転生しなかったら理想のヒモ生活な件。   作:四季式

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夫婦の繫り。

 リムルはディアブロという悪魔と一緒に、元の世界に帰って行った。

 急に来て引っ掻き回していきなり帰るとは、嵐みたいなやつだったな。

 

「サトル様。これよりわたくしは一時的とはいえ、あなた様の配下ですわ。なんなりとご命令をなさってくださいませ」

 

 白髪(はくはつ)の美女、テスタロッサが(こうべ)を垂れる。

 

「テスタロッサ嬢。このままここにいると侍女に見つかってしまう。女王の私室に正体不明の女が居たとなれば、話がややこしいことになる。私が時空魔法で人目のないところに送るゆえ、これを持って再び登城してくれないか?」

 

 そう言ってアウラは、紋章が刻まれているメダルのような物を取り出した。

 おそらくテスタロッサの身分を保証するための何かなのだろう。

 

「……サトル様はそれでよろしいですか?」

 

 テスタロッサはアウラに一瞥するも、すぐに俺に意見を聞いてきた。

 

「ああ。すまないがアウラの言う通りにしてくれ」

 

「承りましたわ」

 

 そう返事をしたテスタロッサはアウラの元へ行き、「お願いしますわ」とメダルを受け取る。

 

「『我が脳裏に描く空間に、我が意図するものを送れ。その代償として我は、時空霊に魔力四千三百五十九を捧げる』」

 

 アウラが転移の時空魔法を発動すると、テスタロッサの姿はなくなった。

 

「テスタロッサ嬢は城外の、人通りの少ない所へ転送した。これで心置きなく作戦会議ができる」

 

「ああ、意見の擦り合わせは大事だ。さて、何から話そうか」

 

「第一に考えないといけないのは、リムル殿についてであろう。元々はサトルと同一存在とのことだが、魔物(スライム)に転生して大魔王になった彼の者をサトルと同一視はできんな。まあ思考の仕方まではそれほど変わっていないようなので、ある程度何を考えているかの推測は可能だが」

 

「え、アウラは俺が何考えてるか分かるの?」

 

「サトルは表情作りはできても腹芸はできないであろう。顔には出さないが、行動で大体分かる。あちらには策士(シエル)がいるのでいくらでも補助はできるため読みきれないところはあるがな」

 

「それで、アウラが考えるリムルの目的は?」

 

「確証はないが、さっき語ったのが本音だと思われる。リムル殿は異世界の動植物を得るために先の提案を持ちかけたのだ」

 

「……ほんとに?」

 

「本当だ。無論、私が読み取れる範囲ではだがな。どうやらリムル殿は、権力を持っていてもそれを最大限に利用する事はなかったのだろう。権謀術数(けんぼうじゅつすう)が渦巻く宮中のようなものの経験がないのは雰囲気で分かった。そういった(はかりごと)はディアブロ氏の方が得意そうであった」

 

「あー、確かに」

 

 表面上はにこやかな笑顔だったが、あれは絶対性格悪い。ただの勘だが。

 

「交渉が成立した時点で目的のモノを持って帰ると思ったが、リムル殿は去り際に『魔法の指導が終わるまで待つ』と言っていた。これは私たちを信頼しているようにも思える。しかし、この取引において彼らは圧倒的強者だ。信頼関係を築く前に主従関係になっていても不思議ではなかった。それほどの差がありながら、あちらはこちらに損が出ないように取り計らっていた。どうしてか分かるか?」

 

「え? えっと、俺が三上 悟()だからか?」

 

「確かにそれもあるだろう。だがリムル殿も一国の主。交渉ごとに私情を挟むようなことはしないよう心掛けているはずだ。だが仮にそれを込みでも条件が緩すぎる。ならば、リムル殿は本当にこの世界の動植物の種にかなりの価値を見出しているのだ。──彼らは争いや(いさか)いによるこちらの世界の損失(・・・・・・・・・)を恐れている。まあ、これもあくまで私の予想だが、それほど的を外していないとは思う」

 

 そこまで深く考察しているとは、さすが一人で国を支える女王様だ。

 いや、今は俺もカープァ王家の一員だ。

 この件に関してはアウラだけに任せるわけにはいかない。

 

「アウラ。普段の仕事は門外漢だから手助けしづらいし、俺が手伝えばアウラも動きにくくなると思うから手出しできない。だけど、異世界(リムルたち)に関しては誰かに手伝わせるのはリスクが高いから、ほとんど俺たちだけで対応しないといけない。だからこの件に関しては、俺にもしっかり手伝わせてくれ」

 

「しかしサトル。今は友好的でも、いずれ高圧的な態度での交渉があるやもしれん。その時にそなたは相応の対応ができるか?」

 

「今は、無理だ」

 

「ならば──」

 

「──でも、俺だって何もできないままじゃない。王族らしい振る舞いも、外交の技術も、魔法の訓練も、必要なものならなんだって取り込んで自分のものにしてやる。だからアウラ、俺にも君を少しでも支えさせてくれないか」

 

「……サトル」

 

「はは、柄にもなくカッコつけたこと言っちゃったな。だけど、これが偽りのない俺の本心だ」

 

「──ありがとう、サトル。私はそなたと夫婦になれたことを、本当に幸運に思う。リムル殿たち異世界に関する外交、どうか手伝ってくれ」

 

「ああ!」

 

 この時、俺はアウラと本当の意味で結ばれたのだと感じた。

 

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