ぐらんどおーだー 人理の天地 カルデア脇役録   作:七⭐

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牛歩どころか、カタツムリだね!
エタってないよ!確定申告だよ!


黒歴史は唐突に…

『ドンドンと鉄を叩く音がする。』

 

分厚い壁の向こう、白の雪原、薄い空気、ホワイトアウトの視界。

おおよそ人の生きる場所ではない。

人界ではなく異界。

いや、灰と白に塗りつぶされた光景は原初(はじまり)を連想させる。

で、あれば"神界"と、そう読んでも差し支えないのかもしれない。

 

だが、その吹雪の中で、必死に生きようとする命の音二つ。

 

神域に紛れ込んだ黒二点。寄り添い重なるドット。

相応しくないと言えばそれまで。

それは白紙に落ちたインクにすぎない。

漂白の続く山頂で、やがては消え去るのが道理。

…道理、なのだが、如何せん例外というものはある。

そも、相応しくないというのであれば、この"山頂こそ"相応しくない。

天然の岩肌にそびえ立つ牙城。流線型のフォルムに対比出来る物がないから分かりにくいが、尺度のおかしい人工物。

山頂(天)にありながら地へと伸びる蟻の巣。

人間が作った"天然"のバベル。

もとの雪景色に馴染む白の意匠は、成る程ある意味で違和感を打ち消していた。

 

ドン!

 

と、一際強くまた鉄扉が叩かれる。

冷えきったそれを殴る(叩く)のはよりによって素手。

手袋さえつけていない。

ぶつかるごとに凍り、剥がれたものが、赤く赤く、白を埋めていく。

 

しかし、残酷な話だが、それは恐らく無意味な行動だ。

 

だってここは雪山の頂上。

終末の雪原。

彼等は知るよしもないが、更に内部では爆発事故による施設職員の減少。

それによるシステムの簡略化。及び、居住性の高い場所へ優先的に電力を回していた。

つまり、

 

正門につららを垂らすカメラも、本来なら侵入者相手に働くはずの警備(ここは停止していて本当に良かった)も、既に無人とかし、僅かなセンサーだけが、ここに人がいることを示している。

だが、それも本職の人間が目にしてやっと分かる程度。

ファー付きのコートを着込む青年も、その青年を"背負う"大男も、全くといっていいほどその事実に気付いていない。

と、言うより、青年に至っては大男の背の上でぐったりと気を失っているように見える。

 

ならばこそ大男は赤い腕を再び振り上げた。

 

それは単純な話で、もう他にやるべきこともやれることも存在しないからだった。

男が止めれば青年もろとも凍死するのは目に見えているし、青年を起こす為にも雪避けは必要で、目の前の施設が無人有人なのかすらどうでも良かった。

 

本気で、正気のまま、厚さ20センチを越す扉を壊そうと"臥藤門司"は拳を握り、振り、降ろす。

 

 

 

 

 

 

 

そんな命の恩人(変態)を何故か疑似サーヴァントとして工藤は呼び出した。

呼び出しちゃったのである。

 

「が、」

 

「「が…?」」

 

「む、ここはカルデアだか、カルデラだかではないか?なんかこう誰かに呼ばれた気がして"これは正に宇宙意志!遂に真理ここに至ったか!"とワクテカせざるおえなかったのだが…」

 

「ガドーザーン‼(ガチ泣き)」

 

ガトーの胸襟に飛び込む工藤。

それに対して「おお!無事だったか工藤青年!」

とハグ返し(さば折り)を返すガトー。

固まる女性陣。

八割程溶けた扉。

そこから顔をだし、予想外の光景に"工藤(さん)!おとなしくマスター(ますたぁ)を………………え、あれ?あ…れ?なにこれ?え?工藤(さん)て実は…(トゥンク…)"な状態へ移行した三巨星。

 

誰が見ても間違いなくカオスだった。

 

 

 

 

 

「それじゃあやっぱり"外"に?」

 

「うむ、元より俗世から離れるべくして選んだ道よ。人理焼却恐るべし、されど天上天下に欲無き今こそ小生の求めた"答え"も見れるかと思ったのだが、…………なんか『ルームガーダー救ってからにしろ』と御告げがあってな?

