IS 女神と少年の物語【作者の受験により投稿停止中】   作:シアン

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長らくお待たせしました。
どうもすみません。更新ペースはこれからはこのぐらいになると思います。もしかしたらもっと遅くなるかも……
気長に待って頂けたら幸いです。
今話で漆黒の巨人編は完結です!
それでは、どうぞ!


鏡映し、救いの手

「人類を絶やす? 馬鹿かお前」

 

 厨二臭い。何だ、人類を絶やすって。人類舐めてんのか。しかもこんな幼女が。まだ小学校低学年位の見た目だぞ。

 

『馬鹿じゃない。私は本気で言っている。この世界から人類を絶やす。母なる大地を穢す人類を』

 

 なるほど、挑発には乗らないか。まあ、安い挑発だけど。

 

「へぇ、母なる大地を穢す、か。あながち間違っちゃねえな」

 

 まあ、実際地球温暖化だのエネルギー資源の枯渇だの地球を破壊しにかかってるからな。

 最も、この世界ではそんな問題起きてないんだけど。博士のISの技術のおかげである。いずれ起こらないとも言い切れないが。

 

『理解するの? 私の理想を……?』

 

「まあ、理解しないこともない。が、邪魔はさせて貰う」

 

 どこかで見たことのある理想、その眼の憎悪の光。

 

『理解した上で邪魔するの?』

 

「当たり前だ。……仲間をやられて、黙っているほど俺は甘くねえからな……!」

 

 言葉と共に一瞬で守護者とやらに肉薄する。

 

『なっ!?』

 

 遠慮なく腹を蹴る。続いてビームライフル(蒼穹白雪)で追撃。

 

『くっ……!』

 

 すぐに体勢を立て直すとシールドで受け止める。操縦技術もさることながら、機体の性能も強い。性能から言えば、俺達の機体に近いだろう。博士が作ったものでないだろうから、博士並の天災が居ることになる。

 

『消えて!』

 

 背中から多数のサブアームがのびた。その一本一本がガトリングガンを持っている。

 

「ちっ!」

 

 ガトリングガンの一斉掃射。しかも実弾の中にビームガトリングまで混ざってやがる。実弾なら無視して突っ込めるんだが、ビームが混じってるとそうはいかない。

 ビームシールドで受け止めつつ、躱す。これこそが弾幕って処だろう。

 

(出来れば使いたく無かったが……)

 

 千代紙夕音は、守護者の実力を見極めていた。一筋縄ではいかない相手だと認識していた。サイコガンダムの中から飛び出してきたのだ。アブソリュートエンジンには劣るだろうが、それなりのエンジンを積んでいるか、大容量のバッテリーを積んで居るであろうことは確かだった。

 だから、すぐにけりを付けさせて貰う。

 

(煙幕弾セット……『叢雲』起動)

 

 ブレイドドラグーンのエネルギーフィールドで叢雲に弾が当たらないようにしつつ煙幕弾をうつ。

 乱射されるガトリングガンの弾に貫かれ爆発する煙幕弾。煙が漂い『羅雪』の周囲を隠す。

 

「シア!」

 

『うん!』

 

(『宵闇幻葬』発動!)

(『時間喰らい(ダイヤル・イーター)』発動!)

 

 守護者を対象に『宵闇幻葬』と『時間喰らい(ダイヤル・イーター)』が発動する。

 守護者の動きが遅くなる。いや、守護者の中での時間の動きが遅くなる。

 更に、周囲を暗闇に閉ざされる。感覚も無い暗闇に。

 

「沈め」

 

 背後に大量の武装を一斉展開。殺さない程度の威力に抑えて、撃つ。

 

『うあああ!?』

 

 守護者の声が聞こえた。苦悶の声だ。人を撃つのはいまだに慣れない。博士の任務で人を何人も撃ったが、それに慣れてしまえば人間としてお終いだろう。

 能力を解除して様子をうかがう。『時間喰らい(ダイヤル・イーター)』の後遺症の一時的な加速はもう終わっているだろう。

 

『く、ぅ……』

 

 全身がスパークしている。活動限界だろう。力が同じ程度だからこその早期決着。

 

「お前の負けだ。降伏しろ」

 

『……しは………』

 

「なっ……!」

 

『私は! 負けられない!』

 

 スパークが奔っていた装甲をパージする。内側から紅い光を放つ装甲が出てくる。

 

『堕ちて!!』

 

 背中から、二つの巨大なビーム砲が肩に乗る形で展開する。

 

