きまぐれ ぶらっどろーど   作:外道男

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お久しぶり投稿。
ハロウィンには間に合わせたい


はろうぃん がーるず ろっくんろーる 1

…ああ、今年もハロウィンの時期が来たのね。

みんなとっても楽しそう。

けれど私は出れないのだわ。

寂しいな寂しいな。

誰かここまで遊びに来てくれる人は居ないかしら。

玄関を開けたらお化けに仮装したみんなが言うの、トリックオアトリートって。

もてなしの準備は今年もばっちりだわ。美味しいお菓子を振る舞うの。

 

でも、こんな屋敷に来る人なんて居ないのだわ。

寂しいわ寂しいわ。

 

「ところがどっこい!」

「キャアッ!?」

 

「なんだいなんだいお嬢さん。今日はハロウィン良い日だろう?そんな顔しちゃイケないぜ?悲しい顔は幸せが逃げる。とびっきりの笑顔なら不幸が逃げる。逃げる奴はお化け案山子(スケアクロウ)が捕まえて畑の肥料にしてやるよ」

 

「もうっ!もう!ヒルビリーったらイタズラ好きね!いきなり後ろから抱き付くなんて心臓が口から飛び出るかと思ったわ!」

「ワハハ!そりゃあ良かったなお礼は要らねえ。窓の外眺めてばっかりで顔が凍りついてたお嬢さんには丁度いい心臓マッサージさ」

 

「口の減らない案山子さんね!でも良かったわ今年もあなたは来てくれたのね。作ったお菓子を食べてくれるお友達はあなただけなのよ」

 

「お菓子を食べられる友達は俺だけだろうとも。ゴースト(お友達)にも食べられるお菓子を発明したらもっと盛り上がるとは思うがね、ワハハ」

 

「…それでもやっぱり寂しいわ。毎年、人間のお友達が家にくる夢を見るの」

 

「ははあ、暗いねえ。まるで懺悔室だ。悪いが神父様の答えは決まってるんだ。迷える子羊よ、自分で何とかしなさい、ってね」

 

「出来る事なら私だってそうしたいわ!…でも、私は地縛霊だから屋敷からは出られないもの。招待の手紙を出しにも行けないわ」

「手紙を出してもこんな外れのオンボロ屋敷に誰も来ないだろうしねー」

「もうっ!すぐ意地悪言うんだから!バカバカバカ!嫌いよ!」

 

「おっと。深刻な悩みのようっすね。OK。では1つ、このお化け案山子の提案を受ける気はあるかい?」

「なにかしら?」

「耳を貸しな、良いか?––––––」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪物・怪奇の蔓延っていた近代以前と比べて、近代以降においては人間を重んじる動きが強まり、人間と死神が協定を結んだ事で現代に至るまでの流れを決定付けた。

すっかり肩身の狭くなった怪奇達だが、実は(ないがし)ろにされた訳では無い。

魂を管理している死神から聞いた話によると人間と怪奇のバランスは崩してはいけないらしい。

どちらか一方に比重が偏ると“良くないこと”が起こってしまうらしいので死神もその辺は慎重に調整を図っているようだ。

 

もうどれくらい前になるだろうか。

人間・怪奇・死神、その三勢力の代表が秘密裏に会談を行い、怪奇達が弱らないようにする作戦を立てた。

 

その作戦とは––––。

 

 

 

 

 

 

「なに してるの ?」

 

早起きして“一大イベント”に合わせた部屋の模様替えをしているとマリーちゃんが声を掛けてきた。

 

「おはようマリーちゃん。これはね、飾り付けをしてるんだよ。ハロウィンって言うんだけどね」

 

「はろいん」

 

「そうそう。ハロウィンはぼくら怪奇に取っても重要な行事なんだよ」

 

と言っても客が滅多に来ないのに態々(わざわざ)家の中を飾り付けする必要はあんまり無いのだけど。こんなものは気分が大事だ。

 

だからマリーちゃん、折角飾ったカボチャを齧るのは止めるんだ。

あー、ランタン伯爵(製作時間10分)が…。

 

 

 

 

「つまりね、今日1日は怪奇は堂々と表を歩いても良いし、人を驚かしても良い日なのさ」

 

「たべられる?」

「食べちゃダメ」

 

かつて人と怪奇と死神とで交わされた契約の内容はこうだ。

 

“年に一度、人間の恐怖を集めるために怪奇が姿を現す日を設ける。”

 

そもそも怪奇が生きる為には人間の恐怖さえ有れば良いのだ。

だから、人間の恐怖を効率良く回収できる行事を作る必要があった。

 

この契約を履行するにあたって古い魔除けの行事、ハロウィンが利用されることになったのである。

 

まだ有名では無かったハロウィンという行事を万人受けする内容にアレンジして当時のメディアが徹底的に広報活動を行なった。

多少の時間は要したがその結果、大衆が楽しめるイベントとしてハロウィンは世界的に広まった。

 

そんな日であれば、怪奇の存在が明るみに出たとしても大きな騒ぎにはならない、というカラクリである。

 

 

怪奇都市であるレイズでもこのイベントは非常に重要だ。

今日に限っては怪奇達は人を傷付けなければ本来の姿を晒して往来を歩けるのだから。

ハロウィンをしっかり活用して怪奇達は人間の恐怖を回収するのだ。

元来魔除けの行事なのがちょっと皮肉だけども。

 

「まあ、ゾンビのマリーちゃんには実感はあまり無いかもだけど、人から恐れられるだけで怪奇は力を得られるのさ」

 

「そーじゃぞ〜。今日は無礼講なのじゃ」

「おやムルナウさん」

 

煙が立つように現れたのは我が家の幽霊ムルナウさん。

ムルナウさんなどの幽霊はまさに人間の恐怖を必要とするタイプだ。

まあ、幽霊と言うもの自体は世界的に広く認知され土地によっては信仰もされているので、そう簡単には消滅の危機には陥らないだろうけども。

 

「もふもふ」

「あばば!これ止めぬか小娘!いい加減にせんと口の中で暴れてやるぞ!ふぬぬぬぬぬ!」

「もももももも」

「ふはは!どうだシェイクされて噛めまい!早く離さんかー!」

「もももももも」

 

ムルナウさんを咥えたマリーちゃんがネジ巻きおもちゃのように振動しているのを横目に飾り付けを進める。

なんだかんだでムルナウさんもマリーちゃんと仲良くやれてるようでなによりだ。

 

 

 

「さぁて、儂もそろそろ出掛けるとするかの」

「ムルナウさんもハロウィンの予定があるんだ?」

「うむ。幽霊(ゴースト)友達のアナベルに呼ばれとってな。近隣の幽霊達が揃ってパーティーじゃ。それじゃーの」

「行ってらっしゃーい」

 

ムルナウさんは玄関扉をすり抜けて外へ出て行った。

 

 

「マリーちゃんは、普通にハロウィンを楽しんできたらどうだい?美味しいもの一杯貰えるよ」

「おにく?」

「肉じゃないけども、お菓子とか」

「にくの おかし?」

「肉から離れよう」

 

うーむ、まだマリーちゃんを1人で外出させるのは心配だなあ。

 

「一通り準備が終わったらぼくと一緒に外に行こうか」

「うん」

「それじゃあ外出前にお菓子を貰える魔法の言葉を教えてあげよう」

「おなかすいた?」

 

違います。

 

 





世界で一番ハロウィンの賑わう都市 第一位

一般に怪奇の存在がほのめかされる大イベント
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