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愕然とする光景だった。
予期せぬ襲撃者。
こちらの警戒網をすり抜けて攻撃を受けた、と言うだけでも十分驚愕すべき事態だというのに、
その襲撃者が、よく見知った人物だったなら、なおさらの事だった。
「凛・・・・・・・・・・・・」
「ルヴィアさん・・・・・・・・・・・・」
愕然として呟く、響と美遊。
遠坂凛とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。
かけがえのない仲間であるはずの2人が今、敵として響達の前に立ちはだかっていた。
驚愕する響と美遊に対し、凛とルヴィアは一切反応を示さない。
まるで、2人の存在など、眼中に入っていないかのような振る舞いだ。
凛とルヴィアの、そんな淡白な態度が、更に響と美遊を戸惑いの淵へと追いやる。
「そんな、何で2人が・・・・・・・・・・・・」
震える声で呟く美遊。
無理も無いだろう。
2人。
特にルヴィアの方は、美遊にとって形式上とは言え姉であり、向こうでの生活全般を世話してくれた大恩ある人物なのだから。
そんな凛とルヴィアが敵として目の前にいる。
響達にとって、悪夢以外の何物でもなかった。
凛、そしてルヴィア。
響は2人の様子に、素早く目を走らせる。
どういう訳か、メイド服を着ている凛とルヴィア。凛はもともと、ルヴィアの家で仕事着にしているので見慣れているが、ルヴィアのこういう姿を見るのは初めてである。
元がお嬢様のせいか、こういう言わば「使用人」風の姿には違和感がある。まあ、それでも2人そろって容姿的なレベルは高い為、これはこれで似合っているのだが。
そして、
何より響が目を引いたのは2人の目。
揺らぎなく虚ろで、どこか人形めいた瞳。
一切の感情を映さない2人の瞳は、不気味なほどの静けさで響と美遊を睨んできている。
はっきり言って、普通の様子ではない。
何かしらの魔術を掛けられて、2人が操られていると見た方がよさそうだった。
と言う事は、その魔術を解除すれば2人が復活する可能性は高いのだが。
逆を言えば、その魔術の正体が判らない限り、うかつに手出しはできない。まして、響は魔術に関してはまるっきりの素人である。その点に関しては、美遊もそう変わらない。
2人に掛けられた魔術を解析し解除する事など、不可能に近かった。
それにしても、
こうして改めて見てみると、2人の戦力差がいかに絶望的であるかが分かる。
主に胸囲的な意味で。
年相応に大きく膨らみ、その存在感を主張しているルヴィアの母性溢れるバストに対し、凛のはと言えば「まあ、膨らんでるっちゃー膨らんでる?」と言う感じである。
既に勝敗は決していると言ってよかった。
と、
「響、どこ見てるの?」
「・・・・・・ん、別に」
そんな響を、お隣の可愛い彼女さんがジト目で睨んできていた。どうやら、何を考えていたのかバレバレだったようだ。
何となく美遊の、ほっぺがプクッと膨らんでいるように見える。
その美遊の胸はと言えば、
まあ、
お察しください。彼女の可能性は現在よりも未来にこそ広がっているのだから。
美遊だって小学生とは言え女の子である。彼氏である響が
だが、余計な事を考えているのもそこまでだった。
「美遊ッ 来る!!」
「ッ!?」
警告交じりに叫ぶ響。
次の瞬間、
「最重要目標を確認。確保に移りマス」
「障害排除を実行しマス」
無機質な声と共に、
凛とルヴィアが襲い掛かって来た。
左右から挟み込むように迫る、2人の魔術師たち。
対抗すべく、美遊を背に庇いながら刀を構える響。
「響ッ 戦っちゃダメ!!」
「判ってるッ」
叫ぶ美遊に、響は頷きながら刀を返す。
いかに状況が状況とは言え、2人を傷付ける訳にはいかない。
だが、凛とルヴィアの実力も侮れない。正直、手加減して勝てる相手とも思えなかった。
つまり響には「2人を傷付けない程度に、適度に痛めつける」事が求められるわけだ。
「うー、わー めんどー」
心の底からだるそうに言いながら、響は刀を峰に返して斬りかかる。
実際にどの程度「手加減」すれば良いのかは不明瞭だが、ともかく守ってじり貧になる事だけは避けなければならなかった。
迷う響。
