ありがとう! 面白くはできないかもしれないけども頑張ります
「ぐぁッ・・・がッハ」
鋭い衝撃
走っていた俺は受け身も取れずに地面に叩きつけられる
どうやら後ろの獅子が雷球を撃ち込んできたらしい
地面への着弾の余波だけで俺の体は軽々と吹き飛ばされた
・・・余波だけでこれとか直撃なんてしたら即バラバラ死体の完成だろうな
酸素が足りず上手く働かない頭でそんなことを考えつつ
身体は無意識のうちに体勢を立て直して再び逃げることを優先する
ここじゃあこのくらいはできないとすぐに死んでしまう
俺は生まれたときからこんな生活を続けている
両親はまだ幼い頃に奴らに喰われて死んだ
ここじゃあよくあることでしかない
フェンリルの統治下にある壁の向こう側ならまだしも
その外であるここに安全な場所なんてない
・・・まぁその壁すら破られることもあるらしいから本当に安全な場所なんざないんだろうが
少なからず俺が生活するここらよりはよほどマシだろうさ
外には意外と多くの人間が今も溢れている
壁の内側に入れる人間は限られてるからな
フェンリルが偏食因子に対する適性を持った人間とその親族を
優先的に保護しているんだそうだ
壁の内側に入れなかった奴らは外でなんとかするしかない・・・と
んで外の人間は俺のように日々を文字通り生きるか死ぬかの瀬戸際で過ごしている
なにかをしくじったらその皺寄せはすぐに己に牙を剥く
・・・そんな中でも人は生きていられる
地獄ではあるが生まれてしまった以上何も成せずに理不尽に死ぬなんて堪えられない
だから俺はこんな世界でも足掻き続ける
しばらく前までは俺も他の人間と一緒に過ごしていた
人っていうのは無意識のうちに群れたくなる生き物だ
なにせ俺たちは弱い・・・奴らに対してなんの抵抗もできないんだから仕方ねぇが
だがこれはここで生きるうえではあまり役に立たない
極限状態っていうのか・・・追い込まれた人間は精神がやられてる奴が多い
今イカれてなくても明日も正常に働くかはわからない
こんななかで不確定要素を出来る限り省いたら結局残るのは・・・自分自身だけだよな?
まぁそういうことだ
だから俺は一人でいることを選んだ
もしかすると誰かに命を預けることよりも
誰かの命を背負うことの方が怖かったのかもしれないが・・・まぁそれはいい
とにかくなにが言いたいかというとだ
この世界は理不尽に尽きるってことだ
今この瞬間もな
右に向かって大きく跳ぶ
同時にさっきまで俺のいた場所に眩い閃光が走る
「あっぶねぇ・・・」
建物の下敷きになったのは奴にとっては追い詰めた鼠に噛まれたみたいなものだったんだろう
怒り心頭らしい
だがそんな様子とは打って変わって奴は少し離れた位置から電撃で俺を狙ってくるだけだ
「体力を消耗させて喰らおうって?」
どうやら本気で狩りにきているらしい
普段は先程までのテキトーな攻撃でも餌が簡単に獲れるんだろうが
生き汚い俺は一筋縄ではいかないと判断したのか・・・
「ハァ・・・頭を使うのは人間の専売特許だと思いたいんだがな・・・」
俺は今まで多く奴らを見てきた方だろうが
時々コイツのように頭を使っている節のあるものがいる
そういうやつは決まって撒き難い・・・執着が激しいんだろうな
こんな奴らに好かれてもなにも嬉しかねぇよ
奴らに対する考察(?)と下らない考えをしている間も体を動かすことは忘れない
というかこっちがメインだからな
とはいえ俺の体力もだいぶ厳しい
なにせまだ手に入れた食料も食ってない
オウガテイルに追いかけ回されてから少し寝ただけだ
そろそろ避けきれなくなってくるだろう
何か策を考えなければ
まず建物の下敷きに・・・っていうのはもう無理だろう
同じ手が二度通用するとは思えない
今度はきっと建物ごとあの雷で消し炭だろう
スタングレネード・・・俺にとっては切り札のようなものだ
節約したいところではあるがもう少し考えてなにも思い浮かばなければ使わざるを得ない
目の前にはどう足掻いても逃げることすらできない化け物
自分で勝つのは不可能
足止めも不可能
・・・となるとあとはそれが出来るものをコイツの前に引っ張りだすしかないな
目には目を歯には歯を化け物には化け物をってことだ
そうと決まれば善は急げだ
俺は回避に専念していた足を別方向に向け全力で走る
余裕のない目の前の餌は避けるしか出来ないと高を括っていたのだろう
奴は俺を追いかけるのに少し出遅れた
その隙に狭い道をジグザグに進み追いかけ難いルートを選ぶ
「よしッ 見つけた・・・!」
美しい光沢を放つ剣のような尾 恐ろしい貌のような両腕の盾
全体的に蠍のような姿・・・ボルグカムランだったか・・・?
何でもいい好都合だ
後ろからの轟音を聞き跳ねるように右に転がる
アパートとして使われていたであろう建物を粉砕しながら
ヴァジュラが飛び出す・・・が勢い余って蠍にぶつかってしまう
今度こそ完璧だろう
ボルグカムランは完全に標的を獅子に定めた
ここからは化け物同士の殺し合いだ
か弱い人間はとっととおさらばさせてもらおう
ヴァジュラの吠える声を背後に俺はその場を離れる
空はもうすっかり日が上っていて太陽が輝いている
死ぬかとは思ったが・・・
今日も俺は
生き残っている