Fate/cross silent   作:ファルクラム

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第20話「遥かなる記憶」

 

 

 

 

 

1

 

 

 

 

 

 この感覚は、何度目の事になるだろうか?

 

 おかげで己が夢を見ていると言う事は、すぐに理解できた。

 

 まるで、自分がその場にいると錯覚するほどリアルな夢。

 

 と、

 

 同時に、ひどく暗い雰囲気もまた、伝わって来た。

 

 唐突に、思い出す。

 

 自分は今日、ここを去らなくてはならないのだ、と言う事を。

 

 目の前には、幸せそうな顔で眠る、小さな少女。

 

 自分にとって何よりも大切な存在。

 

 彼女は今、何も知らないまま、幸福の内にいる。

 

 それで良い。

 

 この子は、自分の事など何も知らない。知らなくていい。

 

 ただこれからのこの子の人生が、幸せである事だけをひたすらに願う。

 

 多くの友達に囲まれ、愛する人たちに彩られ、幸福な人生を歩んでくれれば、それだけで幸せだった。

 

 たとえその中に、自分がいなくても。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 そっと、少女の髪をなでる。

 

 それがくすぐったかったのか、少女が眠りながら笑顔を浮かべる。

 

 できれば、このままずっと、この子の笑顔を見ていたい。

 

 しかしそれすらも、今となっては過ぎたる贅沢だった。

 

 手を放して立ち上がる。

 

 そのまま踵を返して部屋を出ていこうとする。

 

 最後にもう一度振り返り、少女の顔を見やる。

 

「・・・・・・・・・・・・さよなら」

 

 ただそれだけを告げると、

 

 今度こそ戸を閉め、部屋を出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 覚醒する。

 

 開けた視界の中で、そこがどこなのかすぐには判らなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・ふむ」

 

 どうやら、何らかの不測の事態が発生したらしい。

 

 だからこそ「自分」がこちらに出てこれたのだ。

 

 ヒビキは自分の体の具合を確かめる。

 

 全身に打撲による痛みと、極度の疲労感。

 

 戦いの後遺症は、今もヒビキ自身を苛んでいた。

 

「妙な気分だね。自分以外の事が要因で、僕自身が辛いっていうのも」

 

 苦笑しながら床を抜け出す。

 

 多少のふらつきはあるが、歩けないほどではないようだ。

 

 もっとも、相変わらず短い手足には、戸惑いを覚えずにはいられないが。

 

 改めて、周囲を見回して状況を確認する。

 

「ここは・・・・・・『彼』の部屋か」

 

 納得したように呟く。

 

 小さな勉強机に小学校の教科書。壁の棚にはゲーム機や漫画本が置かれているのが、何とも年齢相応に見えて微笑ましく感じる。

 

 それにしても、

 

 「彼」が気を失うの最後に見た光景の記憶。

 

 連れ去れる美遊。

 

 伸ばすも触れる事叶わない、「彼」の手。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 強く、拳を握りしめる。

 

 何もできなかった。

 

 連れ去れる美遊を、ただ見つめている事しかできなかった。

 

 何より、

 

 美遊を連れ去った、男の姿が、脳裏に浮かぶ。

 

 幽鬼の如き、青白い顔をした男。

 

 記憶にある姿とは、だいぶ違っている。

 

 しかし、見間違えようもない。あれは間違いなく・・・・・・

 

「まさか、あの男までこっちに来ていたなんて・・・・・・」

 

 自分の大誤算に、臍を噛む思いである。しかもそれによって最悪の事態が引き起こされたとあっては猶更だった。

 

 まさか、このような形で因縁に絡め取られるとは思っても見なかった。

 

 しかも向こうは、かなり用意周到に今日の事態を想定し準備していた事がうかがえる。

 

 完全に先手を打たれた形だった。

 

「美遊・・・・・・・・・・・・」

 

 連れ去られた少女の事を思い、ヒビキは嘆息する。

 

 とは言え、嘆いている暇など一秒たりともありはしない。

 

 今は行動あるのみだった。

 

 重い足を引きずって、部屋の外に出るヒビキ。

 

 体の各部が痛みを発するが、構っている暇は無かった。

 

 そのまま廊下を歩いて、1階に降りようとした時だった。

 

 傍らの部屋の中から話し声が聞こえ、響は足を止めた。

 

 

 

 

 

 部屋の中には、イリヤ、クロ、凛の姿。

 

 3人とも、浮かない表情を突き合わせている。

 

 無理も無い。

 

 昼間の死闘を潜り抜け、ようやく戦いを終わらせたと思ったら、予期せぬ伏兵の襲撃を受けてしまった。

 

 そして、連れ去られた美遊。

 

 完膚なきまでの敗北だった。

 

