「げほ、げほ……くそぉ。何て物を用意していやがるんだよ……」
一夏は瓦礫の中から這い上がりながら、周りを見渡す。
倉庫は半懐し、いつ崩れてもおかしくなく、火の手が徐々に伸びており、逃げ出すなら今しかなかった。
「そうだ……さっきの人は……」
一夏は目の前にいた少女のことを探すように周りを探る。
爆発の際に彼女は自分を庇うように身を挺したのだ。
誘拐犯の仲間にも関わらず彼女は何故か一夏を助けた。
「……!」
瓦礫の下敷きなっている彼女を見つけ、一夏はすぐに近づく。
「…………、あ」
「……しっかりしろ、いま助ける……!」
一夏は彼女の上に乗る瓦礫に手をかけるが、びくともしなかった。
「……いい、です……助からない、から。それより、はやく、逃げなさい」
そう。彼女の言う通りもう手遅れだった。
彼女の下半身からおびただしい量の血がながれ、感覚がもう無くなっていたのだ。
「!?」
「……退路が、閉じちゃった、わね。……もう、外に、は」
倉庫にあった燃料に引火したのか、火の勢いが強くなり唯一の退路が塞がってしまった。
「……なんとかなるさ」
「…………」
そう言って、一夏は彼女の隣に座る。
「嘘を、ついた、罰なのかな」
彼女は呟き、仮面に手をかける。
一夏は彼女の顔を見て、驚いた。
「加奈……」
まさか、誘拐犯の一人がクラスメイトとは思いにもよろなかったのだ。
「……どうしてだ」
「上からの、命令……」
加奈は短く、一夏の質問に答える。
もう、会話することも出来なくなるだろうと、最後ぐらいはとXでなく加奈として。
「…………」
「ねぇ、手を繋いでもいい?」
「あぁ」
加奈はそう言って、一夏の手を握る。
その後の事はお互いによく覚えていなかった。
◇
「……っ、う……」
一夏の意識が覚醒し、起き上がると何処かの部屋だった。
周りを見渡すと、ここが病院の一室だとわかり、その横にある人物がいたのだ。
「千冬姉……」
「ん? 気が付いたか。愚弟」
うん。いつもの千冬姉だとわかると一夏は笑う。
それが気に食わなかったのか、一発拳骨を喰らった。
「いて……」
「全く、心配かけおって」
「すまん、千冬姉」
「まぁいい。命があるだけでも儲けだ」
「そう言えば、加奈は?」
一夏は周りを見渡すが、加奈の姿がなかったのだ。
なので、一夏は千冬に加奈のことを聞いてみた。
しかし、加奈のことを口にすると、千冬の顔が険しくなる。
「よく、聞け。アイツは……」
「消えた」
「え?」
いきなりのことに一夏は驚いた。
「お前が誘拐されたことを聞かされ、すぐさまその場所に向かった」
千冬はあの時の出来事を語り出した。
「倉庫は爆破され、間一髪のところでお前たちを助け、すぐさま病院へとはこばれたのだ。おまえは軽く火傷した程度と右目に少々傷を負った程度で済んだが、彼女は両足を切断することになった。後は軽傷の火傷を負ったぐらいだったが……」
加奈の両足を切断したことには、一夏は驚きもしなかった。
あの場にいたから、もう駄目だってことぐらいは気付いており、それぐらいの覚悟はしていたのだ。
「その後、寝室から彼女は消えていた」
両足を切断された彼女では、この病院から脱出することは不可能。
つまり、彼女の仲間が連れ去ったのだ。
「そう。なのか……」
一夏は加奈が繋いでいた手を見つめる。
「とりあえず、安静にしていろ」
そう言い残して、千冬は病室を出て行ってしまった。
その数日後、一夏は日本に帰国したが、あれ以降……加奈は学校に来ることはなかった。