妖怪は現代の人間のように繁栄、そしてこの世界で最も力を持った種族となり、人間は現代の世界の妖怪やUMAなどといったように、幻のような、伝説の
ような、存在すら怪しい者として成っていた。
その世界のどこかにある小さな小さな島の山奥の一つの集落に、1人だけ妖怪達と共生する人間の青年が居た。
青年の名は莱(あかざ)
身長174cm 年齢は未詳、だが20代未満なのは確実と言えよう若々しさにボサボサとした黒髪、ボロい麻のダボダボした着物を着て、やる気の抜けた目が特徴 集落のボロボロとした一軒家に住むこの世界に唯一存在する人間。彼が1人なのはひとつ訳があるのだが、それはまた後程………
その青年はまだ若くながらにして肉親を全て失っていたが、青年は全く寂しくとも血の繋がった家族が欲しいとも全く思わなかった。
彼は生まれて直ぐ、肉親全てが亡くなったからである。よって彼には血の繋がった家族などという概念は存在しなかった。
そして寂しくない理由はもうひとつ
彼には家族並に思える人物がいた
勿論妖怪だが、種族間など関係もなく接してくれる雪女という妖怪の伊吹(いぶき)
身長156cm 年齢未詳だが、見る限り莱とほぼ同じ年齢。大きな猫目で水色のサラサラした短髪が特徴彼女も実は肉親は居らず、たまに莱の家に訪ねては夕飯などを一緒にしたりする。服装は莱とはそれ程大差ないが、袴が少し短く足の露出が少し多くなっている模様。
彼女はこの集落では顔が広く、よくこの集落の農家から作物をおすそ分けして貰っているほど気が良い。
莱とは幼馴染みでありながら、双子のような関係であった2人。
そんな彼等が、この集落の長老に呼び出され、長老の家へと向かう。
その長老の話こそが、莱の今までの平穏な人生の歯車を錆びらせ狂わせ、この先朽ち果てさせようともすることになろうキッカケになるとも知らず…
莱と伊吹は長老に呼び出され、長老の家へと向かっている。
伊吹「ねぇ、莱?」
長老の家へ向かう道中、伊吹が歩きながら莱の隣で話しかける。
莱「ん?なに?」
反応する莱
伊吹「莱が今まで呼び出されたことなんてあったっけ?」
莱「確か・・・無かったな今までは・・・なんで今更に…」
今までなにも自分に触れもしなかった長老が自分から呼び出すとは珍しいと思いながら疑問に思う。
伊吹「あ、着いたよ。ここ。」
と言い、この集落で一番に大きい、まるで長屋のような屋敷に着くと伊吹が家の戸をガラガラっと音を立てて開ける。
しばらく屋敷の廊下を歩くと、大広間のような広い暗い部屋に着いた。中に1人、正座をしている
長老だ。
伊吹「長老・・・来たよ」
と言いながら伊吹が先にその部屋へと入ると、長老が顔を上げてこちらを向く。座れと言わんばかりに、長老の前には2つ座布団が置かれてある。
恐る恐る座ると、長老が口を開く
長老「や・・・よう来たよう来た・・・急に呼んでしまって、悪かったね…」
莱「ん…」
長い白髪で顔が見えないが、声でわかる。長老は女性だ。莱は今まで長老とは面向かった事がないので、彼女がどういう人物かは全く分からない。
長老「もう、本題に入るが・・・莱、君はこの集落にいるべきじゃあない…」
その発言に莱が眉を寄せる
莱「え?…」
まるで自分に出ていけというような言動に、少し戸惑う莱、それを静かに見ている伊吹。
長老「あ、いやね・・・別に、今すぐここから出ていけという訳じゃない・・・ただ・・・莱、君にはやるべき事があるんだ・・・」
よく分からないまま話を続ける長老
長老「まぁ、混乱するのも無理はないね・・・結果から入ってしまったからね・・・まぁ、手始めから行くと、莱、君の一族は、祟られてる」
長老は真面目そうに言うと、莱が口を挟もうとする
莱「は…?あのちょっと…」
長老「まぁ、待って。簡単に説明すると、君の一族、君の先祖は何かに祟られていてそれが君の世代までも続いてる。肉親が居ない理由も、それだよ。どうやらこの祟りは、子を生むごとにその者の命を絶たせ、そして祟りを子に受け継がせる仕組みになっているらしい…」
ながながと冷静に話す長老に対し、全く頭の整理が出来ない莱
莱「あの・・・何を仰って…」
長老「つまりだ。莱、君は、その祟りを君の世代で殺さなければ、君も、その周りの者まで死に至らすかもしれん・・・今すぐにでも解かなければならん、という話だ。」
