OPERATOR   作:hilite989

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前書き失礼します。
今回から読みやすさ重視で、改行を入れています。


Seventh Call「Other side」

Seventh Call「Other side」

 

 

 アリーナ。

 傭兵斡旋企業に登録されているレイヴン同士による、ACを使用した対戦。

 勝敗判定はACの完全な撃墜ではなく、アーマード・ポイント(AP)と呼ばれるダメージコントロールのソフトウェア上での撃墜判定で下される。

 

 よほどのことが無い限り、アリーナバトルでの死傷者は出ていない。そのため、極めて大衆向けな娯楽として、徐々に認知はされていた。

 

 アリーナは傭兵斡旋企業の収入源の一つとされ、ネット中継やオンデマンド、映像ソフト化にしての販売によって、莫大な収益を上げていた。

 

 無論、レイヴンにとってもメリットはある。アリーナに勝利し、ランクを上げることによって、傭兵斡旋企業より報酬金やACパーツの贈呈がある。さらにはアリーナを通じて企業にアピールをすることによって、依頼本数の増加もある。

 

 それはさておき。

 クリストファーは残り一週間で傭兵斡旋企業との雇用契約が解消される。そんな彼は最後の腕試しとして、格上の相手にアリーナバトルの挑戦を叩きつけた。

 

 レイヴンランクA、アリーナランクA-12

 ACネーム「アドウェルサ」

 レイヴンネーム「カースス」

 

「重装備を施した重量二脚AC。最新鋭のレーザーライフルと両肩に搭載されたデュエルミサイルランチャーによる高火力は天災(アドウェルサ)と呼ぶに相応しい。更に、カーススの絶妙なアセンブルと操作技術により、重量型ACにもかかわらず、OBを活かした機動戦も仕掛けられる」

 

 ベテランといわれていたクリストファーとはいえBランクの中堅。実力、アセンブルの知識、場数は青天の霹靂だった。

 レマはオペレートによる補佐を希望したかったが、アリーナはレイヴン同士による対戦のため、原則として第三者の介入は禁止されていた。

 

 そのため、彼女は自身のオペレータールームで社員専用の「アリーナ視聴」アプリを使用し、ウィンドウ上でアリーナを観戦していた。

 

 バトルステージ:ARENA

 説明:障害物が一切存在しない、ドーム型のステージ。ありとあらゆるアセンブルの有利不利が存在しなく、それ故に搭乗者の技量が直に反映される。

 

 クリストファーが操縦する「プロメテウス」は斜め右方向へ跳躍するように、ブースターを駆動。それを断続的に繰り返すことによって、まるでカエルのような飛び方で前進と後退を繰り返していた。

 カエル飛びと呼ばれる、ホバータンクならではの操作技法。

 ジェネレーターの消費は激しいものの、時速二〇〇キロで前進が可能。一定の機動力を確保しているプロメテウスは、遠距離からの狙撃を回避し続けていた。

 アドウェルサは位置を変えつつ、遠距離からレーザーライフルによる狙撃を続けている。

 

 武装は右手にレーザーライフル、左手首にレーザーブレード。背部兵装にデュアル・ミサイルランチャーと肩部に連動型ミサイルポッドを搭載。

 レマはデスクに置かれているメインモニターとサブモニターに、合計五つのウィンドウを表示していた。それらはステージの至る所に設置されたカメラと、ACのメインカメラが得られる映像を中継していた。

 

 アドウェルサとプロメテウス双方のメインモニターと、ステージ全体を網羅した俯瞰図、それぞれのACだけに注視したカメラ。

 レマの視線は俯瞰図を中継したウィンドウへ向けられていた。

 遠方からの映像のため、ACが点に見える中、アドウェルサから放たれるレーザーライフルの熱量弾がはっきりと見えた。

 向かう先は、左右へ回避行動をしているプロメテウスに直撃せず、後ろへ逸れる。

 

 試合開始から一分が経過。膠着状態となっていた。

 お互いの距離は一〇〇〇メートルを維持。アリーナの端で、細々と動いている。

 

(無理もない。アドウェルサとプロメテウスの火器管制システムによる、射程距離の差異は無いに等しい)

 

 一方的なアドウェルサによる長距離射撃が続く中、レマは冷静に状況を分析していた。

 

(中近距離戦では、確実にプロメテウスが有利。それを防ぐために、アドウェルサはレーザーライフルによる射撃で寄せ付けていない。だけど、プロメテウスは今の射程距離だとレーザーキャノンで対抗できる)

 

 レマの予想とは裏腹に、プロメテウスは回避行動を徹底していた。無論、それはそうなることだと分かっていた。

 

