IS 女神と少年の物語【作者の受験により投稿停止中】 作:シアン
夕音「久しぶりだよな、こんなに早いの」
シアン「うん。そうなんだけどさ? ハッキリ言われると中々くるものがあるよね」
夕音「なら普段からちゃんと執筆しろよ……」
さて、月末のトーナメントが何事もなく終わったその日。俺達はいつものように、食堂で夕飯を食べていた。だが、今日は様子がおかしい。
セシリアを筆頭に鈴音は落胆した様子だ。最近一緒に行動するメンバーに加わったラウラはいつも通りだが、箒に至っては、口から魂が覗いてる(ように見える)落胆っぷりだ。負けたのがそんなに悔しかったのだろうか。まあ、箒は剣道家だし勝負事に関して何かあるのだろうが、それにしてもだ。
ちなみに綾は俺の膝の上で微睡んでいる。トーナメント中は山田先生が預かってくれていたのだが、観戦で相当はしゃいだらしい。そのせいか、夕飯を食べ終わったらこの状態だ。
「ユウ、あーん」
そして、こちらもこちらで様子がおかしい。いつもお淑やかなシアが、今日はグイグイくる。おまけに、にこにこと微笑んでいて上機嫌だ。いや、幸せそうなのはいいんだけど、公衆の面前でこれはつらい。かなり気恥ずかしい。しかし、差し出されたものを断る訳にもいかず、あーんされている状態だ。
「そういえば、箒。先月の約束だが──」
そんな中で、一夏が話題を切り出す。口から覗いていた魂が一瞬で戻ると、体がピクッと反応する。顔にもいくらか生気が戻っている。
「付き合ってもいいぞ」
その言葉に、箒に完全に生気が戻るとともに、一夏の胸ぐらを締め上げる。加えて、鈴音とラウラが錆びた機会のようにギギギっと首だけ一夏に向ける。これは怖い。修羅場か。
しかし、一夏と箒がここまで進展していたとは。今までそんな雰囲気は微塵も感じなかったが。
「ほ、ほ、本当、か? 本当に、本当に、本当なのだな!?」
「お、おう。幼馴染みの頼みだからな。付き合うさ」
ゆらり、と鈴音とラウラが立ち上がる。さながら幽鬼のようである。巻き添え食らわないうちに逃げた方がいいんじゃないだろうか。
「そ、そうか!」
箒はその答えに満足そうに、そして勝ち誇ったような表情を見せる。
──そう、次の言葉を聞くまでは。
「買い物ぐらい」
Oh…………これはひどい。思わず英語が出てしまうぐらい、ひどい。いや、一夏の唐変木さを考えれば当然の帰結か。だがな、一夏。その発言は箒を修羅に変えるぞ。
「…………だろうと……」
ほら見ろ、わなわなと肩を震わせてらっしゃる。一夏のノックダウンは待ったなしだな、これは。
「そんなことだろうと思ったわッ!!」
ドパァンッ!! といい音が響き渡り、一夏の腹に腰の入ったいい拳がめり込む。ちなみに、捻りも入っていた。テーブルを挟んでいるのにいいダメージだ。「critical!」表示が出ていた気がする。
いやまあ、冷静に考えてドパァンッってなんだと言う話なのだが。人体から出てはいけない音じゃないか?