だが、相手はさも当然の如く、響の迷いなど考慮に入れてくれない。
ルヴィアが先行する形で迫って来た。
無機質な視線が少年を睨み、同時に拳を振り上げる。
対抗するように、刀を八双に振り翳す響。
間合いに入ると同時に、両者は激突する。
真っ向から振り下ろされる響の剣。
対して、ルヴィアもストレートの拳撃を繰り出す。
次の瞬間、
衝撃と共に響は、押し返されて数歩後退した。
「クッ!?」
蹈鞴を踏みながらも響は、どうにか体勢を保ちながら舌打ちする。
本気ではないとはいえ、まさかここまで露骨に押し負けるとは思っていなかったのだ。
一方のルヴィアは拳を振り切った状態で、静かに睨み据えていた。
生身の状態では、ルヴィアの膂力は響を大きく上回っている。
加えて恐らく、何らかの強化魔術で肉体を強化しているのだろう。そうでなければ、峰とは言え、素手で刀と打ち合って勝てるはずが無い。
正直、英霊化していない今の響では、不利と言わざるを得ないだろう。
「まったく・・・・・・・・・・・・」
光の薄い瞳でこちらを見る凛とルヴィアに対し、響は嘆息気味に呟く。
こっちの苦労も知らないで、暢気なものである。
今までどこをほっつき歩いていたのか、と今すぐ胸倉掴んで問いただしてやりたい気分だった。
と、その時。
「響ッ 危ない!!」
「んッ!?」
鋭く奔る美遊の警告。
振り返った響の目には、向かってくる凛の姿があった。
既に拳を振り上げて、攻撃態勢に入っている。
「クッ!?」
とっさに刀を構えなおして迎え撃つ態勢を取る響。
先のルヴィアとの激突で、ある程度のコツはつかめた。今度は押し負ける事は無い、はず。
そう考えて身構える響。
対して、
向かってくる凛は、手を翳して見せた。
真っすぐに伸ばされた少女の手。
そこに握られている物を見て、思わず響は絶句した。
「カード!?」
見間違えるはずもない。
それは英霊を宿したクラスカードだった。
なぜ、凛がカードを持っているのか?
それを考える暇もなく、凛は動いた。
「サーヴァントカード、
凛が抑揚のない声で呟いた。
次の瞬間、
「無銘、《剣》」
彼女の中に、巨大な闇の塊が出現した。
「なッ!?」
巨大な闇色の奔流、としか形容のしようがない。
見ようによっては「剣」に見えなくもないそれを、凛は軽々と振り翳す。
一閃。
対して、とっさに飛びのいて回避しようとする響。
凛の一撃は、響の姿を捉える事無く、校舎の壁を盛大に破壊していく。
「な、何で凛がカードを!?」
驚愕しながらも、着地と同時にどうにか体勢を立て直そうと後退する響。
凛がカードを使うとは、完全に予想外である。
しかも先程の「剣」。
黒々として刀身も何もかも、闇色の染まった物。
あんな物が、英霊の使う「宝具」だとでも言うのだろうか?
だが、考えている暇は無かった。
今度はルヴィアが前に出て、響へ襲い掛かる。
「サーヴァントカード、
ルヴィアの手に握られる、1枚のカード。
またかッ!?
そう思った次の瞬間、
「無銘、《斧》」
ルヴィアの放った強烈な一閃が、響に襲い掛かってくる。
今度は、先程の凛が放った「剣」よりもずっと巨大で重厚な闇の塊が迫る。
凛の攻撃を受けた直後の響に、ルヴィアの攻撃を回避する余裕はない。
次の瞬間、
強烈な一撃を食らい、響の体は校舎の外へと放り投げられた。
2
突如、鳴り響いた警報。
あまりにも耳障りな音は、最大限の警戒を促す物だった。
「まさか、敵が来たって言うの!?」
「恐らく。この警告音は間違いないでしょうッ」
廊下を駆けながら、クロとバゼットは舌打ちを交わす。
まさか、こちらの潜伏先が敵にバレていたとは。
それにしても、唐突過ぎる襲撃である。全く予測する事が出来なかった。
「まずいわね、この状況」
走りながら、クロは現状を正確に分析する。
今は響と美遊が別の場所にいるし、田中もどこか校内をほっつき歩いている。何とか彼らと合流したい所である。
そのうえ、ギルに至っては「食事に行ってくる」とか言って街へ出かけてしまっている。
今の自分たちは、完全に手薄の状態になっていた。その間隙を敵に突かれた形である。
「ともかく、早いところ響達と・・・・・・」
駆けながら、クロが言いかけた時だった。
突如、鳴り響き風切り音。
駆けるクロとバゼットを両断すべく、容赦なく振るわれる剣閃。
