「嘘でしょ……」
残酷な現実を目の当たりにした箒達一同は、その言葉以外思いつかなかった。
「腕を上げたな……箒」
未だに箒の首を掴む一夏が言葉を発した。
「っ……一夏」
箒はそんな一夏を睨みつけ、紅椿を展開する。
ISを展開したことにより、一夏はその手を離さなければならなくなった。
「その力は、あの女のやつだろ! なんで、お前が持っているのだ!!」
「それは、お前らが知る必要があるか?」
一夏は平然と箒の質問を返す。
「まぁいいか。さっさと本題を話すよ」
この場に現れた理由を一夏はめんどくさそうに話す。
「お前たちが今持っているISを置いて、立ち去れ」
とんでもない発言をする一夏。
一夏の言うことは、国際問題になり兼ねない発言なのだ。
敵にISを渡すこと自体があり得ない。
「何を……何を言っているのか分かっているのか!」」
「もちろん分かっているさ、箒」
「っ!」
未だに一夏の真意が理解できない箒。
「一夏さん……貴方の既望には負えられません」
セシリアたちはその場から立ち上がり、各々のISを展開する。
「そっか。なら、無理矢理でも頂くよ」
そう言って、一夏は白式を展開する。
かつての旧友を相手に一夏は何の躊躇いもなかった。
◇
「命だけは、取らないよ」
戦いは数分で決着がついた。
一夏の両目にある万華鏡写輪眼で先読みし、雪片弐型の零落白夜で即決着。
全ての攻撃を通り抜けると言う反則級を前にセシリアたちは何の手も足も出なかった。
「全てが終わった後に目覚める……と言っても誰も聞いていないか」
零落白夜でシールドエネルギーを失ったセシリアたちに一夏は幻術をかけて眠らせる。
そして、彼女らが持つISを回収しようと手を伸ばした瞬間。
「っ!」
一夏の首元めがけてワイヤーが通り抜ける。
「可笑しな力を身につけたな……織斑」
「……千冬姉」
セシリアたちのISを取り損ねたが、間一髪で千冬の攻撃を回避した一夏。
千冬はいつものスーツ姿ではなく、戦闘に特化した姿で一夏の前に現れた。
「久しぶりだな、千冬姉」
「ここでは、織斑先生と言えっと言っているだろ、織斑」
「う~ん。そうかも知れないけど、今は敵だよ? それでも?」
一夏の言うことは尤もだった。
敵を目の前にして、そんなやり取りはいいのかと。
「まぁいいか。作業の邪魔をしないでくれる?」
「それは無理な相談だな。それとこれだけは聞かせろ。貴様が全ての事件に関与しているわけではないだろう、後ろについているのは……あの女か?」
世界中のISを破壊。
一人の人間にそんなことが出来る訳がないと考える千冬。
しかし、一夏はそれを否定した。
「残念だけど、全て俺がやった。加奈は何の関係もないし、組織もないよ」
「……そうか。だが、これだけの騒ぎをやったにかかわらず、アイツは何をしているのだ」
千冬の口から出たアイツとは束のことだった。
既に九割以上のISを破壊されてなお、束は一向に姿を表さないのだ。
「束さんのことか。それなら期待するだけ無駄だよ」
「何?」
「だって、もう既に彼女は……いないのだから」
一夏の口から語られた真実に千冬は驚きを隠せなかった。
「ISを破壊していれば、あっちから勝手に来るって分かっていたからね。早々に退場してもらったさ」
「……一夏。お前……」
「これ以上、無駄な時間をかけたくないから、邪魔しないでくれる? もし、邪魔するのなら……排除するぞ?」
一夏から放たれる異様な殺気を浴びる千冬。
千冬も一夏の言葉から察するに今言ったことは本気であると確信した。
「そうか……なら、刺し違えてでもお前を止める!」
もう後戻りできない地点に行ってしまった一夏を千冬は自分の手で引導を渡すことにする。
「残念だよ。千冬姉……」
一夏もこれ以外に道はないと、腹を括る。
お互いに得物を構え……最後の戦いに走った。
◇
一夏と千冬の戦いは激戦だった。
かつて何千と言うミサイルを撃ち落とした初代IS操縦者の実力は本物だったと一夏はその身を通して痛感したのだ。
一夏は幾度もなくその剣撃を通り抜けることで回避する。
それだけ、千冬と一夏の間に実力差があったのだ。
(ちっ! 本当に人間なのか思いたくなってくるな)
もし、永遠の万華鏡写輪眼がなかったら確実に失明していたと一夏はこの時思った。
あんまり切りたくない切り札を切らされ、一夏は須佐能乎を呼び出すが、それすら千冬は何のサポートを受けていないのに関わらず回避してしまったのだ。
それどころか最強の盾である筈の須佐能乎の骨を千冬は素手で持ちやすい様に加工したISブレードで打ち砕いていた。
「防御一択だな。織斑」
「千冬姉の人外的力のせいだよ」
ましてや須佐能乎に生身で対抗できる存在自体が有り得なかった。
それだけ、千冬は凄すぎるとしか言いようがなかったのだ。
(時間がないと言うのに……しかない)
一夏はこれ以上時間をかける訳にはいかなかった。
そこで最終手段に出ることにしたのだ。
一夏は須佐能乎を解除し、千冬の元へと駆け出す。
お互いの剣が交差した瞬間、千冬の剣が一夏の身体を通り抜けた瞬間と同時に一夏は反転する。
(このまま異空間に……!?)
