ヒトカゲと抱き合って勝利を分かち合った後は、キョウさんの娘さんであるアンズさんと軽い自己紹介をしたりした。
そして所変わって、今俺たちが居るのはセキチクジムの前だ。
「カズト殿。お主の最後まで全力で戦おうとする心がけ、見事であった。お主との戦いで拙者もまだまだ未熟者であると、知ることができた。感謝する」
「いいえ、そんなことありません。キョウさんの忍術を応用した戦い方こそ凄かったです。特にあのベトベトンは驚異的な強さでした」
「拙者のベトベトンを褒めてくれて感謝する。……さて、カズト殿。拙者に勝った証として、これを受け取ってくれ」
キョウさんはピンク色でハート型のバッジを差し出して来た。
これは……夢にまで見たアレか!!
「これは拙者に勝利した証であるピンクバッジだ。遠慮する事はない。さぁ」
「あ、あ、あ……ありがとうございます」
俺は震える手でピンクバッジをゆっくりと手に取った。
うん。やっぱり、これはバッジだ!
バッジはジムリーダーに勝った証。……俺、本当に勝てたんだな。
「よっっしゃーー!!ピンクバッジ……ゲットだぜ!」
俺はピンクバッジを天にかざしながら、高らかに叫んだ!
「キョウさん!今日は戦ってくれて、本当にありがとうございました!キョウさんとのバトルのおかけで、ポケモンバトルの奥深さが改めてよく理解できました!感謝します!」
「そうか、それは良かった。……また、お主と戦える日を楽しみにしているぞ」
「はい、自分もです!」
「これからも頑張りなさい」
「はい、ありがとうございます」
「あ…あのカズト殿。今度は私とも戦ってください!お願いいたします!」
「ぜひ! 俺もアンズさんとバトルしてみたいと思ってたんです」
「あ、ありがとうございます!」
「ではカズト殿、達者でな」
「はい、キョウさん、アヤメさん、アンズさんもお元気で。皆さんさようなら!」
「また何処かでねー、アンズちゃん」
「はい、お二人共お元気で。また何処かでお会いしましょう」
キョウさんたちに見送られながら、俺たちはセキチクジムを後にした。
「カズト……あの少年とはいずれまた戦う予感がする。その時に備えて、拙者もよりいっそう精進せねばならぬなぁ」
セキチクジムを去った後はポケモンセンターに直行して、ジム戦で傷ついたポケモン達に労いの言葉を掛けてジョーイさんに預けた。
今はただ、ベンチでポケモン達の治療が終わるのを待っている所。
「でも本当に良かったね、念願だったジムリーダーに勝つことが出来て」
「うん。……なぁイミテ。なんだその……色々ありがとな」
「へっ?……いきなりどうしたの?」
「いや、俺がジムに挑戦する前に特訓に付き合ってくれたり、キョウさんや毒タイプの事とかを教えてくれたりしてくれたからさ。そのお礼」
「そ、そう。なんか面と向かって言われると照れちゃうな。……少しでも役に立てたのなら良かったよ」
「でも今回のバトルで、俺はトレーナーとしてまだまだだって事が改めて良く分かったよ。特にケンタロスの時とか」
あれは本当にケンタロスには申し訳なかった。
「うーん……確かにえっ!って思う場面はいくつかあったけど……カズちゃんはカズちゃんで一緒懸命にやってると思うよ」
「一緒懸命やったって、勝てなくちゃ必死で戦ってくれたポケモン達に申し訳ないよ」
「あのね〜、カズちゃん。キミはまだまだ初心者なんだよ。失敗するのは当たり前。その失敗から学んで次に活かせばいいんだよ」
「いや、そうだけど」
「まだまだキミの旅は始まったばっかりなんだから……いろんな経験をして、ちょっとずつでも成長していけば良いんだよ。大丈夫、カズちゃんならきっとそれが出来るよ」
そう言ってきたイミテは、まるで自分の経験したことを話しているみたいだった。
イミテもきっと今のモノマネが出来るまで、いろんな事があっていろんな経験をしたんだろうな。
「そうだな……イミテ!俺、頑張るよ!たくさんの経験をして、ポケモンマスターを目指して!」
「うん、その意気だよ」
よーし、やってやる!ポケモンマスター目指して必死で頑張るぞ!
たくさん失敗して経験して強くなって……絶対に世界一のポケモントレーナーに成ってやる!
……あっそうだ!
ジムバッジも手に入れたし良い機会だ。
今日こそ本格的にアイツと向き合おう。
「出て来てくれ、ゼニガメ」
「ゼニ?……ゼー!」
ゼニガメは俺を見つけるやいなや、俺目掛けてみずてっぽうを撃ってこようと!
