転生しなかったら理想のヒモ生活な件。   作:四季式

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世界の捩れ。

 俺は三上(ミカミ)(サトル)

 三十路という大きな壁を超え、童貞(じゅんけつ)を守り抜き、遂に『魔法使い』へと至ったナイスガイだ。

 

《確認しました。エクストラスキル『魔術師』を獲得・・・成功しました》

 

 そんな俺は、現在死にかけている。

 暗い夜道を一人で歩いていたら、物陰から飛び出してきた通り魔にグサリとやられてしまった。

 ああ、くそ。傷が熱い。

 

《確認しました。対熱耐性獲得・・・成功しました》

 

 しかしアレだ。血を流しすぎると身体は寒く感じるってのはホントだったんだな。

 

《確認しました。対寒耐性獲得・・・成功しました。対熱対寒耐性を獲得したことにより『熱変動耐性ex』にスキルが進化しました。続いて血液が要らない身体の作成に入りま………エラー、エラー。別種の魔法の介入を確認。抵抗(レジスト)・・・失敗。現在獲得したスキルの保護を最優先し、他のスキル獲得を断念》

 

 さっきからいろいろ煩いな。

 もう死ぬんだから静かにしててくれよ。

 

 薄れる思考と視界の中で、自分の周りの空間が歪んでいることに、俺は気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、婿殿。まずは───、は?」

 

 赤い髪と小麦色の肌を持つ美女は、目の前に現れた死にかけの男を見て一瞬呆けたが、すぐさま

 

「──治癒の宝玉を持て! あとすぐに医者を! この者を死なせてはならんぞ!」

 

 と周りの者にその男の治療を指示したのだった。

 

 

 

 

 

 

◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 

 

 

 

 

 

 

「──ん?」

 

 ここが、死後の世界?

 なんだか高級なベッドで寝ているかのような感触だ。

 暑くもなく寒くもなく、快適な感じ。

 (まぶた)越しに光を感じる。

 

「んー…!」

 

 思いの外重い瞼を上げると、そこはどこかのホテルの一室のようだった。

 まだぼんやりとしか見えないが、どうやら天蓋付きのベッドに寝かされているらしい。

 視線を彷徨わせていると、部屋の隅の椅子に座っているご老人と目が合った。

 

「………」

 

「──お目覚めになられましたか。すぐに陛下をお呼びいたしますので、そのままお待ちくだされ」

 

 そう言うとご老人は部屋から出て行った。

 とりあえず、その『陛下』とやらを待つとしよう。

 

 数分後。

 

 はっきりとしてきた視界に映る部屋の様子に首を傾げていると、

 

「待たせたな、婿殿。まずは謝罪を。断りもなく『この世界』に呼び出したことを謝らせてもらう。しかし驚いたぞ。『呼び出した』はいいが、いきなり死にかけていたのだからな」

 

「はあ……」

 

「ん、混乱するのも無理はない。そなたの疑問を解消するためにも説明をさせてもらいたいのだが、いいだろうか?」

 

 俺は目の前に現れた褐色美人にときめきながら、絞り出すように

 

「はぃ」

 

 と返事をするのが精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、数年後に魔物(スライム)として別の異世界に転生するはずだった男の、『もしもの物語』である。

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