轟風の如き銀の一閃が、2人を斬り裂かんと迫る。
「クッ
とっさに叫び、両手に干将莫邪を構えるクロ。
繰り出された大剣の一撃を、辛うじて受け止める事に成功する。
「クロエ!!」
バゼットが声を上げる中、クロは後退しながらも、どうにか体勢を保つ。
しかし、
「クッ きっつ・・・・・・」
一撃で刃こぼれした黒白の双剣を構え直し、クロは冷汗交じりに相手を見やる。
その視線の先。
大剣を振り翳した状態で佇む、シェルドの姿がある。
既に
「エインズワースかッ!!」
叫びながら飛び出すバゼット。
同時に、量の拳を握り込み、シェルドに殴りかかる。
ルーン魔術で硬度を増したグローブは、それ自体が凶器となってシェルドに襲い掛かる。
繰り出される拳撃。
対抗するように、シェルドもまた大剣を構えて斬りかかる。
激突する両者。
バゼットの繰り出した拳が、シェルドの大剣を弾く。
体勢を崩すシェルド。
「もらった!!」
そこへ、すかさずバゼットが猛攻撃を仕掛ける。
かつて、響、イリヤ、美遊、クロが4人がかりでも勝てなかったバゼットの猛攻を前に、さしものシェルドも防御に回る。
だが、バゼットは攻撃の手を緩めない。
強烈な拳撃が嵐のように、シェルドに襲い掛かる。
だが、
シェルドは一歩も引かない。
まるでバゼットの攻撃など無い物のように、徐々に攻撃に耐えながら自身の間合いへと踏み込んでくる。
次の瞬間、
「ハッ!!」
気合と共に、真っ向からバゼットに振り下ろされる大剣。
長大な剣を振るっているとは思えないほど素早い攻撃を前に、バゼットは思わず攻撃を諦めて防御に転じる。
次の瞬間、
「グゥッ!?」
重い一撃を前に思わずバゼットは膝をたわませる。
バゼットの着ている服には強化の魔術が施され、更に彼女自身、常識を超えて強化された肉体の持ち主である。
英霊とは言え、並の一撃でダメージを負う事は無い。
だが、
「クッ・・・・・・」
腕を押さえ、後退するバゼット。
その両腕が、しびれるような痛みを発している。
ダメージは最小限に抑えられているが、英霊の放つ強烈な一撃を、完全に無効化する事は出来なかったのだ。
「強い・・・・・・」
シェルドの攻撃を前に、一時的に動きを止めるバゼット。
その時、
「あんたの相手はこっちよ!!」
声に導かれるように、振り仰ぐシェルド。
その視線の先には、新たに投影した干将莫邪を構えたクロの姿がある。
更にクロは、自身の周囲に数本の剣を投影すると、それを矢のように打ち出した。
シェルドに向かって飛んでいく刃の群れ。
数こそ少ないが、ギルの宝具「
自身に向かってくる刃。
その鋭い光を見据え、シェルドはとっさに後退する。
地面に突き立つ刃の群れ。
だが、
「もらったッ!!」
着地直後で、とっさに身動きの取れないシェルド目がけて、干将莫邪を振り下ろす。
撃ち出した剣はあくまで、シェルドの体勢を崩すための囮。
クロの作戦はあくまで、自身の手でシェルドに斬りかかる事になった。
振るわれる、黒白の刃。
タイミングは必殺。
回避は不可能。
だが、次の瞬間、
ガキッ
異音と共に防がれた自らの刃を見て、クロは舌打ちする。
彼女の刃は、ほんのわずかと言えどもシェルドにダメージを与える事が出来なかった。
響から聞いて判ってはいたが、やはりシェルドの無敵性は厄介極まりなかった。
「やはり、通じませんね」
「・・・・・・どうしたもんかしらね」
バゼットの言葉に苦笑を浮かべながら、シェルドを睨みつけるクロ。
響が何度も戦っており、シェルドの実力についてはある程度の情報が揃っている。
やはりと言うべきか、その圧倒的な無敵性は、簡単には突き崩せそうにない。
単純に攻撃力が足りないのか、あるいは必要条件が揃っていないのか?
いずれにしても、現状でシェルドを攻略するのは難しいと言わざるを得なかった。
攻めあぐねるクロとバゼット。
対して、
「どうした、もう終わりか?」
2人の猛攻を凌いだシェルドは、涼しい顔で大剣を構えなおしていた。
衝撃と共に、壁と言う壁が吹き飛ばされる。
宙に舞う、ガラスと建材。
そんな中、
空中に投げ出された響は、事態をスローモーションのように捉えていた。
高速で走る思考の中、疑問は次々と湧いてくる。
凛とルヴィアは、なぜ自分たちの敵に回ったのか?
