Fate/cross silent   作:ファルクラム

69 / 116
第14話「風焔剣舞」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例えるなら、風と炎だった。

 

 銀の刃を掲げ、疾風の如く駆け抜ける響。

 

 対抗するように狂戦士(バーサーカー)は、天高く方天画戟を振り翳し、立ち上る巨大な焔の如く迎え撃つ。

 

 両者、距離が詰まる。

 

「フッ!!」

 

 短い呟きと共に、刀を袈裟懸けに振り翳す響。

 

 速度を活かした先制攻撃。

 

 その一閃が、狂戦士(バーサーカー)を捉えて斬り上げる。

 

 だが、

 

「ッ!?」

 

 刀を振り抜いた瞬間、響は思わず目を剥く。

 

 必殺を念じて繰り出した刃は、しかし狂戦士(バーサーカー)がとっさにのけぞるように回避したため、響の刃は虚しく空を切るにとどまった。

 

 舌打ちしつつ、刀を引いて態勢の立て直しを図る響。

 

 同時に内心で舌を打つ。

 

 巨体のわりに良く動く。

 

 次の瞬間、

 

 狂戦士(バーサーカー)が放つ強烈な蹴りが、響に襲い掛かって来た。

 

「グッ!?」

 

 衝撃が、響を貫く。

 

 小さな体が、空中に吹き飛ばされた。

 

 と、

 

 空中で後方宙返りを打ち、そのまま着地する響。

 

 見た目の派手さに比べて、思ったよりもダメージは少ない。

 

 実のところ、狂戦士( バーサーカー)の攻撃が命中する直前、響はとっさに後方に跳躍したためダメージは減殺できたのだ。

 

 しかし、完全にゼロにできたわけではない。

 

 強烈な痛みが、腹部から湧き上がってくるのが判る。

 

「クッ・・・・・・・・・・・・」

 

 着地と同時に膝を突く。

 

 痛みを噛み殺しながら、相手に目をやる響。

 

 その視界の中で、再び方天画戟をの穂先を向けてくる狂戦士(バーサーカー)

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

 咆哮と同時に跳躍、刃を繰り出してくる。

 

 回避、のちの反撃・・・・・・

 

 を、選択しようとした響は、一瞬後にはその考えを打ち捨てる。

 

 英霊、斎藤一がもたらしたスキル「無形の剣技」。そのスキルの大本となる、相手の動きを読む「目」が、狂戦士(バーサーカー)相手に、単純な回避の危険性を訴える。

 

 方天画戟はその特性上、突き、引き、薙ぎ払いと、全ての攻撃に対応できる。

 

 仮に「突き」を紙一重で回避したとしても、「引き」によって背後から斬られるのは目に見えている。

 

「なら・・・・・・・・・・・・」

 

 響は魔力で空中に足場を作り、とっさにその場から飛びのく。

 

 大ぶりな方天画戟は、それだけで空を切った。

 

 その間に響は、数度の跳躍を繰り返し、狂戦士(バーサーカー)を大きく引き離す。

 

 無人の民家の屋根に着地する響。

 

 そのまま身軽に屋根から屋根へと飛び越えて駆け出す。

 

 走る少年を、追いかける狂戦士(バーサーカー)

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

 叫びながら振るわれる方天画戟が、民家ごと響を吹き飛ばさんと襲ってくる。

 

 轟風を纏う横なぎ。

 

 その一撃に対し、響は後方にある民家へ飛び移って回避する。

 

 追う狂戦士(バーサーカー)と逃げる暗殺者(アサシン)

 

 だが、

 

 狂戦士(バーサーカー)の動きは、先程と比べて明らかな陰りが見えている。

 

 どうやら、狭い路地に引き込まれた事で、身動きがとりづらくなっているようだ。

 

 広い場所で戦ってこそ、真価を発揮できる剛腕と巨体、そして凶暴性である。逆にこのような狭い場所では、大幅なスペックダウンを余儀なくされる。

 

 対して、もともと小柄な響は、当然ながら何の制限も受けない。路地から路地へ、流れるように駆けていく。

 

 まさに地形を味方に付けた見事な作戦だった。

 

 狂戦士(バーサーカー)が振り翳した方天画戟を、ヒラリとした動作で回避する響。

 

