きまぐれ ぶらっどろーど   作:外道男

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前編後編を予定すると必ず破綻する病気にかかっております

それと今回、マリーちゃんが出てきません
本当に申し訳なく思っています(捕食案件)


まわり めぐる ぐーるぐる ちゅうへん

 

おかしいな。

家のどこにもマリーちゃんが居ないんだけど。

寝室、居ない。

キッチン、つまみ食いしてない。

プール、沈んでない。

お風呂・・も多分居ない。

 

はて。どこに行ったと言うのかね。

家出なの?まさかぼくはマリーちゃんに愛想をつかされちゃったの?そうだったなら泣いてしまう。

 

ーーお嬢さんは見つかったかね。こちらはさっぱりだ。

 

不意に声を掛けられて驚いた。

見るとスレンダー捜査官(真っ黒おじさん)が森から歩いてくる。

 

何というか、やっぱり怖いなあこの人は。

今が夕暮れだからと言う事もあるけど、行動が読めない上に雰囲気が不気味過ぎる。暗い森の中でこんな高身長の方と鉢合わせたら誰だって逃げるだろう。

 

「すみませんスレンダーさん。森まで見に行ってもらって」

 

ーー構わない。怪物探しなら私達の方が長けているからね。

 

「それにしてもマリーちゃんは何処に。もう夜になるから心配ですね」

 

心配だ。

夜になれば本格的にマリーちゃんは空腹になる。

お腹が空いて家に帰ってくるなら良いが、もし仮に人を襲ったとなれば、このスレンダーさんが見逃す筈がない。

本当に心配だ。

 

ーー何か、外出の心当たりは?

 

そうですねー。いつも通りだったと思うんだけど。

日頃と変わった事と言えば、スレンダーさんが来た事くらいだし。

 

スレンダーさんが来て、話をして、

 

「あ、まさか」

 

確かぼくは彼女に話をした。

グールの話だ。

雑な説明しかしなかったが、ぼくはグールについてこう言った筈だ。

 

君の仲間のようなものだ、と。

 

マリーちゃんにマトモな思考があるとも考えづらいが、まさか、

 

「もしかしたら、グールを探しに行ったのかも」

 

ーーふむ。ならば街へ繰り出したと考えるのが妥当か。だとすれば、これも君に伝えておくべきだろうな。

「はい、何でしょう?」

 

ーーつい先程、市内のトランプ通りでグール事件が起きた。二次感染被害も確認されている事から一帯に戸締りを呼び掛けているところだ。

 

「なるほど、グールが出たならマリーちゃんもそちらに行くかも知れませんね」

 

ーーああ、いや。それもそうなのだが。グールの鎮圧に0課が向かっているからな。お嬢さんに危害を加える可能性がある。特に、

 

 

怪奇相手に見境(みさかい)無く手を出すのがいるからな、とスレンダーさんの言葉が続く。

 

 

「ええ?まさか・・・ブギーマンも来るの?」

 

 

うわあ、マズイなぁ。

早くマリーちゃんを見つけなきゃ。

 

 

 

 

 

you got a mail !

 

new 「スレンダー」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

トランプ通りでグール事件が起きた。

 

0課に早速出動要請が出ている。

現場には近いか?

着き次第、市民の避難誘導と

グールの鎮圧を行ってくれ。

頼んだぞ。

 

それと、

もしゾンビが居たら殺さずに様子を

見てくれ。

 

非番なのに済まない。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「本当ですよ。折角のお休みだったのですが・・。それに現場が此処(どんぴしゃり)じゃないですか。はぁ」

 

それになんだ?

ゾンビが居たら様子を見ろとは。

上司が意味のないメールをする性格では無い事は分かっているのだが、それにしても意味不明である。

 

 

直属の上司からのメールを受けて、喫茶店のカウンター席に座っている小柄なパンツスーツの少女は頭を抱えた。

 

頭に手が触れる度に黒髪の一束飛び出たアホ毛がぴょこぴょこ跳ねるが必ず定位置に戻ってくる。頑固な癖っ毛である。

 

「はあ。あのーマスター?今って私以外にお客はいないです?」

 

「おお?そうだが、辛気臭い顔してるね嬢ちゃん。ゆっくりしていきな。こんな寂れた喫茶店の常連は嬢ちゃんくらいだしね、はは」

 

「そりゃあそうですよ。寂れて1人で寛げそうな所だから立ち寄ってるんです」

「な、中々にひでー事言うな・・・」

 

自虐ネタも人に言われると心に刺さる場合ってあるんですよね。

 

「嬢ちゃん、OLさんか何かだろう?何か嫌な事でもあったのかい?」

 

嫌な事があったと言うか、今現在(おちい)っているが正しい。

 

「いやぁ、どうもこの辺りでゾンビに良く似た怪物が暴れているらしいのですよ」

「ほう」

 

「あ、信じてませんね?まあ良いでしょう。それで、私はこれでも刑事なのですが、怪物の退治を任されてしまったと言う訳です」

「嬢ちゃんが刑事ィ?ははは」

 

「信じてないですね?嘘じゃないですよー。危険なのですよー。食い殺されるですよー」

「いきなりそんな事言われてもなあ。俺だって銃は持ってるし、いざという時は嬢ちゃんくらい守ってやるぜ?」

 

マスターの掲げている拳銃レベルの物ではそもそもグールを撃退する事も難しいのだが、その優しさに免じて指摘はしないでおこう。

 

「え〜?本当ですか〜?」

「お、信じてねえな?俺に任せとけって」

 

さて、複数の気配が店に近付いて来た。

頃合いですね。

 

「あれを見てもそんな事言えるです?」

「あれって・・・扉に何かあるのか?」

 

 

ドンッ、と。

次いで、べたりべたり、と。

 

木製扉のすりガラスの向こう側から、朱色の手が連なった。

次第に扉を叩く音が増え、呻き声の群が作られる。

 

〈・・アゥ・・・ヴアァ・・〉

 

げぇっ、マジかよ(Oh my gosh)?!」

「ね?本当の事なんですよ。奥の部屋に行って鍵掛けた方が懸命ですねー。まだ店には入って来れないようですし」

 

悲しいかな。

生前の知識の殆どを消失しているグールには、その外開きの扉を手前に引くという単純な動作も出来ないのだろう。

 

とは言え相手は怪物だ。

木製の扉なんて(いず)れは力任せに壊されるに決まっている。

 

「早く嬢ちゃんもコッチへ!」

「ああ、いやいや、全部本当の事なんですってマスター。だからーー」

 

マスターだけを店の奥に押し込んで少女は扉に歩いて行く。

 

「刑事部 0課、アウラ。任務開始です!」

 

アウラは、店に雪崩れ込もうとするグールを弾き飛ばすように、扉に蹴りを入れた。

 

 





後編をご期待ください。

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