ヨルムンガンド~十人目の私兵~   作:アスラ

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久しぶりの投稿ですみません。
リアルが忙しくて……。

久しぶりの投稿でクオリティが落ちてないか心配です。

では、原作開始です。


11 原作開始

俺達は東欧の片田舎にある街で足止めを食らっていた。

 

「トージョ。状況に変化はないのか?」

 

「全くと言っていいほどない」

 

「マジかよー」

 

もとから期待していなかったので、それほど落胆していない。

俺はライトノベルに目を戻した。

 

これは、つい最近日本に出来た友達から貰ったおすすめ本だ。そいつとは、よく連絡を取り合っている。

 

そういえば、ココが今日新入りを連れてくると言っていたが……どんなやつだろう。

もはや前世の記憶は摩耗してしまい、これから先の展開。つまり原作内容なんて忘れてしまった。

 

もうすぐ帰ってくると思うんだが……。

 

「はーい!みんな注目!!」

 

バン!!と勢いよく扉が開かれ、ココが現れた。予想通りだ。傍にいたレームに扉が直撃する。あ、ワインが床にぶちまけられた。

 

「彼がヨナだよ」

 

彼女の背後にいたのは、褐色の肌に白髪の少年だった。

 

この時、全員の思考は一致しただろう。

 

(((新入りって、少年兵だったのかよ!?チャカ持ってる、コェエーー!!)))

 

それと同時に、俺は思い出す。

彼が、もう1人の主人公だということに。

物語が始まるということを。

 

「ハイハイビビるな!!トージョ。彼にも解るように現状の説明!」

 

「変わらんね。内務省中央税関保安隊にはココさんからお電話願います。我らのコンテナは足止め食らったまんま。税関の小役人どもはダダをこねる一方」

 

「う~~~ん。連中の言い値通り関税払ったら、今四半期の決算超赤字だよ!!最初から通す気ないんだ!」

 

ココが苦い顔しながら手を振る。

 

「要するに、私達の荷物を取り返すんだ。OK?」

 

「……そんなことはどうでもいい。必要なのは『どこで誰を撃つか』……それだけ」

 

それを聞いたココは口の端を上げ、笑った。

頼もしい限りだ、と言わんばかりに。

 

「バルメ、レーム、出動準備!!準備!!」

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、トール。お前ってさ、新入りのことどう思う?」

 

しばらく本を読んでいると、暇を持て余したルツが話しかけてきた。

 

「そうだな……ココが連れてきたんだ。腕は確かなんだろうよ」

 

「ふ~ん。そういえば、トールもここに入隊した時はまだ子どもだったんだろ?元少年兵の先輩としてアドバイスしてやったらどうよ?」

 

「俺が入隊した時はただの力馬鹿だったよ。それ以外は全くの素人。何も言うことはないさ。今の俺があるのは、レームさん達が鍛えてくれたお陰さ。……あ、やべ。バルメさんとの1対1での訓練のトラウマが蘇ってきた……」

 

「あぁ、アネゴとの1対1か。ご愁傷様だな」

 

手を合わせるルツ。やめろ、まだ俺は死んじゃいねぇ。

 

「あ、そうだ。力馬鹿なトールもガキだった頃はあったんだ。ワイリに昔のことでも聞いてみよーっと」

 

「あ、おい馬鹿やめろ!!」

 

ワイリの元へと向かうルツを止めようと追いかける。しかし、

 

「おいおい、止めるなよトール。俺達だって興味あるんだ。お前のガキの頃の話をな」

 

アールに背後から羽交い締めされ、身動きが取れなくなる。

 

「おーい、ウゴ。手伝ってくれ」

 

「解った」

 

それに力自慢のウゴが加わる。もう盤石の体制だ。

 

「なぁワイリ。トールのガキの頃の話を聞かせてくれないか?」

 

「トール君のかい?そうだね……少年だった頃の彼は良くも悪くも活発だったね。自分から色々なことを試したし、ココさんに引っ張られながらもノリノリで悪戯をしたりしてたね。でも、年相応に子供っぽさはあってね、ココさんと好物の食べ物を巡って争ったりもしてたよ。ま、大抵バルメがやって来てトールをぶちのめしてココさんが独り占めするっていうパターンが多かったけど」

 

「他には?」

 

「は・な・せ!!」

 

「だが断る」

 

「ネタか!?それはネタなのか!?」

 

「どっちでもいいだろ。それよりワイリ、ルツの言う通り他にはないのか?」

 

「そうだね……。あ、あったよ。あれはトール君が仮入隊した直後の話でね」

 

「まさかあれを話す気か?やめてくれワイふごっ!?」

 

「黙ってろ。で、続きは?」

 

「そうだね、あれは……」

 

 

 

 

 

 

トールがヘクマティアル分隊に仮入隊してから1ヶ月後……

 

 

「トールって意外と中性だよね、顔が」

 

「へ?」

 

本を読むトールに向かって、唐突にココは言葉を投げかけた。

 

「いや、よく見ると可愛らしい顔してるのよ、君」

 

「確かに。男らしいというより可愛いという言葉が似合ってるな、トールは」

 

「え、ちょっと待ってよ。レームさんまでそんなこと言うの!?」

 