(でも、アドウェルサのレーザーライフルを回避し続けているから、ジェネレーターの負担がかかるレーザーキャノンは撃てない)

 

 その結果が今の状況だった。

 

(もう少しで三分経過)

 

 キーボードの手前に置かれた、紙コップに手を伸ばし、レマは口を付ける。

 温かいコーヒーを飲みながら、この膠着状態をどちらが打ち破るのか、レマは予想を立てる。

 

(プロメテウスが回避行動を止め、レーザーキャノンによる狙撃を開始)

 

 これはあり得ない。そうなった場合、アドウェルサはオーバード・ブースター(OB)で距離を詰め、背部兵装に搭載されたデュアル・ミサイルランチャーによる波状攻撃を仕掛ける。

 プロメテウスのジェネレーターが枯渇か、寸前にまで到達していた場合、まず回避は不可能。

 

(アドウェルサが距離を詰め、中距離でのデュアル・ミサイルランチャーによる波状攻撃を仕掛ける)

 

 これは微妙だった。アドウェルサ、プロメテウス双方が得意とする中距離戦。分厚い装甲と火力面ではプロメテウスが有利。

 アドウェルサは虎の子であるデュアル・ミサイルランチャーを駆使すれば、充分に勝機はある。だが、搭乗者のカーススはAランカー。無謀な攻めは決してしない。

 もし距離を詰めるとすれば、ここまでの射撃でプロメテウスにダメージが与えられた場合のみ。現状は双方ともに無傷だった。

 

(プロメテウスが距離を詰め、垂直落下式ミサイルでの牽制を開始。そこから、近距離での撃ち合いという展開にする)

 

 これは大いに有りうる内容だった。

 回避行動をしつつ、距離を詰め、先にミサイル攻撃で仕掛ける。その後はプロメテウスが得意とする、近距離での撃ち合いに。

 ミサイル兵装は、発射までに敵をロックオンし続ける必要がある。その間に、プロメテウスはスプレッド・バズーカと携行型グレネードランチャーによる高火力攻撃を叩きこむ。

 もしくは、アドウェルサは攻撃を中断し、間合いを離そうとする。その場合、レーザーキャノンによる狙撃が襲い掛かる。

 

 レマが考えうるパターンの中で、現実味があった。

 問題は、机上の空論で物事が上手く進むがはずがないということ。

 自分の見立てと、今まさに戦っているレイヴンの思考は必ずしも一致することはない。レマはそれを、既に思い知っていた。

 

(――)

 

 レマはもうひと口、コーヒーを飲もうと紙コップに手を近づけた瞬間だった。

 アドウェルサが急にOBを駆動し、プロメテウスに突貫。先手を仕掛けてきたのは、カースス。それに対し、クリストファーは冷静だった。

 

 プロメテウスはブースターを駆動せず、ホバー移動で後退。その間にジェネレーターの出力を回復させ、左背部に搭載されたレーザーキャノンの発射体勢へ移行。

 その間に、アドウェルサのデュアル・ミサイルランチャーから四基のミサイル弾頭と、肩部から連動して小型ミサイルが四基射出された。

 

 合計八基のミサイル群が白煙を靡かせながら、プロメテウスへ向かう。一方、アドウェルサはOBを停止し、ミサイル群に追従する形でブースターを使用した前進を開始。

 対するプロメテウスはレーザーキャノンを「パージ」した。接合部分から火花が飛び散り、全長六メートルの砲身を有する「MWC-LQ/15」がプロメテウスから引き剥がされる。

 

 同時にプロメテウスはブースターの出力を最大にし、上昇した。

 教科書通りのミサイル回避行動だったが、それでもタンク型ゆえに機動力が足りなかった。

 ミサイル群は探査装置であるシーカーと軌道調整装置により、上昇するプロメテウスを下から追い上げる形で追従。

 

 それに対し、プロメテウスはOBを駆動した。レーザーキャノンをパージしたのは、その分のエネルギー供給を高度上昇とOBのためだと言わんばかりの行動だった。

 食らい付こうとするミサイル群を一気に引き剥がすため、プロメテウスは突き破るかのような直進軌道で巡航。

 

 さらに地上で移動しているアドウェルサの頭上にめがけて、左手首に装着された携行型グレネードランチャーから榴弾を発射。

 右背部兵装の垂直落下式ミサイルランチャーからも、中型ミサイルが四基射出。

 重装型のACとは思えない立体機動戦法。それを可能にしているのが、クリストファーの手腕だった。

 

