ヨルムンガンド~十人目の私兵~   作:アスラ

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前回のあらすじ

ココ達にむっちゃしごかれた。


3 初仕事

俺がココ分隊に入隊してから三年。

 

 

地獄のような特訓と英語講座により、かなりの実力を付け英語もペラペラになった。

 

 

近接格闘に関しては、バルメさんと良い勝負をするようになった。

 

 

膂力に関してはこちらが圧倒しているのだが、彼女は戦い方が巧い。

 

 

巧くいなされ、かわされている。

 

 

そうそう、変わったことと言えば、俺の主力武器が凄いことになりましたよ。

 

 

ナイフとかはまだいいんですが、銃器はデザートイーグル二丁(もちろん、同時に使っている)、対物ライフルであるM82A1にフルオート連射機能を付けてマシンガンのように扱っています。

 

 

まぁ、みんなにはドン引きされましたよ。当然だよな。どこの世の中に対物ライフルをマシンガンみたいに撃つヤツがいるんだよ。

 

 

あ、いました。俺でした。

 

 

まぁ、おふざけはここまでにして。

 

 

人も殺した。避けては通れない道だとしても、やっぱり最初は慣れなかった。

 

 

初めて人を殺したのはココさんに引き取られてから一年経ったころ。

 

 

彼女に連れられてやって来た場所は死刑場。

 

 

ちょうど、目隠しをされた死刑囚がいた。

 

 

『トールが殺すのよ』

 

 

最初は意味が解らなかった。

 

 

殺す?俺が人を?出来るのか?

 

俺がココさんに拾われたあの日、俺は海賊を皆殺しにした。暴走してたとはいえ、おぼろげながらそのことは覚えている。しかし、その記憶は映画のシアターを通して見たように現実味がなく、どこか他人事のように感じていた。だから、罪の意識には苛まれなかった。それに、あれは〝殺人〟ではなく〝殺戮〟だろう。

 

しかし、今回は違う。自らの意思で、意図的に殺す。

 

思考がぐるぐる回り、現実から逃避したくなる。

 

だが、彼女の私兵としてやっていくには避けては通れない道だ。

 

覚悟を決め、俺は引き金を引いた。

 

 

パァン、という破裂音が響き、びちゃびちゃと死刑囚の脳漿があたりに撒き散らされる。

 

 

その後、俺はとにかく吐いた。吐いて吐いて吐きまくった。

 

 

その時、ココさんが傍にいてくれたのは助かった。安心できた。

 

 

こうして殺人を初体験したが、一度では慣れることはない。その後も定期的に人を殺した。

 

 

そして俺が入隊してから三年後、14歳の誕生日を迎えた日。それはやって来た。

 

 

「トール。遂に来たわよ。キミの初仕事が」

 

 

あれからさらに美しくなった少女。ココ・ヘクマティアルは俺にそう言った。

 

 

「その内容は、わたし達が今来ているこの街の港で足止めくらっている兵器の納入。ぶっちゃけ辿り着いたらこっちの勝ちね」

 

 

「はぁ」

 

 

なんともおおざっぱな。

 

 

「トージョ。詳しい説明を」

 

 

「変わらんよ。相変わらず港に足止めくらったまま。連絡取ろうにも相手方一切無視。完全に通す気ないな」

 

 

トージョ。この三年で新しく入ってきた隊員。びっくりなことに俺と同じ日本人。

 

 

「じゃあ行くわよ。レーム、マオ。戦闘準備、準備!」

 

 

 

 

 

 

「緊張してる?トール」

 

 

高速に入ってすぐに、彼女は俺に質問を投げかけた。

 

 

「そうだなぁ。初めての実戦だし、緊張しないほうが無理だよ」

 

 

敬語は使っていない。使うなと言われたし、実際タメ口のほうが楽だ。

 

 

「えー。戦場のど真ん中に連れてったこともあるじゃない」

 

 