 すかさず、狂戦士(バーサーカー)は響を追いかけようとする。

 

 しかし、その時には響は、小動物のような素早さで路地の影へと駆けこんでいた。

 

 その小回りを利かせた動きに、心なしか狂戦士(バーサーカー)に苛立ちのような物が見える気がした。

 

 構わず、響を追って跳躍する狂戦士(バーサーカー)

 

 次の瞬間、

 

「今ッ!!」

 

 上空から襲い掛かってくる狂戦士(バーサーカー)を見上げ、刀の切っ先を向ける響。同時に魔力で脚力を強化する。

 

 次の瞬間、

 

 一気に地を蹴る響。

 

 衝撃で陥没する地面。

 

 跳び上がるように、少年は空中の狂戦士(バーサーカー)目がけて加速する。

 

 手にした刀の切っ先を真っすぐに狂戦士(バーサーカー)へと向けられている。

 

 対して、流石の狂戦士(バーサーカー)も、空中にあっては回避もままならない。

 

 次の瞬間、

 

 響の繰り出した切っ先は、真っすぐに狂戦士(バーサーカー)へと突き込まれた。

 

 

 

 

 

「何だよ・・・・・・あれ・・・・・・・・・・・・」

 

 響と狂戦士(バーサーカー)

 

 2人が戦っている様子を、ヴェイクは少し離れた場所から眺めていた。

 

 きっかけは数時間前に遡る。

 

 エインズワースは新都や深山町にも網を張り監視している。

 

 その監視網の一つに、マヌケにものこのこと出歩いて来た響を発見したため、ヴェイクは出撃してきたのだ。

 

 敵の一体も倒して見せれば、自分の手柄になる。と言う理由である。

 

 ついでに城の中で暇そうにしていた狂戦士(バーサーカー)も引っ張って来た。

 

 どうせ響なんぞ倒しても、大した手柄にはならない。そんな事で自分が労力を使うなど愚の骨頂だ。

 

 それより、響の相手は狂戦士(バーサーカー)にやらせ、手柄は自分が貰う、と言うのがベストだろう。

 

 どうせ狂戦士(バーサーカー)はあの調子だから、手柄も何もあった物ではないだろうし。

 

 そう思っていたのだが、

 

「何やってるんだよ、あのグズ・・・・・・・・・・・・」

 

 苛立ち交じりに呟きを漏らす。

 

 狂戦士(バーサーカー)は狭い路地や、脆い民家に引き込まれ、身動きが取れなくなっている。

 

 対照的に、響は敏捷性を如何無く発揮して逃げ回り、狂戦士(バーサーカー)を翻弄している。それどころか、時折鋭く反撃して狂戦士(バーサーカー)に痛撃を加えている。

 

 狂戦士(バーサーカー)は中華最強と謳われた武人を夢幻召喚(インストール)している。本来なら木っ端な英霊如きに後れを取るはずが無い。

 

 だというのに、戦況はどう見ても響が優勢だった。

 

 今も、襲い掛かろうとした狂戦士(バーサーカー)は、響の迎撃にあって地面に叩きつけられている。

 

 浅葱色の羽織を靡かせて着地する響。

 

 その姿が、ヴェイクをさらに苛立たせる。

 

「何、格好つけてるんだよ・・・・・・クズの分際で」

 

 許せなかった。

 

 虫けらの分際で、自分を見下すが如き態度を取っているのが。

 

 立場もわきまえず自分の顔に泥を塗り、足蹴にするような行動を取る響が。

 

 さっさと諦めて死ねばいい物を。

 

「・・・・・・・・・・・・良いだろう」

 

 不遜にも自分に抵抗し続ける響に、ヴェイクは静かに語り掛ける。

 

 同時に、その手には1冊の本が現れた。

 

「その無知で恥知らずな態度、この僕が正義の名の下に断罪してやるよ!!」

 

 言い放つと同時に、ヴェイクは詠唱に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 路地に降り立つと同時に、響の正面に狂戦士(バーサーカー)が降り立つ。

 

 その姿を見定め、

 

 響は一気に仕掛けた。

 

 地を蹴ると同時に間合いを詰めると、流れるような動作で剣を擦り上げる。

 