遮るように赤い壁も出てるし、小生それでもイケるイケる、護身完成の見せる幻ダロ?と山頂へ踏み出そうと思ったのだが、その度に聖杯だか戦争だか、月に代わってだかに『ユー来ちゃいなよ?』とキャッチの嵐。

ええい、何処から漏れたか個人情報!だからマイナンバーなんぞ止めておけとあれだけ…………」

 

所変わって、カルデア食堂。そのほぼ中心の席で工藤とぐだ子、呼び出されたお目付け役のロマニ&ダヴィンチに呼び出してきた世話焼き後輩マシュに囲まれてガトーは白湯で管を巻いていた。

意味としては酒を飲んだ後であるが、アルコール無しでも意味が半分ほど通じてないので、表現としてはあっている。

 

「信じられない…今、カルデアの外に出るのは自殺行為もいいところだろうに、『赤い壁』というのは意味消失する限界域だろうか?」

 

「たぶんね、問題はそれを視認してる事だけど………と言うか、聖杯から直接の勧誘だって?月?彼本当はマスターとしてここに呼ばれてたんじゃないだろうね⁉」

 

しかし、聞かされた方はそうはいかない。

保護者達(ロマニ&ダヴィンチ)はその真偽に慌て、

 

「上がダメなら潜るまで!小生は壁の前をオケラのように雪を掘った!するとどうだ、そこにはイエティに瓜二つの白熊がクマーと叫びながら…」

 

「「おおォ!!」」

 

子供達(工藤&ぐだ子)は英雄譚であるかのように手に汗握り聞き入っている。

尚、マシュは両方の気持ちが分かるので目を輝かせつつも保護者組が気になって目があちらこちらに泳いでいる。マシュマロかわいい。

 

「…そして奴は、『よもやこの"完力"が破れるとは…、バキャバキャ(笑い声)!人とはこれほどのものだったか…全身の骨が砕けるのもこれで二度目、だが、…右手は残ったな…去らばだモンジ』『嗚呼、お前と別れるのは残念だ…』そう言うと、ポー○ネイル!の叫び声と共に、自らの心臓に爪を立てた…小生は止めれなかった。いやさ、止めれたとしてその矜持を無下には出来なんだ…」

 

「「「ポ、○ーラマーン‼」」」

 

マシュマロかわいい。

 

 

 

 

 

………とまぁ、そう言うわけだ」

 

「つまりなんだい?君はカルデアに保護されて、その後脱走してから約一月もの間この雪山の中をさ迷っていたと…?」

 

「無論小生なりに考えあってのことだ。カルデアを中心として半径約1キロそれを囲むように"赤壁"は立っている。中には天然の洞穴も、底の見えぬ地割れもあった」

 

「!成る程…霊基反応がある以上、索敵には引っ掛かるだろうが、隠れ家(シェルター)にはならなくとも雪がないというだけで使い道はあるね…」

 

「だが、少しずつではあるが狭まっている。日にして数センチから数ミリ。まちまちだが先日一気にメーター単位で狭まった」

 

「それはきっと女神ロンゴミニアドによる攻撃を受けたときだね。シバも数枚割れていたし」

 

「む?そのような女神は…いや待て。"果ての柱"か?アーサー王?…は息子いるし、神、神か…ワイルドハント?オーディン?ドレイク?いやさ、ヘカテーか⁉…なんという…なんという罪深さ⁉ロマニよ、映像を、映像をプリーズ!肉欲的ならなお良し‼」

 

「………うわぁ、勘違いにしても大きく間違ってない…むしろ通り越してるし、僕より詳しくない?」

 

坊さんですから!とキメ顔のガトーを無視してダヴィンチとロマニは目線で会話する。

無論、ガトーという顔見知りが疑似サーヴァントになってしまった事も重要だが、レイシフトを行う以上他のサーヴァントと違い常に死の危険性が伴うこと、そして何よりこれで工藤の"レイシフト制限が解かれる"現実に争点がおかれた。

