みかん少女とヨーソローな幼馴染が部屋にいる生活 作:すいーと
たくさんの人に読んでもらえるのは大変うれしいですが。
もしかしてこの小説投稿を初めて1か月記念ですかな?
とにかく新たに高評価、お気に入りしてくださった皆様ありがとうございます。
ばか。裏切り者。嘘つき。浮気者。
思いつく限りの罵倒を頭に浮かべながら夜の街を走っていく。公園を飛び出してから後ろを振り返ることなく走り続けて、息が上がってきている。
私はもうきっと彼からしたらどうでもいい女だったのかもしれない。もしかしたら最初から千歌ちゃんも私を利用しただけなのかもしれない。暗い思考はやがて涙に変わっていった。そういえばここはどこだろう? どうでもいいや。もうどうせもう役目を終えた
薄汚れていながらたくさんの人で溢れかえっている。不思議な街に、私は吸い寄せられるように、足を踏み入れていく。
酒や女におぼれたサラリーマンがごみの上で眠り、まっとうな仕事していないような男が、きれいに着飾った女をはべらせて私の横をとうり過ぎていく。
私はあんな男にこびている女より惨めだと思ってしまう。欲にまみれた薄汚い場所だけど惨めな私にはお似合いなのかもしれない。彼に裏切られたショックはそれほどに大きかった。そしてだんだん考えるのがめんどくさくなっていく。街を彷徨えば彷徨ほどそれはどんどん悲しくなっていく。
「お姉さん一人? ねぇー無視しないでよ、ねーねー」
にじんで見えた視界の端で何かが話している。涙をぬぐって周りを見るが誰もいない。
「もしかして私?」
「そうだよ。というか君しかいないじゃん」
その男の風貌はチャラいといった感じで不潔さはないが染めてからだいぶたったであろう金髪に、趣味の悪いどくろのピアス。流行りなのか髪をワックスで逆立てている。普段なら無視するところだが、今の私は普通ではなかった。
「そう。一人です」
「やっぱりー、泣いてるもんね。悲しいことでもあった? ならさ、忘れられるような楽しいところ行かない?」
「大丈夫です……」
さすがはチャラ男。言葉がうまい。明らかに遊び慣れている。でも私だってそんな軽い男にほいほいついて行くほど甘くない。
「いや、マジで泣いてる女の子放って帰れるわけないし、別に変なことしないさ~」
今日初めてかけられた優しい言葉。私の心揺らすには十分だった。
「……。何も変なことしないならいいよ」
「じゃあ決定ね」
「……。うん」
男の舐め回すような視線に気が付かないまま歩き出してしまった。
私の手を握り街を駆ける。しばらくしてその男が止まった。やってきたのはホテルと書かれた場所だった。
「ここだよ」
「変なことしないんじゃないの?」
「はぁ? 何言ってんだよ目の前きてなしとかありえねぇから」
ここにきて初めて私は気が付いた、この男は女を身体や顔でしか見ない屑なんだと。
それに気が付いたとき私は恐怖に駆られてしまった。男は全員こういうものなのかと。
「ごめんなさいやっぱりなしで」
とにかく一亥も早くここから逃げようと、男の手を振りほどきながらそう告げる。あとは走って逃げるだけだ。しかし、一歩踏み出したところでがっちり腕をつかまれてしまった。
「っ離して!!」
「そうはいかないぜ。あんたは俺の誘いに一度乗ったんだ自分の言動には責任を持たないと」
力任せに私を引き寄せるとそのまま私をホテルに連れ込もとしてくる。必死に抵抗を試みるけど、やはりそこは男と女。けして覆らない力の差で徐々にホテルに近づいていく。しかもそこはラブホテル。人目を避けるため助けてくれるような人は見当たらない。たぶん中に入ってもそれは変わらないだろう。もしかしたら初めてはレイプになるのかな? できれば好きな人が良かったな……。抵抗のために使っていた筋肉がだんだん限界を訴えて来る。靴のすれる音がだんだん長くなってくる。
――真樹君助けて。
諦める前にすがるように彼の名前を思い浮かべた。どうせ来るわけないのに。
そしてついに完全に身体がホテルの入り口に入った。終わった。閉まっていく扉を目で追っていこれ以上見ていられなくなって目を閉じた。
閉まる音が聞こえたらきっと私はこの屑に抱かれるのだろうとそんな最悪な未来を浮かべながら。