「わー!ちょ、ちょっと待って!まず、コレ!コレ見てくれ!」
俺は慌ててピンクバッジをゼニガメの前に突き出した。
さすがにここでみずてっぽうはマズイからな。
「ゼニュー」
ゼニガメはピンクバッジをチラっと見てこれが何か理解したのか、いったんみずてっぽうを撃つのは止めてくれた。
「これが何かはお前でも分かるよな! このピンクバッジは俺とポケモン達の力で勝ち取ったんだ!凄いだろう!」
「ゼニ、ガメガー」
それがどうした!それぐらいの事で調子に乗ってんじゃねーぞ!って言ってる気がする。
「なぁ、ゼニガメ。やっぱり、俺みたいなのがトレーナーなのは嫌か?」
「ゼニ、ゼニゼニー」
あたりめーだろ!みたいなことを言ってる気がする。
まぁ、嫌われるのは当然か。嫌ってるから、みずてっぽうを撃ってくるんだよな。
「だったらさ……逃がしてやろうか?」
「ゼニ!」
「お前もいい加減、いつまでも嫌ってる奴がトレーナーなのは嫌だろう。だからさ、もう自由にしてあげるよ」
シゲルには悪いと思うけど、これもゼニガメのためだ。
シゲルもきっと分かってくれる筈だ。
「ゼ…ゼニー……」
なんだなんだ。なんかあんまり嬉しそうじゃないな。
嫌いな俺と別れられるんだから、超喜ぶ筈なのに。
あっ、そうか!
「あっ、もちろんそこら辺の適当な場所に逃がしたりはしないぞ。川でも海でも湖でも、お前が望む好きな場所に連れて行くよ」
「ゼニ……」
「どうした?まだ何か不安な事が有るのか?出来る範囲の事なら、何でもしてあげるよ」
「ゼニ…ゼニ、ゼニ!」
ゼニガメは今まで聞いた事が無いような悲しそうな声で鳴き出しだ。
ゼニガメいったいどうしたんだ!?いつものゼニガメらしくないぞ!
「ねぇカズちゃん。この子は多分、カズちゃんと一緒に居たいんじゃないかな」
へっ!コイツが……俺と!……ははは、んな訳ないだろ。
俺、コイツに嫌われてんだぜ!
「イミテ。お前、頭大丈夫か?コイツが俺と一緒に居たいわけないだろ」
「何で、そう思うの?」
「だってコイツすぐ、俺にみずてっぽう撃ってくるんだぜ!俺の命令も全く聞かないし!」
「うーん。それは素直に慣れなくて、ついついそんな行動を取っちゃうんじゃないかな」
「あのなー、コイツがそんな玉だと思うかー?」
「うん。だってゼニガメが本当にカズちゃんのことを嫌ってるなら。みずてっぽう以外の技も使ってくると思うし、そもそも攻撃する回数も1回だけじゃなく何回も撃ってくるんじゃないかな」
うーん……確かにそうだな。
ゼニガメはみずてっぽうしでしか攻撃して来なかったし、俺が倒れたりした時に追撃して来た事は無かったな。
よく考えてみれば、かなりおかしいな。
「ゼニガメ、お前……本当にイミテの言った通りなのか?」
「ゼ、ゼニ……」
ゼニガメは申し訳なさそうに頷いた。
「そうか……そうだったんだ……」
「ゼニー」
「カズちゃん。ゼニガメを怒りたい気持ちはよく分かるけど」
「よ、良かったー!!」
「へっ?」 「ゼニ?」
「俺、お前には絶対に嫌われてるんだと思ってて……でも、嫌われてなかったんだな!良かった、本当に良かったー!」
「ゼニー」
「ゼニガメ、なんかゴメンな。今までお前の本当の気持ちに気づいてあげられなくってさ。ゴメン」
「ゼニ……ゼニー!」
ゼニガメは勢いよく俺に抱きついて来た。
「ど、どうしたゼニガメ!? なんか俺、お前の気に触るようなこと言っちゃったか!」
「ゼニゼニー!」
「いったいどうしたんだよ!そんなに泣くなよ〜」
うーむ、どうしてこうなった?俺、全然分からないな?
まぁでも、ゼニガメに嫌われなかったみたいだし良かったよ。
俺はとにかくゼニガメが落ち着いてくれるまで、撫でたりしてあやし続けた。
「……はぁー、全く。心配して損した。まさかカズちゃんがここまでお人好しでおバカさんだとは思わなかったよ」
「ふぅ。落ち着いたかゼニガメ」
「ゼ、ゼニー」
「……なぁゼニガメ。俺とお前にはわだかまりがあったけどさ、そう言うのは全て忘れて1からやり直さないか?」
「ゼニ……ゼニゼニ!」
ゼニガメは凄い勢いで何度も頷いてくれた。
「ありがとな。じゃあ改めて……これからよろしくなゼニガメ」
俺は初めて会った時と同じ様にゼニガメの前に手を付き出した。
あの時は握手に応じてはくれなかったけどきっと今なら。
「ゼニゼニ」
ゼニガメはいつも付けていたサングラスを取って、握手に応じてくれた。
やった、やったーー!
俺、ゼニガメと別れる事なく打ち解けられたよー!!
「ゼニガメ!俺、絶対にお前に相応しい最高のポケモントレーナーになるからな!」
「ゼニゼニ!」
よし、決めた!ヒトカゲ達の治療が終わり次第、次のジムを目指す!
絶対に次のジムリーダーにも勝ってやる!
待ってろよタケシさん、カスミさん、そしてまだ知らないジムリーダー達!
目指せポケモンマスター!