一夏と加奈が千冬によって助けられた後のことだ。
「ずいぶんと派手にやったな……X」
一夏とは別の病室で寝ていた加奈の元に一人の女性がやって来た。
もちろん加奈はその人物が誰なのか知っている。
「オータム……」
加奈にオータムと呼ばれた女性は呆れたように肩を竦める。
「なんで、あいつを助けた? 助けなければそんな怪我を負うこともなかったのにな?」
加奈はオータムの言うことに何も返せなかった。
事実、一夏を助けたことにより加奈は両足を切断することになった。裏で活動する彼女たちから見れば加奈は足手まといでしかない。
そんな者に贈られる物は、既に決まっている。
「私を始末しにわざわざ来たの?」
「あ~。まぁ、普通ならそうしたい所だが……お前さんには、まだ生きてもらわないといけないのでな」
オータムは面倒くさそうに頭を掻きながら話す。
一旦話が終わるとオータムは加奈を運び出す準備に入る。
「彼の容態は?」
「あの小僧か? 右目の視力が落ちた位の怪我だよ」
「そう。なら良いけど……」
加奈はあの時のことを思い介していた。
爆発の時、何故か身体が勝手に一夏を助ける様に動いてしまった。そして、今も何故か一夏のことを気にしてしまった。
(どうしてだろう……何故か彼から離れたくないと言う気持ちが出てくる……)
今までになかったこの感情に加奈は戸惑いを感じる。
「よいっしょっと……」
オータムは加奈を連れ出す準備が終わると、加奈をお米を背負うように、肩に乗せた。
「すまないけど、オータム。先に一夏のいる病室に向かってくれないか?」
「あん? 何でだい」
「渡したい物があるから」
「…………。へいへい、分かったよ」
オータムは加奈を背負いながら、一夏のいる病室へと向かう。
時既に時間は日が変わって深夜だ。
誰もいない病室の廊下をオータムと加奈だけしかいなかった。
数分した所で目的の病室である一夏が眠る病室へと入る。
「…………」
加奈は未だに目を覚まさない一夏を見つめ、かけていたメガネを取り外す。
「これを貴方にあげるわ」
そう言って、加奈はメガネを近くの棚に置く。
加奈がいつも着けているメガネには自動的に視力調整を行ってくれる機能が備わっており、今の一夏は、右目の視力が2.0から0.1へと落ちてしまっていた。
加奈は謝罪を含めて、一夏にそのメガネをあげる。
「もう、いいかい」
「うん」
加奈はそう言うと、オータムは加奈を持ち上げ、病室を出ようとする。
「さようなら……一夏」
加奈は一夏に別れを告げ、オータムと共に病院を抜け出した。