数年と数ヶ月後
『目覚め爽やか!ワッハッハッハッハッハッ!!』
午前七時、毎日のごとく目覚ましが部屋に鳴り響く。目を開けると自分は床で寝ていた。どうやらまた寝落ちしたらしい、全く悪い癖だ。目覚ましを止め机の上に置いてある眼鏡をかけリビングに降りていった。
「おはよう永夢」
「おはよう母さん」
この人は僕、麻生永夢の母である麻生アンナ34歳。近所でも美人と評判で自慢の母である…………料理以外は。母さんは毎度のようにフライパンの上にある目玉焼きであろう黒い物体を見ながら苦笑いしていた。
するとテレビの隣にある画面に茶色い毛並みのバクに似た生き物が喋りかけてきた。
『あ〜あ、見てらんないね全く。歳はレベルアップしても料理の腕はチュートリアルすら出来ないなんて』
「うるさいわね!」
「おはようアルフ、そんな事ばっかり言ってると今に消去されるよ」
こいつは母さんが作った人工知能アルフ。アルフは母さんの会社で市販化できるように我が家で試験的に取り付けられたんだ。でもご覧の通り凄い皮肉屋で人の気を損なう為この計画はオジャン、今は家族の一人としてこの家のネット内に暮らしている。さらに厄介なのはこれまた母さんが作ったロボットに乗り移り自由に移動できたりするんだから。どこかのダメな小学生の元に来たネコ型ロボットが羨ましいよ。
「あんた何か作らなけりゃよかった」
『そりゃないよ!あんたの子供なのに!』
「僕がご飯作り直すから席に座ってて」
こうして麻生永夢の1日は始まるんだ。
その頃ゲーム会社幻夢コーポレーションの一室では社長兼CEOである壇黎斗がスーツケースに入ったカラフルなバックルとそれに使用するガシャットと呼ばれるアイテムを眺めていた。
「壇社長、衛生省からお客様がお見えです」
「通してくれ」
黎斗の秘書が社長室に来たスーツ姿の女を通した。
「社ッ長さーん、お久でーす!!」
「はるばる衛生省からご苦労様。どうぞ掛けて」
女は黎斗に言われるままソファに座った。
「最後の適合者は見つかった?」
「Mはまーだ見つかってませんです!」
「多少の問題は想定内さ。それより最後の適合者を早く見つけてくれ。今後もバグスターの被害は増加するだろうし、雄英高校と今後の打ち合わせもあるからね」
「了解しましたー!」
報告を終えると女は部屋から出て行った。一人きりになった黎斗は何気なく席から立ち上がり窓の外を眺めていた。
「適合者が今の所同年代なのは偶然か…………はたまた必然か。全く奇妙なものだ」
「永夢、進路の手紙は持った?」
「持った持った、はい母さんの弁当」
「ありがとねー、今日は会議で遅くなるからご飯は」
「適当に買って食べとくよ」
自分が作った弁当を持ち母は出勤した。さてと僕もそろそろ行こう。近くの公園までいくとカバンから私服を取り出し着替え始めた。もう中3の秋だ。しかし、若者の運命なのか自分が何になりたいのかよく分からないんだ。かつての夢はなんだったんだろうな。
でも進路のことは後回しだ。母さんには悪いけどこれから行くのは学校じゃない。この瞬間から「僕」は変わる、厨二病くさいけどもう一人の自分である「俺」に。
付近の市営バスを乗り継いで数十分後僕が降りたのはとあるライブドーム。そこで今日開催されているのは全世界で人気を誇るゲーム『大乱戦スマッシュヒーローズ』である。ゲーム会社の幻夢コーポレーションが作った格ゲーだ。今日各国の選りすぐりなゲーマー達がここに集まっている。
今回の大会の賞金は50万円に世界チャンピオンという名声が手に入る。永夢はフードを被りドームに入って行った。ドームには既に大勢の客がいた。対戦表を見ると次は自分の番だった。
『次の対戦はイギリスVS日本!!イギリス側 ジョージ選手、日本側M選手!!』
自分の番だ。Mはゆっくりと階段を登り壇上に上がる。そしてコントローラーを手に取り眼鏡を外した。
「この勝負俺がもらった。ノーダメでクリアしてやる」
2時間後
『今大会の優勝者は日本代表M選手!!』
ドーム内の盛り上がりは最高潮に達していた。激闘の末俺は優勝した。激闘といってもノーダメのパーフェクトゲームだったけど。優勝トロフィーと賞金を貰い壇上から降りた。
俺はフードを深く被っているので正体はバレてない。謎の天才ゲーマーみたいな称号は誰しも憧れた筈だよね。さてと今から学校に行くとなると着く頃には昼休みだな。
「待ってM!」
後ろを振り返るとスーツを着た女性がジュラルミンケースのような物を持って立っていた。
「お姉さん俺のファン?」
「あなたに話したい事があるの」
「あ、勧誘ならお断りするよ。ずっとソロでやってるんでチームプレイは苦手でね」
「そうじゃなくて「待てよM!」
「今度は誰よ?」
再び後方から声をかけられ振り返るとそこには最初に戦ったイギリス代表のジョージだった。
「何の用?」
「はあ……はあ、もう一度俺と勝負しろ!俺が負けるなんてありえない!!」
ジョージは激しく息切れしていた。そんなに急いでたのか?
