Harry Potter Ultimatemode EXシナリオ 作:純白の翼
1981年11月14日。魔法省のウィゼンガモット法廷。
「連れて来い。」
声を発したのは、バーテミウス・クラウチ。魔法法執行部の部長を務めている男だ。彼の隣には、弱々しい儚げな魔女がいた。涙も枯れ果てた啜り泣きを時折やっていた。
隅のドアが開く。6体の吸魂鬼が、4人の被告を連れて来た。傍聴席からは、ヒソヒソ声が絶え間なく聞こえた。そして、全員の眼がクラウチを見ていた。
鎖付きの椅子に、4人は吸魂鬼によって座らされた。がっしりした体つきの男、少し痩せていて神経質そうな感じの男、豊かな艶のある黒髪の女。彼女だけは、まるで王座でもあるかの様に正々堂々と座っている。最後は、18歳前後の少年だ。3人とは違って、ブルブルと震えている。少年を見たクラウチの隣の女性は、ハンカチに嗚咽を漏らしながら泣き始めた。
クラウチが立ち上がる。4人を見る彼の顔は、完全に憎悪に満ちたものとなっていた。
「そんな。ここって……ウィゼンガモット法廷。違う!僕は冤罪だ!」
少年が喚き始める。
「静粛に!!ただ今より、開廷する。被告4人。お前達は、例を見ない程の大変残虐で悪意に満ちた――」
「お父さん!話を聞いて下さい!」
「大犯罪を行った!!!」
少年の言葉を一蹴するかのように、クラウチの怒声に近い声が響き渡った。
「ラバスタン・レストレンジ!その兄、ロドルファス・レストレンジ!妻のベラトリックス・レストレンジ!そして……」
クラウチが言葉を一旦切った。
「バーテミウス・クラウチ・ジュニア!!!」
「僕は、あなたの息子です!それなのに……それなのに……こんな事って……」
絶望に満ちた声を出すバーテミウス・クラウチ・ジュニア。一瞬だけ、3人が笑っているような表情となった。
「お前達がやった事は――大変許しがたい犯罪であり!非人道的な行いと言える!『闇払い』フランク・ロングボトムと、その妻アリス・ロングボトムを捕らえた!2人に対して――」
「僕はやっていない!あぁ、あなたは……あなたはいつもそうだ!僕の事なんてこれっぽっちも――」
「被告よ!静粛にしろと言っている!!」
クラウチがジュニアを黙らせる。それはもう、息子としては見ていない。完全に、道端に存在する醜いものを見るかのような侮蔑の視線であった。
「磔の呪文を行使した!!それによる、長きにわたる拷問!!2人を…………2人を、聖マンゴ魔法疾患病院送りにした!!!ロングボトム夫妻の回復は――絶望的!我々魔法省は、彼らに対して、あらゆる敬意と尊敬を以ってこの者達を裁く必要がある!!」
「お母さん!お父さんを止めて!!神に誓って!僕はやっていない!」
「判決は――言うまでもない!アズカバンの終身刑に値する!!!」
クラウチが狂ったように叫ぶ。
「賛成の陪審員は、挙手を願いたい。」
ほぼ全員の手が挙がった。傍聴席からは、拍手が湧き上がって来る。どの顔も、当然の報いだという顔になっている。そして、勝ち誇った残忍さに満ち溢れていた。
「それでは、これより閉廷とする!」
「いやだ!お母さん!お父さんを止めて!僕はやっていない!あそこに送り返さないで!」
ジュニアは、必死に抗おうとする。しかし、吸魂鬼の前では意味を為さなかった。その時だった。沈黙を貫いて来たベラトリックスが、クラウチを見上げて叫んだ。
「バーテミウス・クラウチ・シニア!」その顔は、希望に満ち溢れている。
「キチガイのアバズレめ!よくもわしの教え子を!」
アラスター・ムーディが唸る。しかし、その隣にいたアルバス・ダンブルドアが彼を制した。
「アラスター。よすのじゃ。彼女は、抗う事は無いのじゃろう。今はのう。」