「ごふっ!?」
一撃を食らった一夏は机に倒れ込み突っ伏す。ビクビクと痙攣する姿はさながら死にかけのゴキブリのようだ。
箒はそのまま去っていた。しかし、しっかり食器を片づけていく辺り、さすがである。
鈴音とラウラは同情したように一夏を見てはいるが助けようとはしない。シャルルはさりげなく背中をさすってあげていた。
「「「…………」」」
誰も、なにも発しない。というか、発せない。惨状があまりにもひどすぎた。
それから十五分。一夏が復活するころには、皆自分の夕飯を平らげていた。
食後のお茶を飲み、そろそろ部屋に戻ろうかと考え始めた頃だった。
「あ、千代紙君にシルバーベルさん。ここにいましたか」
「山田先生? どうしたんですか」
食堂に山田先生が現れた。どうやら、俺達に用があるらしい。
「連絡事項がありまして。えっと、お二人はこの後職員室に向かって下さい。織斑先生がお呼びです」
「あぁ……なるほど、わかりました」
あれだ、絶対訓練機改造の件だ。説明を求められるやつだ。それ以外に呼び出される節がないからな。
「それと、朗報ですよ! ついに今日から男子の大浴場使用が解禁です!」
「おお! そうなんですか!? てっきりもう来月からになるものとばかり」
大浴場と聞いて、一夏が声を上げる。風呂好きには堪らないことだろう。無論、俺としても嬉しいことだ。広い風呂はいい文明だ。
「それがですねー。今日は大浴場のボイラー点検が───」
しかし、これはまずい。山田先生が一夏と話している間にシャルルにコアネットワークで話しかける。
『シャルル、これはまずいぞ』
『う、うん。丁度、僕も考えてたとこだよ』
『一夏はシャルルの正体を知らない。俺は呼び出しを食らって、大浴場に行くのは遅くなる……』
『大浴場で一夏と二人っきり……夕音が居ないと誤魔化しきれないよ!?』
いや、俺が居ても誤魔化しきれないから。絶対無理だから。
『わかってる。だから、どうにかして風呂に行かないようにするしかない。何かうまい口実は……』
『……あっ、あるよ。ラファールのメンテするってことにすれば、一夏を一人でお風呂に向かわせられるんじゃないかな? 一夏はISの整備なんて、からっきしだろうし』
『それだ。ひとまず、そう言うことにしてこの場は乗り切ろう。うまくやってくれ』
『うん、ごめんね。わざわざ』
『気にするな、約束だしな』
打開策を見つけて、通信を切る。今回はこれで誤魔化せるだろうが、いずれ誤魔化しきれなくなる。なんとかしなければな……。
「はい! じゃあ早速、風呂に──あ」
一夏はテンションMAXだったが、ふと我に返って俺を見た。
「気にするな、先に入っててくれ」
「そうか? 別に待ってるぜ?」
「いや、解放されるのがいつになるかわからないからな。先に入っててくれ。せっかくの機会を無駄にしたくないだろ?」
「そうか、悪いな。それじゃあ、遠慮なく先に入らせてもらうぜ」
そう言って一夏は立ち上がる。着替えを部屋に取りに行くのだろう。俺はシャルルともう一度アイコンタントをして立ち上がる。
「じゃあ、ひとまず俺達は職員室に行くか」
「ですね。短く終わるといいんですが……」
立ち上がりつつ、そうぼやくシアに苦笑いで返して俺とシアは食堂を後にした。
結局、織斑先生から解放されたのはそれからきっかり二時間後だった。なぜか博士まで乱入してきて、場が混沌を極めたのが原因だった。
博士は出番がどうとかって騒いでいたが、それはまた別のお話である。
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「ふぅ……」
湯船に浸かりながら、俺はゆっくりと息を吐き出す。さすがIS学園。大浴場もスーパー銭湯並みの大きさだ。それを独占状態なのだから、これ以上の贅沢はない。
シアに「帰ってきたら、大事な話が、あ、あるので」と、部屋を出るときに言われたのが気になるが、今はこの機会を楽しもう……ふぅ……。
ぼんやりと、これまでのことを考える。博士とシアと過ごした隠れ家での日々。いろいろあったが、楽しい日々だった。まるで家族のように過ごした、暖かな日々。恥ずかしいから言わないが、俺は博士を家族のように思っている。シアは言わずもがな、綾も家族だ。
そっと、右目に手を添える。失った右目にはめ込まれた義眼。それは俺の戦いの象徴でもある。
IS学園に来て、戦った巨大兵器。あれの出所は未だに分かっていない。博士の力を持ってしても特定されない、黒幕。博士と同等の天才と見て間違いないだろう。
そして、黒幕はまた行動を起こす。そう確信している。その時に、専用機持ち、あいつらも戦場にかり出されるのは間違いない。
(あいつらはまだ戦えない。命のやり取りをする場において、あいつらはまだその重みに耐えられない)
俺が守らなければ。あいつらが死ぬようなことは、あってならないのだから。
カラカラカラ……。
不意に、脱衣場の扉が開く音がした……気がする。
いや、そもそもあり得ない話である。俺以外に誰が入ってくるのか。
あ、一夏がもう一度風呂に入りに来た可能性はあるか。あいつ、風呂大好きだし。
ひたひたと足音が聞こえてくる。まあ、別に一夏が入ってこようと構わないし、俺はゆっくりくつろごう。
「お、お邪魔します……」
「……!?」
男にしては高い声が聞こえた。というか、まんま女の声だった。そして、それが普段聞き慣れた声だと言うことに気付いたとき、俺は激しく動揺した。
そう、シャルルだ。いや、この場合はシャルロットか。ええい、今はどうでもいい!
