Fate/cross silent   作:ファルクラム

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第24話「絶望への一矢」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瓦礫が、降り注ぐ。

 

 それは、城の崩壊が、既に止められないところまで来ている事を意味していた。

 

 響がダリウスに対して「破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)」を使用した事で、エインズワースが構成した全ての術式が、雪崩撃つように崩壊しているのだ。

 

 そして、

 

 その崩壊に巻き込まれようとしている少年がいた。

 

「クソッ クソッ 何なんだよ、急に!?」

 

 城の中を駆けまわりながら、悪態を吐くヴェイク。

 

 先日、仲間に諮る事無く勝手に出撃して、響と美遊に大敗したヴェイクは、傷の治療こそされた物の、その後は自室において、半ば監禁に近い扱いを受けていた。

 

 そんな中での城の崩壊である。

 

 ヴェイクは崩れた壁の隙間から部屋を脱出したのだった。

 

 しかし、そうしている間にも、城の崩壊は急速に進んでいく。

 

 更に、崩壊しつつあっても、城を包むように配置された置換魔術は健在であるらしく、ヴェイクは迷宮区に迷い込み、進む方向さえ分からなくなってしまっていた。

 

「クソォッ この僕が、こんな所で死んでたまるかよ!!」

 

 自身に降りかかる理不尽。

 

 その全てに怒りを向ける。

 

 自分を呑み込むようにして崩壊していく城にも。

 

 自分を閉じ込めたエインズワースにも。

 

 そして、自分をこんな境遇に追いやった、響達にも。

 

 みんなみんな、あいつらが悪い。

 

「許さない・・・・・・許さないぞ、あいつらッ 必ず、目に物を見せてやる!!」

 

 暗い恩讐が、少年を包む。

 

 そうだ。

 

 復讐するは我にあり。

 

 「正しい自分」は「邪悪な奴等」に復讐する、正当な権利があるのだ。

 

 その為にも、今はこの崩壊していくガラクタの城を脱出しないと。

 

 その時、

 

《やあ》

 

 城の崩壊音が鳴り響く中、妙に気さくな声が上がった。

 

 振り返るヴェイク。

 

 その視界の先には、黒く淀んだ影があるだけ。

 

 だが、

 

「あ、あなたはッ!?」

 

 驚きの声を上げるヴェイク。

 

 それに対し、影の方も笑いかけたような気がした。

 

《どうやら、お困りのようだね。よかったら、力を貸そうじゃないか》

 

 

 

 

 

 主の元へ、素早く駆け寄る黄金の女。

 

 一同が呆気に取られる中、その行動は誰よりも早かった。

 

 状況を理解したアンジェリカは、とっさに攻撃を中断すると、主の元へと飛ぶ。

 

「ジュリアン様、こちらへ!!」

 

 少年の手を掴むアンジェリカ。

 

 無防備な主を、一刻も早く敵の手の届かない場所まで逃がす必要があった。

 

 それを察知した響が、アンジェリカを追って刀を振り翳す。

 

「ん、行かせ、ない!!」

 

 接近と同時に、袈裟懸けに振り下ろされる白刃。

 

 大気を斬り裂く銀の閃光は、しかしジュリアン・エインズワースには届かない。

 

 その前に割って入ったシェルドが、手にした大剣で軽々と打ち払う。

 

「アンジェリカ、ジュリアン様を、早く!!」

「うむッ」

 

 シェルドの援護を受けながら、アンジェリカは置換魔術を発動。空間を開いて繋げ、別の場所へと移動する。

 

 その様に舌打ちする響。

 

 既に置換の口は閉じ、アンジェリカ達の姿は完全に消え去ってしまった。

 

「んッ 邪魔!!」

 

 素早く刀を返す響。

 

 立ちはだかるシェルドに対し、切っ先を真っすぐに向けて突き込む。

 

 だが、

 

「無駄だッ!!」

 

 響の一撃をその身で受けて、平然と立つシェルド。

 

 これまで同様、如何無く発揮される無敵性を前に、響の斬撃は防がれる。

 

 だからこそ、

 

 響は仕掛ける。

 

 真っ向から振り下ろされる、シェルドの大剣。

 

 その刃が響を捉えた。

 

 次の瞬間、

 

 少年の姿は霞のように消え去る。

 

