「ゆら、起きろ」
「ふぎゅっ!?」
布団の中でいまだ眠るゆらを、布団を引っ張って起こす。
布団を抜き取られたゆらは回転する様に布団からたたき出され、床に倒れる。
「行き成り何すんや!?」
「いいから飯食え。冷めるぞ」
そう言って俺はテーブルの上の朝食を指差す。
ゆらはしぶしぶと起き上がり制服着替えようとするが、俺がいることに気づき慌て出す。
「な、何見てるんや!?あっち向いとき!」
「何恥かしがってんだよ?今更着替えぐらい。小五まで一緒に風呂に入った仲だろ」
「いいから行かんかい!」
結局部屋を追い出され、俺は部屋の外で待たされた。
なんだ?思春期か?
異性と一緒は恥かしいお年頃なのか?
本家じゃ一緒の部屋で暮らしてたのに何が恥かしいんだが…………
数分後、やっと部屋への入室を許され、朝食を食べる。
「相変わらず、うまい料理やな」
「これぐらい普通だろ。お前も卵かけご飯以外の物も作れるようになれよな」
「TKGうまいやろ!」
「いや、うまいけど、ご飯に卵と醤油をかけてはい完成ってのは料理とは言えないぞ」
俺が作った朝食を食べながら 他愛の無い話をする。
朝食を食べ終わると、後片付けを二人でして今日から通う学校へと向かう。
学校に着いたのはいいんだが何分急な転校だったため、職員室の居場所がわからなかった。
「まずいな。八時までに職員室に来るように言われてるのにこれだと間に合わない」
「ちょっと誰かに聞いてくる」
ゆらはそう言って、近くの女生徒に話し掛けた。
二、三程言葉を交わすとゆらは軽く頭を下げ戻ってくる。
「どうだった?」
「この棟の二階やって」
「二階に職員室って珍しいな」
「せやね」
二人で並びながら職員室に向かい、そこで担任の先生と顔合わせをし、教室へと向かう。
教師は俺たちを前に立たせて挨拶をさせる。
「花開院ゆらです。どうぞよしなに」
「同じく花開院秋斗です。名字だとゆらと被るので名前で呼んでください」
「花開院さん‼︎どこから引越してきたのー?」
「花開院さんて呼びにく!もう「ユラ」でいいじゃん」
「部活とかどーしてた?」
「私…部活は……」
一時間目が終わった後。ゆらの周りにはクラスメイトたちが大勢集まっていた。
まぁ、転校生の宿命という奴だろう。
実際、俺の周りにも何人か集まってる。
「なぁんぁ、花開院ってあっちの花開院と同じ名字だけど兄弟かなんかなのか?」
「いや、兄弟じゃないけど親戚だよ。ま、従兄妹みたいなもんだ。それと秋斗でいいぜ」
そんなことを話してると、ふと教室の隅で騒がしくしてる集団の声が聞こえる。
「ねぇ、清嗣くん!前の話きかせて‼︎」
「旧校舎…本当に行ったんでしょ⁉︎」
「そ、それは…」
「出たの?妖怪」
「い…いなかったんだ…あそこには……でも、今度こそは大丈夫だ!知り合いから買い付けた”呪いの人形”があ!!」
「「えー?」」
「あれを使って‼︎必ずや自論を証明してみせる!!!」
髪がワカメのような男子は机にバンッと手を置きそう言う。
呪いの人形ねぇ………
本物だったら危険だろうし、ちょっとお邪魔させてもらおうか。
「その話…本当?」
「できれば、俺たちもその話を詳しく聞かせて欲しいんだが」
ゆらも同じらしくその男子に近づく。
「そ、そうかい!いやー嬉しいよ!!わかってくれる人がいてくれ!!」
「めずらしいの?」
「そんなことはない!有志は他にもいるよ!ここにいる鳥居さんと巻さんもそうだ!」
「え!?」
「私ら!?」
名前を呼ばれた女子二人は厄介ごとに巻き込まれたくないらしく適当な理由を言って断った。
「おやっ!家長さんと奴良くん!丁度いい所に!君たちも来た前!」
廊下を歩いていたメガネの男子とその隣にいた女子にも声を掛ける。
「清十字怪奇探偵団‼︎今日はボクの家に集合だからなーーー!!」
そして、放課後。
俺とゆらは、清継(ワカメみたいな髪形男子)と島(清継の隣にいた男子)、家長さんと奴良、最後にいつのまにかいた及川さんの五人と一緒に清継の家へと向かった。
正直言うと、清継の家はとてもでかかった。
金持ちなのだろうか………
「すげぇ……」
島は清継の部屋を見るなりそう言った。
部屋の中は見るからに怪しげな品がずらりと並べられていた。
まぁ、怪しく見えるだけで実際は無害な物しかないけど。
「大学教授だった祖父の資料室を借りてるだけだが、いずれは僕の資料で埋めて見せるさ。さぁ、これがその人形さ」
見せられたのは怪しげに見える日本人形だった。
驚くことに、この人形は本物だった。
だが、人形に残る妖力は微々たる物だし、放って置けばその内、妖力は薄れて散り散りになるだろう。
「人形と一緒に日記が残ってる。読んでみよう」
そう言って清継は日記を読む。
『二月二十二日引越しまで後七日。昨日、これを機に祖母から貰った日本人形を捨てることにした。と言っても機会を窺ってはいたが本当は怖くて捨てられなかっただけで、雨が降っていたが思い切って捨てた。すると今日捨てたはずの人形が玄関に置いてあり、目から血のような黒っぽい』
清継がそこまで読むと、突然、奴良が日本人形にぶつかった。
「どぉしたリクオ!?」
「貴重な資料にタックルをかますなーーー!」
「ご、ごめん!話聞いてたら可哀想で!」
奴良はそう言って人形から離れる。
おかしい。
今一瞬だったが、人形の妖力が上がった様な……気のせいか?
「ったく、名誉会員から外してしまうよ…まあいい、次だ」
清継は日記の続きを読み始めたので、俺はそっちの方に意識を向ける。
『二月二十四日、彼氏に言って遠くの山に捨ててきてもらった。その日の夜、彼氏から電話が「助けてくれ……気づいたら座席にこいつがのってた……」……考えてみれば昔から変な人形だった。気づけば髪が伸びている様にも見えた……』
やっぱり気のせいじゃない!
妖力が上がってる!
『二月二十八日 引っ越し前日 おかしい…仕舞っておいたはずの箱が開いている…』
「日記を読むのを止めてぇーー!!」
奴良が声を上げるが、その背後に小さな刀を振りかぶり、憤怒の形相を浮かべたあの日本人形がいた。
「ゆら!」
俺は奴良の背後に立ち、人形に向かって指で五芒星を宙に刻む。
「『縛』!」
そう叫ぶと、人形は突如動きを止め。宙で固まる。
そのチャンスを逃さず、ゆらは呪符入れ兼財布から呪符を取り出し、人形に投げつける。
ゆらの呪符で人形は動きを封じられ地面に落ちる。
その光景に全員が驚いた様子で俺たちを見てくる。
「浮世絵町……やはりおった」
「悪いが、これも俺たちの使命だ。陰陽師”花開院家”の名において」
「妖怪よ。あなたをこの世から…滅死ます!」