花開院家
京都市に本家を置く、妖怪退治を生業とする陰陽師の一族で、蘆屋道満を始祖とする“蘆屋家直系京守護陰陽師”。
構成人数は約3000名で、数多くの分家がある。
しかし、400年前のある妖怪の呪いにより、十三代目以降本家の男子は必ず早世してしまう。
そのため、常に分家の優秀な者を養子として本家に迎え入れて、次期当主を決めていた。
そして今、次の当主が決まろうとしていたそんな時、一人恐ろしく優秀な陰陽師が現れた。
数多くの陰陽術を扱い、誰よりも陰陽師の才に愛された男。
その名は、”式羽流”後見人、花開院秋斗。
「ゆら。準備はできたか?」
「こっちはええで。そっちは?」
そう言ってゆらはリュックを背負って立ち上がる。
「ああ。問題ない。てか、誰がお前の荷造り手伝ったと思ってるんだ?」
俺はボストンバックを手に立ち上がって言う。
「まさか前日まで荷造りしてないとは驚きだ」
「しょ、しょうがないやん!色々準備とかあったんや!」
「はいはい。わかったから行くぞ」
「あ、待てや!」
部屋から出て行くと、ゆらは慌てて俺の後を追いかけてくる。
「ほんなら行ってくるわ」
「行ってきます」
本家の人間に別れの挨拶をし、出て行こうとする。
「ゆら、秋斗!」
そんな俺たちを止めたのは、同じ陰陽師で幼馴染でもある魔魅流さんだった。
「今日からだっけ?浮世絵町で妖怪修行」
「魔魅流さん!」
「魔魅流くん!」
「すごいね二人は、まだ中1なのにさ。でも、それでこそゆらと秋斗だ。頑張ってね」
魔魅流さんはにっこりと笑い、俺たちを激励してくれる。
「うん!まかしといて!」
「秋斗、ゆらを頼んだよ」
「大丈夫ですよ。ゆらよりはしっかりしてる自覚はありますから」
「秋斗!それどう言う意味や!」
「その説明は後でな。てか、急ぐぞ!電車に間に合わなくなる!魔魅流さん、それじゃあ!」
「待てや!魔魅流くん、ほな!」
最後に魔魅流さんに挨拶をし、本家を飛び出すように出る。
俺とゆらは今日から度々怪異に襲われることで有名な浮世絵町に向かい、そこで修行をすることになっている。
そして、その町には妖怪の総大将”ぬらりひょん”がいついてるとの噂もある。
これは次期当主として期待されてるゆらへの修行兼試験であり、俺も修行として浮世絵町に行くこととなった。
しかし、魔魅流さんにはああは言ったが、俺はゆらを守りきれるのだろうか……
懐の十二体の式神に意識を向け考える。
いや、守れるのかどうか問題じゃない。
守りきるんだ、必ず…………
「秋斗、どうしたん?」
「ん?」
ゆらが不思議そうにしながら俺の顔を覗き込んでくる。
「なんか恐い顔しとったけど………大丈夫なん?」
「ああ、大丈夫だ。ちょっと楽しみなだけだ。妖怪の総大将がな」