地下で無双したった
わたし、ココ・ヘクマティアルはトールのことが好きだ。
その気持ちの種ができたのは、おそらく病室で彼に『可愛い』と言われた時だろう。
その時から、彼を意識し始めるようになった。
それからというもの、わたしは彼によく絡むようになった。
暇を見ればちょっかいをかけ、護衛と称して連れ回したこともあった。
その度、彼はちょっと困った顔をするのだが、文句不平も垂れず付き合ってくれた。
そして、完全に自覚したのは彼が入隊してから二年経った頃。
ある日、いつものようにトールを連れ出して街に繰り出した時、運悪く殺し屋に遭遇してしまった。
完全に油断していたわたしは硬直してしまった。
銃口がわたしに向けられ、引き金が引かれた。
しかし、弾丸がわたしを貫くことはなかった。
トールがわたしを庇い、盾となってくれたからだ。
「ぐ、うおぉ」
彼は弾丸が当たらないようにわたしを抱きしめる。
不謹慎ながらも、ドキドキしてしまった。
しかし、すぐに現実に戻った。彼が吐血したからだ。
吐血したということは、内臓が傷ついたということ。
このままではトールが死んでしまう。
しかし、黙ってやられているような彼ではなかった。
「ぐッ、このヤロオォォォォォォォォォ!!」
トールは近くにあった道路標識を引っこ抜き殺し屋を叩きのめした。
「よかった。無事だな、ココ」
彼はそう言って倒れた。
あの時は、トールが死んだと思って目の前が真っ暗になった。
そして、気付いたのだ。
わたしは、トールのことが好きなのだと。
しかし、今はこの思いを告げることができない。
いや、しない。
世界平和を実現させる為の計画。
それを達成する為には、非情になることも必須だろう。
私情を挟むことは赦されないだろう。
でも、計画を達成した暁には……。
俺、トールはココのことが好きだ。
その気持ちに気付いたのは、入隊してから二年が経ったある日のこと。
いつものようにココに連れ出され、街を散策していた時、ふと目の端にある人物が映った。
リストに載っていた殺し屋だった。
そいつは銃を抜き、ココへと向けた。
「ココ!!危ない!!」
とっさにココを抱きしめ、盾となる。
殺し屋は容赦なく引き金を引く。弾丸が俺の背中を抉る。
「ぐッ、このヤロオォォォォォォォォォ!!」
俺は道路標識を引っこ抜き、殺し屋を叩きのめした。
殺し屋を倒したのを確認したあと、胸の中にいるココを見る。
彼女は、傷一つなかった。
「よかった。無事だな、ココ」
安心して気が緩んだのか、視界が暗転する。
そのまま、崩れ落ちるように倒れてしまった。
そして、次に目が覚めたのは病室。
下腹部に何かが乗っている感覚。視線を向けると、そこにはココ。
ずっとここに居てくれたのだろうか。
眠っている彼女の髪に触れる。
サラサラとしていて、まるで上質な絹のようなプラチナブロンドの髪。
指で梳くと、何の抵抗もなく髪は受け容れた。
寝顔を覗く。まるで天使のようだ。
彼女を護れた。それで俺は満足だ。
だけど、彼女は自分の為に泣いてくれるだろう。
それが、自分はどうしても嫌だった。
泣いている彼女を見たくない、彼女を泣かせたくない。
そんな強い感情が、自分の中に渦巻く。
そこで、ようやく俺は気付く。
俺は、どうしようもなくココのことが好きなのだと。
しかし、この気持ちを伝えるわけにはいかない。
自分は彼女に雇われている私兵だ。
恩人でもあるし、そんな感情を抱いてはいけないのだ。
それに前世の記憶はかなり薄れて思い出せないが、彼女はある大きな計画を進めていたはずだ。
そんな中、余計な感情を抱かせてはいけない。
それが失敗の要因になっては元も子もない。
彼女はああ見えて身内に対して情が厚いのだ。
だから、俺は彼女にこの気持ちを伝えない。
この気持ちは、墓場まで持っていこうと思う。
だけど、もしそれが赦されるのなら、俺は……。
今回は話の都合上、どうしても短くなってしまいました。
ついに自らの心情を明かした二人ですが、それぞれの理由で告白をしません。はたして、彼と彼女はくっつくことが出来るのか!?まぁ、ぶっちゃけ作者(自分)次第なんですけどねwww
これからも、よろしくお願いします。