「ま、まてまてまて! なんでここに居るですかい、シャルルさん!?」
動揺の余り、口調がおかしなことになっている。が、気にしてられる状況ではない。風呂に入りに来たのだから当たり前だが、俺は服を着ていないし、ちらりと見たシャルルも同様だ。
この状況はかなりまずい。年頃の男女が、一糸まとわぬ姿。おまけに密室空間とはかなりまずい。
「暇だったから、本当にラファールの整備してたら、思ったより時間かかっちゃって……い、イヤだったら上がるよ?」
「いや、大丈夫だ。俺が上がる。もう充分浸かったからな、シャルルはゆっくり入れば──」
「ま、待って! は、話があるの。大事な話が……」
そう言われては、この場から去るわけにはいかない。俺は上げかけた腰を落とす。シャルルの方は見ないように、背中を向ける。
「僕ね……夕音にとっても感謝してるんだ。ありがとう、夕音。ほんとに、ほんとうにありがとう」
「別に、感謝されるようなことはしてないぞ」
「ううん、してくれたよ。一人で諦めて、足を止めようとしてた僕を支えてくれた。背中を押してくれたから」
「当然のことだよ、それは」
「それを、当然って言える夕音はすごいんだよ。だから、ありがとう」
「じゃあ、どういたしまして、だな」
ここまで言われては受け入れるしかない。
「ね、夕音……」
「ん?」
そこでシャルルが言葉を区切った。背後で、シャルルがこちらに近づいてくるのを感じる。
「シャルル──!?」
名前を呼ぼうとして、声が裏返る。俺の背中に、シャルルの背中が合わせられた。そこに感じる体温が、心拍数を更に上げる。
「夕音……僕ね、夕音が好き」
ドクンと、心臓が跳ねる。予想外の言葉に頭が真っ白になる。考えが定まらない。
その頭で無理やり、思考を巡らせる。
「……好意を否定するわけじゃないけど、つり橋効果なんじゃないのか?」
「そうだとしても、僕は夕音が好きなんだよ」
「…………」
こう言うとき、どう言う顔をしたらいいのかわからない。笑えばいいと思うよ。いや、やかましいわ。脳内で一人劇してる場合か。
脳が混乱してくだらないことを考えている。使い物にならない。
ただ、一つわかることはあって。それを伝えるべきだと言うのはわかる。
「……シャルル、俺は──」
「わかってるよ。夕音にはシアラさんがいるってことは」
「────」
声が出なかった。それを知っていて、なぜ好きだと伝えたのか。
「じゃあ、なんで……」
「夕音に、知って欲しかったの。僕の思いを」
そこで、シャルルは一旦区切って続ける。
「夕音は、何でも一人で背負い込んじゃうから。シアラさんには、違うのかも知れないけど、でも、一人で悩んでるでしょ?」
「……わかるのか?」
「なんとなく、だけどね。だからね、夕音……夕音が背負うものを僕も背負いたい」
「それは──」
「だめだ、って言うんでしょ? 僕が背負うものじゃないから、傷つくかもしれないから。だから、これは僕が勝手にやることだよ」
そうすれば、夕音は何もいえないでしょ? と、そう言われた気がした。まったく、その通りだ。
「ごめんな……」
「夕音、こう言う言葉があると思うよ?」
「……ありがとう、シャルル」
「ん、どういたしまして」
少し迷った後、シャルルにお礼を言う。シャルルはその境遇からか、観察眼に優れているのかも知れない。もしくは、俺が分かりやすいだけか。後者は信じたくない。
シャルルは満足そうに応えると、そっと湯船の底に沈めた手に手を重ねてきた。
それは、お湯の中でも確かな熱を感じて。それは錯覚ではなくて、きっと、シャルルの意志を表しているものだと、そう思った。
その後、ゆっくりと広い風呂を楽しんで部屋に戻った。もちろん、体を洗うのも別々だし、着替えも別々だ。
