転生しなかったら理想のヒモ生活な件。   作:四季式

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女王の思惑。

アウラside

 

 

 おばば様とマルケス伯爵を呼び協議した結果、サトルに魔法の才能があるならば伸ばすべき、しかし才能があり過ぎる(・・・・・)ことはここにいる者までで情報を止めておく、ということになった。

 また、魔法の指導はオクタビア夫人とおばば様の二人体制で行うことにした。

 サトルの家庭教師に抜擢したオクタビア夫人をすぐにお役御免にすると、何かあったのではないか、と誰かに疑惑を持たれる可能性があるため指導は継続。

 魔法の実際の教師役は、ご老体に鞭打つようで申し訳ないがおばば様に協力を要請した。

 

「さて、私はサトルの様子を見てくる。フォビオ、サトルは私室か?」

 

「サトル様付きの侍女からの報告によりますと、若い侍女三人を呼びつけたとのことです。おそらくまだ私室にてその者らと一緒にいると思われます」

 

「うむ、ではその輪に私も加わるとするか」

 

「……新人の侍女たちに陛下のお相手は荷が重いように思います。先に下がらせるのが良いかと」

 

「いや、その侍女たちはサトルの話によく出てくるのでな。どのような者たちなのか自らの目で確かめたいのだ。──サトルが口を滑らせているやもしれぬしな」

 

「そういうことでしたら。どちらにせよ、その三人には同情を禁じ得ませんが」

 

「はっはっは!」

 

 というわけで、いざ出陣。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サトルside

 

 

 レテの歴史講座を聞いている中、ドアがノックされた。

 

「ご歓談中失礼致します。これよりアウラ陛下がお戻りになります。サトル様とそこの三人は陛下の到着までしばしお待ちください」

 

 アウラが戻ってくるのか。

 そのことを聞いて三人はサー、と血の気の引いた顔色になり、アワアワと慌て始めた。

 そんなに怯えなくても取って食われたりは……しないといいね。

 

「サトル、戻ったぞ」

 

「アウラ、おかえり」

 

 侍女三人組は俺の後ろに直立不動のまま、ガチガチに緊張した様子で『お帰りなさいませ、アウラ陛下』と声を揃えて挨拶した。

 

「ほう、この者たちがサトルがよく話す侍女三人娘か。確か名前は、フェーとドロレス、レテだったな」

 

「あ、アウラ陛下が」

 

「私たちの名前を」

 

「覚えてくださってるぅ」

 

 感極まって泣きそうな三人に、アウラは尋ねる。

 

「で、誰とどこまでヤったのだ?」

 

 瞬間、凍りつくその場の空気。

 その中でも特に凍っている俺は、

 

「ア、アウラサン? 何ヲ言ッテルノデスカ?」

 

 と片言になってしまうほど動揺していた。

 今なんて言った?

 

「ん? だからこの者たちはサトルのお気に入りなのだろう? だからどこまで手を出したのかを聞いているのだ。なに、私も大人で女王だ。サトルが侍女を五人や十人囲っても怒ったりはしない。むしろ喜ばしいことだ。────私の夜の負担が減るしな」

 

 最後のボソッと言ったのは聞こえなかったけど、それで良いのかマイワイフ。

 

「無論、私がサトルの『一番』であるのが前提ではあるがな。そしてその反応からすると、まだ手をつけてないのだな」

 

「あ、当たり前だろ⁉︎ フェーたちはあくまで話し相手として居てもらってるだけなんだし! そんなセクハラみたいなことしないし!」

 

「せくはら、というのはよく分からないが、後宮に男はそなたのみ。側仕えが全員女なのだ。そういう過ちの一つや二つはあって当然なことだ。むしろなぜ手を出さぬ?」

 

「前にも言ったけど、俺は今はアウラだけで胸いっぱいで側室とか、そういう余裕はないんだって!」

 

「侍女に手を出してもそうそう側室にはならんよ。『お手つき』のため多少の優遇はあるだろうがな。よし、そこの三人。お前たちはこれよりサトルの側近の侍女に任命する!」

 

『は、拝命いたします』

 

 三人の侍女は女王陛下の命令に背くなんてことはできるはずもなく、すぐに了承の意を示した。

 

「ちょ、アウラ、側近なんて別に必要ないよ」

 

「いや、今まで通りならそうなのだがな。事情が変わったのだ。心当たりはあるだろう? それならば、気心の知れた者の方がよかろう」

 

「……事情って、やっぱり俺の魔法のこと?」

 

「うむ。そなたの魔法については後々詳しく調べるが、この世界の常識では『異常な才能』であると判断せざるを得ない。それを野心家の貴族どもに知られれば、最悪神輿として担がれてサトル派と私派での内戦に発展する可能性もある。それは避けなければならない」

 

 それは、確かに最悪のシナリオだ。

 ならばこの情報は最低限の人間で留めておかなくてはならない。

 

「先ほどのサトルの質問の内容から察するに、その三人には既に何かしら話してしまったのだろう? ならば、そやつらはこちら側に引き込むしかない」

 

「……分かった。三人を側近として側に置く」

 

「理解がある夫で私は嬉しいぞ。では今後は、この三人の内の誰かを通して連絡を取り合うようにする。ちなみにそなたの魔法について知っている者は、ここに居る私たち以外では私の秘書官のフォビオ、マルケス伯爵家、そして王家の相談役であるおばば様のみだ。無いとは思うが、もし他の貴族に会った際に何か聞かれても知らぬ存ぜぬで通すように」

 

「了解。他に聞きたいこともあるから、この件も含めて今夜ゆっくり話そう」

 

「ああ。……すまぬな、勝手に話を進めてしまって」

 

「いいよ。アウラは俺のことを考えて行動してくれたんだろ。なら謝ることなんてない」

 

「サトル……」

 

「アウラ……」

 

 いい雰囲気になりかけたところで、

 

『わくわく』

 

 と俺の後ろから好奇の眼差しでフェーたちに見られているのに気づいた。

 

「あ、アウラ、この続きも夜にしようか」

 

「ふふ、よいではないか。なんなら、こやつらに見せつけてやろうではないか」

 

 ペロリ、と舌舐めずりをして俺を狙うアウラ。

 しかし、部屋のドアをノックする音がして、

 

「アウラ陛下、フォビオ様からの伝言で『政務に戻るように』とのことです。戻られた方がよろしいかと」

 

 という侍女の言葉に興が削がれたようで、「仕方がない、戻るとするか」とあっさり出て行った。

 危機は去ったかに思われたが、

 

「さすがはアウラ陛下。大人ね!」

 

「大人というか、肉食系な感じ!」

 

「過激ですー!」

 

 この後、俺とアウラの様子を見て興奮気味な侍女三人に、根掘り葉掘り夜の事情まで質問責めにあうのだった。

 

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