ぬらりひょんの孫~才に愛された者~   作:ほにゃー

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旧鼠の策略

「長い夜のはじまりだ」

 

妖怪になった旧鼠は配下の鼠たちを使い、ゆらとカナを行き止まりの路地へと追い込む。

 

「なに……これ……!?ゆらちゃん……!」

 

「妖怪変化……昼間説明した獣の妖怪………」

 

「え…!それって……!」

 

カナは昼間の説明を思い出し、足がすくんでしまう。

 

「大人しくしてりゃ痛い目見なくて済むぜぇー」

 

鼠妖怪たちは下品な笑みを浮かべながら二人に詰め寄って来る。

 

「……鼠風情が。粋がるんちゃうわ。後ろに下がって家長さん!」

 

ゆらはカナを守る様に前に出る。

 

「やれ、お前ら」

 

旧鼠の合図で、配下の鼠たちが一斉に襲い掛かる。

 

「禹歩!天蓬!天内!天衝!天輔!天任!乾坤元享利貞!」

 

ゆらは言葉を唱えながら、独特の足さばきで呪符入れから一枚の人型に切られた呪符を取り出す。

 

「出番や!私の式神!“貪狼”!」

 

呪符を投げると呪符は姿を変え、一匹の巨大な二ホンオオカミの姿になる。

 

「な、なんだぁー!!?」

 

「狼……!?」

 

鼠たちが狼狽える中、貪狼は容赦なく一匹の鼠の顔を踏みつけ、そのまま踏み殺す。

 

「うわ……!」

 

「うわわ……!」

 

その光景に他の鼠たちも絶句し、動き止める。

 

「貪狼。あいつら鼠や。食べてしもて」

 

ゆらがそう言うと、貪狼は次々に鼠へと襲い掛かる。

 

牙で噛み殺し、爪で切り裂き、鼠を蹴散らしていく。

 

「こいつ…式神を使ってやがる…術者だ!」

 

ゆらが陰陽師だと言う事にようやく気付いた旧鼠は一旦配下のネズミを退かせる。

 

「陰陽師だ! それも…生半可ねえぞ!!」

 

「いい子やね、貪狼」

 

その声に貪狼はゆらの下へ舞い戻り、ゆらは貪狼を優しく撫でる。

 

「兄貴~……」

 

「聞いてねぇぞ!」

 

「旧鼠さん。この女一体…!」

 

取り巻きも下がって口々に旧鼠に問いかける。

 

「旧鼠か…仔猫を喰う大ねずみの妖怪…人にバケてこんな路上に出るなんて…」

 

ゆらは旧鼠を睨みつけた。

 

「こいつぁ…三代目はそうとうな好き者だな…」

 

そう言いながら旧鼠は人間の姿になり、前髪をかき上げる。

 

「そんなぶっそうなモノはしまいなよ」

 

旧鼠は猫なで声でゆらの頬へ手を伸ばした。

 

「さわるな鼠!」

 

そう言ってゆらはその手を払いのける。

 

「……あ?」

 

その瞬間再び旧鼠の顔が一瞬ネズミに戻ったが、すぐに人間の顔に戻る。

 

コートのポケットからハンカチを出してゆらに叩かれた手を拭った。

 

(なんなんやこいつ?)

 

「あぁ…」

 

「やべえな…こいつ終わったわ」

 

周りが急にヒソヒソと話し始めたことに、ゆらが理解できないでいると、旧鼠は指を鳴らす。

 

「キャアア!」

 

「家永さん?!」

 

背後のカナの悲鳴にゆらは驚いて振り返る。

 

「いやっ…ネズミが!?」

 

その辺にいるようなネズミがカナにまとわりついていた。

 

「その娘に何するんや!貪狼!」

 

ゆらは慌ててカナの元に貪狼を向かわせようとするが、その瞬間、背後から旧鼠が爪を首に突き立てる。

 

「やめとけ。鼠はいくらでも増やせる。大人しく式神を仕舞え。もちろん違う式神も駄目だ」

 

カナを人質に取られ、ゆらは従うしかないと理解し、貪狼を仕舞った。

 

貪狼が消えたのを確認すると、旧鼠はゆらを行き成り殴った。

 

「なんで…私たちを…」

 

「ゆらちゃん!?」

 

人気のない路地裏にカナの叫びが木霊する。

 

「おまえら丁重にあつかえよ…こいつらは大事なエサなんだからな…」

 

薄れゆく意識の中、ゆらは旧鼠に気付かれないように一枚の呪符を取り出す。

 

(お願いや、武曲……秋斗に……この事を伝えて……)

 

心の中でそう念じると、呪符はそれを理解したのか旧鼠たちに気付かれないように路地裏から空を飛ぶ様に移動した。

 

そこでゆらの意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………遅いな」

 

時刻はもうすぐ八時。

 

いくらなんでも遅すぎる。

 

米を炊いて、スーパーで一番高い卵と、卵かけご飯専用醤油を買って待ってるのに、帰ってこない。

 

「何処かで道草でも食ってるのか?いや、ゆらに限ってそれはないか……」

 

どう言う訳か携帯にも出ないし、一体どうしたんだ?

 

その時、部屋の中に一枚の紙が入り込んでくる。

 

するとその紙は突然、姿を変え、俺の前に現れる。

 

「秋斗様!」

 

それは式神“武曲”。

 

落ち武者の姿をしたゆらの式神だ。

 

「武曲!どうしてお前が……!」

 

「申し上げます!ゆら様とご学友の家長殿が浮世絵町一番街にて妖怪“旧鼠”の手に落ち囚われの身となりました!」

 

「ゆらが……!?それに家長もだって!?」

 

旧鼠……獣の妖怪か。

 

厄介な妖怪に捕まったか………

 

「だが、どうしてだ?ゆらの腕なら旧鼠程度、跳ね退けられるはずだろ」

 

「それが家長殿を人質に取られ手も足も出ず………」

 

そう言う事か。

 

俺は立ち上がり、二人の救出の為の準備を始める。

 

「武曲、俺は二人を助けに行く。一番街だったな」

 

「はい!」

 

「それ以外に情報は無いか?なんでもいい。あったら教えてくれ」

 

「そう言えば……三代目がどうとか言ってました」

 

三代目だって?

 

…………そう言えば、昔当主が、妖怪の主“ぬらりひょん”は奴良組と呼ばれる組の長だった話を聞いたことがあったな。

 

リクオはそのぬらりひょんの孫。

 

つまり三代目…………寄る所が出来たな。

 

「武曲、後は任せろ。もう休め」

 

「はっ!お力になれず、申し訳ありません!」

 

武曲はそう言い、式神へと戻る。

 

俺は準備を整え、リクオの家へと向かった。

 

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