「ぬッ!?」

 

 驚くシェルド。

 

 殆どゼロ距離に近い場所から振り下ろされた大剣。

 

 回避が可能な距離ではなかったはず。

 

 シェルドとしては、大剣の一撃でもって響の体勢を崩し、そのままトドメの一撃を放とうとしていたのだが、その目算が狂った形である。

 

 次の瞬間、

 

「ッ!?」

 

 背後に浮かんだ殺気。

 

 とっさに身を翻すシェルド。

 

 そこへ、響が斬りかかる。

 

 ほとんどとっさに、回避を選択するシェルド。

 

 僅かに、刃が肩を霞める。

 

 シェルドが大剣を振り下ろした一瞬の隙に、響は回避すると同時に背後に回り込んでいたのだ。

 

 後退するシェルド。

 

 だが、やはりと言うか、響の剣は彼を傷付けるには至っていない。

 

「やっぱ、だめ・・・・・・・・・・・・」

 

 これまで何度も味わってきた状況だ。

 

 対して、シェルドも警戒したように大剣を構える。

 

 シェルドもまた、予想外の機動力を発揮した響を警戒しているのだった。

 

 

 

 

 

 響とシェルドが麓で激突している頃、

 

 置換魔術によって岩山の上に降り立ったアンジェリカは、自らの主を慎重に下す。

 

 既に城の外観は完全に崩れ、その姿は武骨な岩山へと変貌していた。

 

 巨大な花が開いたような外観をしている岩山は、それだけで何かを受け止めるような器の姿をしていた。

 

 その岩山で、ジュリアンたちを待つ影が2つある。

 

 エリカ、そしてシフォンは、ジュリアンたちを待ちわびるようにして、岩山の上に佇んでいた。

 

「お兄ちゃん・・・・・・・・・・・・」

 

 エリカは、どこか不安そうな表情でジュリアンを見上げてきている。

 

 そんな少女を、不機嫌そうな目で一瞥するジュリアン。

 

 一見すると、怒っているようにも見える少年の姿。

 

 だが、

 

 ジュリアンは手を伸ばすと、そっと少女の頭を撫でた。

 

 少し、くすぐったそうに目を閉じてから、エリカは改めてジュリアンを見る。

 

「おうち、壊れちゃったね」

 

 残念そうに言いながら、エリカは眼下に目をやる。

 

 今や完全に崩壊した城は、その姿はまるで幻のように消え去っていた。

 

「それに、イリヤお姉ちゃんも、美遊お姉ちゃんも、あっちに行っちゃった」

 

 少女の眼下では、こちらを見上げているイリヤと美遊の姿がある。

 

 2人とも、未だに事態の変化についていけず戸惑っている様子が見て取れた。

 

 もっとも、それは他のメンツについても同様である。皆、いったい何がどうなっているのか、状況を把握できずに困惑していた。

 

「エリカ」

 

 落胆する少女に、ジュリアンは硬い口調で語り掛けた。

 

「お前の味方、家族は兄であり、父である俺1人だけだ。他にはもう、何もねえんだよ」

 

 諭すような口調。

 

 その言葉を、エリカや、傍らに控えているアンジェリカやシフォンは黙して聞き入る。

 

他人(ひと)は滅びる為に生まれた。世界(ほし)はもう壊れている。選択肢(みらい)はついに行き詰った。だからこそ、俺が必ず救って見せる。エインズワースの悲願は俺とお前で成し遂げる。良いな」

 

 兄の言葉に対し、エリカは瞼をぬぐう。

 

 そうだ。自分にはこの人がいる。やるべき使命がある。

 

 ならば、他には何もいらない。

 

「うん。エリカ、全然悲しくないよ。エリカにはお兄ちゃんがいるもんね」

 

 笑顔のエリカ。

 

 その少女に目を向けつつ、ジュリアンは一同に宣言するように言った。

 

「神話を、もう一説進める」

「ッ!? それは!?」

 

 声を上げたのはシフォンだった。

 

 ジュリアンの言葉。その裏にあるリスクは、決して無視出来る物ではない。

 

 そんな事をしたら、エリカにどんな影響がある事か。

 

 更に抗議するべく口を開きかけるシフォン。

 

 だが、

 

「控えよッ」

 

 アンジェリカの鋭い叱責が、少年に飛ぶ。

 

