白眼の老人シリーズ   作:守幸 支

1 / 3
第1話 「白眼の老人」

高校二年の春。

俺は、一年の気持ちを思い出そうと自転車ではなく、バスで学校まで向かう。一番後ろの長い席の端に座り、本を読んでいた。

 

「お兄さんちょっとすみません」

 

と嗄れた老人の声が横からした。そちらに顔を向けると、白を基調にして、所々に赤いラインの入った杖を持った、60もありそうなおじいさんがこちらを見て、「お兄さんちょっとすみません」と言ってきていた。

 

俺「あ、はい、何でしょう」

 

おじいさん「あんた、ユキネくんやね?」

(ユキネとは俺の名前)

 

俺「はい、何で俺の名前を...」

 

おじいさん「んー、もう少しで、『開く』ね」

 

俺はその言葉の意味がさっぱりわからなかった。おじいさんはそれを言い終わると、【次、止まります】と書いてあるボタンを押す。車内にピンポーンと言う音が響き渡り「次、止まります」とのアナウンスと同時に車内全てのボタンが赤く光った。

次のバス停までおじいさんに話しかけたが、聞こえていないのか、聞いていないのか、返事がなかった。

そのままおじいさんは、バスの停車と同時に椅子から腰を上げ、バスを出て行く。その後ろ姿を見ていると、普通のおじいさんだった。

 

その後、学校に着き、休み時間に親友のタクミにバスの中での出来事を話した。

タクミは、怪訝な顔で

 

タクミ「そのおじさんおかしすぎるだろ」

 

俺「?」

 

タクミ「まず、おじさんが持っていた杖は、視覚障害者の方が持っている白杖って杖だ。って事は、そのおじさんは、目が見えていない。なのにお前の事を『お兄さん』って。何で男ってわかってんだよ。それに名前も知られてる。」

 

俺は、タクミの話を聞いたとたん、背筋が凍った。

 

話を終えて放課後。

俺はテニス部に入っている。先輩にバスの中での出来事を話してみたら、先輩が「おー!お前それ『白眼の老人』じゃん!」と興奮気味で言ってきた。

 

俺「白眼の老人ですか?何ですかそれ」

 

先輩「お前知らないのか、その老人に『開く』って言われたやつは、霊力が宿る。

『閉まる』って言われたやつは霊力が消える。」

 

俺「じゃあ、俺は霊力が宿ったんですか?何も見えないんですけど」

 

先輩「それは知らんが、そういう噂があった。」

すると先輩は、少し真剣な顔で、話を続ける。

 

「『開く』と『閉まる』以外に『無くなる』ってのがある。その無くなるを言われたやつは、視力を失う。でも、とてつもないほどの霊力が宿るって言われてる。『目なんかなくたって、何不自由ない生活ができるレベルだそうだ』」

 

俺は、その話を半信半疑で聞いていたが、興味はあった。

 

部活が終わり、下校時。

帰りもバスで帰る。午後7時にバスに乗り込む。乗客は、俺と運転手の2人だけだった。俺は一番後ろの席に座る。

バスに揺られ、家の方面へ向かうバス。

十字路に入ったとたん、強い衝撃が、俺を襲う。

 

 

目が覚めたら、病院のベットの上だった。ぼやけて見える視界には、子供が数人、俺を囲んで上から覗き込んでくる。そいつらは何か喋っている。耳をすまして聞いてみると。

 

「起きた」「起きたね」「もう、いいね」

「帰ろっか」「うん、帰ろう」

 

とか言ってた。すると子供達が、視界から消えた。その瞬間、意識が覚醒した。体に走る激痛。右足、右手が、動かない。見てみるとギプスで固められていた。

ガラガラっと、ドアの開く音と同時に、医者が入ってきた。

 

医者「おはようございます。話は出来そうですか?」

 

俺は、「はい」と言おうとしたが、声が出ず、ただ頷いた。

 

医者「では、話します。」

 

医者はこう言った。

あなたは、バスに乗っていて、十字路に入ったとたん、信号無視のトラックに追突され、事故を起こし、この病院に運ばれてきました。右腕、右足、あばらが3本折れて、2日間寝たきりでした。

 

俺はなぜか、冷静で(あー、授業追いつけるかなぁ)と、勉学の心配をしていた。

 

そこから、3ヶ月間劇的な回復と病院でのリハビリをしながら、4ヶ月目で退院した。

 

後日、学校に行くと授業はさっぱりわからなかった。

その日から、みんなに追いつくため部活は休部させてもらい、猛勉強。

 

そんな猛勉強している中、時々話し声が聞こえる。複数人で喋っている声が。

耳を澄まし聞いてみる。

「大丈夫そうだね」「うん、大丈夫そう」

「もう、いいね」「帰ろっか」「うん、帰ろう」

 

『頑張ってね』

 

最後にそんな言葉がはっきり脳に入ってきた。その言葉が、どういう意味での頑張ってねなのかは、さっぱりわからなかったが、あの事故から、俺は俗に言う『見える人』になってしまった。

 




ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
これは僕にとって処女作ですので、至らぬ点や、間違っている場所、直すべき点などがあったら、教えていただければとても嬉しいです。

次回のお楽しみにm(_ _)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。