パァンッ!!
「なっ……!?」
弾丸が一夏に向かって真っ直ぐ飛んで来る。
何故かゆっくりと、そして明確にそれが見えた。
「ちっ」
加奈が舌打ちする。次の瞬間、一夏へと向かっていた弾丸はその軌道を止められていた。
弾丸が空中で静止している。
「更識……楯無」
間一髪、楯無がIS《ミステリアス・レイディ》のアクア・ナノマシンを一夏の正面に張り、加奈が撃ち込んだ弾丸を止めたのだ。
「失敗したわ。撤退よ」
加奈は一夏の暗殺に失敗し、いくつか撃ち込み下がる。
そして、Mの《サイレント・ゼフィルス》に掴まり、そのまま高度を上げた。
「一夏……次はちゃんと殺してあげるから」
加奈がそれを言い残して、飛びった。
「待って! どうしてだ!!」
一夏が追跡しようとするが、他の者たちによってそれは止められた。
◇
亡国機業の襲撃を受けてから、数時間が経った。
一夏は自室のベットの上に座りながら、頭を垂らしている。
その一夏を楯無は壁に寄りかかりながら、見守っていた。
「…………」
一夏は今日、今までにない絶望を経験した。
優しかったあの加奈が、牙を剥き一夏を殺しにかかったのだ。
「あの時は、私が居たから良かったものの……一歩間違えれば死んでいたのよ」
楯無は一夏に向けられて撃たれた弾丸を弾きながら話す。
一夏に向けられて撃たれた弾丸はAIS弾と呼ばれる特殊弾だった。
正式名称は《
ISが何故最強と呼ばれるのは、主にシールドエネルギーで出来たバリアーに戦闘機以上の機動力を有しているからである。
だが、この特殊弾はその常識を覆す物だった。
「AIS弾は製造、使用が禁じられた禁忌の副産物。この世界の常識を一変させてしまう物よ」
AIS弾は……ISのシールドエネルギーをいとも簡単に突破させてしまう力があったのだ。
製造方法などは既に抹消されている為、この弾丸がどの様に作られているのかは楯無も知らない。
ISの最強の盾など、この弾丸の前では無意味。
その為、政府はこの弾丸の製造、使用を禁じた。
「速めに気持ちを切り替えておきなさい、一夏くん」
一夏も楯無の言うことには、馬鹿でも解る。
加奈の取った行動は、決して許されることではない。
超えてはならない線を加奈は超えてしまったのだ。
「…………」
未だに無言の一夏。
楯無も考える時間を一夏に与え、部屋から退室した。
「なんでだよ……なんで」
一夏はもう訳が分からなかった。
加奈と過ごした四年間が嘘に思えなかったのだ。
「なんだよ……この気持ち。分からねぇよ……」
無性に胸が苦しい一夏は、腕で顔を隠す。
それが……恋だと一夏が知るのは、再び加奈に会った時だった。
◇
「失敗したそうね」
高層マンションの最上階。豪華な飾りで溢れかえっている部屋で、スコールは加奈に話しかける。
「まぁ、楯無が常に付きまとっている以上、失敗する方が大きいわよ」
加奈は自分の右脚を整備しながら答える。
「まぁ、一夏も随分と強くなっていたしね」
《零落白夜》を受け止めた右脚の裏に大きな亀裂が入っており、加奈は「取り替えた方が早いな……」と溜め息を吐く。
「そう。あぁ……そうだ。本部から貴女にアレが支給されることになったわよ」
「……やっとですか」
加奈は右脚を外し、新しい右脚をスコールから手渡される。
「流石の私でも、IS相手では骨が折れるわよっと!」
神経接続のレバーを思いっ切り回す。
「ぐっ!?」
激痛が走り、加奈は歯を食いしばる。
数分もすれば激痛は収まり、加奈は右脚のチェックの為に立ち上がった。
「ようやく専用機がもらえるんだし、最初のデートは一夏がいいわね」
加奈は窓側まで歩き、一夏がいるであろうIS学園の方向に視線を向ける。
「私は貴方の命が欲しいわ。一夏」
真紅の瞳で加奈は口元を歪ませるのだった。