一夏と加奈が二度と会うことが無くなってから一年が経とうとしていた頃だった。
その日の冬。織斑一夏が全世界に大きな衝撃を与える出来事をおこしたのだ。
「ふ~ん。彼、ISを動かしちゃったんだ」
「えぇ。上層部もその話で持ちっきりよ」
病院を抜け出した加奈は拠点にしているビルでスコールと共に織斑一夏の話をしていた。
テレビには、あの時あげた眼鏡をした織斑一夏が写っている。
「まぁ、あの篠ノ之束の友人である織斑千冬の弟だから、何かあるとは思っていたけど、ここまでとはね……」
加奈は一夏に何かあるとは思っていた。
ISの制作者である篠ノ之束が唯一友と言えるのが織斑千冬だけである。
なら、その弟にも何かしらの置き土産があっても可笑しくないと踏んでいたのだ。
「とりあえず、今は私たちは何も手は出さないわ」
「今はね……か」
「えぇ、今はね」
その口ぶりは、近い内にやるということだった。
加奈はそれを理解すると、席を立つ。
「最終調整をしてくるわ」
加奈の両足はあの日に切断されてしまった。
亡国機業に戻ると同時に加奈には義足が与えられ、ここ一年はそのリハビリをしていたのだ。
血の滲む成果のお陰で今では一人でも歩けるようになっていた。
「……私たちの目的は貴女の眼が重要だって事だけは忘れないで頂戴」
「えぇ、分かっているわ」
そう言って、加奈はスコールにの方に向き直る。
加奈の眼はいつもの眼ではなく、紅く……まるで血に染まったような真紅の眼だった。
「次のステップに進むにも、彼には強くなってもらわないと困るからね」
そう言い残して加奈は行ってしまった。
(そう。私たち亡国機業の目的達成のためには彼女の“写輪眼”がどうしても必要なのよ……)
スコールは加奈だけが持つ眼……写輪眼のことを気にしていた。
しかし、ただの写輪眼ではなく、その先にある写輪眼が必要だったのだ。
(万華鏡写輪眼を開眼をさせるには……)
しかし、万華鏡写輪眼を開眼させるには、大きな壁があったのだ。
これには亡国機業内ではできなかったため、加奈には外での生活をさせた。
そして、その条件を満たす人材を見つけることに成功したのだ。
(彼には申し訳ないけど、私たちが作る理想郷の為の人柱になってもらうわ)
万華鏡写輪眼の開眼条件……それは、最も親しい友を殺すことだった。
それはつまり、加奈は一夏を殺さなければいけない。
残酷な試練を加奈は乗り越えなければいけなかったのだ。
「もうじき、賽が投げられるわね」
果たして、その賽の目はどちらに傾くのか。
その答えを知る者は誰もいなかった。