 対抗するように、方天画戟を振るう狂戦士(バーサーカー)

 

 だが、

 

 長い穂先が民家の壁に当たって閊える。

 

 狭い路地は狂戦士(バーサーカー)本人のみならず、長い武器にとっても不自由極まりなかった。

 

 動きを止める狂戦士(バーサーカー)

 

 だが、それも一瞬の事だった。

 

 その膂力を全開にして、民家ごと響を粉砕しにかかる。

 

 舞い散る瓦礫。

 

 その中を、

 

 響は構わず斬りかかる。

 

 動きを止めた狂戦士(バーサーカー)

 

 刃は銀の閃光となって斬りかかる。

 

 一閃、

 

 狂戦士(バーサーカー)はとっさに腕を掲げて防御の姿勢を取る。

 

 その腕が僅かに斬り裂かれ、鮮血が舞う。

 

「行ける」

 

 怯む狂戦士(バーサーカー)を前に、響は更に畳みかけようと前に出る。

 

 刃の切っ先を突き込もうと繰り出した。

 

 次の瞬間、

 

 突如、路地を縫うようにして無数の伸びてきた触手の群れが、響に殺到した。

 

「クッ!?」

 

 自身に向かってくる触手を見て、とっさに屋根の上に跳び上がって回避する響。

 

 同時に刀を縦横に振るい、追いついて来た触手数本斬り捨てる。

 

「これは・・・・・・・・・・・・」

 

 斬り捨てられて地面に転がる触手を見ながら、響は舌打ちする。

 

 見覚えのある光景。

 

 顔を上げたその視線の先には、開いた本を手にニヤニヤと笑みを浮かべるヴェイクの姿があった。

 

「気が変わった。ここからは獣狩りの時間だよ」

 

 どうやら、なかなか響を仕留められない狂戦士(バーサーカー)に業を煮やし、自ら前に出て来たらしい。

 

 勝手な事を。

 

 と、言いたいところだったが、実際の話それどころではなかった。

 

 ヴェイクの援護によって体勢を立て直した狂戦士(バーサーカー)が、再び方天画戟を振り翳して響に襲い掛かって来たのだ。

 

 強烈な突撃と共に振り下ろされる一撃。

 

 対抗するように、響も刀を振るう。

 

 激突する互いの刃。

 

 火花は容赦なく飛び散る。

 

 響と狂戦士(バーサーカー)双方の身体が、衝撃で後退する。

 

 響の一撃は、辛うじて狂戦士(バーサーカー)の一撃を逸らす事に成功する。

 

 だが、

 

「クッ!?」

 

 掌にしびれるような衝撃。

 

 やはり正面からの戦闘では力負けしてしまう。

 

 今は剛腕で撃ち下す狂戦士(バーサーカー)に対し、響は自身の最大剣速で刀を振るい、辛うじて拮抗させる事ができたが。一歩タイミングを誤れば、確実に響の体は狂戦士(バーサーカー)によってばらばらに砕かれていた事だろう。

 

 それを避けるために、狭い住宅街に引きずり込み、地形を駆使して戦う事を選択したのだが、ヴェイクの気まぐれな参戦でそれもふいになってしまった。

 

 狂戦士(バーサーカー)もそこで留まらない。

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

 咆哮と共に、方天画戟を振り翳し、何度も響に打ち下ろしてくる。

 

 対して、響も剣を振るうスピードを緩めず対抗する。

 

 自身の剣速が最大になる瞬間に相手と激突する事で、辛うじて状況を拮抗させている。

 

 だが、こんな戦い方がそもそも長続きするはずもない。

 

「チッ!?」

 

 舌打ちする響。

 

 足を止めたまま戦ったのでは勝てない。多少無理にでも、動き回らないと。

 

 そう考え、距離を取ろうとした。

 

 だが、

 

「ほらほら、さっさと逃げないと、背後ががら空きだよ!!」

 

 嘲笑と共に、背後から伸びてくる触手。

 

 無数の蛇がうねりながら迫ってくるようなその光景は、見ただけで生理的嫌悪感を催す。

 

 響はとっさに振り返りながら刀を横なぎに振るい、数本の触手をまとめて斬り捨てる。

 