しかし何秒たっても扉が閉まる音がしない。それどころか私は入り口から一歩も動いていないのだ。事態を把握できずに私は目を開けた。入り口から伸びている汗だらけの手。それが私を入り口へ引っ張りだそうとしてしている。しかしその救いの手は頼りないほど細く白い。ガラス越しに見えた顔を見て思わず声を上げてしまった。
「……。真樹君……何で?」
「曜とにかく来い」
そういうと真樹君は私を奪うように外へと連れ出すと素早く後ろに隠した。縋りつくように触れた背中はびっしょり濡れていてここまで走り回ってきたことがわかる。でもどうしてだろう? あなたにとって私はどうでもいい女なんじゃなんだないの? 言いたいこと聞きたい事たくさんの疑問が生まれたが今は聞ける雰囲気じゃない。
私が消えたことで、男が後ろ振り返り真樹君の方に近づいて来る。
「てめぇ、女を横取りとはいい度胸だな」
「それはこちらのセリフですよ」
チャラ男は私という女を取られ激昂した。真樹君の胸倉をつかんでまさに一触即発状態。
「ああ? んなの知るか今からオレはそのここでするって約束したんだぞ?」
「その割には彼女嫌そうでしたけど?」
「ったくめんどくせ、ガキ、痛い目見たくなかったら女おいて消えろ」
「断ります。というか早く逃げた方がいいですよ通報したので。もうすぐ警察が来ますよ」
携帯をちらつかせて真樹君は男に言い放った。そういえば喧嘩とか弱かったもんね。
「ちっ覚えてろよ」
捨て台詞を残した男は去っていった。
恐怖が去ったことへの安心感で私はその場に倒れこんでしまった。
「お、おい曜大丈夫か?」
真樹君が焦った声をあげてこっちを振り返る。
「どうして追いかけてきたの?」
でも助けてもらったとはいえ元は言えば真樹君が悪いのだ。問い詰めるぐらいいいだろう。
「はぁー。ほんとはサプライズで渡そうと思たけど仕方ない。これ」
なぜかてれたように顔を赤くして差し出してきたのはラッピングされた箱。よくわからないまま受け取る。
「これ開けていい?」
「ああ。俺と千歌からだ」
開けた箱にはネックレスが入っていた。船の碇の真ん中に小さい宝石が埋め込まれている変わったネックレス。
「どうして?」
「あっ、忘れてた。曜、誕生日おめでとう。ほんとはサプライズで渡す気だったけど一応日付変わったし」
サプライズ、誕生日、私の中ですべてがつながった。もしかしたら私はすごい勘違いをしていたのでは?
「もしかしてこれを買うために千歌ちゃんと?」
「ほんと曜にはかなわないな~。そうだよ曜が見たのはこれを選ぶ時の現場だ」
「じゃあどうしてこれなの?」
「ああそれね、曜は船が好きなイメージがあって、真ん中のダイヤは4月の誕生石。って恥ずかしいから解説させるなよ」
答えを聞いた私の目から涙があふれた来た。私は全然逆のことを考えていた。こんなにも考えてくれていたのに。さっきまでとは違うあったかい涙。悲しみで枯れたはずなのにどんどんあふれてくる。止まらない。視界が滲む。
「バカは私だ、バカ曜だ」
涙で何も見えなくなった私をそっと温もりが包んだ。
「だとしたら俺もバカになるな。ほんと誤解させるようなまねしてごめん」
声すら出ないくらい泣き、真樹君の優しさ暖かさに包まれている。その事実を確認できたことがうれし涙を加速させていった。こんなのずるい。
真樹君は私が泣き止むまでずっとそのままでいてくれた。
曜が泣き止み俺たちはこの後について話し合いを始めた。
「さて曜よ、隣町まで走ってくれたおかげで帰るのが大変になったわけだがどうしようか?」
正直ノンストップでここまで走ったおかげで足の感覚がほぼない。それに冷えた汗で張り付いた服がとても気持ち悪いので着替えたい。
「それなら大丈夫だよだってほら」
「さっきあんなに嫌がっていたのに?」
曜が指をしたのは目の前、つまり先ほど一悶着あったラブホテルだ。
「だってこの辺ほかに泊まれるところないし、それに終電も終わってるし、というか歩いて帰りたくないよ」
「せめて普通のホテルをだな」
「今日は何の日?」
「曜の誕生日だけど」
「なら、はい決定。ほら入るよ」
曜に引っ張られるままに中に入っていく。こまった。俺のまさかこんなに早くまた入ることになろうとはな。曜の誕生日はまだ始まったばかりだ。