「ん〜? 何でだ? 何で自分の事なのに思い出せねぇんだ? ……分がんねぇ何も思い出せねぇ。」
彼は困惑していた。先程までの不安や恐怖が嘘の様に吹き飛び、今はただ自分が何者なのかを考えていた。草木も眠る丑三つ時に巨大な骸骨が体をカタカタと鳴らしうんうん唸る姿は不気味そのものである。
彼は数分考え込むと組んでいた腕をだらんと下げて肩をがくりと落とす。
はぁ〜と溜息をつくと青紫色の息が溢れてくる。しかし骸骨から息が出る訳は無い。
実はこれ息ではなく彼の瘴気なのだ。故に近くにあった木の一部は彼の瘴気をもろに受けてボロボロと腐り落ちる。だが彼はそんな事には気付く事もなくただただ項垂れていた
「駄ぁ目だぁ、何も思い出せねぇ。どうなってんだ? もしかして記憶喪失って奴かぁ? あれ? でも何で記憶喪失って言葉は知ってんだ? ……分がんねぇ。でも、オラぁ多分幽霊か妖怪とか言うやつだよなぁ。」
彼はこれからどうしようかと考えていた。
そして取り敢えず自分が何者かは後にしよう、まずはこの場所について知らなければいけないと思い移動しようと考えた。
そして歩き始めようと思った時ふと何処かから気配を感じた。彼はギョロギョロと眼窩の部分にある赤い目玉の様なものを動かすと木の後ろから尻尾の様なものがぴょこんと飛び出しているのが分かった。
彼は何かと思いガシャガシャと体から音を立てドシンドシンと歩く。そしてその木に近づき後ろを見てみると小さな女の子がいた。その女の子には鼠の様な耳と尻尾が生えているのが分かった。少女はこちらに気付くや否や目を見開き顔を真っ青にして口を開く。
次の瞬間。
「ぎにゃああああああああああ!!!!!!」
「うわあああああ!!!!!!」
突然少女が叫び出したので思わずビックリして自分も叫んでしまう。少女はひとしきり叫んだ後白目を剥いて仰向けにバタンと倒れてしまった。突然事にどうしょうかと思ったが取り敢えず放置はいけないとだろうと思い少女が起きるまでしばらくこのままでいる事にした。
「はぁ〜、色々見て回ろうと思ったのになぁ。」
彼はまた溜息をつくとどかっと少女の傍に座り込んだ。
時は少し遡り数十分前
一人の少女がフラフラと歩いている。少女の名はナズーリン。毘沙門天の直属の部下であり代理でもある。彼女はブツブツと何かを言いながら帰宅していた。彼女は無縁塚と呼ばれる墓の近くに小屋を建て普段はそこで寝泊まりしているのだがどうやら先程まで主人である寅丸星に呼ばれ命蓮寺にいた様だ。
時刻は既に午前2時、家に着いた彼女は早く寝ようかと寝床について目を閉じた。その直後彼女の耳に謎の音が響く。
ゴゴゴと響く音に彼女は目を眠そうに開けて体を起こす。
「何の音? 地震?」
彼女は最初地震かと思ったが揺れが無いためそうでは無いらしい。では何かと思い耳を澄ますと無縁塚の方から聞こえてくる。
彼女は眠そうだった目をパチリと開けて音のする方を見る。
「無縁塚から? 何だろう? ひょっとしてお宝⁈」
彼女は家を飛び出して無縁塚の方へ走り出す。きっとお宝が掘り出されたんだ!そんな期待を胸に笑顔で無縁塚に到着する。しかし彼女はその笑顔を消し去り目を見開くとボソリと呟く。
「何、あれ。」
目の前に見える光景はお宝などでは無く巨大な骸骨がカタカタと音を鳴らし地面から這い出てくる光景。体の周りには煙の様に瘴気が漂い、周りを青紫色に染め上げている。骸骨が全身を露わにするとより一層分かる。
デカイ。10メートルは優に超えている、骸骨が一歩また一歩と歩くたびに足元にある植物が枯れ果て腐っていく。
不味い、あれ不味い。
そう思い咄嗟に木の後ろに身を隠す。どうしよう、逃げようか? そう考えるも恐怖で体が硬直して動かない。それにもし音を立ててバレたらどうしようか。そう考えるたびに彼女の顔は青ざめていく。
ここはガマンだ。あいつが何処かへ行くまでじっとしていよう。そう思い必死に気配を殺す。少し経ってからか木の向こうからガシャガシャと骸骨が歩く音が聞こえる。
やっと何処かへ行ってくれる!彼女はふぅと一息着いた、そう思ったのもつかの間再び彼女は青ざめる。
音がこっちに近づいてくる。
そんな馬鹿な!気配は完璧に隠せているはず、見つかる筈もない!そんな事を思っていた。(恐怖と焦りで分かっていない)
そして音が止むとぬぅっと彼女を影が覆う。彼女はゆっくりと振り向き顔を上に向けると真っ赤な目を持つ巨大な髑髏がこちらを覗き込んでいた。
彼女は訳が分からないまま叫び気絶した。
次回もよろしくお願いしますm(__)m