 

壊れたその場を見たことから、まだ「早い」とするダヴィンチ。

 

カルデアの所長代理として「行かせる」選択肢を取らざるおえないロマニ。

 

そのぶつかり合う視線を遮るように差し出される五穀粥。

 

「「え?」」

 

「そこまでにしておけ、バカップルはともかくマシュが気にしている…(ボソ)」

 

配膳するのはカルデアのオカンことエミヤ、黒のエプロンが妙に似合う。

 

「?」

 

「…っ、マシュ、みんなの分のお茶任せてもいいかな?」

 

「あ、はい。分かりましたドクター…?」

 

トテトテとはや歩きで駆け出すマシュ。

どうやら、うまくまけたようだ。

最も何も解決していない以上、後に丸投げしたにすぎない。

それでも、前線に立つマシュ、ひいては笑いあっている"子供達"に余計な負担をかけたくはなかった。

 

 

 

「おぉ…!このような温もりにありつくのはいつぶりか、南無阿弥エイメン」

 

「…君はそろそろ多方面からツッコまれるのを覚悟すべきだな」

 

ちなみに聖罰には物理で行く者が多いのがカルデアスタイルである。

 

「うむうむ、それはそれで良い。説法のきっかけとなるのなら重畳である…………しかし、この粥の味つけ、はて?小生に似ているような?」

 

「…まぁ、君には礼もあるしな」

 

「?礼とやらが、何かは知らぬが、施しを残すのは失礼というもの、これで空というわけではあるまい?具体的には鍋ごと下さい(おかわりください)」

 

「………………もう食べたのかね。よくそんな状態で一月も生存できたものだ…」

 

「ははは、断食は古今東西どの宗教とて一度は手を出しておる。当然小生も体験済みだ。神の子や十戒の聖人が持つ記録(レコード)に迫ったものの、僅か半日を残して流れの医者にドクターストップをかけられてな?いや大変惜しい事をした、後少しでエデンの園が見えるところだったというに…」

 

「それ帰ってこれないやつですよガトーさん……でも良かった。俺ここで目が覚めてから、寝てる間にガトーさん飛び出したって聞いて…安心しました」

 

「むぅ、それは申し訳なかった。小生反省」

 

起きたら"知らない天井"をやった上、唯一の知人が行方不明と、割と混乱した工藤にとって、今回の召喚は色々な意味で衝撃的であり、それは同時に…ぐだ子にとっても同じであった。

 

「ねねね。工藤君とガトーさんって何時出会ったんですか?」

 

「「…登山…山犬…うっ、頭が…!」」

 

「うわーすごい、ワードだけで大体わかった」

 

山のテンプレである。

実際あったらいろいろ諦めるレベルの。

 

「むしろそこから記憶障害になるほどのなにかがあるのか?」

 

「いやー、そうは言いますがラヴ師匠。あの時は混乱してまして、ここまで登れたこと自体奇跡ですよ」

 

「いや、全く。異様に連携のとれた群れでなぁ、赤毛の右目のないクマがこれまた群れで現れたときはどうしようかと」

 

「「「「ちょくちょく世界線越えるのやめよーか(やめろ・やめよーね)」」」」

 

「後、誰がラヴ師匠か」

 

まさかの満場一致、最後は熊の首ちょんぱで締めたのだろう。でもそれ飼い犬の話だよね。

 

 

 

「お待たせしました」

 

とお☆茶を持ってくるマシュ。

しかも、

 

「初顔の方もいれて六人とは…ドクター、せめてもう一方手伝わせるべきでは?」

 

途中で手伝いをかって出たのだろう、ルーラー天草を引き連れての凱旋である。

その天草は片手で器用にティーセットをトレイに並べた状態で持ている。

今日の天草は現代的な衣装のためまるでその手のウェイターそのものだ。

 

「あ、ごめんね?マシュ、ついうっかりしてたみたいだ」

 

「いえ、手が空いてたのは私くらいでしたし」

 

