きまぐれ ぶらっどろーど   作:外道男

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お待たせしました。

マリーちゃん帰宅回。

詰め込んで文字数が多くなってしまいました。不覚。


まわり めぐる ぐーるぐる こうへん

モンスター

アンデッド

クリーチャー

 

人ならざる異形の怪物達。

いかなる生命からも派生する筈のない化物。

それらは人間から怪奇と、そう名付けられた。

 

 

その存在の定義は、人間に恐怖を与えるもの。

理不尽に脅威をもたらし、唐突に日常を壊し、容赦なく心を抉る彼らに、人は恐怖した。

 

その恐怖こそが怪物達の存在意義でもあった。

彼らは総じて、食事とはまた別の、人の恐怖を糧としている節がある。

 

怪奇は、恐怖を与えるもの。故に強大であった。

 

文明が高度化しようと、科学が発展しようと。

人間が恐怖(怪奇)を乗り越える度に彼らはより昇華(強化)された恐怖(怪奇)として舞い戻って来るのだろう。人間に恐怖を与える為に。

それ故に、彼らは人間の隣人(・・)なのだ。

 

 

そんな脆く崩れ易い人間と怪奇のバランスを保っている存在がいた。

人間の恐怖を喰らい時に命すら吸い上げる怪物達(モンスター)が、唯一恐怖する相手であった。

 

彼らは世界一平等な怪物。

 

死を誘うものにして、死を運ぶもの。

 

そして、レイズ市の雇った最強の対怪奇(・・・)

 

 

死神である。

 

 

 

 

 

 

「お邪魔虫は何体ほどいるんですかねー」

 

喫茶店を出たアウラは周囲の状況を確認した。

 

蹴り飛ばした扉に弾かれた3体を始めとして、大通りにはちらほらと足元のおぼつかない人影が彷徨っていた。

ただの酔っ払いである可能性も否めないが、この惨状の中で楽しく酔っている暇があるとは到底思えない。

 

「15体くらいですかね」

 

したがって、全員有罪(グール)。ギルティである。

のんびりとした休日をぶち壊されて、アウラは内心で激怒していた。

 

仕事は忙しい上に直属の部下は自分を舐めくさっているのでそれはもう毎日ストレスが溜まるのだ。ストレス解消で部下に腹パン(説教)かましてもまだ足りない。

 

「グールに成ってしまった事はお悔やみ申し上げるです。ですが安心してください」

 

 

言って、アウラは自身のアホ毛をおもむろに引き抜いた(・・・・・)。同時に、夜の闇が群がるようにアウラを包んでいく。

 

「・・アァウ、ヴアッ・・!」

 

そんな異変が起きようとグール達には関係無い。彼らは肌で感じた生きている存在に対して、襲い掛かる以外の選択肢など持たないのだ。

 

怪物達は蠢いている闇に手を伸ばし、

 

 

さくり、と。

 

 

最も闇に接近していたグールが胸を貫かれた。

 

 

「死神の私が来たからには直ぐに楽にしてあげるです」

 

闇が霧散し、現れたアウラは漆黒の外套に身を包んでいた。

その手に引き抜いた黒髪はなく、黒金の大鎌が収まっている。

 

刑事部0課、死神のアウラ。任務開始である。

 

「よいしょ、っとぉ」

 

グールの胸を下から貫いた鎌を引き抜く。

死神にとって身体の一部である鎌を操るのは容易く、アウラの身の丈以上もある大鎌は、彼女に重さを感じさせない。

 

 

きゅぽん、と。

 

可愛らしい音を立てて鎌が抜ける。

同時に、身体の力を完全に喪失したグールは地面に崩れ落ちる。貫いた穴からは白いモヤ(・・)が流れ出して天へと昇っていく。

 

これは人間の霊魂だ。

死神の鎌で貫かれたグールの魂はこれで天へと導かれるだろう。

 

既に死んでいるグールに何故魂が宿っているのか、と疑問に持たれる事がある。

確かに。

本来なら死んだ肉体から魂は自然と流れ出して行く筈なのだ。

しかしながら死霊(アンデッド)と呼ばれる存在は非常に厄介だ。死んでいる肉体に無理矢理に魂が繋ぎ留められているのだから。

最悪の場合、既に天に昇った魂さえも引き戻して活動する彼らアンデッドは、霊魂を管理する死神が最も嫌う怪物である。

 

