと迫る。

 

 対して、

 

 響はその軌跡を真っ向から見据える。

 

 そして、

 

 クロが剣を振り翳した。

 

 次の瞬間、

 

「・・・・・・・・・・・・夢幻召喚(インストール)

 

 低く囁かれる響の声。

 

 巻き起こる閃光と衝撃。

 

 包まれた少年の姿が変貌する。

 

 髪は伸びて後頭部で結ばれ、穂群原小の制服姿は黒衣の着物と短パン姿に。

 

 最後にマフラーが口元に巻かれ、手には鞘に収まった日本刀が握られる。

 

 鞘走る銀閃。

 

 その一撃が、クロの剣を弾く。

 

 蹈鞴を踏むように後退するクロ。

 

 対して、英霊化した響は、刀の切っ先を真っすぐにクロへと向けて言う。

 

「クロがどうしてもイリヤを殺すなら、排除する」

「・・・・・・ふうん」

 

 思い切った響の回答に、クロは感心したように頷きを返す。

 

 どうやら、双方ともに引く気はない、と言う事らしい。

 

 次の瞬間、

 

 2騎の英霊は、真っ向からぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先制したのは響だった。

 

 姿が霞むほどの高速でクロに接近。手にした刀を袈裟懸けに繰り出す。

 

 対してクロも負けていない。

 

 響が繰り出した攻撃を干将で防ぐと同時に、動きを止めた響に対して莫邪を横なぎに繰り出す。

 

「ッ!!」

 

 鋭く繰り出される、クロの攻撃。

 

 対して、響はとっさに後退して回避する。

 

 だが、

 

「逃がさな、い!!」

 

 すかさず追撃するクロ。

 

 逃げる響に対し、距離を詰めて双剣を繰り出すクロ。

 

 莫邪を右から、干将を左から切り上げるように繰り出す。

 

 左右、別々の軌跡を描いて迫る刃。

 

 対する響は、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 自身に迫る刃を見据え、響は頭上に大きく跳躍した。

 

「クッ!?」

 

 舌打ちするクロ。

 

 見上げる視線の先では、

 

 刀を大上段に振りかぶった響の姿がある。

 

 降下と同時に、刀を振り下ろす響。

 

 しかし、その刃がクロを捉える事は無い。

 

 その前にクロは、後退する事で響の攻撃から逃れていたのだ。

 

「まだッ!!」

 

 追撃しようとする響。

 

 だが、

 

 対抗するように、クロは腕を一閃する。

 

 同時に、少女の左右を囲む虚空から、10本近い刃が出現した。

 

 それぞれ形状の違う剣。

 

 その切っ先が、一斉に響へと放たれた。

 

 自身に飛んでくる刃を、真っ向から見据える響。

 

 その切っ先が少年を捉えようとした。

 

 次の瞬間、

 

 クロの視界から、響は霞のように消え去った。

 

 物理的に消えたのではない。

 

 となると、

 

「速いッ!?」

 

 とっさに気配を探るクロ。

 

 その死角から、

 

 刃が突き込まれる。

 

「おっと」

 

 とっさに、軽い調子で回避すると、距離を置いて双剣を構え直す。

 

 直ちに追撃を掛ける響。

 

「音も無く、風のように動き、死角から奇襲を掛ける」

 

 向かってくる響を見ながら、クロは呟くように言う。

 

「まさしく暗殺者(アサシン)の技ね」

 

 繰り出された響の攻撃を剣で弾きながら、クロは次の一手を模索する。

 

 成程、まだ完全には使いこなせていないようだが、響の能力はあれでかなり厄介であることは判った。

 

 それを踏まえた上で、クロは戦略を練る。

 

「よけれるもんなら・・・・・・・・・・・・」

 

 言いながら、両手に剣を構えるクロ。

 

 ただし、今度は右手に3本、左手にも3本。

 

 合計6本の剣が、少女の手に握られている。

 

 いったい、どうするつもりなのか?