「闇の帝王は破られた!滅ぼされた!だから死んだ!生き残った女の子バンザーイ!バンザーイ!!!こ れ で 魔 法 界 は 永 久 の 平 和 を 取 り 戻 し た の だ!」
ベラトリックスが本心でそんな事を言っていないのは、誰が見ても分かった。
「そう思っていれば良い!そのままのうのうと暮らしているが良い!我々をアズカバンに放り込んで満足か!?そうだろうな!我々もだ!あの方を、ひたすら待ち続けるだけだ!」
この期にも及んで、ヴォルデモート卿への忠誠心を捨てなかったベラトリックスであった。
「我々は、お前達の知らない事を知っている!いいや、知ろうとも思わない事を知っているのだ!あの方は必ず蘇るだろう!我々をお迎えになさる!他の従者の誰よりも我らをお褒めなさるだろう!」
「そして、1番最初にお辞儀させてくださるだろう!!!!!」
「我々だけがあの方に忠実だった!我々だけが、あのお方を探しつづけたんだ!あのお方の手で自由になった暁には、貴様ら全員をアズカバンより惨めな場所へ送ってやるよ!!楽しみにしていると良い!アハ!ハハハハはハハハ!ハーハッハッハッハッハ!!!」
ベラトリックスは、堂々と地下牢から出て行く。ロドルファスとラバスタンもそれに続いた。ジュニアだけが、出て行こうとするのを渋っている。それを嘲り笑う聴衆。
「僕はあなたの息子だ!それなのに!碌に捜査もしないでこんな事って!!そんなのあんまりだ!!!」
泣きながらそう叫ぶジュニア。
「貴様など私の息子ではない!私に息子などいない!吸魂鬼よ!連れて行け!そんな人の形をしたゴミなど、レストレンジ3人諸共アズカバンで腐らせてしまえ!」
「僕は、あんな厨二臭い連中の仲間じゃない!誰か!誰か助けて!!イヤだあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
こうして、ジュニアは吸魂鬼によって強制的に連行されたのであった。
*
1993年6月8日。クラウチ邸。
『……夢か。運悪く、あんな奴らと鉢合わせてしまったのが俺の運の尽きなのか?』
自分の運命を嘆くジュニア。父に不満は覚えながらも、実の兄同然に接してくれたメイナード・ポッターのお陰で何とか真っ当な道を歩む事が出来た。彼から勧められた癒者の道に進み、研修を熱心にやっていた。
久々の休暇で家に帰った。そして、散歩をしていた時、あの3人と出会ってしまった。その直後、魔法省に捕まった。
アズカバンに送られてから1年が経った。母が助けてくれた。不治の病で、間もなく死ぬからだ。そんな母の病気を完治させる為に癒者を目指したのに、それさえも敵わなくなった。家に戻った後、幾つかの呪文で完全に制御化に置かれた。辛うじて、意識は保っていられた。
この約12年間は、只々自分は何者だったのかをずっと考えていた。
「無実の罪で12年の人生を棒に振り、自分がハッキリと見えていない様ね。」
声が聞こえた。魔法は全て解除されている。身体も自由に動かせる。
「あなたは確か……俺が3年生の時に闇の魔術に対する防衛術の担当をしていた……」
金髪で、丸刈り頭の。そして、クラシックチュチュを着用している。男ではあったが、オネエ言葉を話す。
「久しぶりね。バーテミウス・クラウチ・ジュニア。私の名前は、リチャード・シモンズよ。転移魔法で、私のアジトまで来たのよ。」
「どうして俺を?」
「あなたの事、ずっと見せて貰っていたわ。その傍ら、魔法省の陰謀の事も調べていたのよ。」
「え?」
「付いてきなさい。真実を知りたければ。」