 アドウェルサは頭上から振り落とされる榴弾に対し、右手に装備していたレーザーライフルとレーザーブレードをパージした。

 武装は、デュアル・ミサイルランチャーと連動ミサイルポッドのみ。

 

(OBを駆動した影響で、ジェネレーターの出力が枯渇気味なのは分かっているけど、どうして)

 

 多少の被弾よりも、エネルギー供給を取ってしまったカーススの判断にレマは理解できなかった。

 アドウェルサはもう一度、OBを駆動。寸前の所で榴弾を回避。

 上空から振り落とされる中型ミサイルも全基、アドウェルサが数秒前に居た地点へ落下。爆炎を背中に、アドウェルサはプロメテウスからの反撃を全て回避した。

 

(これが、トップランカーの動き。でも、相手はミサイル兵装のみに。後は――)

 

 無傷のアドウェルサだったが、失うものがあまりにも多かった。

 対するプロメテウスはレーザーキャノンだけを失っている。相手は必然的に、中距離での戦闘を狙ってくる。その場合、長距離での狙撃を前提としたレーザーキャノンを失うのは痛手だったが、仕方がない。

 

 状況はクリストファーが有利、とレマは確信した。

 プロメテウスは各所に搭載されているスラスターを器用に稼働させ、空中で方向転換を行う。一旦は体勢を立て直そうとしているアドウェルサを逃がさないと、もう一度ミサイル攻撃を仕掛けようとした。

 

 振り向いた先に、アドウェルサは存在しなかった。

 なぜなら、滞空しているプロメテウスの直下に居たからだ。

 

(OBを再度稼働させて、プロメテウスの真下に)

 

 第三者の視点から映っている定点カメラには、プロメテウスの真下に接近したアドウェルサが映っている。

 プロメテウスは消えてしまったアドウェルサを索敵しているのか、その場で滞空を続けている。ロックオンアラートは続いているのか、クリストファーの焦りがプロメテウスの挙動に現れている。

 

「クリストファー」

 

 レマは思わずクリストファーの名前を出してしまう。アドウェルサは全く無防備なプロメテウスの脚部をロックオンし、八基のミサイルを射出した。

 

 

「オペレーター、さっきの試合は録画していたか」

 

 レマはオペレーター専用のアプリケーションで、クリストファーと音声通信を行っていた。クリストファーからの音声が受信される度に、耳障りな騒音が時折、交ざっていた。

 

 A-12ランク、カースス対B-9ランク、クリストファー。

 対戦結果。三分五十二秒。プロメテウス、APゼロのため撃墜判定。

 本結果による、アリーナの順位変動はなし。

 

 予想通りの結果だったのか、クリストファーはさして悔しがる様子を感じない口調でレマに試合の録画を尋ねた。

 

「全ての定点カメラの映像を録画しております。」

 

「了解だ。まとめて送っといてくれ。しかし、そう簡単には勝たせてくれないよなぁ」

 

 クリストファーは笑い飛ばしながら、六時間後に開始となる「任務」の準備を進めていた。依頼自体は前もって決まっていたが、カーススとの対戦が今日でなければ、次は二週間後という日程となっていた。そのため、ブッキングもやむなしということで、クリストファーは無謀なスケジュールを決行した。

 

「それにしても、アリーナと三万コームの依頼のために、七十八万コームを用意するレイヴンなんて俺だけだろうな」

 

「まぁ、確かにそうですね」

 

 自嘲気味にクリストファーは笑うと、レマは何ともいえない表情を浮かべ、相槌を打つしかなかった。

 アリーナで使用したプロメテウスは、機体のメンテナンスやパーツの交換によって、六時間後に控えた出撃は不可能だった。

 

 そのため、クリストファーはアリーナ用にプロメテウスをもう一機「購入」した。

 総額七十八万コームのACパーツを購入し、組み立てた後にアリーナへ搬送。以前から使用しているプロメテウスは、作戦エリア近くの基地へ搬送済み。

 アリーナを終えたクリストファーは輸送ヘリによって、プロメテウスが搬送された基地へ移動中。現在、支給品である、タブレットデバイスで担当オペレーターと音声通信中。

 

「――クライアントから任務に対する追記事項が更新されたため、ブリーフィングを行います」

 

 クリストファーと話している最中に、雇用主である「クレセント社」からのメッセージをレマは受信した。ビデオメッセージであるそれをレマはクリストファーの端末へ映像共有しつつ、再生した。

 

「こちら、クレセント社管轄N-511基地MT部隊副長アンナ大尉です。リクルーターのヨーシフは私用のため、現地部隊の責任者である私から本任務の追記事項について説明します」

 

