高校二年の春。
俺は、あの事故から、見える人になった。まあ、その時に話はいいとして。
見えるのはとてもめんどくさい。
授業に集中できない。なぜかは、今から話そう。
学校で、数学の授業を受けている時、先生の後ろを若いスーツ姿の男がうろちょろしている。その男を見るかのように教室のドアから、小さな女の子が覗き込んでいる。
俺(黒板が見えない。邪魔だ)
そんな事を思いつつ、我慢していた。
休み時間。
俺はタクミと昨日テレビでやっていた野球の話をしていた。
タクミ「あの場面での満塁ホームランはかっこよすぎる!」
俺「だよな!ヒーローだよな!」
と談笑しているなか、さっきのスーツ姿の男は、まだ教室の中をうろちょろうろちょろと歩き回っている。
小声で、タクミにその事を話してみた、するとタクミは「え!?まじ?やっぱ俺には見えないわ〜」と残念がっている。内心、(見えない方が絶対楽だ)と思っていると、どこからか強い視線を感じる。その視線を感じる方向に目をやるとそのスーツ姿の男だった。
こちらを目が飛び出るくらいに見開き、ガン見して来ていた。その視線に気づいたのか、タクミが「なんか、見られてないか?」と言ってきた。
俺「わかるのか?」
タクミ「なせか、感じ取れはする」
タクミの言葉は、的中している。さらに、その男はどんどん、近ずいてくる。俺は、直視してはいけないと感じ、視界の端で見続ける。
一歩一歩確実に、重たいオーラを放ちながら、近ずいてくる。一瞬で教室の中が、暗くなったように感じた。
俺「悪霊なのか?」
タクミ「どうしたんだ?なんか暗くなった気がするんだけど」
男は、俺の前に立った。
そして一言。
『見えてるのか?』
背中に冷水をかけられたかのようなに聞こえた冷たい声。俺はその言葉を無視する。
だが、男はずっと話しかけてくる。俺は無視する。途中で、男は「気のせいか」と小声でつぶやく。そのまま背を向け歩きながら消えていった。
気づけば、教室の中、誰1人と言葉を発していなかった。
時計の秒針の音が、カチッカチッっと聞こえるぐらいの静寂。俺はその空間が何より怖かった。
チャイムと同時に、全員動き出す。
「やっべ、移動じゃん!」と言った焦った声など、様々な感情が混ざった声が、四方八方から聞こえてくる。
俺は強く肩を叩かれ意識がはっきりする。タクミだった。タクミは「おい!俺たちも移動だぞ!」と焦りながら言ってきた。その言葉で安堵し、急いで次の授業に向けて移動する。
教室を出る時、ドアの後ろに居た少女が笑って俺に手を振っていた。
俺は笑顔で、少女に見送られる。
放課後。
タクミと帰っている時。
タクミ「今日の休み時間なんだったんだ」と
聞かれたので、すべてを説明したら、タクミは恐怖で引きつった顔で、俺に向かって「霊感なんていらないかもな」と言ってきた。まさにその通りだ。俺には何もしてあげられない。見えるし、おそらく話せる。だが、どうやったら成仏してくれるのかさっぱりわからない。
家に着く。
俺は、霊と言うものに関して、少し興味が湧き、調べれるだけ調べてみた。
霊は、自分の死を理解してない者や、助けを求めてる者、死を理解して悪さをしようとする者など、様々だそうだ。
あと、霊感が強い奴と長い時間関わっていると、霊感が無くとも、徐々に強くなってくるそうだ。これのせいでタクミは視線を感じたのだろか。
次の日。
俺の家の前には公園があり、その近くに川が流れている。公園はそこそこ広い。川は、昔工業廃水などで、汚かったらしいのだが、今はかなり綺麗だ。
ただ、おっさんが浮いているのを除いては正常だろう。おっさんは、うつ伏せで、背中から腰を浮かし、コイにパクパクと噛まれている。妙な事に、そのおっさんは川の流れに逆らって、流れている。なぜこのそうな現象が起こるのかは、さっぱりだが、この人もいつか消えてしまうのだろうと思いながら、学校へ向かう。
町中に幽霊はいる。
生前と全く変わらない生活をしてる人もいる。
俺は、出来るだけ多くの人を成仏させようと思った。