「主の決定だ。我らが口を挟むべき事ではない」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 アンジェリカの言葉に、黙り込むシフォン。

 

 どこか、悔しさを滲ませるように、唇を噛み占める少年。

 

 彼らに背を向け、ジュリアンは腕を大きく頭上へ掲げた。

 

「聞け、器共。お前らがいかに足掻こうが、喚こうが、俺の神話は決して覆らない。全てが、無駄なんだよ」

 

 言い放つと同時に、

 

 「それ」は現れた。

 

 ジュリアンたちの遥か頭上。

 

 空中に浮かび上がるように、

 

 巨大な影が出現した。

 

 闇色をした立方体。

 

 その大きさたるや、岩山を覆いつくすほどである。

 

「お前らに選択肢などない。選択したつもりでいるだけ。足掻こうが、抗おうが、結末は一つ。俺が作る神話に全てが収束する」

 

 冷ややかに告げるジュリアン。

 

 対して、誰もが困惑を隠せずにいる。

 

「何・・・・・・あれ?」

「あれは、いったい・・・・・・・・・・・・」

 

 あまりの事態に、息を呑む美遊とイリヤ。

 

 予想外すぎる事態の連続に、言葉を発する事すらできない。

 

 そして、それは響も同様だった。

 

 シェルドの攻撃を刀で受け止めながら、視線は頭上へと向ける。

 

「黒い、サイコロ?」

「貴様が知る必要は、無い」

 

 鋭く言い放ち、響の身体を蹴り飛ばすシェルド。

 

 対して、とっさに空中で体勢を入れ替えながら着地する響。

 

 眦を上げる少年。

 

 その視線が、

 

 遥か頭上に立つジュリアンとぶつかり合った。

 

「衛宮響。俺はお前を赦さん。俺たちの(いえ)を壊した事、父の概念置換を壊した事。そんな物は些事に過ぎない。だが、聖杯(美遊)に余計な知識を与え、あまつさえ俺の神話を壊そうとするなら、まずはお前から真っ先に消し去ってやる」

 

 ジュリアンが言い放つと同時に、変化は起こった。

 

 巨大な立方体から、漆黒の泥が零れ流れる。

 

 流れ出た泥は、その下にいたエリカを呑み込むと、更に岩山から溢れ出していく。

 

 その様を見下ろしながら、ジュリアンは冷酷に告げる。

 

「逃げるなら好きにしろ。夢よりも儚い希望を抱いてな。だが覚えておけ、エインズワース(おれたち)の暗闇は、地の獄まで覆いつくすぞ」

 

 ジュリアンが言い放つと同時に、おぞましい変化が起こった。

 

 あふれ出た泥。

 

 その黒々とした水面より、

 

 恐怖が生まれ出る。

 

 ズルリと這い出る、漆黒の絶望。

 

 それらは、やがて形作られていく。

 

「なッ!?」

「これはッ!?」

 

 驚く一同が見ている前で、

 

 泥が次々と人型を成していく。

 

 形も、大きさも様々。中には、明らかに「人」のレベルを逸脱している物までいる。

 

 武器を手にしている者、徒手の者など、姿形も多様である。

 

「こ、これって・・・・・・・・・・・・」

「まさか・・・・・・・・・・・・」

 

 何かに思い至ったように呟くクロ。

 

 そうしている内に、漆黒の人型は一斉に動き出した。

 

 その数は数十、

 

 否、

 

 数百、

 

 否、

 

 数千、

 

 もっと・・・・・・あるいは無限に湧いて出てきている感すらあった。

 

「クッ!?」

 

 とっさに、干将と莫邪を投影し斬り込むクロ。

 

 漆黒の英霊が振り下ろす剣を、黒白の双剣で受け止める。

 

 だが、

 

「グッ!?」

 

 予想以上に重い一撃を前に、クロは思わずうめき声を漏らした。

 

 ほんの数合。

 

 たったそれだけの斬り合いで、干将と莫邪の刃はボロボロに成り果てていた。

 

「これはッ!?」

 

 一瞬、武器を失って驚愕するクロ。

 

 そこへ、全方位から殺到する漆黒の英霊達。

 

 次の瞬間、

 

「全方位ッ!!」

 

 白い小さな影が、クロと背中を合わせるように飛び込んで来た。

 