「悪いけど俺急いでるから」
「ま………待ってく……」
と言葉を言い終える前に苦しみ出しジョージはその場に倒れた。とっさにMもジョージに駆け寄った。
「お、おい大丈夫か!?」
Mは必死に呼びかけるがジョージは虫の息だった。お姉さんは鞄から変わった聴診器を取り出しジョージに当てた。すると聴診器から映像が浮かび上がった。
「これはちとまずいね。ゲーム病に感染してる」
「ゲーム病?そんな病気あるなら俺はとっくに感染してるよ」
「……助け…て…ウワアアア」
僅か数秒でジョージの体は数メートルもある怪物に変異した。俺とスーツのお姉ちゃんはゆっくりと後退りをした。
「きゃッ……!」
「おい大丈夫か!?」
怪物になったジョージにケースを持ったお姉ちゃんは突き飛ばされた。そしてケースからカラフルなバックルとピンク色の何かが無造作に地面に落ちた。永夢はピンク色の何かを拾い上げた。
「これは………来週発売のマイティアクションXじゃないか!?」
「あ痛たた……それよM!ここで死にたくなければガシャットを使って変身して!」
「変身?」
「そう、それはバグスターに対抗できる唯一の望み」
「おいあんた!さっきから何言ってるか全然飲み込めないぞ!?」
「いいから変身してよ!!ヒーローになりたくないの!?」
ヒーロー……5年前俺を助けてくれたあの人みたいな………あの時ジョージは「助けて」そう呟いた。かつて自分が呟いた言葉と同じだ。忘れてたぜ、あの時俺が胸に抱いた想いを。
誰しも一度は夢見たあの職業。まさかこんなアニメや漫画の主人公的な状況に陥るなんてな。俺はバックルとガシャットを拾い上げバックルを腰に当てた。
「思い出したぜ、俺が何になりたいか……俺はマイティのようなヒーローになりたかったんだっけな!」
意を決してガシャットのボタンを押した。
《マイティアクションX!!》
ボタンを押した瞬間ゲームエリアが展開されエナジーアイテムが収納されているチョコレートのブロックが無造作に置かれた。Mはガシャットを持った手を突き出し逆の方向に回しガシャットをドライバーに装填した。
「行くぜ、変身!!」
《ガシャット!!》
するとMの周りを何種類ものキャラクターの絵が回る。その中の一つを選び手をかざした。手をかざすとSLECTの文字が浮かび上がりMの姿が変わった。
《レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムアカメンライダー!!》
Mは仮面ライダーに変身した。しかし、変わった自分の姿を見た率直な感想は・・・・・
「太ッ!!何このゆるキャラ的な姿は!?」
そういえばマイティもこんな感じだったな。だからあれだけぬいぐるみ等の商品が出てるわけか。女子受けは良さそうだ。
「それがアクションゲーマーレベル1の姿よー!!」
「そうなのか?ならやってやるぜ!!」
《GAME START!!》
「その姿でしかバグスターと人間を分離できないからね!それじゃあゲームスタート!!」
ここまで来たんだ。マイティの決め台詞を拝借しようじゃないか。確か決め台詞は・・・・アレだったな。
「ノーコンテニューでクリアしてやるぜ!」
《ガシャコンブレイカー!!》
専用武器であるガシャコンブレイカーを手に取る。そしてジョージを相手にせずに背を向け走り出した。はたから見れば俗にいう敵前逃亡である。
「なんで逃げるのよ!?」
「ゲームならアイテム取らねーと!これ常識じゃん?あっ、縛りプレイは例外ね」
さてトアアイテムボックス発見と。目の前にあるボックスをガシャコンブレイカーで破壊した。破壊すると中からメダルが現れそのメダルを掴んだ。
「アイテムゲット!!」