一夏は反転し千冬を異空間に閉じ込めようと手を伸ばしたが、その千冬がいなかったのだ。
僅かに出来た隙を千冬は見逃さなかった。
千冬は一夏がどうやって全ての攻撃を通り抜けさせたのか、ずっと考えていた。そして、ある仮説が出来た。
身体の一部を異空間に置けばその攻撃を回避できるのでは?
それをどうやってやっているのかは分からないが、ISにも同じことが出来るならあり得ないとは言い切れない。
そして、それは的中した。
「ぐっ!?」
千冬はその身を低くし、一夏の視界から姿を消した。
そして、一夏が反転した瞬間に下から上へと刀を振り上げる。
今まで当たらなかった一夏の身体を千冬は切り伏せたのだ。
「やはりか……お前のその妙な技にはカウンターが効くらしいな」
傷は深くなかったが、決着がついた。
これ以上戦えば、一夏の命は……。
「織斑、降参しろ。そうすれば、命だけは……」
「舐めているのか……千冬姉」
一夏はボトボトと血を流しながら、立ち上がる。
「降参なんてしない……全てのISを破壊するまで、倒れる訳にはいかないんだ」
「お前がそこまでする理由はなんだ……」
千冬は一夏がそこまでして全うする理由が分からなかった。
「千冬姉はこの世界をどう思う……? ISの登場によってどうなった? 世界は本当に平和になった? 束さんの目指した世界なのか? 千冬姉はこんな世界を望んだのか?」
「違う。私が望んだのは……」
千冬は自分が犯した罪を把握していた。
ただ、千冬は……。
「そうだよな。なら、この世界にはISなんて物は必要ない。これがある限り世界に平和なんて訪れない……」
千冬は、ただ……一夏と共に生活できればそれで良かった。
両親のいない生活はとてもつらい。
生きる為には金がいる。だけど、千冬だけの稼ぎではどうにもならなかった。
だから、束の夢に協力した……それによって生活を。
しかし、どうだろうか。
束の夢は叶ったのだろうか……いや、叶うことはなかった。
「だから、俺がこの世界を終わらす……ぐっ」
「もう喋るな。これ以上は……」
一夏は口から血を吐き出し、手遅れ寸前だった。
「誰の邪魔をさせない。ISは……全て……破壊するっ!」
「っ! なら、安らかに眠れ……一夏」
一夏が構えたことにより、千冬も構える。
そして、一夏が最後の力を振り絞り、地を蹴った。
「「はぁあああ!!」」
お互いの叫びが重なる。
そして、千冬のブレードが一夏に止めをさした。
「馬鹿野郎が……」
千冬は倒れ伏せる一夏を見て、吐き捨てる。
ザシュ……
「!? がっ!?」
突如、千冬の背後から刺された。
振り向くとそこにいたのは……一夏だったのだ。
「な……ぜ。生きている、確かに」
地に伏せている一夏は千冬の眼の前から消えており、まるで先程の事がなかった様にされていた。
「イザナギ……片目の光を対価に一度だけ真実を無かったことに出来る。ごめんな……千冬姉」
一夏の左目が徐々に閉じていく。
これを使ったら最後、須佐能乎は使えない。
それだけのリスクを払ってまで、一夏はかけたのだ。
「くそっ……」
千冬から雪片弐型を引き抜き、千冬が倒れる。
一夏は無言のまま、その場を立ち去った。
「これで……」
一夏はセシリアたちからISを全て回収し、破壊した。
そして、最後の一つを残して……。
「やっとう……お前の所に行けるよ……」
一夏は自分の腕に付けられた白式を外し、コアを取り出す。
「今まで俺の為に力を貸してくれて……ありがとうな。白式」
そして、最後のISを一夏は壊した。
◇
九月二十七日。世界からISが全てが消えた。
今まであった社会がこの日により崩されて、大きな傷を残す。
各地で男性による暴動がおこり、世界から負は消えることはなかった。
そして、ISがなくなったことにより、IS学園は閉鎖される。
再びISが存在しない世界へと戻ってしまったのだ。
「愚弟としては、やってくれたものだな……」
とある場所で千冬は愚痴る。
海が見えるそこに一つ墓があった。そこに刻まれている名前は自分の弟である一夏の名前だった。
あの後、駆けつけ教員たちよって千冬たちは助けられた。そして、主犯の一夏も発見されたが、彼は既に息を引き取っていたのだ。
一夏の足元には六つのISの残骸があり復元は既に無理な状態でISが発見された。
「千冬お姉ちゃん!!」
「あぁ。今行くから待っていろ、束」
千冬に向かって手を振る女性はなんとあの束だった。
一夏は一つ手土産を残していたのだった。一夏は束を殺さず、万華鏡写輪眼で今の束の精神を壊していたのだ。
そして、束は全ての記憶を失い。千冬の元に届けられた。
束は千冬のことを姉として認識している。
「また来る……」
でかい妹が出来た千冬は一夏の墓の前から立ち去った。
「あぁ。また来いよ……千冬姉」
一夏の声が聞こえ、思わず千冬は振り向くが、そこには誰もいなかった。
心地良い風が通り抜け、千冬は思わず笑う。
「あぁ……またな、一夏」
fin