「死神やってる私としてはグールの顔は親より見慣れてるってヤツでしてね。お役所仕事みたいで嫌なんですけど、手っ取り早く済ませるですよ」

 

 

鎌を刺して引き抜く。

死神の仕事は簡単だ。

だからこそ一度に大量の死霊退治を任されるのだが、単純作業ほど心をすり減らす物は無い。

つまりは退屈で、またストレスが溜まる。

 

「やあ、とお」

 

さくり、きゅぽん。

さくり、きゅぽん。

 

必要以上に鎌を振り回すのもストレス解消の為だ。こうでもしないと退屈で自分が何をしているかを忘れそうになる。

 

さくり、きゅぽん。

さくり、きゅぽん。

 

この作業もモグラ叩きをやっていると思えば少しは楽になるだろうか。いや駄目だ。圧倒的に可愛くない。

 

「おや、もう終わりですか。ん?」

「じー」

 

15体カウントして鎌を納めようとしたが、もう一人居た。

興味津々と座り込んでグールを見つめている少女だ。

 

「たべていい?」

「え?あ、ちょっと」

 

金髪のあどけない少女は、何事かグールを指差してアウラに語りかけ、返事も待たずにグールを千切り始めた。

 

「もぐもぐ」

「ええー?なんなんですかこの子ー?」

 

もしゃもしゃ ばりばり・・・

もぐもぐ ごっくん・・・

がぶり もしゃもしゃ・・・

 

食べる。滅茶苦茶食べる。

見つめていると何だか美味しそうに見えてきた。

頭が狂いそうです。

 

「あのぉ、一応は警察の証拠品となるので食べるのを止めてもらっても良いでしょうか」

「もきゅ?もぎゅもぎゅ」

「えっと・・食べるか喋るかどっちかにするです」

 

5分ほど食べる方に集中されたです。

何だこの子は。多分グールだろう。

やっちゃって良いんでしょうか。

 

溜め息を吐いて鎌を振り上げたアウラは手を止めた。

死神の目で見れば直ぐに分かった。

この子はグールでは無い。ゾンビだと。

 

課長のメールの事を思い出して一旦鎌を納めた。

収納された鎌は再びアホ毛となって頭に生え、漆黒の外套も消失する。アウラに取って(アホ毛)は仕事とプライベートのスイッチであった。

 

「とにかくですね、食べるの止めてください。怒るですよ」

「けち」

 

当然の事を言って文句言われた。

アウラちゃん憤慨です。

 

「駄目なものは駄目です」

「・・・」

「な、何です?言っておきますけど私を襲ったら問答無用で鎌刺しますですよ」

 

食べる事を止めた少女は立ち上がってアウラに近付いて来た。

自分より身長の高い少女が無言で近付いて来た事でアウラは身構えるが、

 

むんず、と。

害意なく伸ばされた手がおもむろにアホ毛を掴んだ。

そのまま振る、振る。

上下に、左右に、縦横に。

 

「ふぎゃー?!」

「・・?さっきのでてこない?」

 

「か、鎌の事ですかっ。アレは私じゃないと出せないんですよ!」

「ふしぎなあたま」

 

不思議ちゃんに頭が不思議とか言われた。

アウラちゃん超憤慨です。

 

「もうっ!離すです!ちょっと私は電話してくるので此処に居るのですよ!人を襲っちゃ駄目ですよ!」

「うん」

随分と話の分かるゾンビのようだ。

取り敢えず、この事を課長に報告しよう。

 

 

 

 

 

「あ、課長。仕事の途中でゾンビの少女を拾ったのですよ。メールを見たので連絡したのですが。ええ、金髪の?ああ、そうですそうです、よく分かったですね。・・・保護ぉ?はあ、了解です。・・はい大丈夫だと思うです。死神の目で確認したので、人には手を出してない筈です」

 

 

 

 

「さて、貴女は私に付いて来てもらうですよー・・・あれー?」

 

戻ってきたアウラだが、既に少女は姿を消していた。

 

おや。

食べかけのグールは全部食べて行ったのですね。

何て行儀の良い子なんでしょう、HAHAHA。

 

あのゾンビガール、見つけたら説教です。

腹パンは勘弁してやるです。

 

 

 

 

 

 

 

マリーはグールを探していた。

 

何故と訊かれて答えられる物は無い。

敢えて言うならば、興味が近いだろうか。

 

【彼】が言った。

グールは、マリーの仲間に近い、と。

 

だからマリーが抱いたのは、漠然とした興味だ。

 

なかま?