長老の話では、この祟りは世代交代の毎に勢力を強めていっているらしく、そろそろ周りにすら危害を加えるかもしれない、という話だった。
莱「それで・・・俺に何をしろと…?」
長老「祟りは、術者にしか解けない。よって、君には若いうちから、その旅に出て欲しいと思ってね・・・」
長老はあまり自信なさげに言う
莱「・・・・・一晩ほど、考えさせてください…」
そういうと、長老は小さく頷いた。
莱と伊吹はその屋敷を後にして、家路へと急ぐ。
伊吹「なんか・・・予想だにしなかったね…」
莱「まあな・・・いきなり旅に出ろだなんてな…」
そして家に帰ると、莱は一晩、考えることにした…
翌日になると、萊は決心し、また長老の家へと訪ねる
萊「俺、行きますよ・・・このままだとみんなが危ないっていうんなら…」
素直に聞き入れてくれて良かった、と、表情から滲み出ている長老は小さき頷きながら
長老「あぁ・・・いってらっしゃい…」
まるで、我が子を見送るように優しい声
萊は、集落の入口で集落の妖怪の全員で見送られることになった。
なぜ、自分のような何もしていない奴がこんなに情深く見送られるのだろうと、疑問にも思ったが。
萊「えーと、しばらくさようならだな皆ー。」
集落のみんなは、まるで自分に世話にでもなったかのように手を振って見送ってくれる。
その手を振るみんなの間から掻き分けるように、水色の髪をたなびかせながら出てきた。伊吹だ。
伊吹「私も行くよ!一緒に!」
なんだか伊吹はヤケに元気に、一緒に行くと言い出した。
萊「伊吹・・・も行くのか?」
少し戸惑いながら考える萊。
萊「うん、じゃあ行こう。1人でも寂しいしな!」
まるで伊吹の元気に侵されたかのように笑顔で同行を認める萊。
いよいよ旅に出る・・・歩いていくにつれ、森の静寂が辺りを包んだ。聞こえるのは木の間に風が通る音と2人の足音。
そんな静寂の世界に、伊吹が
伊吹「ねぇ、旅って言っても、どこに行くつもりなの…?」
萊「この山を超えた麓に、大きい都があるらしい。そこで、祟りの根源の正体とか、それに役立つこととか聞いて回るつもり」
いつもあんなにぼうっとしている萊でも、ここまで計画立ててるんだなっと伊吹が感心する中、一つの大きい川が目の前を流れている。向こう岸に渡るには橋もない。
どうしようかと悩み、いくつか石が重なり、渡れるようになってそうなところを見つける。
萊「おい、伊吹、あそこ」
萊が石の足場を指差す
伊吹「あそこ渡るの…」
少し嫌そうに言う伊吹
萊「でもここ渡らないと行けないし、ほら、行くぞ」
先に行く萊。それを見てゆっくり着いていく伊吹。
萊が石の足場に足をかけた時、川辺から音が『ちゃぷ…』っと、何かが浮いてきたような音がした。
なんの音かと見てみると、青く小さい河童が顔上半分を出してこちらを見ている
萊「ん・・・?」
不思議に思っていると青河童が口を開ける
河童「旅のお方か・・・」
声から察するに、子供ではないようだ。
萊「あ、まぁ、都に行きたくて…」
河童「都・・・ですか、それならこの川を下るといい。都の水路に続いてますから、この山の斜面は入り組んでますから、普通に行ったってなかなか着くもんじゃありません」
河童は親切に教える
萊「あ、ありがとうございます…あ、おい伊吹、行くぞぞ」
伊吹「あ、うん…」
2人は疑うこともなく、川を下っていく。
河童は二人が見えなくなると、
河童「人間ですかぁ・・・山の主には勘づかれちゃ、不味いですなぁ」
少しにやけた表情で…
しばらく下っていくと、広い整備された道のような所に出る、道の向こうを見てみると、門のようなものがある。河童の言ってることは嘘でなかったよう。
萊「ここが・・・思ったより早く着いたな…」
歩いて門に近づくと、門の端に1匹、三メートル程はあろう狼の顔をした巨漢の番人がいる。どうやらこの番人は見る限り、山犬の妖怪らしい。
山犬「おい、そこの。ちょっと止まってこっちに来い」
番人に目を付けられた。あまりよろしくない事態に素直に山犬のいうことを聞く萊とそれについて行く伊吹。
都が目の前にあるというのにここで門前払いなんて目に会うのは勘弁だと思ったが…
完全オリジナル作品なので、次作の更新が遅れる場合があるかもしれません。