転生しなかったら理想のヒモ生活な件。   作:四季式

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侍女の歓待。

「では行ってくる。夕食には間に合うようにするつもりだが、先に食べてしまっても大丈夫だぞ」

 

「分かった。仕事がんばってね」

 

 軽くキスを交わすと、アウラは後宮から出て行った。

 女王陛下は多忙なのだ。

 

「さーて、何しよ」

 

 後宮の私室にひとり。

 娯楽の類いは、現代日本から見ると稚拙な物ばかり。

 ならば読書をしようかと思っても、異世界の文字で読めない。

 

「あー、暇」

 

 こうしてゴロゴロと暇を持て余すなんて、ここに来る前は贅沢な事だと思っていたが、それが延々と続く状況になってみると若干の苦痛すら感じてしまう。

 

 コンコンコン。

 

 とノックの音が聞こえた。

 

「失礼いたします。サトル陛下、侍女長のアマンダでございます。入室してもよろしいでしょうか」

 

「あ、どうぞ」

 

 反射的にそう返答すると、二人の中年女性と三人の若い女性が入ってきた。

 

「お休みのところ申し訳ありません。これからは清掃担当者がこの私室に出入りすることになるので、ご挨拶と何か注意点などがあればおっしゃっていただきたいと思いまして」

 

「お初にお目にかかります、サトル陛下。清掃担当責任者のイネスと申します。こちらは同じく清掃担当の侍女のフェー、ドロレス、レテでございます」

 

「ふぇ、フェーです」

 

「ど、ドロレスです」

 

「レテですー」

 

 侍女長には結婚式前に何度も会ったことがあるが、他の四人ははじめましてだ。

 

「三上……じゃなくてサトル・カープァだ。よろしく」

 

「はい。よろしくお願い申し上げます。さっそくですが、この部屋を清掃するにあたって時間や注意点の確認をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」

 

「大丈夫だよ。と言っても、この部屋に元々の俺の私物はないし、時間も基本暇だからいつでも構わない」

 

「それはありがたいお言葉ですわ。では清掃時間は朝食後と夜の入浴中の二回にしようと思います。もし不都合などございましたら何なりとお申し付けください」

 

 不都合──、ふむ。

 

「ではひとつだけ」

 

 五人がピンッ、と緊張するのが伝わった。

 そんな大層なこと言うつもりじゃないのに申し訳ないな。

 

「日中、特にアウラが居ない時にすることがないから、清掃や仕事の合間でいいから話し相手になってほしいんだ」

 

「承りましたわ。それならば年若いこの三人がよろしいかと存じます。ご自由にお呼びになってください」

 

 侍女長がそう言うと、件の三人は百面相をしていたが、清掃責任者に視線で黙らされた。

 

「あー、もし三人に不都合なら別にやらなくても……」

 

「いいえ、陛下。不都合などあるはずがありません。そうですね、三人とも」

 

『はい!』

 

 若い三人が声を揃えて返事をした。

 

「では私達はこれで失礼いたします。あ、この三人は話し相手に残しておきますので、なんでも申し付けてくださいませ。貴女達、陛下に失礼のないようにね」

 

 そう言うと、侍女長と清掃責任者は退室していった。

 そして残るは怯えを表に出さないようにしてるのがバレバレな三人の侍女。

 どうしようか、これ……。

 

 

 

 

 

 

 

◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、改めまして、よろしくお願い致します、陛下」

 

 ショートカットの小柄な侍女、フェーが先陣を切って挨拶してきた。

 

「よ、よろしくお願い致します」

 

 そこに長身の侍女、ドロレスが続き、

 

「よろしくお願いしますー」

 

 垂れ目で巨乳な侍女、レテが間の抜けた感じの挨拶で締めた。

 

「ちょ、レテ! 陛下に失礼でしょ!」

 

「そうよ、レテ! 失礼のないようにってアマンダ侍女長に言われたでしょう!」

 

「でもー、陛下はあんまり堅苦しい態度、お嫌いだと思ったんですけど、違いますかー? もし違うようでしたら謝罪いたしますー」

 

 ぽわぽわした感じに反して、なかなか鋭いなこの娘。

 確かにこの世界に来てから、王配になり陛下と呼ばれるようになり、堅っ苦しい態度と言葉遣いには辟易していた。

 

「レテの言う通りだ。フェーとドロレスもそんなに緊張しなくても取って食ったりしないよ」

 

「……取って食われるのが前提の仕事なんですがね」

 

「ん? なんか言った?」

 

 ボソッとドロレスが何か呟いたが、よく聞き取れなかった。

 

「いえいえ! なんでもありません! ところで陛下。話し相手と申されてましたが、どんな話をご所望ですか?」

 

「だからー、陛下はもっと砕けた話し方が好きなんだってばー」

 

「そ、そうね。えっと、陛下はどんな話がしたいですか?」

 

「そうだなぁ、アウラについて聞きたいな。俺がここに来てからまだ二週間くらいしか経ってないし、その内三日は眠ってた。だからアウラと接していたのは十日ほどしかない。俺はもっとアウラのことが知りたい。君たちの私見でいいから、アウラについて教えてくれないか?」

 

 そう言うと三人は顔を赤くして、

 

「ほえー。アウラ陛下ってば、めちゃくちゃ愛されてるじゃん」

 

「まだ会ったばかりなのに、ここまで想われてるなんて」

 

「うふふー、ごちそうさまですー」

 

 と言ってくるので、こちらも赤面してしまった。

 

 それから清掃責任者のイネスが来るまで、俺はアウラの武勇伝などを色々教わった。

 

 

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