みかん少女とヨーソローな幼馴染が部屋にいる生活   作:すいーと

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とうとうお気に入り300、突破しました。
さらに日間ランキング10位に乗ることがでできました。ありがとうございます。
いいことと言うのは続くもんですね。


ゴールデンウイーク話その3

 恨みや、憧れ、嫉妬。様々な思いがこもった視線を受けながらやってきたレストランの集まるフロア。予想通り昼食を取ろうとしている多くで溢れかえている。

 

「うわっ。すごい人の数だね」

 

「ほら、いわんこちゃない」

 

「でも、ほらあそこは空いてるみたいだよ」

 

 千歌が指さした先にあるのは落ち着いた照明が特徴的な店。確実に内装からこだわってる感じが伝わってくるほど、統一感のある店内。そしてそこに入ろうとして驚いて、恥ずかしそうに去っていく子ども連れの夫婦。これはあれだ、学生が手を出してはいけないタイプの高級店だ。

 

「千歌。そこはやめとこう」

 

 

「えー、早く食べられていいじゃん」

 

 どうしてこういうときだけ正論を言うんだろうか? この子は。しかしここであそこは金がないからやめてくれというのはなんか負けた気がする。それに男としてかっこ悪いことこのうえない。

 

「いや、まだ全部見てないし、そう決めつけるのはどうなんだよ」

 

「それもそうだね。うん、全部見てからにしよう。よーちゃんもそれでいい?」

 

「うんっ」

 

そんなわけで俺たちはこのフロアを回ることになった。

 

「ほんといっぱいあるねぇー」

 

「さすが都会って感じだな」

 

「あっ、ここはどうかな?」

 

「曜はほんとハンバーグが好きだな」

 

「子供っぽい思ってる?」

 

「昔と変わってないんだなって」

 

「あー、二人だけいい雰囲気作らないでよー」

 

 回ること約5分ほど。俺はよくある感じのレストランの前で食品サンプルのハンバーグを指さしてこの店に決めようとする曜をからかっていると、俺たちの間を割って千歌が入って来た。闘牛のように突進してきたのか少し息が乱れている。

 

「うわっ!! お前どこに行ってたんだよ」

 

「ほかの店も見て回ってたのっ! そうしたら二人がいなくて、見つけたと思ったらなんかいい雰囲気だし」

 

「わかったから落ち着け、なっ?」

 

「真樹君がごはんおごってくれたら許してあげる」

 

「ちゃかっりしてるなほんと。まぁそれで許してくれるならいいんだけどさ」

 

「うーん、なんか軽い女に思われている気がする……。よーしこうなったらやけ食いだっ」

 

「あははは……」

 

 千歌のそんな宣言により、このレストランで昼食をとることに決まった。お昼どき真っ只中だったが運よく早めに入った客の会計と重なり、ほぼ待たずに席に座ることができた。案内された4人掛けの椅子に座る。千歌が俺の正面、曜は隣だ。

 俺と曜は入る前に何となく食べたいものが決まっていたので千歌がメニューを決めるのを待ってから店員さんに注文をする。

注文した品が来るまでの間に俺は言わなければならないことがある。

 

「なぁ、千歌さんや?」

 

「なに?」

 

「お前ほんとにあんなの食えるんだろうな?」

 

「大丈夫!」

 

 相変わらずの根拠に乏しい自信だが、さてどうなることだろうか? 千歌の胃袋の底を知らない俺としては少し楽しみだ。

 

 それからしばらくして曜のハンバーグとサラダ、俺のカツカレーがやって来る。それから遅れること数分、千歌の頼んだオムライスと、凶悪なそれが運ばれてきた。テーブルに運ぶとき少しだけ店員さんの手が重さで震えていたのを俺は見逃さなかった。

 

「んじゃそろったし食うか」

 

「うんっ」

 

「……うん」

 

「どうした千歌?」

 

「真樹君さ、知っててわざと教えなかったでしょっ!!」

 

千歌はここでようやく自分がやってしまったことに気づいたようだ。

 

「ジャンボパフェって書いてあったし、それに俺さっき聞いたぞ?」

 

「遅いよっ!! せめて注文する前に聞いてよ」

 

 千歌の目の前に置かれたジャンボパフェは千歌の姿を8割ぐらいを俺の視界から遮るぐらいの大きさ。とても細身の女の子一人では食べられるわけはない。

 

「でも大丈夫なんだろ?」

 

「もちろんっ」

 

 少しだけさっきの仕返しも込めてここはあえて挑発するようなことをいっておく。曜も千歌のチャレンジを見たいのか口をはさんでこない。というかハンバーグに夢中で聞いてないようだ。

 

「じゃあ改めていただきます」

 

「いただきます」

 

 カツをスプーンで切り分けカレーをつけて一口。カレーのスパイスの効いた辛さが空腹で敏感になった味覚を刺激する。そのまま調子に乗ってどんどん食べ進める。食べながら曜をちらっと見るともうすぐ、食べ終わりそうだ。

 

「ん? 真樹君もハンバーグ食べたいの? 最後の一口だけどあげようか」

 

「いや、そういうわけじゃないけど」

 

「遠慮しないのっ。はい、あーん」

 

 俺が見たタイミングで曜と目が合い勘違いしてしまったようだが、ここで断るのも曜が恥ずかしい思いをしてしまうだろう。

 

「あーん。うんハンバーグもうまいな」

 

「じゃあ真樹君のカレーも一口ちょうだい」

 

「えっ? どうぞ」

 

いわれて俺は反射的に皿を隣にづらした。

 

「違うでしょ」

 

「くっ、……」

 

 なにこれ超ハズい。特に注目されていないのにこの恥ずかしさ。口を開けて近づいて来る曜の顔。覚悟を決めて俺はスプーンでカレーをすくって曜の口へと運ぶ。ゆっくり慎重にといいかせながら口の周りや服をにかからないように細心の注意をしてついに曜の口にスプーンが入った。歯が当たる音がしてゆっくりと逆再生のようにスプーンが出てくる。乗っていたカレーはない。

 

「うん。おいしい」

 

 感想ともに添えられた笑顔はここに来てよかった思えるほどのものだった。

その後少しだけ恥ずかしさを引きずりながら、カレーを完食すると千歌の様子見る。どうやらパフェ攻略の真っ最中のようだがその食べているペースはいつもの半分にも満たない。

 

「千歌大丈夫か?」

 

「真樹君ごめん手伝って」

 

「やっぱこうなるのな」

 

「私も食べていい?」

 

「よーちゃんありがと」

 

 涙でも流すんじゃないかってくらい感極まった声で感謝を伝える千歌。おい俺にはないのか。心の中でそうツッコミつつ、俺たちは千歌の頼んだパフェを攻略していったのだった。

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