これはどうやらスピードアップのようだな。あのウスノロには丁度いい。先程と同じ速度で走っているのに比べ物にならないほどのスピードが出せる。怪物の目の前を走り去ると壁を蹴り怪物の頭上へ。そしてガシャコンブレイカーを構え怪物の頭めがけて叩き込む。
「オラァ!!」
とてつもない威力の衝撃が怪物に走る。すると怪物はジョージの姿へと戻った。にしてもこのハンマー思ったよか使えるなー。軽いし持ちやすいし超お手軽。
「これでいいのお姉さん?」
「まだ終わってないよーん!」
怪物から姿が元に戻ったジョージは未だに苦しんでいた。そしてジョージの体からバグスターウィルスが分離し実体化したのだ。打撃武器のソルティナックルを左腕に装備し黒いハットとマントを装備した奴の姿はマイティの宿敵であるソルティ伯爵にそっくりだった。
「あれはソルティ伯爵!?」
「初見でここまでやれたことは褒めてやろう。だがレベル1のお前など取るに足らん!」
ソルティバグスターがマントを振り払うとそこから無数のバグスターウィルスが人型になった。こっからは無双ゲーってことか?ますます面白くなってきたじゃんかよ♪
「いざレバーを倒してレベルアップー!!」
「大変身!!」
《ガッチャン!!レベルアップ!!》
言われた通りにベルトのレバーを倒すと体からパーツが吹き飛びレベルアップのためのシークエンスが行われる。
《マイティジャンプ!!マイティキック!!マイティマイティアクションX!!》
数秒後俺の姿は可愛らしいゆるキャラ的な姿からは一変した。先程よりもスマートで見た目も可愛いからカッコいい姿に変わっている。これを考えた人は天才だな。
「勝負だソルティ!」
「望むところだ、者共かかれッ!!」
ソルティの号令で戦闘員のバグスターウィルス達が飛びかかってきた。所詮雑魚キャラだ、何人束になろうが軽く潰せるだろう。手始めにガシャコンブレイカーのAボタンを押しハンマーモードからソードモードに変形させた。
《ジャ・キーン!!》
刃を出すとMはバグスターウィルスに向かって走り出す。そして奴らとすれ違う瞬間に斬撃を与える。今の斬撃で残るバグスターウィルスは数体だ。残った数体はフォークのような武器を持ち襲いかかってきた。
「フフッ、次の攻撃は痛いぞ〜」
《バ・ゴーン!!》
Mはガシャコンブレイカーをソードモードから再びハンマーモードに戻した。ドライバーからガシャットを取り出しフッと息を吹きかけた。そしてハンマーの後ろにある穴にガシャットを差し込んだ。バグスターウィルス達はそんなこと御構い無しに武器を振り上げた。
《キメワザ!!》
一度トリガーを引き必殺技を発動。バグスターウィルスの武器が当たる寸前に相手の足元の地面にガシャットブレイカーを叩きつけ強力な衝撃波を送り込む。
《マイティクリティカルフィニッシュ!!》
「ドーン!!」
衝撃波を受けたバグスターウィルス達は次々と消滅していった。これで残るはソルティのみだ。さーていよいよラストバトルだ。
「いよいよ決着の時が来たようだな。一応名前を聞いておこうか」
「俺の名は…………何?」
「君の名は……仮面ライダー!」
「仮面ライダーか!I'm a カメンライダー!」
「仮面ライダー!貴様を必ず倒してやる!」
ソルティバグスターは武器のソルティナックルから電光弾を撃ち出した。撃ち出された電光弾は6。Mは6個の電光弾を見切りガシャコンブレイカーで受け流していく。電光弾の攻撃が終わると今度はMが攻めに出た。
「トウッ!!」
大振りのため見切られてはいるが何発かは当たっている。それらの威力はMの個性で上乗せされている為ソルティの受けたダメージは相当なものだ。ファーストステージならこんなもんか。そろそろトドメだ。