「くっ!!」

 

 ブレイドドラグーン(白銀穿牙)の展開は間に合わない。ビームシールドのみでその一撃を受ける。

 その一撃は彼女の感情を表すかのごとく、エネルギーがガリガリ削られる。

 その双眸に宿る憎しみの光、その理想。その全てが見たことがあったのは……

 

(そうか……あれはかつての俺自身が持っていたものだ……)

 

 まるで鏡映し。そっくりそのまま、俺が持っていたものだ。

 

(なら、止めないとな……)

 

 それがどれだけ苦しい事か、知っているから。一人の人間が持つのには大きすぎる感情。それは持ち主を蝕むから。

 

「うぉぉぉおおお!」

 

 cradleシステム、起動。

 

 

**********************

 

 

「ここは……?」

 

 ポツリと漏れたつぶやき。真っ白な世界。何か、シャボン玉のような球体が無数に浮かんだ白い世界。

 一体何処なのだろう、ここは。さっきまで、立ちはだかる敵を倒そうとしていたはずなのに……

 

「来たか」

 

「……!?」

 

 背後からかけられる声。突然の事に体が反応する。

 

「あなたは……?」

 

 その風貌、見覚えがあるような気がする。

 

「千代紙夕音、さっきまでお前と戦ってたものだ」

 

「えっ……!?」

 

 見覚えがあったのはさっきまで戦ってたからか。フルフェイスでも、雰囲気はそれと無しに感じ取れる。

 

「そう身構えるな。ここは精神世界。俺もお前も手出し出来ない」

 

「精神世界……?」

 

「ああ、俺の精神世界。つまり俺の心の中だ。無数に浮かぶシャボン玉のような球体は俺の記憶」

 

「何で連れてきたの?」

 

「決まってるさ。お前を止めるためだ」

 

「私を止める? 私が人類を滅ぼす事を止めるの?」

 

「ああ、お前を救うと言ってもいいかもな」

 

「そんなもの、救いにならない。私は人が憎いから人を滅ぼすの!」

 

「それはお前の心を蝕んでる、確実にな」

 

「あなたに何がわかるの!?」

 

「全部わかるさ。お前を見てると思い出すんだ、昔の俺を」

 

 そう言って私の目の前にある球体を指さす。その球体は私に近づいてくる。

 そして、触れる。私の体とその球体が。

 その瞬間、何かが私の中に流れ込んでくる。

 向けられる、蔑みの目。日々、繰りかえされる悪口の応酬。光はなく、徐々に暗闇に飲み込まれていく。生まれる憎しみ、世界がひっくり返るような負の感情。このまま世界が終わればいい。世界から人が居なくなればいい。そんな感情。

 

「こ、れは……」

 

「そうだ、俺の記憶の中でも最悪の記憶。お前と同じ感情を持った俺の記憶」

 

「……なんであなたは私のようにならなかったの?」

 

「違いは、力が無かったからだろうな。あの頃の俺に今のような力があったら、お前と同じ道をたどってただろうな、確実に」

 

「今、あなたには力があるのに……何で壊さないの?」

 

「……さっき、違いがあると言ったけど、一番の違いはそれじゃない。俺とお前の一番の違いは、隣に立ってくれる理解者がいるかどうかだ。俺の隣にはシアがいる」

 

「理解者?」

 

「そうさ、本当の自分をわかってくれる人。それが俺にはいるから」

 

「……私にはいない。はじめからそんなもの存在してない」

 

「そうだな。お前はずっと独りだった。けど、今はいるだろ隣に立つ理解者が」

 

「そんなのいない! 私を、本当の私を理解してくれた人なんてどこにもいなかった!」

 

「俺がいる。俺がお前の理解者だ」

 

「嘘だ、そんなこと!」

 

「嘘じゃない! 俺は全てを受け入れる、お前の全てを。苦しい事があっても傍に俺がいる!」

 

「そんな……こと……」

 

「絶対だ。この手を掴め!」

 

 手が差し伸べられる。

 

「掴んだら離さない、何があってもな! 世界がお前を否定しても、俺だけはお前を否定しない! お前を守る」

 

「本当に……本当に、守ってくれるの……?」

 

「命に代えても」

 

 嗚呼、温かい。とても温かい。人の心はこんなに温かった。

 私に家族はいない。けど、もしも……もしも家族がいたなら、こんな感じなのかな……

 差し伸べられた手を掴む。離さないようにしっかりと。

 その瞬間、世界は色を取り戻した。

 