 レマと同い年か少し上を感じる、女性の声が再生された。今回の任務を斡旋した渉外担当(リクルーター)ではなく、これからクリストファーが向かう基地に在留している現地部隊からのブリーフィングにレマは不安を覚えた。

 

 再生中のウィンドウ上で大型トラックの3Dモデルが五両表示される。日系軍事企業がリリースしている、10tトラック。耐久性とメンテナンス性に優れた、最新モデル。

 

「N-511基地から、D-411基地に向かう物資補給車両部隊を護衛する任務でしたが、諸事情により内容そのものが変更となりました」

 

 大型トラックの3Dモデルにバツ印が付けられるとともに、「MISSION ABORT(作戦中止)」の文字が表示された。

 

「N-511基地近辺に、ウィルアイ社のMT部隊が接近しているのを偵察部隊が発見。この状況下では輸送部隊の出発は不可能です。そのため、レイヴンに敵部隊の迎撃をお願いします」

 

 N-511基地の簡易3Dモデルと、周辺地帯が映し出される。N-511基地が置かれているエリアは環境区と呼ばれており、文字通り自然環境に恵まれた地域だった。

「熱帯雨林と定期的に訪れるスコールによって、視界状況は最悪」と注意書きが表示される。その後、N-511基地へ向かうカイノスEO/2の3Dモデルが表示された。

 

 ウィルアイ社とクレセント社は、この環境区の領土権を巡って紛争を続けている。

 両社の交戦記録等のログが、ニュースのように映し出された。

 

 化石燃料を巡る領地権の、平和的解決の破談から五年が経過。

 N-411基地近辺での、MT部隊による交戦。

 ウィルアイ社物資輸送車両強襲作戦、被害効果甚大。

 D-311基地は航空型MTによる急襲で、基地機能停止。放棄が決定。

 

「敵の戦力はカイノスEO/2六機と断定。我々のMT部隊でこれを撃滅することは可能ですが、敵の波状攻撃が予想されるため、基地内で待機。基地に接近した部隊をレイヴンが撃破し、MT部隊を派遣します。それまでは、基地の外周に設置した防衛砲台で援護します」

 

 N-511基地の外周に設置された防衛砲台――155mm榴弾砲、35mm機関砲、垂直落下式ミサイル、レーザーキャノン――が至る所に設置されることを示すマークが表示された。

 

「なお、今回の依頼内容変更に伴い、報奨金は増額となっております。十五万コーム、前金で既に支払っております。細かい概要や指示は現地で伝えますので、よろしくお願いします」

 

 アンナ大尉の言葉と同時にビデオメッセージは終了した。

 レマは途中から終始、眉間に皺を寄せて、ブリーフィングを聞いていた。

 ただの護衛任務が、迎撃作戦になってしまった。本来であれば、契約内容に差異があるとして、拒否をする権利がレイヴンにはあると――思いたかった。

 

 しかしながら、既に任務の契約は完了しており、それを反故にすることはできない。例えそれが説明された当初の内容と違うのにもかかわらず、だ。

 

「最初からこれを見越して、俺に依頼したかもな」

 

「そう思いたくないものですが。どうしましょう、有償になりますが回収部隊を派遣させましょうか」

 

 半笑いで憶測を立てるクリストファーに、レマは一応の打開策を提案した。

 傭兵斡旋企業が管理している輸送ヘリを現地に向かわせて、作戦開始と共にクリストファーとプロメテウスを回収。後は、企業同士で好き勝手にやってくれ、と。

 

「妙案だが、今回は保留だ。だが、十五万コームは安すぎるな。三十万コームにしろと交渉してくれ」

 

「了解です。弊社のリクルーターに問い合わせます」

 

 恐らくアリーナ用で調達したプロメテウスの補填のためか、クリストファーはかなりの額をクレセント社に要求しようとした。無論、こちらは急な依頼内容の変更という大義名分があるため、交渉の余地はあり。レマは承諾する。

 あらかじめ用意していたテンプレートを使用し、企業渉外課に今回の案件についてのメールを送信した。

 クリストファーが中継基地に向かうまでには、結果が出るであろう。

 

「分かった。中継基地までは残り四時間。そこからN-511基地に到着するまで二時間といったところか。少し仮眠を取る。何かあれば、連絡してくれ」

 

「分かりました。それでは、ゆっくり休んでください」

 

 クリストファーが仮眠を取っている間は、レマも休憩が挟める。現時刻は六時四十八分。オペレータールームがあるフロアには軽食用の自販機があるため、そこで何かを購入しようと考えた。

 

「ああ、そうするよ」

 