「だいたい、どういう事なのよ。あいつら、何でミユを連れ去った訳?」

「判らないわよ。そもそも、あいつらが何者なのかすら把握しきれていないんだし」

 

 尋ねるクロに、凛は頭を抱える。

 

 あの後、大変だった。

 

 とにかく、戦いは収束したとはいえ、美遊は連れ去られ、エーデルフェルト邸は崩壊。どこから手を付ければ良いのかすらわからない状態だった。

 

 そこで凛は、とにもかくにも自分たちの態勢を立て直すことが肝要と考えた。

 

 まず、イリヤとクロには、いったん衛宮邸に戻るように指示した。

 

 あまり帰りが遅いと、衛宮家の人々も心配するだろうと考えての措置である。

 

 その際、気を失っていた響も一緒に連れて行かせた。

 

 更に凛は地下に閉じ込められていたルヴィア(とオーギュスト)を救出。事態の経緯を説明した。

 

 凛の話を聞いたルヴィアは、ただちに美遊奪還の為に動こうとしたが、いかに彼女と言えど、重傷を負った身ですぐに動くことは不可能だった。

 

 現在は新都の方にホテルを借り、そこで静養している。まあ、数日もあれば生活に支障が無いレベルにまで回復するだろう。

 

 それで、だいたいの「事後処理」は完了した。後の事は、また後で考えるしかない。

 

 残る問題は、美遊の奪還だった。

 

「ともかく、早く助けに行かないと!!」

 

 勢い込んだ調子でイリヤが言う。

 

 こうしている間にも、捕らわれた美遊がひどい目にあっているかもしれないと考えると、気が気ではなかった。

 

 一刻も早く助けに行きたいと思うのは当然だろう。

 

 しかし、

 

「どこに助けに行くのよ?」

 

 冷ややかな感じで告げたのはクロだった。

 

 彼女もまた、今日の戦いの傷は決して浅くは無い。特にクロの場合、痛覚共有のせいで、イリヤが負ったダメージも彼女に加算される。

 

 事実上、クロのダメージはイリヤの倍以上と言っても過言ではなかった。

 

 今もダメージの残るクロの体は痛みを絶え間なく発していた。

 

 もっとも、それについてはイリヤも似たような物なのだが。

 

「確かに」

 

 凛もまた、クロの言葉に頷きを返す。

 

「美遊の居場所が判んないんじゃ、こっちとしても動きようが無いわ。一応、使い魔を放って探らせてはいるけど、まだ発見の報告は無い」

「そんな・・・・・・・・・・・・」

 

 凛の言葉に、イリヤは押し黙る。

 

 戦いの最後に、優離とゼストは、妙な転移魔術を使って姿を消している。

 

 あれが何だったのかは分からない。しかしそのせいで、凛の使い魔たちも優離達の行方をとらえきれずにいるのだった。

 

「そ、そうだルビーッ サファイアの居場所を感知する事が出来たよねッ それで美遊の居場所も分かるんじゃ・・・・・・」

 

 縋るように、ルビーを見やるイリヤ。

 

 しかし、

 

 対するルビーの返事は、芳しくなかった。

 

《だめですね。先ほどから探って入るのですが反応がありません》

「そんな・・・・・・・・・・・・」

 

 ルビーの言葉に、がっくりと肩を落とす

 

 その時、

 

 扉が開いた。

 

「美遊達がどこに行ったのか、心当たりならあります」

 

 落ち着いた声で入って来たのはヒビキだった。

 

 部屋に入り、一同を見回し、

 

 絶句した。

 

「「「あ・・・・・・」」」

 

 同時に声を上げる、ヒビキ、イリヤ、クロの3人。

 

 なぜなら、イリヤとクロの姉妹が揃って、Tシャツにパンツのみと言う、あられもない恰好をしていたからだ。

 

 イリヤがピンクで、クロが白と緑の縞々。そこから伸びるカモシカのような足が、小学生ながら魅惑的な雰囲気を作り出している。

 

 華やかで初々しい光景がそこにあった。

 

 自室と言う事で、イリヤもクロも油断していたのだろう。まさか、寝ていたヒビキがいきなり入ってくるとも思わなかっただろうし。

 

「ご、ごめ・・・・・・」

「「出てけバカー!!」」

 

 ヒビキが謝罪をする前に、顔を真っ赤にしたイリヤとクロが手近にあった物を思いっきり投げつける。

 

 哀れ、響は顔面に目覚まし時計と、額に猫のぬいぐるみを食らい、その場に轟沈するのだった。

 

 合掌

 

 

 

 

 

 ~気を取り直して~

 

 

 

 

 

「で、あいつらはどこに行ったのよ?」

「アッハイ」

 

 問いかける凛に、反省の意味も込めて床に正座したヒビキは答える。

 

 因みに、イリヤ・クロの姉妹はヒビキをいったん追い出した後、ちゃんと着替えをしていた。

 