「という訳で……トールにはこれを使ってあることをしてもらいま~す!」

 

ココが鞄からある物を取り出す。それは……

 

「メイド服?」

 

「そう。トールはこれを着て私にご奉仕するのだ」

 

「オーケーオーケー、それを俺が着るんだな……。戦略的撤退!!」

 

「待ちなさい」

 

「ガフッ!?バ、バルメさん!!ちょ、放してください!あと襟首掴まないで!!」

 

「ダメです。おとなしくココの言うことを聞きなさい」

 

「嫌です!レームさん助けてください!!」

 

「面白そうだから嫌だ」

 

「ワイリさん!!」

 

「ははは……諦めてくれ」

 

「マオさん!!」

 

「右に同じだ」

 

「………」

 

なんてこった、味方が誰一人いないなんて……。

 

「フフーフ、諦めなさい。大丈夫!可愛いと思うから!!」

 

「全然大丈夫じゃない!!」

 

 

 

 

 

 

 

「あははははは!!トールが女装!?何の冗談だよそりゃ!!」

 

「笑いが止まらねーぜ!!」

 

げらげら笑うバカ二人(アールとルツ)。

 

それに対し、俺は羞恥で悶えていた。

 

あれは本当に黒歴史だ。あれからしばらく女装ネタで弄られたし。

 

「あー、でも見たかったな。トールの女装」

 

アールが残念そうに天を仰ぐ。

 

「見れるよ」

 

「「「なんだと!?」」」

 

まさかの爆弾発言に驚く俺たち。

 

「ココさんがパソコンにデータを保存して見ていたからね。頼めば見せてくれると思うよ」

 

「ワイリ。それ初耳なんだけど」

 

「私が見たのも偶然だからね。いつもは一人で見ているそうだ」

 

「よし、お嬢が帰ってきたら頼んで見せてもらおうぜ!!」

 

「そうだなアール!!」

 

「やめてくれ二人とも!!」

 

しかし、俺の懇願も空しく。結局見られてげらげら笑われてしまった。

 

チクショウ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「緊急事態だ!!」

 

翌日、ココが私兵全員に召集をかけ、緊急ミーティングが行われた。

 

内容を要約すると、「私達の取引に乗っかろうとして他の武器商人が取引しようとしてるから、給料減らされない為に阻止しようぜ!!」ということらしい。

 

という訳で。

 

「俺達はココの援護をする為にウゴが運転する車にて移動中」

 

「なに言ってんだ、トール?」

 

「いんや、ひとり言」

 

「あっそ」

 

俺は武器の手入れを再開した。

 

今回は『鋼鉄殺し』ではない。あれは今回の任務には向いていない為お留守番だ。

 

「おぉ、すげぇ」

 

ウゴの発言にルツが反応した。

 

「ん、なにが?」

 

「狩れ、だってさ」

 

その言葉に、俺達四人が反応する。

 

「久しぶりの狩りじゃ」

 

「「狩りじゃー」」

 

「うちらのボスは時々カゲキだぜ」

 

 

 

 

 

 

それからしばらく経った後。

俺達はココ達がいる建物の反対側のビルにいた。

目的は単純。相手が雇ったスナイパーを殺すことだ。

さて、相手はプロだ。気を引き締めて行こう。

と、思ったんだが……。

 

「弱すぎね?コイツら。楽に殺せたんだが」

 

「そりゃそうだろ。不意打ちだったんだから」

 

「ま、そうか」

 

あっさりと仕事が終わってしまい、今は周囲の警戒をしていた。

 

「あ、お嬢が殴られた」

 

「なにぃ!!おいルツ、ちょっとそれ貸せ!!」

 

「あっ、おい!!」

 

ルツからスナイパーライフルを奪い取り、スコープを覗く。

覗いた先に見えるのは、頭から血を流したココの後姿。

 

「あの野郎……ッ!!」

 

「落ち着けトール。ここで動いたら全部台無しになる」

 

「……そうだな。助かったよ、レームさん」

 

沸々と湧き上がる怒りを、レームの言葉に助けられ抑えつける。

少しした後、スコープを覗く先、ココ達に動きがあった。携帯電話を取り出したのだ。

これが意味することは。

 

「トージョ達、交渉が成功したな」

 

「その様だな。お、こっちに通信来た。--ココか?こっちは制圧済みだぞ。あとトールがスゲー心配してるから手を振ってやれ」

 

『マジ?じゃ手を振ってやろう。おーいトール、私は無事だぞ~』

 

声に合わせてこちらに手を振るココ。頭から血を流しているが、元気そうだ。

そして、ヨナがクロシキンを射殺し、この作戦は終わった。

 

 

 

 

 

 

「「「「ハーラーヘーリーハーラーヘーリー」」」」

 

夜、とあるビルの一室に俺達ヘクマティアル分隊が集まっていた。

ハラヘリ言ってるのはレームと俺を除く男衆だ。

ヨナはひたすら卵料理を作らされている。それがこの隊の入隊儀式。ちょうどレームがその事をヨナに話していた。

 

そして並べられるのは見た目美味しそうな卵料理。

さて、味はどうかな……ぐふっ!?

 

「「「ま、不味い……」」」

 

全員が倒れ伏すほど不味かった。

 

 

 

 

 

 

 


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