Harry Potter Ultimatemode EXシナリオ 作:純白の翼
1993年7月1日。とあるマグルの村。
「ここなの?」ハリー・ポッターが、30台前後に見えるイギリス紳士に語り掛ける。
「そうだよ。ここに、前任の魔法薬学教授兼スリザリン寮監のホラス・スラグホーンがいるよ。」
ハリー・ポッターとアラン・ローガーの目的は、そのホラス・スラグホーンに会いに来た事だ。
「……幸運の液体を飲んだけど、上手くいくかな?」
「それでも、何が何でもリドルとのやり取りを聞き出さなければならない。行こう。」
少し離れた一軒家にノックして入る2人。
「お久しぶりです。スラグホーン教授。」
アランが深々とお辞儀をした。
「アランかい?君が来るなんて珍しいな。」
『失礼な物言いになるけど、太ったセイウチって言った感じだな。』
ハリーがスラグホーンに抱いた印象はそうだった。
「ほほう。」スラグホーンがハリーを凝視する。
「どうかされましたか?」抑揚の無い口調で、ハリーが質問をする。
「君なのか。シエルから良く聞いているよ。無傷で例のあの人の襲撃をやり過ごした、生き残っていた男の子。ハリー・ポッター。昔を思い出すよ。君は父親に、メガネにそっくりだ。」
「私の両親を知る者は、皆そう言います。」内心うんざりそうにそう返すハリー。
「目だけは違う。リリーだ。だけど雰囲気というか、語って来るものは全く違うな。メガネの、ジェームズの兄、メイナードそのものだよ。」
「父の兄、つまり私にとっては父方の伯父に当たるその方は、一体どのような人物だったのですか?」
「一言で言えば、静かさの中に情熱や信念を秘めていると言えば良いかな?」
「成る程。そうでしたか。」
「君の母リリーは、私のお気に入りの1人だった。私の寮に来るべきだといつも言っていたのだが、その度に悪戯っぽく言い返されたよ。」
「確か、蛇寮でしたよね?我らが親愛なるドラコにホグワーツ特急で初めて会った時に、シエルに対してそう言っていましたから。」
「責めないのかね?」スラグホーンは、驚いたようにハリーに聞いて来る。
「寮で差別?それこそおごまかしいじゃないですか。確かに、父や母と同じグリフィンドールなのは認めますよ。ですが私には、スリザリンの友人が何人もいましてね。ほぼ全員が、純血主義ではありませんよ。それよりも、私が嫌悪且つ憎悪を抱いているのは――」
「そこは別に言わなくて良いよ、ハリー。」
「何を抱いているかは知らないが、君にも何か成し遂げたい事があると見受けられる。」
「知れた事。俺の両親や伯父を殺した上に、俺とエリナの人生まで歪ませた闇の陣営を全てこの世から完全排除する事ですよ。無論、家族も含めて。闇の生物も、種族ごと根絶させます。それ以外に何かありますか?」
スラグホーンは、狼狽えた。
「アラン。この子は、まだ12歳なのに復讐を考えているのかね?これは、幾らなんでも……」
「私としても、リドルを許す気はありません。奴は妻を、スネイプは息子夫婦、ヤックスリーはアルフレッドを殺したからね。なので、ハリーの復讐を止める気はありません。無関係な者を巻き込まない限りはですが。」
「スラグホーン教授。単刀直入に言わせていただきます。連中を完全なる破滅に追いやる力をください。」
「わ、私にはそんな価値が無い。何の役にも立たない……私のやった事が、結果的にリリーを死に追いやる原因になってしまったのだから。」
「もしあなたが、私の母を殺した者を破滅させたいと思うのならば、私が代わりにやり遂げてみせます。」
「そう言う問題ではないのだよ。」涙声になるスラグホーン。
「スラグホーン教授。私の母が、好きだったのですか?」
「リリーに出会った者の殆どは、誰だって好きになるに決まっている……あれ程勇敢で……ユーモアがあって……恐ろしい事をしたんだ……私は。ある意味、例のあの人以上に罪深い事をしたんだ。」
「お祖父ちゃん!」
沈黙を保っていたシエルが、祖父に剣幕を込めた物言いをする。
「お願いよ!ハリーに力を貸してあげて!私、例のあの人が支配している世界よりは、そうじゃない世界の方が良いわ!」
「し、シエル……」
スラグホーンはどうやら、孫娘にはかなり弱いようだった。
「ハリーのお母さんって、私の後見人もやってくれてたんでしょ!?話をする時は、いつも弾んでた!死んだって聞いた時は、私のパパやママと同じ位に悲しんでた!」
「…………あなたは、自分勝手です。後悔や償い。それらを自分の中で終わらせて、過去を過去のものとしている。思い出の中でしか、私の母様と会おうとしないのだから。」
「2人共。そんな事を言わんでくれ。ハリー、君に私の記憶をやるかやらないかの問題ではない。私としては、君を助けたい。だが……」
「あの変態ヘビからの報復が怖いのですか?奴は今、何も出来ない。」
「何故だね?君がそこまでやる必要は無い筈だ。」
「ダンブルドアは、エリナに1人で全てをやらせる気だ。ダンブルドアのやり方では、救うべき命を見捨て、逆に敵対する者を生かし過ぎるだけ。だからこそ、そんな最悪な結果にはさせまいと俺は動いている。俺は、過酷過ぎるエリナの苦痛を和らげる為にここに来た。」
「……君は恐ろしい事を言っている。つまり、私に、あの人を打倒する手助けをしろ、と。」
「その通りです。」
「!」ハリーの言葉に驚くスラグホーン。
「お祖父ちゃん。もう逃げないで。勇気を出して。ハリーのお母さんは、ううん。私のパパとママも、絶対恨んではいないわ。お祖父ちゃんが何時までもそんな状態だったら、心の中の3人は死んだままだもの。」
シエルも必死の説得をする。
「私を……エリナを、助けて下さい!」
ハリーは、頭を下げた。
やがて、スラグホーンはゆっくりとポケットに手を入れ、杖を取り出した。もう一方の手をマントに突っ込み、小さな空き瓶を取り出す。こめかみから、銀色の糸が杖先から出て来た。それを空き瓶に入れ、ハリーに手渡す。
「ありがとうございます。」
「リリーは、君の様な愛情あふれる息子を持って幸せ者だな。もういないが、彼女の心の炎は、まだ死んでいない。君の中で生き続けている。無論、ジェームズやメイナードも含めてになるがね。」
「絶対に、無駄にはしません。」
「その渡した記憶を見ても、私の事を悪くは……」
「思いませんからご安心ください。」
「最後に1つ約束しても良いかな?」
「何でしょうか?」
「頼む。ハリー。私の娘夫婦と……リリーを殺したあいつらを、何としてもやっつけてくれ!私は、本当は何とかしたいが……どうしようもない。君や、アランに頼むしかない。」
「あなたのその頼みは、私の本懐でもあります。そうでしょ?義祖父ちゃん。」
「そうだね。」
「……スッキリしたよ。ちゃんと言えて。」
「スラグホーン教授。本日は、ありがとうございました。」
ハリーとアランは、スラグホーンにお辞儀をした。そして、出て行った。
「勇敢で気高かったわ。カッコよかった。」
「ありがとう、シエル。さあ、そろそろご飯でも作ろうか。」
「お祖父ちゃんは、ゆっくりしててね。私がやるから。」
そう言って、シエルはキッチンに入っていった。それを、笑顔で見つめるスラグホーンであった。