「馬鹿なッ!この私が押されてるだと?」
「M必殺技のライダーキックをお見舞いしちゃって!!」
「おう!任せとけっ!」
ガシャットをドライバーから再び取り出しまたもや息を吹きかけた。今度は左腰にあるキメワザスロットホルダーに差し込みボタンを押した。
《キメワザ!!》
待機音が鳴り響く間、Mは手首足首などを回し軽くストレッチしていた。そしてスロットホルダーのボタンをもう一度押した。全身にエネルギーが駆け巡る。ソルティバグスターは最後の足掻きと言わんばかりに電光弾を撃ち出した。
「おのれえ!!」
《マイティクリティカルストライク!!》
「トオッ!!」
電光弾を避け勢いよく空中に飛び上がった。そして前に一回転して右足を突き出した。これが仮面ライダーな必殺技、
「ライダーーキィーック!!」
ライダーキックがソルティバグスターに炸裂すると反転しまたもキックを叩き込む。こうして何度も叩き込み最後にソルティバグスターを後方に蹴り飛ばした。
《会心の一発!!》
「ぐっ………まさか私が負けると、わ」
《GAME CLEAR!!》
ライダーキックを喰らったソルティバグスターは跡形もなく消滅した。そしてマイティアクションXの絵が浮かび上がりゲームクリアの文字が映し出された。Mはガシャットをドライバーから引き抜き変身を解除した。
《ガシューン!!》
変身を解除したMは横たわるジョージに駆け寄った。ジョージは頭をさすりながら自分に起こった出来事をお姉ちゃんはから聞いていた。
「大丈夫か?」
「ああ、本当にすまん。お前にリベンジしたかっただけなのに怪物を生み出しちまうとはな」
「でもなんであんな怪物が?」
「バグスターウィルスはゲーム病患者のストレスなどが原因で活性化するのです!」
「確かに、俺の国じゃ無敗を誇っていた俺が一回戦で負けて悔しいやら情けないやらで鬱憤が溜まってたんだと思う」
「なあもし良かったら連絡先を交換してもいいか?」
「え?」
「リベンジしたいんだろ?スマッシュヒーローズは全世界で対戦するとこができるからな。時間さえ合えば相手になってやるよ」
「本当にいいのか?」
「勿論!俺たちもう友達だな」
「友達……ああそうだな!」
よっしゃあ!初の友達ゲットだぜ!ゲームに夢中になりすぎて友達と呼べる人物は誰一人としていなかったからな。友達が出来て嬉しいよ。
「友情を育んでる所申し訳ないんだけど、この騒ぎを聞きつけたヒーロー達がくる前にここを離れるよ。君は後でここに書かれた病院に検査を受けに行って。それとMはこれから私と来てね★」
「は?今から学校なんですけど」
「今更真面目ぶんないでよー。ほらほら先にあの駐車場に車置いてるから行って」
「おい押すなよ!それじゃあまた連絡くれやジョージ!」
「分かった、またなM!」
Mを強引に女はにこやかに微笑みながらジョージの耳元でこう呟いた。
「………今日あなたに起きたことは他言無用、もし誰かに話したら恐ろしい事になるから」
「は、はい」
明らかに先ほどと雰囲気が違いジョージは思わず冷や汗を流した。言い終えると女性は再び笑顔でジョージを見送った。こうしてMのファーストステージは終了した。
To be continue………
Next Stage〜
謎の女に連れてこられた場所は日本が誇るゲーム会社『幻夢コーポレーション』であった。そこで永夢はヒーローでは対処しきれない脅威を知る事になる。そしてMの前に現れる同年代の3人の適合者達、
「新人、お前はno thank youだ。ボクの邪魔をするな」
「俺に近づくな、群れるつもりはねえ」
「自分はバグスターの正体が知りたいだけさ、名人」
次回、STAGE2 明かされる本当のFact
GAME START!