ラブライブ!サンシャイン!! ─ キセキの星 ─ 作:またたね
2話 2人の転校生
生まれた時から、自分を男だと思っていた。
……とかじゃない。俺は女だ。
心の中に2人、ないし3人の人格がいてその中の1人が男だ。
……そんな馬鹿げた話でもない。俺は俺だ。
というよりそんな話あるわけない。
多重人格なんてそんな幻想。
胸もそれなりにあるし、下半身に逆刃刀も付いてない。髪はそんなに長くないけど、肩下ぐらいまでは伸ばしてあるそれを、サイドで結んでる。
容姿もそんなに悪くない。むしろ、良い。
クラスで可愛い女子を上げていけば遅くとも2番目には名前が挙がるはず。
まぁ要するに、俗に言う『俺っ娘』って奴なのかもしれないな。なんでこんな事してるのかって言うと、昔読んだ雑誌を見てビビッと来たから。それ以上でもそれ以下でもない。
容姿は淡麗、学力も上位。道を歩けば声を掛けられる、世間が憧れるような『女の子』。
ただ俺は
そんな“女”みたいな俺が
嫌で嫌で、仕方なかった───
「……───ん、朝日さん。朝日さん!」
「ん……あぁ、俺か」
「今この場にあなた以外に朝日さんは居ないでしょ……っていうか、“俺”?」
考え込んでしまっていたようで、自分が呼ばれたことに気づかなかった。顔を上げた視界に入ってきたのは、俺と同じ制服を着た1人の少女。
「ごめんごめん。名字、あんまり慣れてなくてさ。それに自称も気にしないでいいから」
「あ……そ、そうなのね。それより、先生の話聞いてた?」
「あーごめん、上の空だったわ。なんて言ってたっけ?」
「もう……そんなことだと思った」
暗い赤色の髪をバレッタで留めた少女は俺を見て可笑しそうに笑う。
だんだんと思い出してきた。
あれから学校に着いた俺は、担任となる先生の元へ案内されて、もう1人の転校生であるこの子と共に廊下で先生の紹介を待ってるんだった。
「……で、君名前なんだっけ?」
「嘘でしょ……?担任に互いに自己紹介しなさいって言われたじゃない!」
「あぁ、そーだったそーだった!思い出したよ、“幕の内”さん」
「そんな名前じゃないわよっ!!」
「あれ?違ったか……“幕の下”さん?」
「なんで合ってる方を変えるの!?」
はぁ…、と思いため息をついた幕の上(仮称)さん。彼女は俺をジトッと睨むと不機嫌そうな声で言う。
「もう一回しか言わないからちゃんと覚えてね?
────私は
よろしくね、朝日さん」
さっきまでの暗いイメージが一転、外同様爽やかな風が駆け抜けた錯覚すら覚えさせるような笑顔で彼女──桜内さんは笑った。
“桜”。なんて彼女に相応しい苗字なんだろう。
俺が男なら確実に惚れてたね。残念ながら俺は女だけど。
「あぁ、よろしくな桜内さん。俺は……」
「朝日昴さん、でしょ?一回聞いたことはちゃんと覚えてるから」
「遠回しに俺をディスるのやめてもらえませんかね……」
「ふふふっ、冗談よ。こちらこそよろしくね、朝日さん」
「あー、昴でいいよ。俺苗字で呼ばれるのあんまり好きじゃないからさ」
「あ、そうなの……わかったわ。私も梨子でいいからね」
「ん、おっけー」
「2人とも、入ってー」
話もひと段落ついたところで、担任から教室へと呼ばれた。
……そういや、自己紹介とか何も考えてない。これからココで過ごすんだ、しっかりと自己紹介しないと……。
俺を先頭に2人で教室へと入る。珍しいものを見るような視線を感じながら教卓の前に立ち、改めて教室を見回す。全員で30人にも満たない小さなクラス。彼女達の好奇に満ちた視線の中で、1人だけ。その1人の目線だけは──輝いていた。
「じゃあまず朝日さんから」
「あ、はい」
ぼぅっと浮かべていた思考を振り払い、
「えっと…朝日昴です。よろしくお願いします」
なんの面白みもない自己紹介が終わる。
その途端に起こる小さな拍手。まぁ最初だからこんなもんだよ、うん。
そして皆の意識は、俺の横の彼女へと移る。
「──東京の“音ノ木坂学院”から来ました、桜内梨子です。よろしくお願いします」
俺と同様に鳴り出す拍手。合わせて拍手をしながら俺は全く違うことを考えていた。
───
“あの場所”から、来たのか。
その名前が何度も頭の中で繰り返される。
もう何度も聞いたその名前は、俺にとって重要な意味を持つ場所で。
だってその場所は────
────ガタンッ!!
唐突に教室中に響いた音。
俺の思考はその音で現実へと引き戻された。
音の主は、1人の少女。先ほども見た、その淡くも美しい赤い色の瞳を輝かせた灼燈色の髪のその少女は、声高に叫ぶ。
「─────奇跡だよ!!」
その言葉とともに差し出された手。その手は俺の横の少女へと向けられていて。
「! あなたは…!!」
桜内さん……梨子もその少女に見覚えがあるらしい。差し伸べられた手を見て大きな動揺を見せた。
そして次に彼女が放った言葉は
“音ノ木坂”など比べ物にならないほど
俺を驚愕へと叩き落とす
「スクールアイドル、やりませんかっ!?」
───スクール、アイドル。
今お前は────そう言ったのか?
「───ごめんなさい」
「そんなぁああーーー!!」
一瞬笑顔を見せた梨子だったが、丁重に頭を下げてそれを断る。それを見て大きな声をあげた赤い瞳のその子。
その子は今度は俺に目線を合わせると、同じような瞳で俺に笑いかける。
「あなたも、スクールアイドルやりませんか!」
そんな彼女に、俺は答える
心の底からの笑顔で
「──俺の前で、2度とその単語を出すな」
そう、俺は
“スクールアイドル”が、大嫌いだ。
朝日 昴《アサヒ スバル》
身長161㎝
体重××kg
BWH 79・58・80
簡単なプロフィールです。
2話内の容姿解説と共に参考にしてください。
今回もありがとうございました!
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