加奈はスコールに引き取られ、ある計画を持ち掛けられた。
「この世界は腐敗に満ちている。終わる事のない争い。人種差別……一夏ならもう分かるでしょ?」
「…………」
加奈が言うキーワードはこのISが誕生した時に生まれた世界の闇だった。
今も続く負の連鎖。
一夏は何も言うことはできなかった。
「だから、私は……この世界から争いを無くすことにしたのさ」
スコールから持ち掛けられた計画。それは……月の眼計画だった。
全ての人々を幻術の世界に引き込み理想の世界を創る計画。
「その為には、ある眼を開眼させなければいけなかったわけよ」
裡覇……うちは一族には特殊な眼があった。
大きな愛の喪失や自分自身の失意にもがき苦しむ時に開眼する眼……写輪眼。
「最も大切な人間の死を経験する事で開眼する眼……万華鏡写輪眼が必要なのさ」
スコールは加奈がそのうちは一族の最後の生き残りであることは既に調べつくしていた。
もちろん加奈自身も利用されていることは重々承知。
それでも、この世界から争いが消えるなら……。
「そんなのは間違っている!!」
一夏は加奈から語れる月の眼計画を聞いて、叫ばざるをえなかった。
全ての人々を幻術の世界に引き込む? 理想の世界を創る? ふざけるな!!
「幻の平和など誤魔化しに過ぎない。現実の世界にこそ意味がある!!」
「そう……一夏なら分かってくれると思ったんだけどね」
加奈は一夏の意見とは真逆だったとわかり、腰に付けられた剣の柄の部分に触れる。
「私の計画の為にその命を頂戴するわ。織斑一夏!!」
「お前が何と言おうが、絶対連れて帰る。その両腕両足をへし折ってでも、俺はお前を……裡覇加奈を連れて帰る!!」
お互に自分の信念を貫く事だけを考え……ぶつかり合った。
◇
「ッ……!!」
一夏と加奈はお互いに激戦を繰り広げていた。
元々高速機動をコンセプトとされていた白式はこのバトルレースに特にいじっておらず、自分に合った戦い方ができていた。しかし、加奈の使うISも一夏と同じ高速機動型だったのだ。
お互いにハイスピードでの剣撃を打ち合う。
「大口を叩いて、その程度なの?」
「ッ……!」
加奈の剣は二本だと一夏は初見でそう思っていた。
しかし、実際は
「ぐッ!! お前を連れ戻すって決めたんだぁ!!」
加奈の武器は両手にある剣と……両足その物が剣だったのだ。
一夏は《雪片弐型》とクローモードにした《雪羅》で加奈の剣撃を止める。
「一夏! 加勢する」
箒、ラウラ、シャルロットが一夏に加勢しようとこちらに向かってくる。
一夏はこれなら勝てると思った……しかし、そんな希望など加奈の前では無意味だった。
「一夏との戦いを……邪魔するなぁ!!」
加奈の叫びと同時に機体から放電が起こる。
『雷神招来』
それは、もはや戦いではなかった。
一夏の目の前から消えた加奈は……
「な!?」
誰も加奈の姿を捉えられることができなかったのだ。
箒の後ろを取った加奈は二本の剣で紅椿を再起不能にまで落とす。
「篠ノ之さん!!」
シャルロットが加勢しようとしたが、既に加奈はその場にはいない。
気付いた時にはシャルロットは宙を舞っており、ラファールのシールドエネルギーが尽きていた。
「シャルロット! 貴様!!」
ラウラは目にも留まらぬ速さで打ち倒す加奈に何にも出来ることはなかった。
気付いた時にはもう……終わっていたのだから。
「箒! ラウラ! シャルロット!」
一夏の眼にはあっという間に打ち倒された三人が映し出される。
「さようなら……一夏」
一夏の前には加奈がいたのだ。
そして……その時、一夏の時間が止まった。
「雷切」
加奈の剣が一夏のシールドエネルギーを突き破り、絶対防御の発動も許すことなく、一夏の心臓を突き破った。