 

**********************

 

 

 気づけば私は彼の腕の中に居た。私はISを解除していた。彼は顔の装甲を解除していて、顔が見えた。

 目が合う。彼は優しそうに微笑んだ。それを見た瞬間、視界が滲んだ。涙が頬を伝っていく。人の温かさに触れて、はじめて憎しみ以外の感情を持てた。

 もう心に憎悪はない。前よりも心が軽くなった。彼の……いや、お父さんの言うとおり私の心は憎しみに蝕まれていたのだろう。

 

「ありがとう、お父さん」

 

 そう言って私は目を閉じた。

 

 

**********************

 

 

 こうして、この事件は幕を閉じた。無人機ISや、巨大殲滅兵器の謎を残して。

 戦いで多くの建物が破壊されたものの、避難が間に合っていたので奇跡的に死傷者は出なかった。

 復興には時間を要するだろうがいずれもとの生活が始まるだろう。

 一夏と凰も絶対防御で守られていたため軽い打撲ですんだ。

 しかし、もう一つこの事件で問題があった。それは……

 

「お父さん…? どうしたの?」

 

 そう、綾のことだ。なぜか俺の事をお父さんと呼び、シアをお母さんと呼ぶのだ。

 高1で子持ちとか勘弁して欲しい。シアと2人で名付け親にもされたのだ。なぜか戸籍も俺の養子となっている。どうやったのか織斑先生に聞くと「何とかした」と答えられた。IS学園は民法すらどうにかできるらしい。大丈夫か日本。

 そもそも、綾の処遇はどうするのか織斑先生と話し合ったのだが、「お前の判断に一任する」とか言われたのだ。最初はどっかの小学校に入れようかと思ったのだが、なぜか知識は高校生並で頭がいい。どうするか悩んでいたのだが、結局IS学園に入学させることにした。その方が安全だろうと思ったからだ。仕向けてきたのが誰なのか綾自身も覚えていないらしく、黒幕は未だに不明なのも原因の一つだ。

 

「……いや、なんでもないよ」

 

 少し、というかかなり大きい制服を着た綾を見る。心配そうにこちらを覗き込む綾を見てたら、なんかもうどうでもよくなってきた。

 そうこうしている内に職員室についた。今日は綾の入学初日。1年1組に転入するのだ。

 

「山田先生、お願いします」

 

「はい! お任せ下さい!」

 

 なんか張り切ってる……不安だ。

 

「綾、教室で待ってるからな」

 

「うん!」

 

 無邪気な返事に頬が緩む。シアも同じように微笑んでいる。

 

「さ、行こうか、シア」

 

「ええ、行きましょう」

 

 職員室を出て教室に向かい、喧騒に呑み込まれる。クラスメイトに揉みくちゃにされたり、一夏が教室に入ってきて更に揉みくちゃにされたりホームルームまでずっと揉みくちゃにされた。

 ちなみに、その後全員織斑先生に出席簿アタックをくらいこのクラスに織斑先生の攻撃を受けてないものはいなくなった。

 そして、朝のホームルーム。山田先生の声に廊下から綾が出てくる。

 誰かが「ロリっ子だぁ……」とか呟いていたのを聞いた。なんかもうこのクラスに、常識を求めてはいけないな、と思った。

 

「ち、千代紙 綾です。よ、よろしくお願いします!」

 

 勢いよく頭を下げる。周りから拍手が聞こえてきた後、ピタッと拍手が止まり、

 

「「「千代紙……?」」」

 

 背中に視線が集まってると感じるのは気のせいじゃないだろう。というか息ぴったりすぎないか?

 しかもそこで綾が爆弾を投下した。

 

「え、えと……な、何話せばいいの……? お、お父さん、助けて!」

 

「「「「お父さん!?」」」」

 

 クラスメイトの視線が今度こそ集まる。視線に殺傷能力があったら軽く100回は死んでるだろう。しかも……

 

「ど、どういうことですの!?」 

 

「夕音、何やったんだ!?」

 

 セシリアに一夏まで参戦と来た。落ち着けって言っても聞かないんだろうなぁ(しみじみ)

 朝のホームルーム。織斑先生の出席簿が火を噴き続けた。出席簿が人間だったら労基署に駆け込む勢いだった。織斑先生も大変だなぁと思った朝だった。

 




次回から原作の第二巻に入ります。
投稿はどのぐらい先になるだろう…………
と言うわけでありがとうございました!
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