 と、次の瞬間だった。

 

 一瞬、動きを止めた響に、狂戦士(バーサーカー)が襲い掛かる。

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

 咆哮と共に打ち下ろされる方天画戟。

 

 その長大な刃を見据え。

 

「まずッ!?」

 

 響は臍を噛む。

 

 既に回避が可能な距離ではない。

 

 振り下ろされた刃。

 

 その一撃を、

 

「グッ!?」

 

 響は辛うじて刀を立てて受け止める。

 

 異音と共にぶつかり合う互いの刃。

 

 途端に、響の小さな体にあり得ないほどの荷重がかかった。

 

 今にも押しつぶされそうなほどの重圧に、全身の筋が悲鳴を上げる。

 

「クッ・・・・・・・・・・・・」

 

 歯を食いしばる響。

 

 「誓いの羽織」によって強化された響のスペックだが、それでも目の前の怪物を相手にするには足りない。

 

 次の瞬間、

 

 響の体は大きく吹き飛ばされ民家の壁に叩きつけられた。

 

 衝撃と共に、全身に奔る激痛。

 

 飛びそうになる意識を、首を振って引き戻す。

 

 しかし、

 

「何て・・・・・・威力・・・・・・・・・・・・」

 

 一撃で大ダメージを負ってしまった事は否めない。

 

 流石は狂戦士(バーサーカー)と言うべきか、まともに攻撃を食らえば、ここまでの物になるのか。

 

 今更ながら、かつて単騎で狂戦士(バーサーカー)に挑んだ美遊の無謀さが身に染みる。

 

 しかも、

 

 響はチラッと、ヴェイクの方に目をやる。

 

 いやらしい笑みを浮かべたヴェイクは、既に勝負あったとでも言いたげに、腕組みをして、倒れた響を見下ろしていた。

 

 正直、狂戦士(バーサーカー)1人なら、どうにか対処できたのだが、さすがに1対2では対処が難しかった。

 

「ハッハッハッハッハッハ!! 見たかいッ!! これが僕の力さ!!」

 

 そんな響に、容赦ない嘲笑が降り注ぐ。

 

 狂戦士(バーサーカー)の傍らに立ったヴェイクは、倒れた響を侮蔑と共に見下ろしていた。

 

「クズ虫の分際で、この僕に逆らうからこんな事になるのさ!!」

 

 言いながら、ヴェイクは異界の門を開き、再び無数の触手を出現させる。

 

 その様子を、響は歯噛みしながら見据える。

 

 何とか、反撃の体勢を取らないと。このままではやられる。

 

 だが、予想以上にダメージが大きいのか、体が思うように動かない。

 

「さあ、僕に逆らった事を後悔しながら死ぬんだね!!」

 

 そんな響に対し、触手を放つヴェイク。

 

 一斉に殺到してくる触手の群れ。

 

 かわせないか!?

 

 そう思った。

 

 次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クラスカード『狂戦士(バーサーカー)』、限定展開(インクルード)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 低く、

 

 凛と告げられる声。

 

 次の瞬間、

 

 天空から降って来た巨大な斧剣が、今にも響に襲い掛からんとしていた触手を、全て叩き潰してしまった。

 

「んなッ!?」

 

 驚き、目を見開くヴェイク。

 

 彼の目の前には今、地面に突き立つ形で巨大な斧剣がそそり立っている。

 

 斧剣、と言ってしまえば確かにそうなのだが、ひたすら巨大なそれは、岩をそのまま切り出してきたような武骨さで存在している。

 

 地面に突き立った斧剣の柄尻に、

 

 トンッ 

 

 と言う軽い足音と共に、ツインテールにしたセミロングの髪を靡かせて降り立つ少女。

 

 ピンクのレオタードに、白のミニスカートと手袋をはめた可憐な姿。

 

 鳥の羽のような白いマントは、凛々しく羽ばたきを見せる。

 

「み、美遊?」

 

 見上げた響が、茫然と呟く。

 

 カレイドルビー・アナザーフォームの姿を取った美遊は、大地に突き立った斧剣の柄の上から、静かな瞳で一同を見据えていた。

 

 

 

 

 

第14話「風焔剣舞」      終わり

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。