斬撃(シュナイデン)!!」

 

 鋭く手にしたルビーを振るうイリヤ。

 

 薄く鋭い斬撃が、四方に放たれる。

 

 だが、

 

 大気を斬り裂く魔力の刃は、英霊達を前にして、けんもほろろに弾かれてしまう。

 

「・・・・・・ダメか」

 

 落胆と共に舌打ちするイリヤ。

 

 彼女の必殺技とも言うべき魔力斬撃でも、傷一つ付けられなかった。

 

「取りあえず、無事で何よりってところかしらね」

 

 クロはイリヤと背中合わせに立ちながら、再び干将莫邪を投影して構える。

 

「クロ・・・・・・」

「けど、いきなり絶体絶命よね、これは」

 

 クロの口にも苦い物が走る。

 

 正直、(クロにとっては割と腹立たしいが)響と美遊の奇襲作戦が成功したのは喜ばしい事である。これで少なくとも、エインズワース側の思惑を大きく狂わせることには成功した筈。

 

 だが、事態は却って、思わぬ方向に転がってしまった感があった。

 

 ほぼ同時に、バゼットも戦闘を開始する。

 

 向かってくる漆黒の軍勢を前に、徒手で挑むバゼット。

 

 連撃で叩き込まれる攻撃を前に、次々と拳を繰り出して防ぐ。

 

 だが、

 

 そのバゼットに、真っ向から接近した英霊が、手にした剣を振り翳す。

 

「クッ!?」

 

 とっさに防御の姿勢を取るバゼット。

 

 交差させた腕が剣の一撃を受け止める。

 

 だが、

 

「グゥッ!?」

 

 強烈な一撃をまともに受け、大きく後退するバゼット。

 

 戦慄が走る。

 

 目の前に溢れんばかりの数が出現した黒化英霊達。

 

 この1体1体が全て、歴史に名を成した英雄達だ。故に、その戦闘力は侮れない物がある。

 

「下がって、バゼット」

 

 低く告げる響。

 

 同時に、その身には浅葱色の羽織が纏われる。

 

 宝具「誓いの羽織」を纏い、暗殺者(アサシン)から剣士(セイバー)に特性を入れ替える響。

 

 同時に、切っ先を真っすぐに向けて駆ける。

 

 一歩、

 

 二歩、

 

 三歩、

 

 音速まで加速した剣は、餓えた狼の牙と化す。

 

「餓狼一閃!!」

 

 撃ち放たれる刃。

 

 その一閃は、複数の黒化英霊をまとめて吹き飛ばす。

 

 響の攻撃を受け、泥へと帰る黒化英霊。

 

 だが、

 

「ダメ・・・・・・・・・・・・」

 

 舌打ち交じりに、響は呟く。

 

 敵の数が、減らない。

 

 1体や2体倒した程度では、焼け石に水である。どう考えても、倒す敵よりも、増える数の方が多く、早かった。

 

 じり貧、

 

 という言葉すら生ぬるい。

 

 このままでは、時間を稼ぐ事すら不可能に近かった。

 

 そんな中、

 

 美遊は眼下に広がる光景を、愕然として眺めていた。

 

 あふれ出た黒い泥の中から生まれ出でた無数の英霊達。

 

 その全てが、絶望の怒涛となって押し寄せようとしていた。

 

 セイハイ

 

 セイハイ

 

 セイハイ

 

 セイハイ

 

 セイハイ

 

 セイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイセイハイ

 

 おどろおどろしい声が、少女の鼓膜に響き渡る。

 

 思わず、目を背けたくなるような陰惨な光景。

 

 と、

 

「この泥の英霊共は聖杯を得られなかった亡者だ」

 

 立ち尽くす美遊のすぐ背後に、ジュリアンが姿を現す。

 

 置換魔術で空間を繋げる事で、背後に姿を現したのだ。

 

「聖杯を追い求める意思だけの獣。聖杯が見つかるまで無尽蔵に増え続け、この星を絶望で埋め尽くしていく」

 

 陰々とした声で告げるジュリアン。

 

 対して美遊は、ただ打ちひしがれるように立ち尽くしている。

 

 ジュリアンが言っている事は偽りではない。その証拠に、今も黒い英霊達は増え続けている。

 