 

 息を呑んで動きを止めた響。

 

 次の瞬間、

 

「よけてみなさい!!」

 

 言い放つと同時に、6本の剣を投擲するクロ。

 

 放たれた白黒3対の干将莫邪は、回転しながら空中を浮遊する。

 

 互いに惹かれ合う性質を持った干将莫邪。

 

 その能力を最大限に利用し、投擲と同時に全方位から敵に襲い掛かり、刃を重ね当てる必殺技。

 

 さながら鶴が大空に羽ばたく姿に重ね、「鶴翼三連」と名付けられた絶技。

 

 その強烈な攻撃が、響に襲い掛かる。

 

 対して逃げ場は、

 

 無いッ

 

「クッ!?」

 

 舌打ちと同時に、跳躍して逃れようとする響。

 

 だが、

 

「甘いわよ」

 

 ほくそ笑むクロ。

 

 次の瞬間、響に迫った3対の刃が、一斉に爆発を起こす。

 

「なッ!?」

 

 目を剥く響。

 

 その小さな体が、衝撃で吹き飛ばされて錐揉みする。

 

 それでも、どうにか体勢を立て直そうと、空中でバランスを持ち直す。

 

 が、

 

「甘いって言ってるでしょ」

 

 囁かれた視界の先では、弓矢を構えたクロの姿が。

 

 放たれる矢。

 

 その鏃は、空中の響へと真っすぐに飛翔する。

 

 響にはかわす術がない。

 

 そう思った次の瞬間、

 

 響は何もないはずの空中を蹴り矢を回避。そのまま地面へと降り立った。

 

「・・・・・・成程、魔力で足場を作ったのね。ちゃんと成長してるじゃない」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 感心したように告げるクロ。

 

 しかし、当の響はと言えば、それほど楽な状況ではない。

 

 特に、先ほどの爆発は危なかった。

 

 かわしたとは言え、衝撃によるダメージまでは防ぎきれなかったのだ。

 

 倒れまいとして、どうにか足を踏みしめる響。

 

 対して、明らかな優勢を確立したクロは、弓を捨てて再び干将莫邪を構える。

 

 対抗するように、刀を構える響。

 

 だが、

 

「あのさァ響。もしかして、舐めてる、わたしの事?」

「・・・・・・・・・・・・何が?」

 

 突然の物言いに、訝る響。

 

 対してクロは、呆れたようにつづける。

 

「いつまで、片手間で戦ってるつもりなのかって言ってるのよ?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 クロの物言いに、黙り込む響。

 

 対してクロは、莫邪の切っ先を向けながら言った。

 

「本気を出せないのか、出したくないのか? どっちにしても、これ以上、茶番を続ける気なら、ここらで終わらせるから」

 

 本気で殺気を放つクロ。

 

 対して響も、刀を構えながら対峙する。

 

 クロの言わんとしている事は判る。

 

 火力では明らかに、クロの方が勝っている。加えて、クロはまだ、奥の手をいくつか隠している節がある。

 

 このままでは勝てない。

 

 それは響自身、よく理解していた。

 

 ならば、

 

 こちらも切り札(ジョーカー)を切るしかなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 スッと、目を閉じる響。

 

 己の中にある魔力回路を意図的に動かす。

 

 内に眠る全ての力を引き出すべく、魔力を加速させる。

 

 そして、

 

 クロが見ている目の前で、

 

 響の姿は一変する。

 

 風になびく羽織。

 

 浅葱色に、白の段だらを染め抜いた、目にも鮮やかな文様。

 

 鋭さを増した少年の双眸が、真っ向から少女を射抜く。

 

「ふうん、ようやく本気になったってところかしら」

 

 言いながら、干将莫邪を構えるクロ。

 

 対抗するように、響もまた刀の切っ先を向けて構える。

 

 次の瞬間、

 

 両者は同時に地を蹴った。

 

 

 

 

 

第11話「暗殺者VS弓兵」 前編      終わり

 

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