「あの時は丸腰だったから逃げるのに必死だったからね。人は殺したけど」

 

 

「凄かったわね。アレは。トールが敵兵の顔を全力で殴ったら胴体とおさらばしちゃって」

 

 

「自分でもびっくりしたよ」

 

 

そんな軽口を叩いていると、後方から不審な車が三台現れる。

 

 

そのうち一台は、後方にいるレーム達の車の後ろに付く。

 

 

あの二人ならば、大丈夫だろう。

 

 

それよりも、今はこちらに集中しないとな。

 

 

「ねえココ。敵が現れたようだから、やっちゃってもいいよな」

 

 

「ええ、派手にぶっ放しなさい!!」

 

 

俺は車から身を乗り出し、連射機能付き対物ライフル−−−鋼鉄殺しの引き金を引く。

 

 

一台目、運転手ごと蜂の巣にして撃破。

 

 

二台目もエンジンに穴を空け、爆発。

 

 

「あっけないな。たぶん、今のは斥候だろう」

 

 

「本命はこれからね」

 

 

俺は警戒を続けた。

 

 

 

 

 

 

「ヒュゥ〜。やるね」

 

 

「まぁ、彼の実力なら当たり前でしょうね」

 

 

レームとマオは、前方の蹂躙を見てそんな感想を漏らす。

 

 

「最初こそ素人で危なっかしかったけど、今じゃ立派な傭兵だ」

 

 

「というか、相変わらずの力ですね。対物ライフルをフルオートで連射するって……。彼以外できませんよ」

 

 

会話をしながらも、彼らは敵と交戦する。

 

 

「そうだねぇ。でも、あの格好はどうにかならないのか?」

 

 

「そうですね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばワイリ。何故トールは学ランなんだ?」

 

トージョはワイリに質問を投げかける。

 

 

「学ランって、……ああ。彼の着ている制服のことか」

 

 

「そうです。あれは日本の学生服。あれを私服にしているのはおかしい」

 

 

「まぁ、トージョの指摘はもっともだよ。そうだね、あれは彼がここに入隊した直後のことだったな。彼に英語を教える係はココ本人がやってな、ある日彼に学ランを渡してこう言ったんだ。『キミとわたしの今の関係は教師と生徒だ。トールは生徒なんだから、これを着なさい』って。ああ見えても防弾仕様でね、彼も気に入って着続けてるんだ」

 

 

「はぁ、そうなんですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやらレーム達は敵を倒したようだね」

 

 

「そのようだな」

 

 

「さっきのが斥候だとすると、次は何が来るかな?」

 

「装甲車あたりじゃないか?」

 

 

「そうだね。でも、トールの鋼鉄殺しの前では無意味だ」

 

 

「違いない」

 

 

お互い軽口を叩きながら敵に備える。

 

 

しかし、いつまで経っても装甲車が来る気配がない。

 

 

「おかしいわね。やつら、何も仕掛けてこない」

 

 

「確かにな」

 

 

ふと、上を見上げてみる。

 

 

そこには、考えたくもない可能性があった。

 

 

「なあ、ココ」

 

 

「言わないで。音で解るけど理解したくない」

 

 

「いや、現実から目を逸らしてはいけないと思うぞ」

 

「そうだけどねぇ。いくら装甲車がダメだからといって−−−」

 

 

 

「ガンシップを持ってくるっていったいどーいうことなのよーーーッ!!」

 

 

 

「来るぞ!!」

 

 

機関銃を撃ってくるガンシップ。

 

 

ココは巧みなハンドル捌きで避ける。

 

 

「くうぅぅぅ!!トール!!何とかしなさいよ!!」

 

「何とかしろって言われてもなぁ!!ってうお!?ミサイル撃ってきやがった!!」

 

 

何とか鋼鉄殺しで撃ち落とす。

 

 

「ココ!!こっちもミサイルの類はないのか!?」

 

 

