みかん少女とヨーソローな幼馴染が部屋にいる生活 作:すいーと
予定とはなんだったのか?
「ありがとうございました」
店員さんに見送られながら俺たちは店を出た。俺の手には青色の箱が握られている。
「これでプレゼントも買ったし、あとは部屋の飾りを買えばサプライズパーティーの前日までの準備は完了だな」
「そうだけど、そろそろ帰らないと曜ちゃん帰って来るよ」
「もうそんな時間か……。んじゃ飾りはまた後日か」
そろそろ13時を過ぎる。午前中で講義を終える曜が家に帰って来るころだな。二人で出かけていたなんて知れたら、あらぬ誤解を受けかねない。気まずいまま誕生日を祝うことになったら目も当てられない。そんな事態を防ぐべく急いで帰宅する。
エントランスについた俺はそこで後ろからついてきていた千歌の方を振り返った。
「よし千歌。別々に入るぞ」
「なんで?」
「もし曜が先に帰ってきていたら二人でどこ行ってたの? ってなるだろ。別々なら散歩とかなんとか言い訳できるだろ?」
「真樹君頭いいっ」
そんなことで褒められても困るのだが、褒められて悪い気はしないので少し照れる。
「先、俺が入るからもし曜がいたら連絡する。そしたらコンビニで適当にお菓子でも買ってきてくれ」
「ん。わかった」
千歌からの返事を聞くとそのままエントランスの内側に入っていく。そのまま304号室へと向かう。玄関の鍵を開け、恐るおそる扉を開ける。ゆっくり開けたことで扉が不気味な音を立てる。すこし開いた隙間から曜の靴の有無を確認する。
「よかったまだ帰ってきてないみたいだ」
安堵をする間もなく千歌に連絡を入れそのまま入ってきていい旨を伝え、無事誕プレ選びは完了した。残り3日ばれずに行けば人生初めて曜の驚く顔が見られる。俺はそのことが楽しみしかたなかった。
誕生日会の前日になった。あと数時間もすれば日付が変われば4月17日。
嵐の前の静けさとはよく言ったもんで、何かが起こる前はいつも以上静かになる。今この家はまさにそんな状態だ。
ここまでいつもどおり何事もないように過ごすのはとても大変だった。あの日買えなかった飾りを買いに行くのも、ばれないようにもって帰って来るのも苦労した。曜の勘の鋭さは女の子の中でもトップクラスだ。それを誤魔化し続けるのは俺一人では到底できなかっただろう。ここ数日千歌には感謝しっぱなしだ。その苦労も誕生日ケーキ届く10時まで、睡眠時間を除けばあと数時間だ。
俺は千歌と二人で買ったプレゼントをこっそり取り出してカッコよく渡す練習をしようとエア曜相手にいくつかのパターンを試していた。
「曜。はいこれ」
――違う軽すぎる。
「曜。誕生日おめでとう」
――これはカッコつけすぎだろ。
そのあともいくつかのパターンを試し、ネタ切れになって床に仰向けに倒れこんだ。
「千歌のやつ。なんて苦労する役を押し付けてくれやがった」
『こういうのはやっぱり男の子が渡した方がいいと思うから真樹君よろしく』と千歌に丸投げを食らってしまい、こうして見られるといろいろな意味で死ねるような恥ずかしい練習を行っているのだ。とそこに扉をたたく音がした。突然のことでプレゼントをポケットに慌てて突っ込み返事をした。
ここ数日、真樹君と千歌ちゃんの様子がおかしい。そう気が付いたのは1週間ほど前の事だった。
私――渡辺曜の勘は鋭いほうで隠し事なんかはすぐ気づいてしまう。
二人は最近私に何かを隠しているのだ。二人でこそこそ何かをしては私が来ると、お化けでも出たかのような反応をするのだ。ほかにも目的のわからない外出をしたり、やたらと二人でのアイコンタクトが多い。でもそれくらいならよくあることだと流していたら、とうとう決定的な証拠を見てしまった。二人が仲良くデパートでデートをするのを。最近やたらと私の予定を気にするから嘘を教えたのだ。それからの様子を見て判断しようとしばらく様子を見て見たが、疑惑は深まるばかり。
だから今から真樹君と話そうと思って彼の部屋の前にいる。はっきり彼が何をしているのか知りたい。そんな思いを乗せて、扉をたたいた。
「は、はーい」
声がして扉が開く。私を見た彼は一瞬目を見開いた。
「真樹君少し話、しない?」
「今、ここでか?」
彼は困った表情を浮かべて私に問を投げ返してきた。
「どうしてもなら場所変えるけど?」
時間を変える気はないって意思を込めて返す。真樹君は昔から何も考えてように見えて意外と頭が切れる方で、問い詰めるなら時間を与えない方がいい。
「あ、いや、その今日はもう遅いし、明日にしないか?」
「やましいことがないなら別に今でもいいでしょ? ほら行くよ」
多少強引だが、仕方ない。私は真樹君の手を取ると、そのまま外に出た今日こそ問い詰めてやる。
私たちは近くの公園にやって来た。日がすっかり落ち、少し肌寒い。23時を回った公園はしーんとしていて聞こえる足音は2つ。中央に一本だけある照明まで来たところで後ろを振り返った。
「ここらへんでいいかな」
「あ、ああ」
月明りと照明のおかげで彼の表情がよく読み取れる。目にかからないに切りそろえられた黒髪は緊張からか、吹き出た汗で張りいている。周りを忙しなく見回す目は言い訳や気をそらす何かを探すために必死だ。真樹君は頭は切れるが基本隠し事が苦手なのだ。その動作を確認して私は確信した。彼はきっと隠し事をしている。そうと決まれば追い詰める。千歌ちゃんと分断したことで、いつもの手は使えなくなった。正直に答えて。祈るような気持ちで問の矢を彼に放った。
「あのさ、最近千歌ちゃんとこそこそなにやってるの?」
「いや別に何もしてないぞ?」
「嘘。だって見たもん」
「見たって何を?」
彼はあくまでしらを切りとおすつもりらしい。すごく裏切られた気持ちになった。
抑えていた感情の枷が外れていくのがわかる。そしてその勢いのまま証拠を叩きつけた。
「千歌ちゃんと楽しそうにデートしてたのみたもん!!」
「いやあれは――」
「もう言い訳なんて聞きたくないっ!!」
流れ出した悲しみの感情は突き動かされるまま夜の公園を飛び出した。
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