 もっとも、2人そろって、未だに顔が赤いままだが。

 

 とは言え、このままでは話が進まないのも事実だった。

 

 ヒビキも表情を引き締めると、一同に向き直った。

 

「敵は美遊を奪った。となると、その力に目を付けたと言う事です」

「美遊の、力?」

 

 キョトンとして尋ねるイリヤ。

 

 だが、それには答えず、ヒビキはイリヤの机の上に目をやった。

 

 美遊の事に付いて、今ここで、彼女たちに説明する事は出来ないし、またその時間も無い。

 

 今はとにかく、どれだけ状況が不利であろうと、行動を起こさない訳にはいかなかった。

 

 机の上に置かれている3枚のカード。

 

 戦いの後、凛はバゼットとの和平交渉も同時に行った。

 

 その結果、「弓兵(アーチャー)」を除く6枚のカードを半分に分け、3枚を凛達が、残る3枚をバゼットが持つ事で決着したのだった。

 

 そのうちの1枚を、ヒビキは手に取った。

 

「僕は美遊を助けに行きます」

「そ、それなら私もッ」

 

 言いかけて飛び出そうとしたイリヤ。

 

 しかし、戦いの疲労が響き、思わず床に足を取られる。

 

「あッ」

「おっと、危ない」

 

 倒れそうになるイリヤを抱き起し、ベッドに座らせるヒビキ。

 

 弟の思いがけない行動に、イリヤは思わずキョトンとする。

 

「無理はしないで。傷はそっちのステッキちゃんが治してくれたかもしれないけど、ダメージや疲労ってのは、目に見えない形で残るから」

「ヒ、ヒビキ?」

 

 驚いた顔のイリヤにヒビキは笑いかけると、そのまま踵を返して部屋から出ていく。

 

 だが、

 

「待ちなさいよ」

 

 廊下を出て会談に向かおうとしたところで、追いかけてきたクロに呼び止められた。

 

 振り返るヒビキ。

 

 対してクロは、警戒したような表情で言った。

 

「・・・・・・何を考えているの?」

「何をって、何が?」

 

 とぼけるヒビキ。

 

 対して、クロは更に追及するように言った。

 

「率直に聞くわ。あなた、何者? ミユの何を知っているの?」

「・・・・・・・・・・・・」

「ヒビキの姿をしているけど、ヒビキじゃないわね。あなたはいったい・・・・・・」

 

 問いかけるクロに対し、ヒビキはクスッと笑いかける。

 

 勘の鋭い子だ。こんな子が近くにいてくれたなら、彼女も安心かもしれない。

 

「ヒビキだよ。それは間違いない」

「嘘」

「嘘じゃないさ」

 

 ただし、君たちの知っている「ヒビキ」じゃないけど。

 

 ヒビキは言葉の後半部分を故意に言わず、そのまま踵を返す。

 

 唖然としたままのクロを置いて、そのまま衛宮邸の玄関を出る。

 

 見上げる空。

 

 そこに上る月。

 

「・・・・・・こっちでも、見える月は同じなんだね」

 

 当たり前の事にまで感心してしまう。

 

 だが、その辺り前の事が、今は愛おしくさえ感じてしまう。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 スッと目を閉じる。

 

 掲げるカード。

 

 自らの魔術回路を起動し、魔力を流し込む。

 

 カードの中に眠る英霊。

 

 その相手にアクセスし、呼びかける。

 

「夢幻召喚(インストール)」

 

 囁くような言葉。

 

 展開される魔法陣が、ヒビキの上から英霊の姿と能力を上書きする。

 

 同時に、ヒビキは上空高く跳躍した。

 

「待ってて、美遊・・・・・・」

 

 呟く言葉。

 

 その姿は月光に照らされながら、夜の街を駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 

 冬木市円蔵山。

 

 その地下にある大空洞は闇と静寂の中に包まれ、ただ不気味な姿をさらけ出していた。

 

 鬱蒼とした森の中にあり、本来ならば決して人が近づくはずもない場所。

 

 そこに今、人の気配があった。

 

 闇の中にたたずむ人影。

 

 ゼストである。

 

 その目の前にある物を見て、嘆息するように呟く。

 

「・・・・・・・・・・・・ようやく、ここまで来たか」

 

 感慨が混じる呟き。

 

 蘇るのは遥かな過去の記憶。

 

 もう霞が掛かるほどの遠き記憶。

 

 思い出すのは、苦い敗北。

 

 あの時の敗北がなければ、あるいはこのような無駄な遠回りはせずに済んだかもしれないと言うのに。

 

「しかし、それも今回で終わりだ」

 

 そう言うと、背後を見やる。

 

 そこには、天井から伸びた鎖によって両手を拘束された美遊の姿があった。

 