「ないわよ!!」

 

 

「ちッ!!どうにかできないもんかよ……」

 

 

鋼鉄殺しも距離を取られれば威力は落ちる。

 

 

何か使えるものはないかとあたりを見回す。

 

 

ふと、ある物が目に映る。

 

 

「ココ!!俺を信じて真っ直ぐ走ってくれ!!」

 

 

「信じるわよ!!当たり前じゃない!!」

 

 

「ありがとよ!!愛してるぜ!!」

 

 

「えっ!?今なんて……」

 

 

なんか凄いことを口走った気がするが気にしない。

 

 

俺は、ある物に向かって鋼鉄殺しを撃つ。

 

 

高速道路の看板の留め金に向かって。

 

 

留め金が破壊され、看板が落下する。

 

 

ちょうど真下にいた俺は看板をキャッチし、ガンシップに向かって投げつける。

 

 

「うおらあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

直進していたガンシップは避けきれず激突し、墜落する。

 

 

「うおっしゃ!!やったぜココ!!……ココ?」

 

 

呼び掛けても反応がない。

 

 

運転席を見る。ココは変わらず運転している。

 

 

しかし、前屈まえかがみになってだ。

 

 

「どうかしたか?」

 

 

「な、なんでもない!!」

 

 

 

 

 

 

 

トールが戦闘中に口走った言葉を思い出す。

 

 

『ありがとよ!!愛してるぜ!!』

 

 

あれって、愛の告白よね?それってつまり、彼がわたしのことを……。

 

 

いやいやいや!!もっとよく考えろわたし!!

 

 

トールは無意識に女の子に対してとんでもないことを言う。

 

 

『可愛いね』『笑顔がいいよ』

 

 

どれも相手に自分を意識させるような言葉だ。

 

 

しかも、時折見せる子どものような笑顔は反則だ。

 

 

言葉と笑顔。

 

 

その二つで落とした女の子は数知れない。

 

 

取引先のご令嬢や女まで落としてしまうからたちが悪い。

 

 

しかし、そんな女どもに靡なびかず彼はずっとわたしと共にいてくれる。

 

 

やっぱり、彼はわたしのことが……。

 

 

いやいやいや、もっと考えろわたし!!

 

 

あの時の彼は戦闘中でハイテンションだったし、映画とかでよく見る仲間内での親愛の情を表す『愛してる』かもしれないし……。

 

 

 

 

結局、港につくまで思考の堂々巡りをしてしまい、バルメに相談することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れて夜。

 

 

初仕事を終えた俺はキッチンで卵料理を作っていた。

 

 

「ココはな、新しく入隊した隊員には必ず卵料理ばかりを作らせているんだ。その意味、よく考えるこったな」

 

 

食材をつまみながらレームがそんなことを言う。

 

 

まぁ、考えておくか。

 

 

それより早く料理を作らねば、

 

 

「「「「「ハーラーヘーリーハーラーヘーリー」」」」」

 

 

後ろの集団が怖い。目に影ができている。

 

 

「これがわたしの隊の入隊儀式だ」

 

 

ようやくできた卵料理を配膳すると、ココが喋りだす。

 

 

恒例のアレだろう。

 

 

俺は入隊したといっても、『仮』が付いていた。

 

 

今回、仕事を成功させるまでに実力をつけた俺は、その『仮』がようやく取れたのだ。

 

 

感無量だ。これしか言い表せない。

 

 

「キミは今日、軍・国家・組織・家族を一新した卵君だ。ようやく入隊できた頼もしい仲間、トール。歓迎するよ」

 

 

その日、俺は本当の意味で彼女たちの仲間になった。

 

 

料理の感想だが……結構旨かったらしい。

 

 

美味しいと言ってくれた彼女の笑顔が、俺にはとても印象的で可愛く見えた。

 

 




今日の連投はこれで終わりです。

次回から、あとがきもちゃんと書きます。
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