裏切ったのか? あるいは洗脳でもされたのか?
なぜ、カードを使う事ができるのか?
そもそも、あのカードは何なのか?
なぜ宝具が、あんな禍々しい闇の塊になってしまっているのか?
次々と湧いてくる疑問。
全て、真相は判らない。
が、
そこまで考えた時だった、
割れた校舎の壁から、響を追うようにして飛び出してくる小さな影があった。
「響ッ!!」
美遊だ。
空中に投げ出された響を救うべく、少女は迷う事無く死地へと飛び込んで来たのである。
空中にあって美遊は、迷う事無く空中に躍り出ると、響に向かって真っすぐに手を伸ばす。
「手を!!」
「んッ」
伸ばされた美遊の手。
その手を、響はしっかりと握り込む。
次の瞬間、
「ルビー!!」
《はいは~い!! 行きますよ~!!》
美遊の髪の中から飛び出すルビー。
同時に、2人の姿は強烈な閃光の中へと飲み込まれた。
光の中で、響は見る。
少女の姿が変化する様を。
普段着が消滅し、生まれたままの姿になった美遊。
ある種、神々しいとさえ思える裸身へ、光の帯が絡みついていく。
体全体を覆うピンクのレオタードが形成され、左右の腰横から腰裏にかけて、白のミニスカートが覆う。
白の手袋とブーツが形成されると同時に、髪は頭の左右でツインテールに纏められ、白い羽の髪飾りで結ばれる。
そして最後に、鳥の羽のようなマントが覆った。
カレイドルビー・アナザーフォームに変身した美遊。
そのまま響を抱えると、空中に魔力で足場を形成。落下速度を減殺しながら地上へと降り立った。
「響、大丈夫?」
「ん」
尋ねる美遊に、響も地面に降り立ちながら頷きを返す。
だが、
「サーヴァントカード・
頭上から、低く囁かれる声。
ほぼ同時に、響も動いた。
「
衝撃波が、少年の姿を包み込む。
飛んで来る、無数の闇の礫。恐らく、これが「短剣」なのだろう。
殺到する無数の「短剣」。
その着弾の寸前、
衝撃波が晴れて、少年は姿を現す。
黒装束に短パン履き。髪は伸びて後頭部で結ばれている。
風に靡く、白いマフラー。
振り仰ぐ、鋭い視線。
同時に、手にした刀が鞘奔り、鋭く一閃する。
迸る銀の閃光。
その閃光が、飛んできた無数の短剣を、一閃の元に弾き飛ばした。
攻撃を振り払った響は、刀の切っ先を凛達に向けて構える。
対して、凛とルヴィアもまた、英霊化した響を警戒するように身構える。
「排除対象の戦闘力上昇を確認しまシタ」
「対応の変更を行いマス」
刀を構える響に対し、凛とルヴィアも、新たなるカードを取り出すのが見えた。
睨み合う両者。
「美遊、下がって」
「うん」
美遊を守りつつ、じりじりと後退する響。
合わせるように、凛とルヴィアも距離を詰めてくる。
その姿を見て、苛立たし気に響は舌打ちした。
「・・・・・・厄介」
「そうだね」
美遊も、同意するように頷く。
戦闘開始前に予想したとおりである。
普通に敵を相手にするならまだ良い。しかし凛もルヴィアも、紛れもなく味方なのだ。全力で攻撃して、2人を傷付ける訳にはいかない。
やはり必然として、2人を相手にする時は手を抜かざるを得ないのだ。
「まったく・・・・・・・・・・・・」
嘆息する響。
ベテラン魔術師2人が、雁首揃えて何をしているのか。
思いっきり文句を言ってやりたい気分なのだが、どうにも2人とも意識がここにはないみたいなので、それも出来なかった。
「面倒くさい」
「それも同感」
響と美遊は、そろってため息をついた。
だが、やるしかない。話し合うにしても正気に戻すにしても、まずは2人の動きをどうにか止めない事には始まらなかった。
次の瞬間、
凛とルヴィアは同時に仕掛けてきた。
先行する凛。
その手に、カードが掲げられる。
「サーヴァントカード、
詠唱と同時に、凛の手に現れる細長い闇の塊。
凛の言葉通り、「槍」を連想させる形だ。
鋭く突き込まれる闇色の閃光。
その一撃を、響は刀を鋭く切り上げる事で弾く。
激突する両者。
競り勝ったのは、響だ。
銀の剣閃が、闇色の刃を両断する。
同時に、凛が繰り出した槍は消滅した。
「今ッ!!」
刀を峰に返す響。
取りあえず、一発殴って気絶させる。その後の事はその後で。