 既に変身は解かれ、元のメイド服姿に戻っている。

 

 サファイアは、その傍らに設置された檻のようなものに入れられている。こちらも魔術で組まれているようで、どうやらそのせいで、ルビーとの交信も遮断されているらしかった。

 

 少女は眦を上げると、真っ向からゼストを睨みつけた。

 

「あなたは、いったい何者なの?」

 

 問いかける美遊。

 

 対して、ゼストは薄笑いを浮かべて見せる。

 

「判らないか。まあ、無理も無い。何しろ、君と直接顔を合わせるのはこれが初めての事だからね」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 自身に語り掛けるゼストの気配。

 

 そのおどろおどろしさに、美遊は背筋に寒気を感じて押し黙る。

 

 目の前の男は何かおかしい。

 

 もしかしたら、

 

 もしかしたら・・・・・・・・・・・・

 

 揺らぐ視界。

 

 内から湧き出る恐怖。

 

 まるで蛇が柔肌をはいずるようなおぞましさが、美遊の心を絡め取っていくのが分かる。

 

「あなたはいったい、誰なの!?」

《美遊様!!》

 

 主を気遣って叫ぶサファイア。

 

 対して、

 

 ゼストは一層不気味な笑みを強める。

 

「それは、君もよく知っているのではないかね」

「え・・・・・・・・・・・・」

 

 美遊が恐怖の為に口を開きかけた。

 

 その時、

 

「ゼスト」

 

 静かな声が、大空洞内に響く。

 

 振り返る先には、こちらに向かって歩いてくる少女の姿があった。

 

「やあルリア。来たね」

「ええ」

 

 ゼストの言葉に頷きを返すと、ルリアは美遊に目を向けた。

 

「ルリア・・・・・・・・・・・・」

 

 少女の名を呟く美遊。

 

 かつて何度も戦った相手。

 

 同時に、一度は心を通わせた相手。

 

 決して、「知らぬ仲」ではない。

 

 ルリアの方でもそれを感じ取ったのだろう。

 

 美遊から逃げるように、視線を逸らす。

 

「・・・・・・これで、悲願は叶うのよね」

 

 願うように言いながら、ルリアは顔を上げてゼストを見る。

 

「わたし達の」

 

 問いかけるルリアに対し、ゼストは優し気に笑顔を見せる。

 

「もちろんだよルリア。本当に、今まで頑張ってくれた。ここまで来れたのは、君のおかげだ」

 

 娘を慈しむようにルリアの頭をなでながら、ゼストは語り掛ける。

 

「こうして彼女を手に入れる事が出来た。もうすぐだ。もうすぐ、わたし達の願いはかなうんだ」

「ええ」

 

 ゼストの言葉に、素直な頷きを見せるルリア。

 

 その様子を、美遊は緊張の面持ちで眺めていた。

 

 彼らの目的。

 

 それは美遊にも判らない。

 

 しかし、決して相容れる事の出来ない存在である事もは理解できた。

 

 座して待てば、取り返しのつかない事態になる。

 

 美遊の直感が、そう告げていた。

 

「クッ」

 

 どうにか、拘束を振りほどこうと体を捩る。

 

 しかし、魔術で編まれた拘束は、力業ではビクともしない。

 

 せめてサファイアを手に取れたら脱出も不可能ではないのだが、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 チラッと、サファイアに視線をやる美遊。

 

 しかし、こうして2人そろって捕らわれの身となっている現状では、如何ともしがたかった。

 

 と、

 

 その時、

 

 状況を見守っていた優離が、何かに気付いたように顔を上げた。

 

 その気配を察し、ゼストも振り返る。

 

「どうかしたかね?」

「・・・・・・・・・・・・いや」

 

 尋ねるゼストに対し、目を細める優離。

 

「どうやら、勝利の美酒に酔うには、いささか早いようだぞ」

 

 そう言った次の瞬間、

 

 大空洞の天井。

 

 鍾乳石の連なる間に、

 

 人影が躍った。

 

 両手に構えた短い刃が、闇の中でギラリと光った。

 

 振り仰ぐ一瞬。

 

 優離はとっさに、手にしたナイフを振るう。

 

 だが影は、その刃を潜り抜け、弾き飛ばす。

 

「チッ」

 

 舌打ちする優離。

 

 その視界の先に立つ、小柄な人影。

 

 漆黒の衣装に短パンを穿き、その上から同じく黒のコートを羽織っている。

 

 額には髑髏を模した仮面を付けた少年。

 

 その両手には、短いナイフが鋭く握られている。

 

「・・・・・・・・・・・・お前か」

 

 呟く優離。

 

 対して

 

「美遊は、返してもらいます」

 

 ヒビキは静かな、しかし確固たる声で言い放った。

 

 

 

 

 

第20話「遥かなる記憶」      終わり

 

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