強いけどニューゲーム   作:シズりん

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第2話

「ちょっとヤハウェ、どうすんのよ。」

「どうするって言ってもなぁ…まさか神である私とその妻であるお前が天界を出禁にされるとは思いもよらなかったしなぁ。」

 

天界で些細な夫婦ゲンカをしていた2人は、大天使長であり神の如き者の名をもち、そして悪魔王(サタン)ルシアの妹であるミカエルにより天界を出禁にされた2人は途方に暮れていた。

「だいたい神が出禁になった天界なんて天界と言えないでしょうが。神なんだから大天使長くらいなんとかしなさいよ。」

「それを言うならミカエルはお前の妹だろうが。ルシアこそ姉としてミカエルの説得をしてみせろよ。」

 

2人はお互い相手に大天使長ミカエルの説得を要望してこそいるが、融通が利かないと言うか頑固な彼女の性格を知り尽くしているので、千年ぐらいは許してくれそうも無い事は解っている。

 

「仕方がない。裏口からこっそり天界に入って暫くは家で大人しくしていよう。」

神の妥当な提案に頷いたしたルシアは、天界の神の座する神殿(家)に帰る為のゲートを開いて…そして閉じた。

「なんだルシア、どうしたんだ?」

「…ヤハウェやばいわ。あの(ミカエル)マジだわ。」

青い顔して振り向いた妻の姿にヤハウェは笑いながら自身もルシアの出したゲートを開いて中を覗く。

 

グルルルル…

 

とてもでは無いが可愛いと言えない三ツ頭のワンちゃんがヨダレを垂らしながら唸り声をあげていた。

それを見たヤハウェはそっとゲートを閉める。

「…ケルベロスだな。」

「えぇケルベロスね。」

そう、神ヤハウェと悪魔王(サタン)ルシアが裏口を創り神殿に帰るだろう事をあらかじめ予測していたであろうミカエルが、地獄の番犬ケルベロスを彼らの家の庭に放していたのだ。いかに彼女が本気で怒っているかを今更になって知る神と悪魔王は、自分たちの家に帰れない事をさとりため息を吐いた。

 

「仕方がないわね別荘に行くわよ。」

「別荘?」

「魔界にある私の居城よ。あそこは少し寒いけど、たまには夫婦水入らずも良いかもしれないわね。」

「えぇ〜コキュートスのあの家(居城)かぁ…。あの川の最深部って永久に氷漬けの極寒の地だからあまり行きたくねーんだよな。」

「…ヤハウェ、あなたがコキュートスを氷漬けにしたのよね?忘れたとは言わせないわよ。」

顔は笑っているが明らかに目が笑っていないサタン(悪魔王)ルシアが、まるでゴゴゴゴゴ…とか言う擬音でも聞こえてきそうな程の凄みを含めてヤハウェに近づくと、それに合わせてヤハウェは乾いた笑いを浮かべながら後ずさる。

「ま、まぁともかく寝所が無ければミカエルちゃんの機嫌が良くなるまで凌ぐ事もできない。ルシアよ早く別荘に行こう。」

今一つ納得は行かないが旦那の言う事も一理ある。仕方なくルシアは自身のかつての居城のある地獄の最下層コキュートスへのゲートを開き、2人は地獄へと向かうのだった。

 

 

 

シン…っと、音さえもが凍っているのか死んでいるかのような氷層地獄コキュートス。

 

 

ここは地獄の最下層であり、5つの川がある。

あると表現したのは、どの川も凍っていて水が流れてはいないから、やはり川があると言うのが正しい。

コキュートスはその中でも最も深部に存在し、かつて神ヤハウェと争ったルシアに組した7人の大天使が、今は地獄の7人の魔王として君臨する地である、魔界の首都と呼ぶ場所だ。

 

「寒っ!!」

ゲートを潜り抜けたヤハウェの第一声。そんな体を抱えるように寒さに耐える旦那を蹴り退かして後ろからルシアがコキュートスに降り立つ。

「やっぱり天界と違って此処(コキュートス)は落ち着くわ〜。」

「なんでだよ。天界の方が暖かい日差しに柔らかな花の香り。笑顔が溢れる良い所じゃないか。」

「よく言うわよ。あなた天界は正義バカが多くて肩凝るとか言ってたじゃない。」

「か、神である俺がそんなことをいう…いや、何でもない。」

 

自身の批判にヤハウェは言い訳を試みるが、彼女はさと言われる以前は輝ける明けの明星と呼ばれるほどの美しい大天使にして、唯一ヤハウェと同じく十二枚羽を持つ神の妻。

そんな誰よりも長く供にいた妻の自身を見る白い目に、ヤハウェは言い訳を諦めた。

そんなヤハウェに笑顔で頷いたルシアは

「さすがは神ね、賢明な判断よ。あの子(天使)達はまだ生まれる前だから知らないだろうけどあなたは本来そんなヒトよ。」

一応全知全能の神なのだが遠慮のない妻の愚痴。しかしヤハウェは宇宙開闢以来ずっと言われてる事なので、最近ではあまり気にならない。

そう、これが2人の平和ないつもだから。

こうして2人は、悪魔も食べない夫婦ゲンカをしながら、落ち着いて天界に帰る為の計画を練るために悪魔王の居城(別荘)を目指すのだった。

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