たべれる?

おいしい?

なかまってなに?

 

知りたいと思った。

グールとは、何だろうか。

マリーの初めて抱いた、知る事への欲求である。

 

それで、【彼】の許可も待たず、町へ出た。

何となく、グールが居そうな所へ足を運んだのだ。

マリーにとって幸運だったのは、本当にグール騒ぎが起こった事に違いない。

 

 

先程見つけたグールは駄目だった。

近付いて話し掛けようとしたのだが「けちなひと」に倒されてしまっていた。

 

だから食べた。味を確かめた。

【彼】ほどでは無いが、おいしかったです。

結果として

「たべられるけど よくわからないもの」

と言う感想に落ち着いた。

 

 

グールを探す事をマリーは諦めなかった。

次は動いているのを探そう。

 

自分の感性を頼りにてくてくと歩いていると、次第に市街地の外れまで出てきた。

 

そこは薄暗く、深深(しんしん)と凍りつくような冷気が漂う場所であった。夜の闇に対抗しているのは街灯一つだけであり、そのぼんやりとした光が一層闇を不気味な物に思わせていた。

 

その場所にマリーは見覚えがある気がした。

 

マリーが辿り着いたのは墓地であった。

【彼】と初めて会った墓地とは違うようだが、細かな違いなど彼女は分からなかった。

 

そして首を動かして周りを見ていると、居た。

少し離れて2体、両手を突き出している影が墓地を彷徨っていた。マリーは迷わずその影に近付いていく。

彷徨っていたグール達もマリーの存在に気付いたようだ。双方、徐々に近づいて来たのだが、顔が見えてくるにつれて両者は異なる疑問を抱いて首を傾げた。

 

「ヴア?」

 

グールが感じた物は、目の前の少女は死んでいるという物だ。怪物としての本能から生者を襲っていた彼らは、目前に現れた随分とらしくない(・・・・・)死体の少女に困惑した。

 

「・・・?」

 

一方マリーの感じた疑問は、グールと遭遇したは良いが何をしたら良いか分からなくなったと言う物であった。

 

試しに、彼らと同じ動きをしてみようか。

そう思い至ったマリーは両手をフラフラと前に出してグール達に迫った。

そして、両手が触れ合う距離に来た。

なので、握ってみた。がっしりと。両手を合わせるように。

 

その行為にグールは更に困惑した。

「不思議な死体の少女」に手を取られている。それも結構な怪力で。何だかこの死体怖い。

振り払おうと両手を振るが少女も合わせて振るだけだ。(はた)から見れば仲良く握手をしているようにも見えた。

 

 

もう一体のグールはマリーらのじゃれ合いを見ていたが、本能の囁きにより早く肉を喰らいたいという欲求が強くなった。

因って、マリーらに背を向けて墓地を出て行こうとするがーー

 

 

「ヒャッハー!くたばれオラァ!!」

 

どちゃり、と。潰された。

 

頭に突き刺さったのは、夥しい数の釘が打ち込まれたバットであった。何処からともなく現れた白いラバーマスクの男がグールに襲い掛かったのだ。

 

その音でマリー達はマスクの男に気付いた。

直ぐに、行動を開始したのはグールだ。

グールは直感した。この男は生者だ、人間だ。

ならば喰らうしかない。

男がどれ程の脅威かなんて関係なかった。

 

のたのたと小走りで男に近づいていく。

 

「聴こえる耳があるかも分かんねえがヨォ!あの世まで俺の名前を覚えて逝きナァ!」

 

マスクの男は、一度素振りをしてから打者の構えを取った。

 

「刑事部0課、“ブギーマン”!!マイケル・マイヤーズだ!プレイボール!ヒャハァ!!」

 

ブギーマンを名乗った男、マイケルは頭に狙いを付けて、角度高めにバットを振り抜いた。

 

マリーの目には、「すいしょう」の大きさ程の球体(あたま)が墓地の奥に飛んでいくのが見えた。

 

「ふゥ、スッキリ。あァン?まだ居たのか?」

 

マイケルの視線がマリーに向くが、何処となく訝しげだ。

 

「グールにしちゃァ小綺麗だが何だてめー。怪奇か怪物かァ?」

「・・?」

「分かんねーって顔すんじゃネェヨ。おら、このグール共の仲間じゃねーのかって聞いてんだァ」

「なかま?」

「おー、敵討ちとか大歓迎だゼ」

 