 疲れているのか、やや気怠い感じでクリストファーは返事をすると、彼との音声通信が終了した。

 

 

 

「時刻一五二七。UAVの索敵範囲内に、動体反応は感知されません」

 

 高度三〇〇〇メートル。飛行中のUAVから送られてくる俯瞰映像を見ながら、レマはクリストファーに定時報告をする。

 N-511基地周辺でUAVによる索敵を彼女は一時間以上続けていたが、熱源反応どころか怪しげな機影や動きは全く見られない。

 

「こちらドローンチーム、不審な動きは見られない。司令部、どうぞ」

 

 散開して基地周辺を偵察しているN-511基地のドローンオペレーターからも、同様の通信が入った。

 クリストファーのプロメテウスは、基地の正面ゲート付近で待機中。時折、彼の無防備な欠伸の音が聞こえてくるほどだ。

 

「こちら司令部。サーモセンサーによる索敵はどうだ」

 

「ネガティヴ。感知されず」

 

 ドローンオペレーターは即答をし、レマはそのやり取りを聞きながら、不安に駆られる。

 レマはこの任務が変更になる要因を作った、敵MT部隊が最後に確認できた位置情報を確認した。

 

 N-511基地から北東一五〇〇〇〇メートル。哨戒中の歩兵部隊が確認。クリストファーが基地に到着する一時間前には反応消失。

 無論、そのポイントには定期的にドローンと偵察部隊を派遣しているが、今だ感知されず。

 

「MT部隊は撤退した、そう考えていいな」

 

 クリストファーはぼそりと呟く。

 

「でしょうね。我々と同じように、作戦内容そのものに変更があったと」

 

「鋭いな。俺も同じことを思っていた」

 

 レマは自分の推測を述べると、クリストファーは同調した。

 

「こちらドローン1-3。敵の動体反応を二〇〇〇〇メートル先で感知、かなり早い、注意しろ」

 

 敵MT部隊が最初に感知された、北東のドローンオペレーターからの通信。レマはすぐにレーダーサイトを共有し、プロメテウス側に送信する。

 

 動体反応は時速約三八〇kmで、N-511基地に向けて進行中。レマはUAVを北東へ向かわせると、同じくプロメテウスも迎撃するために移動を開始した。

 

「こちら、砲台管制室。敵の熱源反応を感知した。ミサイル砲台による攻撃を開始する」

 

 基地内部で防衛砲台を遠隔操作しているオペレーターからの通信と同時に、レーダーサイトにミサイル反応が浮かび上がった。

 同時に、基地上空を無人ドローンで映像中継されているサブウィンドウに動きがあった。

 

 北東の砲台から、花火のような物体が発射される。

 白煙を靡かせながら上空へ射出されたのは、五基の垂直落下式ミサイルだった。

 レマはレーダーサイトを確認すると、敵の動体反応を示す赤い点とミサイルを示す青い点が重なり合った。

 

「敵反応、ミサイルを回避。続けて、第二波を発射」

 

 しかし、動体反応は生き残っていた。速度を緩めずに、前進。ミサイルも続けて発射されるが、その通信を聞いていたクリストファーは盛大なため息をつく。

 

「敵ACか。やれやれ、これならMT部隊の方が良かったかもな」

 

 動体反応の詳細を悟ったクリストファーは、辟易する。そんな彼を尻目に、レマはUAVに搭載されたレーダーを起動。

 動体反応との距離は既に五〇〇〇メートルを切っており、レーダーの範囲内だった。

 

「敵反応、ACと確定。照合を開始します」

 

 レーダーサイトから収集される動体反応の速度や熱感知を基に、オペレーティングシステムが分析の結果を出す。クリストファーの予想通りだったが、レマはさして慌てない。彼女もまた、悟っていたからだ。

 

「敵ACのデータ照合を開始」

 

 レマは次に、ACと確定した敵のデータを解析。傭兵斡旋企業に登録しているレイヴンであれば、すぐにデータが表示。そうでなくても、レイヴン及び企業との交戦記録を保管しているログから、割り出せることができる。

 今回は、前者だった。サブモニターで起動していたデータ収集アプリに、あるレイヴンとACの情報が表示された。

 

「オペレーター、敵ACの解析は終わったのか。交戦距離まで後三十秒だ、報告を頼む」

 

 レマの報告が遅いことに、クリストファーは催促を入れる。彼の言葉にレマは、現実を受け止めるしかなかった。

 

「敵はランカーAC『バラ・レイ』です。アリーナランク三位の『トップランカー』が、どうして」

 

 

 

Next Call「Good Bye」

 

 

 

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