部屋へ戻る間は、幾つか他愛ない言葉を交わした。関係はいつもの通りだ。ただ、その中にある何かが変わったのだろう。
**********************
……。
…………。
……………………。
…………………………気まずい。
部屋に帰ってきて、既に三十分が経過した。帰ってきて、シアに出迎えられたまではいい。風呂であんな事があったせいで、すっかり忘れていたのだ。大事な話があると言われたことを。
ひとまず、冷たいお茶を飲んで頭を冷やし、シアからの言葉を待っている。
俺は話の内容がわからないので、待つことしかできない。テーブルを挟んで椅子に座るシアは俯いていて表情が見えない。
しかし、いい加減この気まずさに限界を感じてきている。シアと気まずくなったのはこれが初めてであるし。
「……シア「ユウ」」
………………。
「「…………」」
……被った。気まずさ継続だ。だが、もう本気でつらいのだ。話を切り出すしかない。
「なあ、シア。話っていうのは……」
「あ、えっと……その……」
なんともシアらしくない。一体、何があったのだろうか。
すると、シアが立ち上がる。
「ユウ……」
「シア?」
そのまま、俺にもたれかかってくる。やはり、普段と違う。熱でもあるのだろうか。
「…………」
「シア……?」
そして、また黙ってしまう。本当にどうしたのだろうか。
「ユウ……愛してます」
頭が理解するより早く、動悸が速くなった。心臓が痛いほど強く跳ねる。
さっきのシャルルに続いて一体なんなのか。
「ずっと、一緒に居ます。いつまでも、何処に居ても」
耳元でそう囁かれる。
「ぉ……え、えっと……ど、どうしたん、だ……?」
声が上ずる。心臓が早くなりすぎて、気持ち悪くなる。息を吸うことすらままならない。
「もう……こう言うときは、俺もだよって返すところでしょう……」
そう言うと、シアはしょうがないなぁという風に息を吐いた。その息遣いも、はっきりと感じられた。
「今日のトーナメントで優勝した人は好きな人と付き合えるっていう話があったのですよ。出所は知りませんけどね」
少し、いつも通りに戻ったシアの話し方に、ようやくまともな思考回路が復活する。
なるほど、箒や鈴音の落胆はそこからか……。優勝すれば一夏と付き合えるビッグチャンスだ、負ければああもなるか。
「それで、せっかくだったから……私もユウに告白しようかなと……」
そういうことだったのか……。まあ、確かにこういった機会でなければ、そうそうあんな事を言う機会は──。
そこまで考えて、ふと気付く。
俺、告白とかしたことなくね? と。
シアのことは好きだ。大切な家族だと思ってるし、愛している。けど、その気持を伝えたことが果たしてあったか?
行動では確かにあったかも知れない。けれど、言葉として伝えていない。
なんて、馬鹿なのだろう。今までずっと一緒に居た。片時も離れたことはなかった。気持ちは通じ合っている。けれど、伝えるべきことを伝えていなかった。
「ごめん……」
そう言って、シアを強く抱きしめる。大切な存在がすぐ近くに居る。守るべきものが、こんなにも愛おしいと思える存在が居る。
「愛してる。この世界の誰よりも、この世界で誰よりも、俺はシアが好きだ」
「────っ」
シアが息を呑むのを感じた。でも、構わず続ける。
「ずっと一緒だ。何があっても、俺はシアの手を離さない。そう、誓うよ」
「ユウ……」
シアが体を起こす。視線が絡み合っう。朱がさした頬、瞳は僅かに潤んでいた。
視線が絡み合って、自然と互いに顔を近づける。
夜は静かに過ぎていく。少年と少女は誓いを胸に口づけを交わし、この幸せがいつまでも続くことを祈った。
砂糖投下しようとして、盛大に分量ミスった感が否めない……。
もっと文章力が欲しいなぁ……。