転生しなかったら理想のヒモ生活な件。   作:四季式

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結婚の選択。

「──という訳だ、サトル殿。このカープァ王国のため、我が伴侶になってくれぬだろうか?」

 

 褐色赤髪の美人・アウラさんは、ここ『カープァ王国』の『女王陛下』だった。

 その伴侶、ということは王配になるということだ。

 だが、その王配になるためにも条件があるという。

 第一に王族の血筋が少しでもあること。

 第二に一定以上の魔力を持っていること。

 『え、どちらも俺に当てはまらないのでは?』と思ったのだが、その説明もされた。

 

 一つ目については、大昔にどこぞの女と駆け落ちした王族がいて、それがおそらく俺の先祖なのだ、というのだ。

 なんぞそれ。

 

 そして二つ目。

 これは俺が先祖返り──つまり隔世遺伝で特にカープァ王家の血が濃く出たのではないかとのこと。

 

「はあ、話はなんとなく分かりました。この世界に『魔法』があることも、俺の傷が塞がっていることで納得がいきますし」

 

 あの通り魔に刺された傷は、明らかに致命傷だった。

 なのにこうしてピンピンしていられるのは『魔法』のおかげだ。

 よくゲームにある『治癒魔法』というものらしい。

 そして俺をこの世界に呼んだのが『召喚魔法』という。

 

(治癒に召喚、ねぇ)

 

「多少なりとも理解してくれて助かる。では話を進めるぞ。──まず、サトル殿に謝らねばならないことがある。そなたは元の世界に戻ることができない」

 

(やっぱりか……)

 

 ある程度覚悟はしていたが、実際に聞かされるとクるものがある。

 

(だけど召喚されたことによって、俺は生きながらえることができた。この人に当たるのはお門違いだな)

 

「謝らないでください、アウラさん。あの傷を治してもらわなかったら俺は死んでいました。命の恩人に感謝することはあっても、恨むことなんてありません」

 

「そう言ってもらえると私も心が軽くなる。では改めて本題に入るか。サトル殿、私の婿になってくれぬか?」

 

「結婚、婿入り、そんで王配ですか」

 

 厄介事の匂いしかしない。

 

「うむ。無論、サトル殿が政策に関わることはまずない。そなたにしてもらいたいことは、子作りだ」

 

「こ、子作り、ですか」

 

 顔が赤くなっていくのが分かる。

 視線が自然とアウラさんの胸元に行ってしまう。

 童貞には目に毒なほどナイスバディなアウラさん。

 

「そうだ。先の戦で王族は私以外戦死してしまってな、早急に王族の血を増やさねば国の崩壊に繋がりかねない。そこでカープァ王家の血を色濃く継いだサトル殿に白羽の矢が立った、ということだ」

 

(ふーむ、妙だな)

 

 いくら王族がアウラさんひとりだとしても、婿候補はある程度国にいるはずだ。

 それなのに、いるかどうかも分からない異世界の婿候補に頼るか?

 

「……アウラさん、いくつか質問があるのですがいいですか?」

 

「うむ、いくらでも聞いてくれ。そなたの一生がかかった事柄だからな」

 

「ではお言葉に甘えて。こちらの世界には俺のような『婿候補』はいなかったのですか?」

 

「いるにはいるのだが、婿殿ほどの血の濃さも魔力量もない者ばかりだ。その者との間に子を成しても王家の血が薄れることになるだろう」

 

「そうですか。じゃあ二つ目、例えば俺が結婚を拒否した場合はどうする予定だったんですか?」

 

「本来ならサトル殿を召喚した翌日ならば送還魔法が使えたため、断られれば元の世界に送り返す予定だった。しかし、傷つき血を流しすぎたそなたが目覚めるのに三日が過ぎてしまった。召喚・送還は星の並びに多大な影響を受けるゆえ、次に使えるのは三十年後になってしまう。だから先ほどは『元の世界に戻れない』と言ったのだ」

 

「なるほど。では俺が断った場合は先ほど言っていた他の婿候補と結婚する、と」

 

「そうなるな。だがそれはできれば避けたい事態だ。先ほど申した通り、王家の血が薄まることはかなり大きな問題になる」

 

「三つ目の質問です。俺はこの結婚を断る事ができますか?」

 

「──できる、と言ってあげたいが、それはそなたにとってとても厳しい選択になる。呼び出した責任があるゆえ金銭などの援助はさせてもらうが、三十年後まで帰ることができぬ異世界で自分の力で生きていくのがどれだけ大変かは想像に難くない」

 

 やっぱりか。

 アウラさんは言ってないが、恐らく俺の治療に使ったという『治癒魔法』も普通の人だったらしてもらえないものなのだろう。

 俺に負い目で結婚してほしくないということなのかな?

 

「……最後の質問です。俺は元の世界では特に金持ちなわけでもない、普通の人間です。そんな俺は王族らしいことなんて何もできませんが、それでも良いんですか?」

 

「もちろんだとも。サトル殿には私との子作り以上の要求はしないと誓おう。生活も何不自由させないことを約束しよう」

 

 それは俺にとって都合がよ過ぎないか?

 本当に血を薄めたくないだけか?

 何か裏があるのでは?

 

「────分かりました。不束者ですが、よろしくお願いします」

 

 こうしていくつかの疑念を残したまま、しかし俺は結婚を受け入れることにした。

 

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