移動する2人。ある部屋に入室する。そこは、沢山の巨大なカプセルが置かれていた。緑の液体の中には、植物や動物、魔法生物、そして信じられない事に人間まで入れられていたのだ。
「何故わざわざこんな所へ?」
「知りたい事が増えているわね。良い事よ。知識欲と言うのは、人間が持っている欲望の1つ。それから逃れる事なんて、永遠に無理だわ。」
「じゃあ、さっさと教えて下さいよ!」
「簡潔に言うとね、あなたは闇の陣営への関与が疑われていたわけ。」
「俺はあんな奴らと仲間じゃない!」
「確かに。でもね、魔法省は癒者として優秀過ぎるあなたが、仮に闇の陣営に与したら厄介な事になると認識していたそうよ。そして、休暇の時の散歩で運悪くレストレンジ3人と遭遇。あなたも始末しておく事で、復活したとしても少しでも闇の陣営が不利になるように働きかけたわけ。でも、程無くしてシロだと判明したのよ。」
「だったら!」
「魔法省はね、でっち上げを行ったのよ。無実の人間を問答無用で捕まえたとなれば、面目は丸つぶれになる。だからこそ、あなたを死喰い人という事にしてメンツを保とうとしたのよ。」
「つまり、こう言いたいわけだな。俺は、魔法省の下らない認識と陰謀の為に無実の罪を着せられたと!それも、正義の名の下に!!」
「そう言う事。」
その途端、ジュニアは杖が無い状態でリチャードに対して攻撃呪文を行使した。
「俺は、何だっていうんだ!そんな事の為に、全てを失う羽目になったんだぞ!このやり場のない怒りを、どこにどうぶつければいいんだ!!俺の12年間を返せ!!!!!」
ひたすら、魔法を使い続ける。もう、リチャードは動いていなかった。
「ハア……ハア……ハア……!?う、うわああぁっ!」
怒りの感情を抑えきれず、人を殺してしまった事に罪悪感と後悔で満たされてしまった。
その時だった。リチャードは、何事も無かったかのように動き出し始めた。しかも、無傷である。
「こうは考えられないかしら?今までの事が納得出来ないなら、代わりのものを見つけて次々に足していけばいいと。」
「あなたは、俺を殺すんじゃないのか!?」
「いいえ。そうじゃなくてよ。私もね、自分が何者なのかと、この世の全てを知る為に行動しているわ。本当の自分を見つけ出す為に、この世のあらゆるものと情報を集めつくせば自ずと答えは出て来る筈よ。」
「…………」
「それに、あなたはその素質の高さを秘めている。この部屋にはナノマシンが漂っていてね。生物の身体に入り込み、一瞬で改造出来るの。但し、以前の改造手術よりも成功率は低いけどね。」
「まさか!?」
「そう。あなたは差し詰め、新型改造人間第1号とも言える存在になったわけだわ。」
「……」不思議と、そんなに嫌では無かった。
「戦う為の力を手に入れた。これから、どうしたい?」
「俺は闇の陣営が、特にレストレンジ達が憎い。そして、魔法省も。英国魔法界なんて、無くなればいい。だから、俺が終わらせる!これは俺の……復讐だ!!!」
「良い眼をする様になったわね。今から、組織を作ろうじゃない。」
「どんな組織を?」
「理想郷から取って、アルカディア。私があなたを闇の陣営や、英国魔法界から守るわよ。殺すなんて勿体無い。癒者であり、最初の新型改造人間。ここはね、あなたの培って来たものの全てを有効に扱える研究施設でもあるわけ。」
「俺の全てを生かせる……」
「クラウチ家を……英国魔法界を否定なさい。あなたは、アルカディアのバーテミウス・クラウチ・ジュニアなのだから。」
手を差し伸べるリチャード。ジュニアは、その手を掴んだのだった。
『Harry Potter Ultimatemode』シリーズのバーティ・クラウチ・ジュニアは、死喰い人にはなっておりません。ホグワーツ卒業後は、癒者業界で