そう言うと、カップ一つ一つに琥珀色のお茶を注いでいく。マシュの手がそうして埋まる以上、自然と配膳は相方である天草の仕事になった。

 

だから、

 

「ガトーさん…でしたね?貴方もどうぞ、白湯もお話の間に冷めているようですし、温まりますよ?」

 

全員に行き渡ったところで"それ"は起こることになる

 

 

 

 

「これはかたじけない。いやーしかし、"肌が焼けましたなぁ"天草殿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………は?」

 

「いやー、日暮城の井戸から隠し通路をと言い出した時は真水に潮が混じると賛同しかねましたが、その様だとルソンまで行けたご様子。いやはや太閤様の馬印も撹乱と渡りをつける位には役に立ちましたか!」

 

 

「………………はぁ?」

 

 

ぱりーん!とリノリウムの床に落ちるカップとソーサー、まるで天草の心情を表すかのようである。

 

「いやはや、こうして"また"お会いできたのも何かの縁。何卒よろしくお願い致します」

 

深々と頭を下げるガトー…もとい、

 

「ま、まさか…この霊基はぁ、……………………………森?」

 

震える唇から溢れるのは恐れか、畏れか、怖れか、うん全部同じである。

 

「は!キャスター森 宗意軒 !召喚に応じマスター工藤のもとに参上しました‼………いやー霊基だけとはいえ気の合う御仁に入れて感謝感激!気安く、そーちゃんって読んでね!」

 

 

 

 

「……………………」

 

「あ、天草さん?」

 

「あ、白目むいてる」

 




そーちゃんはね"そーいけん"っていうんだホントはね!

多宗教+海外放浪 ガトーを書くと決めた際最も有力と思った人物。ドラマCD七章礼装追加と小出しにされる度に「どうしよう…」と頭を抱えることになった元凶。
なので、この設定は当然ながらこのSSだけのものです。

まぁ、新宿のアヴェンジャーを「家紋に犬いるし首無しなんだからサンソン・オルタだって!マリーの首切らせやがって!って復讐鬼になったんだよ!」と信じていた作者レベルの推察なのですが…










ーーーーー狂ったように狼は森を走った。

「はぁ、はぁ」と今にも途絶えそうな息をして、少しでも町の光から離れるように、起伏の激しい道行きを駆けていく。

思えば意味のない事象だった。

思えば意味のない日々だった。

思えば意味のない未来だった。

ただ憧れたから明かりに近づいた。
それが綺麗だったから望んだ。
それが正しいと信じていたから…

でもそれももう終わり。
メッキの剥がれた金などゴミでしかない。
見てくれだけのイミテーションに価値はない。

くすくすと森が鳴く。
独りだけの筈なのに後ろから声がする。

狼さん?狼さん?
何処にいるの?何処なの?
走っているの?鬼ごっこ?
それともかくれんぼ?

きっと幻聴。きっと現実。
どちらにしたってもうあんな怖いところにはいられない。
人の優しさだとか、嫉妬だとか、絆だとか、柵(しがらみ)だとか、何もかもが恐ろしい。

がさり

と音がして足元を見る。
感じるのは赤い熱と流れ出ていく冷気。
気付けば全身似たようなものだった。
致命傷になんて程遠い。
でも、凍えるくらいには全身が熱(痛)かった。

全てが煩わしくて、痛々しくて、冷い。

世界が混ざりきらない油性の絵具のように思える。

"こんなはずではなかったのに"

胸にあるのは後悔だけ。
昨日も思った。その前も、その前の前も。
繰り返す毎に思いは大きくなるばかりで、消えるそぶりさえない。

"こんなはずではなかったのに"

いつしか狼/オレは立ち上がることすら億劫になって、あれだけ逃げようとしたのに地面から夜空を眺めていた。
愚かな愚かな狼さん/オレ。
いつか潰されると知って、それでもその思いを捨てれずにいる。

だから、








"人を救う神はいない"と男は嘯いた。
"だからこそ神はいる"と矛盾を唄った。

成る程とオレは納得した。



"そりゃ、全知全能なら他人なんて煩わしいだけだろう"
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