マスクの男が何を言っているかは分からないが、その足下のグールには興味がある。

もう動いてはいないが、折角だ。

味を見ておこう。

 

「これたべていい?」

「あァ?えー。別にイイんじゃね?」

「もぐもぐ」

 

ちぎる。たべる。

ちぎる。たべる。

 

「えェ?攻撃してくるようなら敵性怪奇って事で即討伐できるとかガキンチョが言ってたが、どっちだコリャ」

 

うんうんと、マイケルは頭を抱え出した。

暫く唸ってから顔を上げた。

口元は歪に笑っているように見える。

 

「分かんねーなァ!怪奇なんてぶっ叩きゃ分かんダロォ!?」

「たたく?」

「そうさァ!恨みとか一切ねーがよぉ!死ねヤァ!」

 

何故男がバットを振りかぶっているのかマリーは分からないが、ただ一点、ある言葉に反応した。

 

「たたく・・たぁっ」

 

振り下ろされたバットに己の手をぶつけ返した。鈍い音がしてバットが弾かれ、マイケルが仰け反った。

 

「おっとォ!?ハハァ反抗の意思アリってか!上等だァ!ぶっ壊してやるよアンデッドガール!」

 

最初に手を出したのは男のような気もするがマリーは「たたく」に反応しただけである。

 

「行くゼェ!」

「ちょっと待ってえブギーマン!?」

「止めるですマイヤーズ!」

 

マイケルがバットを構え直すが、墓地に駆け込んできた2人の人物に遮られた。

 

「けちなひと」と【彼】だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

やあ諸君、不死身の吸血鬼さんだよ。

やっとマリーちゃんを見つけました。

 

街に出てマリーちゃんを探しているとスレンダーさんと同じ刑事部0課のアウラちゃんにばったり会いました。

 

それで一緒にマリーちゃんを探していたのですが遠くから“ブギーマン”の叫び声が聴こえてきたので急いで駆けつけたのでした。

 

「んだァ?ゴキブリ蝙蝠野郎じゃねーか」

 

うわお、酷い覚え方。

 

「やあブギーマン。君とやり合う気はなくてね?この子を迎えに来たんだ」

「おなかすいた」

「左手いるかい?」

「もぐもぐ」

 

良かった。いつものマリーちゃんだ。

 

「おい、どういう事だガキンチョ。あいつらは今回の事件に関係ねーのかよ」

「メールくらい確認するですマイヤーズ。ダメな奴ですね。それとガキンチョって呼ぶなです」

 

「俺と同じタッパになったら考えてやるよガキンチョ捜査官」

「上司に対して敬語も出来ないんですか。図体ばかりデカくても頭が空っぽじゃ意味ないですねー」

 

「あァ!?分かりましたよガキンチョ様ァ!」

「敬語の使い方を理解してないようですね!?もう許しませんよマイヤーズ!説教(腹パン)ですよ!腹パン(まつり)ですよ!」

「おォ!やってみろよコラッゴフゥッ!?てめー人が話してる最中に腹パンすんじゃねーよマナー悪いぞ!?」

悪役(ヒール)悪党(ヴィラン)風情が何言ってるんですかー!」

 

ははは。

刑事部0課の凸凹コンビはいつも通りですねえ。

あれだけ部下が喧嘩しているとスレンダーさんも心労が凄まじいでしょう。

 

「さ、マリーちゃん、帰ろうか」

「おなかすいた」

「晩ご飯何にする?」

 

おっと、無言で噛み付こうとするの止めてー。

 

「それで、グールは見つかった?」

「うん」

「どうだった?」

「おいしかった」

「食べちゃったかー」

 

 

「あなたのほうが」

「うん?」

「おいしかった」

 

「・・晩ご飯何にする?」

「がぶり」

 

 

無事にマリーちゃんは帰宅しました。

 

 




おかえりマリーちゃん

まるで埋め合わせをするように もぐもぐ連発


軽い解説

「怪奇」について
人に恐怖を与える怪物の総称。
あえてルビを振るなら「ホラー」


刑事部0課 捜査官 《アウラ》
黒髪アホ毛の少女。ですです
死神。アホ毛は鎌

刑事部0課 捜査官 《ブギーマン》
白いラバーマスクを被った青年
チンピラ
本名はマイケル・マイヤーズ
怪物退治にはもっぱら釘とバットを使う。
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