 この泥の英霊達が増え続ければ、本当に世界を覆いつくしかねない。

 

 その美遊に、ジュリアンは手を差し出す。

 

「俺の手の中に戻れ。自分の意思でな」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 立ち尽くす美遊。

 

 そうしている間にも、眼下では仲間たちが戦っている。

 

 イリヤが、クロが、凛が、ルヴィアが、バゼットが、

 

 皆が、絶望に飲み込まれながら、必死に抗っている。

 

 そして、

 

 響

 

 美遊の大切な彼氏である少年もまた、諦めずに剣を振るい続けている。

 

 彼らを助けるには、美遊がエインズワースに身を委ねるしかない。

 

 もう、本当にそれしか方法が無い。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 手が、伸ばされる。

 

 少女の手が、ジュリアンの手に触れようとした。

 

 次の瞬間、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 直前で、拳をギュッと握った。

 

「貴様ッ」

 

 手を引く美遊に、いら立った声を上げるジュリアン。

 

 対して美遊は真っ直ぐに見つめ返すと、硬い意思と共に言い放った。

 

「あなたの元に戻る気は、無い。私は、私の生きたい道を行く」

 

 迫りくる絶望を前にして、美遊は折れぬ意思を真っ向から示す。

 

 それは、彼女が真の意味でエインズワースに決別を告げた瞬間でもあった。

 

 その時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、美遊。もう・・・・・・お前は、そんな男に縛られなくていい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、戦場に響く男の声。

 

 ひび割れ、かすれた、

 

 しかし、美遊にとって、決して聞き忘れる事のできない声。

 

 振り返る一同。

 

 その視界の中で、

 

 1人の少年が、ゆっくりと歩いてくる姿があった。

 

 歳の頃は10台中盤から後半くらい。

 

 若々しく、気力に満ち溢れた容姿。

 

 しかし同時に、全身から発せられる気配は、この世のあらゆる苦難を踏み越えた物のみが出せる、老成された「凄み」があった。

 

「状況は金髪の少年から聞いたよ。ありがとう、妹の為にこんなになるまで戦ってくれて」

 

 一歩一歩、大地の場所を確かめるように、ゆっくりと歩いてくる少年。

 

 その鋭い相貌を見据え、

 

 凛とルヴィアは息を呑む。

 

「う・・・・・・嘘!? どうしてあなたが!?」

「妹・・・・・・どういう? ・・・・・・まさかッ!?」

 

 だが、

 

 恐らくこの場にあって、最も驚愕したのは、この姉弟たちだろう。

 

「そんな・・・・・・何で・・・・・・」

「まさか・・・・・・うそでしょ」

「ん・・・・・・何で、いる?」

 

 イリヤ、クロ、響が、それぞれに愕然として、少年を見詰める。

 

 そんな一同が視線を集める中、

 

 少年は、ゆっくりと、手に魔力を集める。

 

「後の始末は俺が付ける。それが、兄としての務めだ」

 

 言い放つと同時に、鋭く腕を振るう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投影(トレース)・・・・・・開始(オン)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言い放った瞬間、

 

 

 

 

 

 超高速の斬撃が、縦横に奔った。

 

 

 

 

 

 吹き飛ばされる黒化英霊の群れ。

 

 その様を目にしながら、

 

 少年は投影によって作り出した巨大な斧剣を、威嚇するように大地へと突き立てた。

 

「ジュリアン、やっぱりおまえを倒さないと、美遊は幸せにはなれないみたいだな!!」

 

 言い放つと少年は、遥か岩山の頂上にいるジュリアンを、真っ向から睨みつける。

 

「お前があくまで『全』の為に『一』を殺すというのなら、俺は何度でも悪を成そう」

 

 衝撃を伴うほどにぶつかり合う、両者の視線。

 

「行くぞ、正義の味方。覚悟は良いか?」

 

 対して、

 

 ジュリアンも尽き果てぬ憎悪と共に、今、そしてかつて、自らの前に立ちはだかった少年の名を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「衛宮・・・・・・士郎!!」

 

 

 

 

 

第24話「絶望への一矢」      終わり

 




パールヴァティ

私などの世代は、そう言われてパッと思い浮かぶのは「3×3eyes」ですかね。結局、長すぎて最後まで集める事はできませんでしたが。
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