適当にそんな風に考えて、攻撃に転じようとする響。
だが、
響が前に出るのとほぼ同時に、今度はルヴィアが飛び出して来た。
「サーヴァントカード
言い放つと同時に、両手で振り上げた巨大な闇の塊を、響めがけて振り下ろすルヴィア。
圧倒的とも言える質量の闇が、小柄な響を押し潰さんと振り下ろされる。
「ッ!?」
舌打ちしつつ、刀を掲げて防御の姿勢を取る響。
だが、その程度では防ぎきれないような闇が迫る。
その時、
「物理保護、最大展開!!」
響の背後から、凛とした少女の声が響く。
同時に、響きを守るように、頭上に巨大な障壁が展開された。
目を転じれば、ルビーを高らかに掲げた美遊の姿がある。
美遊はとっさに障壁を展開する事で、ルヴィアの強力な攻撃から響を守ったのである。
ルヴィアの手から消失する、闇色の槌。
その間に響は、後退して体制を立て直す。
睨み合う両者。
再び、互いに探り合うように対峙する。
そんな中、
「ん、やっぱり・・・・・・」
刀を構えなおした響は、ある種の確信を抱いて凛とルヴィアに目をやった。
まず、何度か打ち合って分かったが、あの黒い宝具、力はそれほど強くない。注意して対応すれば、まず押し負ける事は無いだろう。
更に、カードそれ自体も使い捨てであると思われる。さっきから凛達が武器をとっかえひっかえしているのが、その証拠だった。
総じて戦えば、決して負ける相手ではない。
とは言え、用意されているカードの数が尋常ではない。
物量で押されれば厄介だった。
加えて、先述した通り、こっちは本気で戦う事が出来ない。
状況は、地味に厄介だった。
その時だった。
突如、巻き起こる衝撃。
同時に、すぐ側に着地する影があった。
クロだ。
既に
「チッ こっちも随分とややこしい状況になっているじゃないの」
「クロッ」
状況を見ながらクロは舌打ちする。
既にシェルドと戦端を開いていた彼女も、ボロボロの状態だった。
「て言うか、何であの2人が敵に回ってんのよ!?」
「判んない。こっちが知りたい」
と、そこへ、バゼットも後退してくるのが見えた。
それを追うように現れるシェルド。
着地と同時に、顔を上げる
その視線が、
「シェルド」
「・・・・・・・・・・・・」
敵意の籠った響の視線を、静かに受け止めるシェルド。
既に因縁の相手と言って良い2人は、互いに激突を確信して身構える。
緊張が場を支配する中、響は状況をすばやく確認する。
こちらの戦力は、響、美遊、クロ、バゼットの4人。
対して敵はシェルド、凛、ルヴィアの3人。
凛とルヴィアの存在は地味に厄介だが、それでも決定的と言うほどではない。作戦次第では、いくらでも抑え込めるだろう。
作戦としては、2人が1対1で凛とルヴィアをそれぞれ抑え、その間に残る2人がシェルドを数で潰す。
それが最適だった。
身構える両陣営。
激発の瞬間が迫る。
次の瞬間、
「やあ、これは随分と、賑やかだね」
突如、
心臓を鷲掴みにされたような、
そんな不快感。
その場にいた全員が、思わず魂の底まで凍り付いたような怖気を感じる。
なぜ?
誰?
脳裏を交錯する、取り留めも無い予感。
そんな中、
「あ・・・・・・・・・・・・」
響は不意に思い出す。
この声、
確かに、聞き覚えがある。
あれは先日、エインズワースの城を脱出する時に聞いた。
ギルに言われた。
この声を、覚えておけ、と。
「あ・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・」
傍らの美遊が、恐怖に震えながら、その場に座り込む。
「み、美遊?」
差し伸べた響の手に、美遊は縋りつく。
全身の筋が断裂するほどに強張る中、
響は眦を上げて、相手を見る。
「やあ、ここはフランクに『初めまして』、とでも言うべきかな?」
やけに気さくな声。
それが却って、不気味に映る。
「・・・・・・ダリウス・・・・・・エインズワース」
ついに姿を現した敵の首魁。
その圧倒的な不気味さを前に、響は怯む事無く刀の切っ先を向けた。
第18話「闇の底より」
一方その頃ギルは・・・・・・
「おじさん、チャーハンは無いの?」
「餡かけチャーハンなら」
「うわー オチが見えててヤだなー」